北奥法律事務所

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月額3000円(税別)の顧問契約に関するコンセプト

月額3000円(税別)の顧問契約に関するコンセプト

平成23年9月に、月額3000円の顧問契約(Aコース)を設けた際に旧HPの「日記」に投稿した文章を微修正したものです。Aコースや利用頻度に応じた顧問契約の定め方に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

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平成23年9月から、顧問契約に関する新機軸(Aコース)を打ち出すことにしました。個人・法人を問わず、月額3000円(消費税別)で顧問契約(顧問弁護士)を導入できるというもので、弁護士会の報酬会規の法人顧問料が月額5万円(岩手・盛岡では、月額3万円が多いとも聞いています)であることから、相場よりも大幅に値引きした価格ということになります。

以下、このコースの設定の経緯、意図等について、ここで概略を説明いたします。なお、平成26年の消費税の増税の影響も考慮し、金額の表示はすべて税抜としています。

1 Aコース設定の経緯

私は、零細企業経営者の子弟のはしくれであると共に真っ当なビジネスをする企業が盛んに活動することが社会を成り立たせる基本と考えていますので、弁護士として中小・零細企業の経営を支援する仕事には相応の意欲を持って取り組んでいます。

東京時代には勤務先事務所に様々な顧問先企業がありましたので、そうした意欲を充足できる多くの仕事に巡り会いましたが、岩手に戻った後は、私が盛岡に地縁・血縁がないに等しく、依頼される事件の大半は弁護士会や行政機関主催の相談会などでお会いする方の多重債務や家族関係の紛争など個人的なものばかりで、企業活動をサポートする類の仕事をご依頼いただく機会はめっきり減ってしまいました。

幸い、まったくご依頼がなかったわけではありませんが、その多くは、他の先生(弁護士)などからご紹介いただいたり、弁護士会の相談センター等でたまたまお会いしたというのが通例で、依頼者たる企業の方が直接に私(当事務所)にアクセスされてきたということは、これまで滅多になかったと感じています。

現在、当事務所と顧問契約を結んでいただいている企業さんの数も恐らくは私と同等の実務経験(約15年)を有する弁護士の一般平均を遥かに下回る数と言わざるを得ないでしょう(人脈云々以前に、顧問先の獲得に最も必要と思われる「カリスマ性」の欠如が最大の要因というべきかもしれませんが)。

JC(青年会議所)などで多少とも垣間見る限りの印象ですが、盛岡(岩手)でも、少なからぬ企業さんが県内又は仙台・東京の弁護士と何らかの繋がりを持っていたり、容易に弁護士の紹介を受けることができるルート・人脈等をお持ちのようで、インターネット(Webサイトを掲げている事務所)を弁護士探しの主たるツールとして活用しようという方は、あまり多くはないようです(意思決定を司っている社長さんなどが、ご高齢という面もあるかもしれませんが)。

そうしたことから、企業(とりわけ、地元に広範な人脈を持ち従前から弁護士を利用してきた企業)の方々から依頼を獲得していくことは、岩手に戻って10年近くを経た今でも、容易ならざるという印象を受けています。

また、私のように地縁・血縁のない人間が異業種の方々との人脈を作るには、例えばJCのような様々な業界の方が集まる夜の会合などに参加していかなければならないとは思いますが、極度の残業体質の上、家庭の事情で夜間に身体を空けるのが難しいという事情もありました。

もちろん企業活動と関係のない純然たる個人向けの仕事が嫌というわけでは全くなく、今後も個人向けの仕事に多くの力を注いでいくことは間違いありません。ただ、弁護士の活動を通じて地域社会の全体に貢献するという初志からは、個人向けの仕事ばかりに比重が強くなるのは望ましくなく、個人向け・企業団体向け双方の業務を一定のバランスを保って受注できる事務所であるべきだと思っています(また、一方の仕事を経験することが、他方の業務にも大いに生きてくることは当然です)。

というわけで「夜の会合による人脈づくり」以外の方法で企業関連の人脈を作ったり、ご依頼をいただく機会を作ることができないか模索してきたのですが、名案も浮かばないため、「この弁護士は色々な仕事を手がけてきたようだから、話だけでも聞いてみようか」と関心を持って頂けるような内容にしようと、平成23年頃から、事務所サイトで「取扱実績」欄を増設するなどしていましたが、それを理由ににご依頼をいただくということもなく、暗中模索の日々が続いていました。

そんな中、たまたま手にしたビジネス誌で、東京の若い弁護士さん達が経営している事務所(ベリーベスト法律事務所)が「月額3980円(消費税込み)の顧問契約を導入した」として、大きく取り上げられていたのを目にしました。

