北奥法律事務所

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09月

盛岡芸妓は桜の舞い散る頃に

4月の話で恐縮ですが、盛岡北ロータリークラブ(RC)の例会で盛岡芸妓の方々に舞踊を披露いただいたことがあります。

盛岡芸妓は、大通商店街が形成される前、盛岡の繁華街が肴町~八幡界隈と本町通界隈に二分されていた明治後期の時代には大いに栄えていたものの、料亭文化の衰退により近年は激減し存続も危ぶまれていたようですが、近年、後継者となる若い芸妓の方々が誕生し、現在は復興と継承の途上にあるようです。
http://www.ccimorioka.or.jp/geigi/

数ヶ月前にも、盛岡北RCの例会に二人の若い芸妓さんがいらしてスピーチをなさったのですが、とりわけ、「冨勇」さんは文芸関係の造詣が深く雄弁で、今後はそうした見識を生かして活動の幅を拡げていくのではないかと期待されます。

当クラブの重鎮の方々が盛岡芸妓の後援会に深く関わっておられるのだそうで、そうしたご縁で今回もいらしていただいたようですが、歴史を遡れば、当クラブが盛岡で二番目にできた=盛岡RCから最初に分かれたロータリークラブであり、本町界隈にお住まいorゆかりのある会員の方が多いことも、ベテラン芸妓さん達と馴染みがあることの背景にあるのかもしれません。

私も正確なところは分かりませんが、盛岡RCが「古き良き盛岡」の最大勢力というべき肴町・八幡界隈の豪商の方々の流れを汲み、盛岡北RCがそれと対を成した本町界隈の豪商の方々の流れを汲んでいる、といった話もあるのかもしれません。

ともあれ、私自身は「旦那衆」の方々が集うような夜のお座敷に参加できる身分ではありませんので、拝見するのは最初で最後かもしれませんが、それだけに貴重な時間を過ごすことができ、何よりでした。

屋内で拝見するのもよいですが、可能なら石割桜や小岩井一本桜のそばに特設ステージを作り、そこで花吹雪を背にして披露していただくような試み(テレビ中継付きで)もあってよいのではと思いました。

そんなわけで一句。

艶やかさ 桜舞い散る頃に咲く

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天下一品・盛岡店の涙の閉店と、その復活を求めて

8月の出来事で恐縮ですが、久しぶりにと思い盛岡市館向町にあるラーメン店・天下一品(盛岡で唯一)に向かったところ、閉店していたことを初めて知りました。

私は修習時代(平成10年)に盛岡でこの味を知り、東京時代は4年ほど月1回の頻度で五反田店に通っていましたので、チェーン店全体で見れば、「天下一品」は人生で一番多く食べたラーメンであることは間違いありません。それだけに、このお店(盛岡店)が人生で一番来店回数の多いお店かもしれないと思っており、ショックもひとしおです。

閉店について丁寧に説明なさっている「天一ファン」の方のサイト(7月に掲示されたという告知)を見つけましたが、復活を求める署名運動などがあれば、身を投じたいと思わずにはいられません。
http://nabi1080.com/cooking/gourmet/55112

8月には後継店舗が営業を開始していましたので入ってみたところ、味自体は私の好みで特に不満はなかったのですが、最初に整理券を取った後、お店側に呼ばれるまでは待合の椅子などで待たなければならない(飲食時の座席に座ることができない)という未経験のシステムで運営されており、混雑時のためか、いささか残念な光景も見られました。

或いは、最近話題の「飲食業界などの人手不足」が影響しているのかもしれませんし、現在は改善・解決しているのかもしれませんが、そうしたことも含め、天一時代を懐かしんで心中落涙せずにはいられませんでした。

