北奥法律事務所

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信頼関係を築くのが難しい方からのご依頼に対する苦慮

信頼関係を築くのが難しい方からのご依頼に対する苦慮

1 この仕事をしていると、1年ないし数年に1回くらいの頻度で、非常に残念な相談者(事件依頼を希望される方)にお会いすることがあります。

抽象的に言えば、「事件そのものは決して看過できない(重大な争点があり、勝訴が確実とは言えず敗訴リスクも高いが、取り上げる価値や意義は否定できない)ものの、当事者の方の個性等が強すぎ、結果として弁護士(私)との間で、長期の訴訟を行っていくために必要な信頼関係を築くことが著しく困難と認めざるを得ない方」です。

もう少し具体的に言えば、勝訴が困難と思われる争点で、その難しさ(裁判所の一般的な判断傾向)などをご説明しても、それを決して受け入れることなく、否定的なニュアンスを伴う弁護士(相手方の代理人ではなく、ご自身が相談を依頼して相対している弁護士)の説明にも直接的に強い怒りや敵意を表明したり、効果的とは言い難い主張や立証方法に固執し、弁護士にその方針に沿った煩瑣・膨大な作業を求め、それに難色を示すと強い不満を表明してくるような方、ということになります。

また、そのような方は、最初(初対面)の相談時から非常に感情的になっているため、相談時間に事案の争点整理や主張・立証方法の確認などといった基本的な作業ができず、延々と、従前の交渉経過での相手方の担当者等への不満を強い口調で述べ続けるなど、当初から受任事務の継続に必要な対話の成立に困難さを感じるのが通例です。

もちろん、当方も絶対に勝てると判断した事件しかお引き受けしないというスタイルで仕事をしているわけではありませんので、難しい争点のご相談で、弁護士としての概括的な見立てをお伝えした場合に、一応はその説明を謙虚に受け止めていただいた上で、なお、一緒に戦って欲しいとの真摯な申出を受けた場合には、着手金をはじめ相応の条件を付させていただいた上で、お引き受けすることも少なくありません。

そのような経緯でお引き受けした場合、当方も、事件には依頼者のご希望も含めた私なりの見立てに沿って全力で取り組んでいますので、争点そのものが勝訴的な判断が得られなかったとしても、言い分を尽くした上でやむを得ないと一応は納得したとして、何らかの解決(例えば、若干の解決金などの敗訴的な和解)を受け入れていただいているのが通例です。

しかし、最初から、ご自身の意に添わない説明等を受け止めることを感情的に強く拒否し、弁護士に対し自己の意に添う行動を求める姿勢が強い方などに対しては、「この方とは信頼関係を築くのは無理」として、お断りせざるを得ないことがあります。

2 先日、「訴訟の途中で依頼者と代理人(受任弁護士)との間で方針の違いが顕著になり、依頼者が代理人の方針に強い不満等を表明し、訴訟の中で重要な位置づけになっている相手方の反対尋問のための打合せを直前にキャンセルし、尋問そのものが困難になったため、やむなく代理人が辞任したのに対し、依頼者が代理人に対し賠償請求した例」を少し勉強しました(東京地判H24.8.9判タ1393-194)。

判決は、次のように判示し、依頼者の請求を棄却しています。

「本件の事実経過を総合考慮すれば、受任者Yは、代理人辞任までの全体を通じ、依頼者Xの意向を可能な限り尊重し誠実に受任事務の遂行にあたっている。

Yは、Xの要望に裁判所が消極姿勢を示している等の説明をしたのに対し、Xが直接的かつ明白に不満ないし不信感を露わにした態度を示すなどのやりとりが続き、それでもYがXの意向に添う尋問案を作成して打合せの準備を進めていた。

ところが、Xが一方的に打合せをキャンセルし、その理由にYへの不信感を背景とする投げやりな態度を示したことなどから、YがXから訴訟を受任し続けていくため必要な信頼関係が損なわれ、尋問打合せの直前キャンセルを機に、決定的に破壊されたと認定できる。

よって、Yの辞任はやむを得ない(民651Ⅱ)もので、賠償責任は成立しない。」

3 結婚や継続的な商取引などと同じく、一定の期間、密接な関係を築かなければ所期の目的を達成できない者同士は、その目的を達成するため必要な信頼関係の構築ができないと見込まれるのであれば、関係の構築そのものを回避せざるを得ない(それが互いのためである)ことが多々あります。

勝ち負けの判断が難しく、真剣に戦っていくのなら弁護士には非常に多くの作業が要求されざるを得ない事件について依頼を希望される方におかれては、願わくば、意中の方に求婚や交際を申し込むとき(或いは、申し込むかどうかを検討しているとき)のような慎重さをもって、弁護士とも相対していただければ幸いです。

 

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