私自身、以前から「実際のご利用があまり多くはない企業から月額で数万円の顧問料をいただくのは、弁護士の不労所得に等しく合理的ではないし、そのような契約は長続きしない。ただ、来所相談をする必要が生じることは滅多にないという企業でも簡易な相談を気軽にできる顧問弁護士は欲しいというニーズはあるはずで、それに対応するサービスを提供できないだろうか」との思いがありましたので、当方も導入すべきと考えました。

以上の経緯で、従前から設定していた顧問契約とは別に「月額3000円+受任時の1割引」というプランを新設した次第です。

ネットでざっと調べた限りでは、平成23年当時、ベリーベスト法律事務所の「3980円」よりも低い単価で顧問契約を謳っている事務所はありませんでしたので、少なくともその当時では「日本で一番安い値段で顧問契約を引き受ける弁護士」ということになるかもしれません(「神田のカメさん」というユニークな弁護士さんが顧問料ゼロ円と告知されているのも拝見しましたが、値段がついておらず「最安」という概念には当てはまらないでしょう)。

2 新コースの目的

この新コースの主たる目的は、サイトにも表示しているように、たまには弁護士に電話やメールで聞きたいことがあるという方が、従前よりも安価な値段(顧問料)で気軽に問い合わせ等ができるようにしたいとのニーズにお応えする点にあります。

また、簡易なやりとりであっても、法的なアドバイスを通じて本格的な弁護士の出番を要しない形で紛争を予防したり交渉相手からのアドバンテージの獲得につなげていただいたり、中には、ご自身が気づいていない大きな問題を指摘し、すぐにでも本格的な事件として動き出すべきだ、とお伝えすべきこともあると思います。

早期のご相談→合理的タイミングでの事件依頼→手遅れの防止というサイクルで考えていますので、来所相談の必要がある場合に支障なくご来所いただける方(岩手の方や盛岡へのアクセスに難がない隣県等の方)を顧客層として想定しており、「全国展開」するようなサービスではないと考えています。

また、過去の経験等から「事務所を構える町弁の採算に関するデッドライン(基準単価)は時給2万円」と考えておりますので、月額3000円(年額3万6000円)という価格は、「年間2時間弱(月に平均1回、1回あたり電話・メール等で10分程度)の相談等のご利用」に相当するものと位置づけています。そのため、それ以上のご利用が多く生じる場合は、原則として追加料金をお願いするか他の契約類型への切替をお勧めすることになると思います。

この程度のご利用なら、普段なかなか弁護士に相談することはないという中小・零細企業或いは個人の方でも、一定の実需はあるのではないかと考えての設定です。

3 伝統的な顧問契約との異同など

伝統的な顧問契約の相場よりも遥かに低い値段ですが、従前の顧問契約の価格破壊を目的とするものではありません。むしろ、来所相談等は割引をしているとはいえ有料とさせていただきますので、「顧問先の相談は無料」という契約類型とは、異種のものと言えます(従来型の顧問契約もタイムチャージと組み合わせる方式でお引き受けしています)。

敢えて言えば「毎月数万円の顧問契約をしているが、実際はさして利用がなく、従前の形態で顧問契約を続けることに疑問を抱いている企業」にとっては「いざというときに弁護士への迅速なアクセスを確保するため、顧問契約だけはしておきたい」とのニーズをリーズナブルなコストで確保しうるという点で、価格破壊的要素はあるかもしれません。

ただ、それは、従前の顧問契約(弁護士)に実働を伴わない顧問により不労所得を得ている面があったこと自体が間違っているというだけのことであり、「あるべき価格を不当にダンピングする」という意味での安値競争とは異なるものです。

念のため補足しておきますが、顧問契約を締結している多くの弁護士が、不労所得を貪っているというわけではありません。ネット上で検索いただければすぐにお分かりのとおり、伝統的に、一般的な弁護士の顧問契約が、「月数万円の顧問料を支払えば、相談等は原則時間無制限」となっているため、相当量のご利用があれば元が取れるようになっており、そうした利用をされている方も沢山おられると思います。

しかし、このような仕組みだと、盛んに利用(相談等)をした方とそうでない方とで実質的に大きな不公平が生じてしまいます。さりとて、伝統的にドンブリ勘定体質を持つ弁護士業界で、「利用実績のない顧問先には顧問料を返金」などといった手法が普及するとも思えません。

毎月、帳簿類のチェックという明確な実働が伴う税理士さんの顧問業務と異なり、弁護士の顧問業務は、相談等の実需がないと機能しにくい面があることは否定できません。そのため、「利用の有無に関係なく頂戴する顧問料」の部分はなるべく減額し、それと共に、多くのご利用のある顧問先には、顧問契約をせずに利用される依頼者よりもメリットがある(割引サービス)という形で顧問契約を再構成していくのが、これからの顧問弁護士に関する一つの望ましい姿ではないかという印象を受けています。