先日も「天一まつり」の広告が出ていましたが、そうしたものを見ると、改めて「天一に行けない自分」が惨めに思えてきて、ますます泣きそうになります。

8月にFBでこの件の投稿をした際、他の方から、お店(フランチャイズの加盟店)と本部との間に何らかの紛争があったのだろうかなどと訝るコメントもいただいたのですが、仮に、そのような事態があったのだとすれば、盛岡の弁護士業界には天一ファンは山ほどいるはずですので、「盛岡の天一を救え! 訴訟」と題する大弁護団を結成し、本部と闘い復活を勝ち取るなんて展開を夢想せずにはいられませんでした。

などと書くと、さすがに寝言、戯言の類とお叱りを受けるかもしれませんが、関係者におかれては、そうした「盛岡の熱烈ファン」の思いをお汲み取りの上、ぜひ盛岡の天一の復活に向けてご尽力いただきたいと願っています。

その際に伺ったところでは、近くにある「豪めん館坂店」もいつの間にか閉店していたとのことで、平成17年前後(盛岡での開業直後)にはラーメン食べ歩きを結構していた関係でよくお世話になっていたので、ますます残念に感じます。

平成10年頃には、「豪めん」の場所あたりに「宝介」のお店(本店?)があったことも懐かしい記憶ですが、そうしたことを含め、最近は時代の移り変わりを否応なく突きつける出来事が続いているような気もします。

秋田県・小坂町の「千葉の高濃度焼却灰の搬入埋立問題」に関する日弁連調査③住民訴訟の弁護士費用保険、焼却灰の過疎地埋立ほか

前回の投稿の続き(秋田調査の最終回)です。

1 住民訴訟支援のための弁護士費用保険

前回の投稿で、地元住民が現在(或いは過去に)、「本件で誰かに一矢報いるための手段はないのか」という観点から、廃棄物処理法絡みを中心に、訴訟手続について少し検討してみました。

ただ、そのような訴訟を起こしたいのだとしても、「降って湧いた災難に義憤で立ち向かう」という地域住民(有志)の立場からすれば、これに従事する弁護士の費用は誰も負担したくないでしょうし、(私自身は、その種の訴訟に従事した経験がありませんが)この種の紛争で住民支援に従事する先生方の大半が、そうした実情を理解し、「ゼロではないにせよ時給換算で超不採算」となる金額でやむなく受任しているのが通例ではないかと思います(この種の紛争は、真面目にやるのであれば事実関係から法制度まで膨大な調査、勉強が必要になりますので、採算を確保するのであれば相当な高額になることは必定です)。

そこで、最終処分場や中間処理施設の設置にあたり、適正処理などに関し問題が生じた際に、是正を求める法的手続を希望する地域住民が利用できる弁護士費用保険(保険商品)を作るべきではないかと思います。

そして、その保険契約は、施設側(許可を求める業者)が保険会社と契約し、保険料を施設側が負担とすると共に、そうした保険契約を締結していることを許可の条件の一つとして付け加え、その施設の稼働後、稼働内容に問題があると感じて訴訟提起等を希望する住民が保険会社に保険金利用を申告し、審査を受けるという形をとればよいのではないかと思います。

もちろん、保険会社は住民から申請があれば何でも認めるというのではなく、乱訴防止のため一定の審査をすることが前提になりますし、施設の稼働終了時(或いは埋立終了後の相当な監視期間の終了時)まで問題が生じなければ、保険料の多くが還付されるなど適正処理のインセンティブを高める優遇措置を講じるべきでしょうし、保険商品が複数ある(より住民の権利行使の支援が手厚いものと、そうでないもの)場合、より手厚い保険に加入している方に優良業者としての認証を付するといった考慮もあってよいと思います。

そうした保険制度・保険商品を、日弁連と保険業界が提携して開発し、環境省などに働きかけても良いのでは?と思いました。

もちろん、こうした発想(危険創出のリスクを担っている側が、そのリスクの潜在的被害者のために弁護士費用保険を負担する仕組み)は、廃棄物問題に限らず、有害物質などを扱う事業者(が設置されている地域)一般において応用されてしかるべき事柄だと思います。

そうした観点から弁護士費用保険を育てる観点を、関係各位に検討していただきたいところだと思っています。

また、上記のようなタイプの弁護士費用保険とは別に、住民訴訟一般で利用できるような「住民側が少額の保険料を負担し、訴訟などに相応しい事案で一定の弁護士費用を保険金拠出する保険商品」も、開発、販売して欲しいと思います。とりわけ、住民訴訟の場合、勝訴すれば相当な弁護士費用を行政に請求することも可能であり(地方自治法242条の2第12項)、談合などの巨額賠償が生じる事件では自治体から巨額の弁護士費用を回収する例もありますので、制度としても構築しやすい面があると思います。

そして、そうした動きが、やがては「国に対する住民訴訟(国の公金支出是正訴訟)」の創設に繋がっていけばよいのではというのが、司法手続を適切に利用し行政のあり方を民が是正していくことの必要性を感じている、多くの業界関係者の願いではないかと思います。

2 一般廃棄物(焼却灰)の広域移動(都会の灰が田舎に)という問題

ところで、今回の秋田調査で私が一番関心があったことは、「千葉から焼却灰が持ち込まれていること自体を、秋田の人々(地元民、地元行政、処理業者、県庁)はどのように受け止めているのか、そのこと自体に抵抗感ないし反感はないのか」ということでした。

そもそも、私自身は、今回の秋田調査の話が今年の6月に廃棄物部会に持ち込まれるまで、一般廃棄物(の焼却灰)が他県に広域処理されているなどという話は全く知らず、てっきり自県内(せいぜい関東・東北などの自圏内)で埋め立てられているものと考えていました(これに対して、産業廃棄物は昔から広域移動の問題があり、日弁連(廃棄物部会)の意見書・決議等でも取り上げています)。

それが、6月の廃棄物部会の会合の際に、千葉で廃棄物処理の問題に取り組んでいる方から「秋田の方から本件の相談を受けている、ぜひ日弁連で取り上げて欲しい」とのお話をいただいた際、恥ずかしながら初めて千葉から秋田に灰が搬送されているという話を知り、それが現行法で何ら規制されていないことに些か驚くと共に、「自圏内の生活ゴミ」たる一般廃棄物は、自圏内処理されなくてよいのか(他圏なかんずく過疎地域に搬送するのは、そこに一定の対価が介在するにせよ、「都会の厄介払い(エゴの押しつけ)」という性格を帯びるのではないか)」と感じずにはいられませんでした。

とりわけ、私の場合、「廃棄物問題への関わり」の原点(他の事件に関わったことがありませんので、現在まで実質的に唯一の実体験)になっているのが、「都会の膨大なゴミ(産廃)がまるごと故郷の山奥に不法投棄され、莫大な撤去費用が被害県に押しつけられた」事件である岩手青森県境不法投棄事件であるだけに、余計に、千葉の焼却灰が秋田に埋め立てられているという話を聞いて、同様の「嫌な感じ」を受けた面があります(それが、長年に亘る「東北と中央政権の不幸な歴史」に繋がる話であることは、申すまでもありません)。

そこで、秋田調査に赴く前に廃棄物の広域移動に関して少しネットで調べてみたところ、環境省が廃棄物(一廃・産廃)の広域移動を調査した報告書を取り纏めているのを発見しました。
http://www.env.go.jp/recycle/report/h27-01/index.html

これによれば、一廃については、「関東→北日本(東北・北海道)」のみ膨大な焼却灰が搬入されていることを示す図太い流れがあり、他のエリアは全く広域移動がないという、ある意味、異様とも言える表示がなされています(但し、よく見ると東京は域外搬出がありません。奥多摩方面に大規模な処分場が建設された影響でしょうか)。他方、産廃の場合、東日本は中部以東は北日本、以西は九州・沖縄という太い流れが示されています。