なお、「定期的に顧問先企業を訪問して相談等を行う」など、顧問税理士のような定期的な実働を伴うケースであれば、低額の顧問契約を導入しなくとも、実働に応じた相当の顧問料を設定すればよいと思います。しかし、法務部門が各部門のリーガルリスク等を定期的にチェックし顧問弁護士に定期的に相談する仕組みを作りやすい大企業ならともかく、現在の我が国の中小・零細企業にはそのような実需は滅多にない(掘り起こしも難しい)のではという印象です。

また、Aコースのようなタイプの顧問契約については、学校の同級生など個人的に親しい関係の弁護士がいるという方なら「ちょっとした相談程度なら、その弁護士に電話等でサクッと聞けばいいから敢えて顧問契約なんてする必要はない」ということになるかもしれません。

ただ、そうしたツール(人脈)を持たない方や、あったとしても一種のフリーライダーにはなりたくないという方にとっては、簡易な相談を遠慮なく受け付けること自体を目的とした低額の顧問契約は相応に利用価値があるのではないかと思われます。

私自身、今は概ね(至って?)健康のため必要はないものの、いずれ病気がちになった場合は、町医者の方に、低料金で自分の身体に関する些細なことについて遠慮なく電話などで相談できる顧問契約のようなものがあればいいのにと思わないではありません。

個人的に、仕事上お世話になっている医師の先生や遠方の病院で活躍している高校の親友もいないわけではありませんが、逆に、おいそれとは相談できず、よほどの事情がなければと腰が引けてしまう面があり、料金のやりとりをするビジネスライク?な関わりの方が、案外、料金などの範囲内で遠慮無く物事を聞きやすいような気もします。

4 料金

「月額3000円」の設定の根拠は、「3980円」(消費税込み)のベリーベスト法律事務所(の方々)に比べて、経験年数では上回るものの規模では遥かに見劣りすることから、同事務所より若干低めの値段としたものです。

また、あまりに低くするのもどうかと思いましたので、「今どきの顧問弁護士=高額なランチ一食分」くらいに考えて、「高級食材を扱うが、リーズナブルな価格で提供しているレストランで、ランチを月1回利用すればディナーが1割引になる」といったイメージで考えてみました。

ちなみに、「無料」というのは、他の顧客等へのしわ寄せを不可避とするものですので、震災のように臨時的な場面以外は多用すべきでないと思っています。そのような理由で、私は巷で流行する「債務整理等の無料相談」はしていませんが、反面、直ちにお引き受けする場合などは相談料は頂戴しない(又は相談料分を定額料金から差し引く)などの方法でバランスをとっています。

昔、ある大物弁護士の方が「社長さんに顧問弁護士(月5万円)を勧める際は、社長さんが月1回、高級料亭かクラブで飲食するのを控えれば済む値段ですよ、それで会社が守れるのだから安いものではありませんかと説明している」と仰っている文章を読んだことがあります。

しかし、このご時世や現在の私の身分では、高級料亭やクラブに入り浸るような社長さん方と接点を持つことは到底期待できません(東京のイソ弁時代は少々お会いする機会もありましたが、今となっては昔のことです)。

他方、「頑張った自分へのご褒美で、月に1回くらいは贅沢なランチを食べたい」という方なら、幾らでも知り合う機会はありそうですし、コストパフォーマンスを真剣に考えて選んでいただく方が、実りあるお付き合いになるのではないかという期待もあります。

月3000円という価格も実需のない方にとっては十分に高額ですので(少なくとも私のような一般人から見れば)、「顧問弁護士」という一種のブランド価値をダンピングしているということも言えないでしょう。

5 見通し

ただ、「このコースが対象として想定している潜在顧客層」が、このような金額・コンセプトでの顧問契約に対する実需(利用価値があるとの理解を含め)がなければ、実際に申込みを受けることもないでしょう。

私自身は「弁護士が希少種である時代は「顧問弁護士」は金持ち企業のステイタスのようなものだったが、その時代は終わった。タイムチャージ等と組み合わせたリーズナブルな料金での顧問契約が新しい時代に求められる町弁的な顧問契約ではないか」と考えているのですが、皆さんのご意見をお尋ねしてみたいところです。

事務所サイトで小さく表示しているだけの扱いですので、導入から2年半を経過した平成26年2月現在も実際に申込を頂戴した企業様はごく数件に留まっています(もちろん、お申し込みいただいた皆様には大変有り難く思っています)。

私自身が華々しい宣伝に向いているタイプの人間でもありませんので、サイトをご覧いただく方を別とすれば、個人的に聞かれた際、「ウチではこういうこともやっています」とご説明する程度のことしかできないのだろうと思います。

まだ、このような顧問契約の新しいプラン(類型)を作ったことが成功と言えるのかそうでないのか結論が出ていませんが、こうした試みが社会に受け入れていくのか否か、しばらくは様子を見てみたいと思います。

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