要するに、現在の社会では、「首都圏の生活ゴミ(一廃)は、首都圏で焼却し、その灰を北日本などに埋め立てている」という実情があり、少なくとも、搬入・搬出の双方の住民などが、そのことについて知らなくて(問題意識を持たなくて)よいのかという点は、強調されてよいのではないかと思います。

もちろん、「廃棄物の広域処理の何が悪いのか。管理型処分場(遮水シート)は安全だ(汚染の外部流出は基本的にない)というのが国の説明じゃないか。現在の「廃棄物処理の市場」を前提とする相当な対価も払っているじゃないか。そもそも、廃棄(消費)の前提となった物自体が、都会で生産されたものではなく地方をはじめ全国・全世界で生産されたものなのだから、廃棄物も生産側に戻してよい=消費地を廃棄地とすべき理由もないじゃないか」といった主張も、一定の説得力がないわけではありません。

これに対し、処分場絡みの紛争に取り組んでいる方々は、「遮水シートは耐用年数や破損などの問題があり、万全では全くない。だからこそ、現在の処理費用も原発の電力料金のように破綻リスクを含まない不当廉価というべきだ(だから、排出者側は十分な責任をとってない)」という主張をしており、私自身、どちらの主張が正しいか軽々に判断できる立場にありません。

今回の秋田調査でも、上記に述べたようなことを住民の方に説明した際、問題意識を共有して下さる方もお見受けしましたが、そのような方は多くはなく、秋田県庁の方と話した際にも、「県議会で、そのような観点からの反発はあったようだ。もちろん、ゴミの搬入自体は県民の一人として嬉しい話では全くないが、業者自身(GF小坂)が現行法上は優良業者と評するに足るもので、地元の産業振興の観点(同和鉱業グループ及びこれに依存する地域住民の雇用の存続)からもやむを得ないのでは」といったコメントをいただいており、こうした感覚は、受入側の認識としては典型的なものではないかと思われます。

ただ、少なくとも、千葉県民は「地元のゴミ(焼却灰)を引き取って貰っている」ことについて何らかの謝意を秋田側に示すべきではないかと思いますし、そうしたことも含めて、資源循環システムの全体像のあるべき姿も視野に入れつつ、社会における物の生産、消費、廃棄のあり方などを、多くの方々に検討いただければというのが、何かと犠牲を強いられやすい「流入圏」側の住民の一人としての願いです。

3 おまけ(隗より始めよ)

私は、家庭都合(兼業主夫業)や資力(最近話題の「弁護士の貧困」に残念ながら当方も無縁ではありません)などの事情から、廃棄物部会の現地調査(全国各地への出張)に参加するのも久方ぶりだったのですが、宿泊先に歯ブラシを持参するのを失念したので、宿の「使い捨てブラシ」を利用し、そのまま持ち帰り、歯磨き粉ともども、最後まで使い切りました(今回のブラシは1回で駄目になるような品質のものでしたが)。

日弁連廃棄物部会が取り組んでいた不法投棄問題などの総括をした平成22年人権大会決議では、「廃棄物の発生抑制」の見地から宿泊施設の使い捨て商品の有料化など(使用抑制)を提言しており(理由第3の1)、そうした観点も含め、私自身の戒め(或いはケチ病)として、なるべく自宅から持参し、失念したときも上記のようにしているのですが、全国の弁護士でそうしたことをきちんと行っている人がどれだけいるのだろうと疑問を感じざるを得ない面もあります。

余談ながら、日弁連(公害環境委員会)の会合のため上京すると、ご自身は地球温暖化防止などと言いつつ、館内はとても寒くて厚着を要する設定温度になっていたり、洋式トイレには「地球温暖化防止のため蓋を閉めよ」と紙が入っているものの、いつも開けっ放しになっていたり(掃除の方がいつもそうしているのでしょうか?だったら、一声かければいいのに・・)、私のように事務所でほとんどエアコンを付けない人間からすれば(事務局エリアからの送風で足りるとしていますが、少し汗ばみます。ですが、それこそが夏というべきでしょう)、残念に感じてしまいます。

上記に限らず、日弁連が社会一般に向けて何らかの意見を出していても、それに即した実践を会員個々に率先して求めるという話を聞いたことがなく、例えば、脱原発を標榜するなら日弁連会館はエアコン禁止(送風のみ)、エレベーターは原則として4階以上の移動のみOK(3フロア分までの移動は階段で歩きなさい)とするなど、「脱電力(浪費)」を率先して会員に強制する姿勢があって然るべきではないかと思います。

震災直後に平成23年4月に東京に行ったときにも似たようなことを思いましたが、日弁連に限らず、夏の東京の建物はどこに行っても岩手より寒い感じで、「おさんぽ怪獣」ことシン・ゴジラに放射能をまき散らして貰わないと「東京(ひいては日本社会)というエゴの塊」は何も変われないのかも知れません。

秋田県・小坂町の「千葉の高濃度焼却灰の搬入埋立問題」に関する日弁連調査②地域住民が執り得る法的手段に関する一考察

前回の投稿の続きです。

秋田県庁で解散した帰路で「このままでは単なるやられっぱなしで納得できない、何か一矢報いたい」という住民団体(米代川流域連絡会)の方の言葉を思い返し、現在、或いは発覚当時、彼らが何をできたのか(すべきだったのか)について少し考えていました。

で、現時点で認容されるかどうかはさておき、本件で地域住民の主要な関心事につき取り得る(取り得た)手段としては、「行政は現場でボーリング調査をすべき(グリーンフィル小坂にさせるべき)」という義務づけ訴訟(行政事件訴訟法)を軸とした手続ということになるのではと思いました。

以下、基礎となる事情や制度を踏まえつつ、想定される訴訟のあり方などを少し検討しましたので、何かの参考になれば幸いです(手控えレベルの文章ですのでさほど正確性の検証をしていないことはご了解ください)。

まず、本件では、1万ベクレル超の焼却灰が発覚した際、行政(小坂町ないし秋田県)が処理業者側に事情説明を求めていますが、そのことは法律上の権限という観点から見れば、廃棄物処理法18条(報告徴収)に関わることだと思います。

その上で、同条に基づく権限行使のあり方としては、

①秋田県庁は、本件一般廃棄物(一廃)処分場の許可権者として、一廃処分場の設置者(たるGF)に対し、法違反となる「放射性物質に汚染された焼却灰の埋立(後日に制定された特措法の基準値も超過しており、発覚時は言うに及ばず、事後的に見ても、埋立時には管理型処分場への埋立が許されない違法な焼却灰)」により施設の維持管理(法8条の3)に関する基準に反する事態が生じた(そのおそれがある)として、適正管理ができるのか報告を求める

②鹿角広域行政組合(管理者・鹿角市長)は、GF小坂の一廃処理業の許可権者として、最終処分業者たるGFに対し、法違反となる焼却灰の処分がなされた経緯や事後防止措置について説明を求める(地方自治法291条の2?広域連合について勉強したことがないので正確には分かりません)

という構図になるのではないかと思います(広域連合が許可権者となる場合、構成団体たる小坂町は当該権限を行使できる立場にないということになるのでしょうか。そうだとすれば、小坂町長によるGFへの関わりは組合の副管理者の立場からということになるのでしょうか。その点は不勉強のため分かりません)。

そうした前提で、次の2つの条件、すなわち

①現地に埋め立てられた焼却灰が、仮に、現在でも1万ベクレルを大きく上回る(ので、かなり先まで8000Bqを下回らない)のであれば、そのような埋立は、汚染対処特措法(事後法)によっても正当化されない=当該焼却灰(の管理型処分場への埋立)」は、生活環境の保全上の支障がある(又はその恐れがある)

②現時点までにGFが行った措置(コンクリートを被せる等)はその支障の除去に不十分である(重大な損害のおそれあり)

の2点を証明できれば、鹿角組合はGFに対し、撤去措置命令(法19条の4)をすべき義務がある(義務づけ訴訟が認容される。或いは、重大な損害のおそれ要件は満たさなくとも、措置命令の要件は満たす)ことになります。

そこで、地域住民としては、鹿角組合はその点を明らかにするために、立入調査権(法19条)の一貫として、ボーリング調査をすべきだとして、調査権発動の義務づけ訴訟の提起と仮の義務付けの申立を行うということになるのかもしれません(住民が原告、組合が被告)。

また、秋田県庁も、措置命令の主体ではないと思われますが(一廃処分業の許可権者ではないから?)、維持管理に関する改善命令(法9条の2)やその前提としての立入調査(法19条)を行う権限(責務)があると言えます。

そこで、住民は県に対しても、上記調査権(裁量)の一貫としてボーリング調査をすべきだとして、義務付けの訴訟提起等をするということができるかもしれません。

その上で、②については、組合や県(GFも補助参加するかもしれません)は、本件で現に行われたコンクリート敷設等の措置につき、「秋田県が、環境省から上記方法での現地封じ込めOKとの回答を得て?(或いは、H23.8.31環廃産発110831001通知2~4頁に基づく適法な処理のあり方として判断をして)、それをGFに伝えて行わせたものである。よって、生活環境上の支障除去の措置としては十分(現時点で撤去命令の必要も義務もない)」と主張するのでしょうから、裁判では、その判断の当否(環境省通知の解釈・当てはめの問題)が問われるのではないかと思います。

この点については、私自身がまだ十分に勉強、検討できているわけではありませんが、上記の環境省通知をざっと見る限りでは、本件事案を前提にコンクリートを被せればよいとは書いていないように見えますが、隔離層を設置する方法での対処に関する記載があるので、県はこれに基づきコンクリートを被せる等すれば十分と判断したものと思われます。

よって、それがダメだというのであれば、最終的には環境省通知そのものを敵に回して「こんなやり方はダメだ」という「放射性物質汚染焼却灰の処分のあり方に関する科学技術論争」が必要になるのかもしれず、そうなれば苦心惨憺の大訴訟を覚悟しなければならないかもしれません。

ただ、上記はあくまで撤去の要否に関する論点のように思われますので、住民団体の方々が最も切望している「現在の埋設物の線量調査(8000ベクレルを下回っているのか、実は数万もあるのか等)」自体の義務づけについては、もっと別な観点から緩やかな基準で認められてもよいのではと思わないでもありません。

あと、その種の訴訟の宿命として、原告適格の有無なども争点となるのかもしれません。

他にも考えられるのは、鹿角組合や秋田県庁に何らかの権限不行使等の違法があり、それにより組合・県が違法に損害を被ったとして、その賠償を責任者に求める住民訴訟かもしれませんが、住民側にしてみれば、小坂町(鹿角組合)も秋田県も共に「被害者仲間」なわけで、仲間内で賠償の訴訟をするのは本意ではないでしょう。

同様に、住民がGFを相手に訴訟することも考えられないわけではないものの、「高濃度焼却灰の搬入(による環境汚染)を知りながら意図的に埋め立てた」などという異常な事実が存在する(立証できる)のでもない限り、現実的には厳しいのではと思われます。

或いは、一部住民の本意としては、「千葉から焼却灰が搬入されること(都会のゴミを埋め立てること)自体を止めさせたい」という思いがあるかもしれませんが、これも現時点では立法論と言わざるを得ない(現行法令そのものから逸脱した処理がなされているなどの特段の事情がない限り訴訟としては成り立たない)と思われます(この点は、次回で少し触れます)。

また、以上は「現時点」での手段(の当否)ということになり、それゆえに様々な点で(特に、すでに覆土が進んでいる点で?)ハードルの高さを感じざるを得ないところがありますが、仮に、発覚時たる平成23年7月=環境省通知の前(せめて直後)に上記訴訟と仮の義務付けの申立を行っていれば、まだ違う展開があり得たのかもしれないとも思われます。

住民による「不作為(発覚時にGFにボーリング調査をさせなかったこと)の違法確認請求」といったものもできないのだろうかと思いましたが、行政事件訴訟法には不作為の違法確認訴訟制度があるものの、処分(調査命令)の申請権のない地域住民が過去の調査の当否を問題とするようなことまでは認められていませんので(法3条4項、37条等)、その点は、立法論でしかない(日弁連が意見書を出すかどうかはさておき)と思います。

そういえば、廃棄物問題に関する日弁連の平成16年意見書や平成22年人権大会決議(これらは、私が作成に大きく関わっているものです)では、住民による行政への権限発動の申立権云々という意見もしていました。(決議理由第4の2)。

とりあえず、「措置命令の当否を明らかにするための調査権発動」という観点から考えてみましたので、間違っている点などがありましたら、ご教示いただければ幸いです。

秋田県・小坂町の「千葉の高濃度焼却灰の搬入埋立問題」に関する日弁連調査①事件と調査の概要

9月上旬に、私が所属している日弁連公害対策環境保全委員会・廃棄物部会の企画で、秋田県小坂町にある廃棄物最終処分場の視察や関係先への聴取を中心とする調査に参加してきました。

この事件は、秋田県小坂町で明治初期から巨大鉱山を営む同和鉱業(現・DOWAホールディングス)の関連会社(グリーンフィル小坂。以下「GF小坂」)が営む廃棄物最終処分場に、1万強Bq/kg(以下「ベクレル」)の焼却灰約40トンが千葉県松戸市から搬入され埋め立てられていたことが判明したため、その対処や再発防止などが問題となったものです。

この処分場は、鉱山の操業停止などに伴い環境関連事業に業態転換を図っている同和鉱業(DOWAグループ)が、平成17年から稼働させ、自社グループの事業で生じた焼却灰(産業廃棄物)のほか、関東圏などの自治体が運営する一般廃棄物(生活ゴミ等)の焼却場(中間処理施設)で生じた焼却灰を受け入れている最終処分場(焼却灰専門の埋立場)です。施設の設置や産廃の処理業は秋田県の許可、一廃の処理業は小坂町と鹿角市により構成される広域事務組合の許可を得て操業しています。
http://www.dowa-eco.co.jp/business/waste/finish/

そして、平成23年7月(震災から間もない時期)、環境省が震災に伴う福島第一原発の事故を踏まえて首都圏などの自治体に対し、埋立(搬出)前の一廃の焼却灰の検査を求めたところ、前記のとおり、松戸市がGF小坂に搬出していた焼却灰から1万ベクレルを超える線量が検出された上、それが松戸市から小坂町に連絡された時点で、すでに40トンの焼却灰が現地で埋め立てられており、それらの事態にどのように対処すべきか(掘り返して搬出するのか埋め立てたままにするのか、前者なら松戸に返すのか(返せるのか)、後者なら汚染拡散対策などをどのようにするのかなど)が問題になりました。

結局、発覚後、一旦は千葉県からの焼却灰の搬入が停止され、GF社や小坂町が秋田県に対応を照会し、秋田県は環境省に対応を照会するという「環境省頼み」の展開になった後、環境省が平成28年8月31日に、8000~10万ベクレルの焼却灰の処分などの方法(推奨)に関する通知を出し、そこでは、雨水浸入の防止措置を講じるのなら管理型処分場でも埋立可とし、防止措置のあり方としては、埋立箇所の上部にコンクリートを敷設するような方法でも構わないという趣旨のことが書かれていました。
https://www.env.go.jp/jishin/attach/no110831001.pdf

そこで、秋田県はGF小坂に対し、上記の方法を講じさえすれば埋立済みの焼却灰の撤去(掘り返し)等は不要と回答し、GFも当該措置を講じたことから、問題となった「高濃度焼却灰」はそのまま現地に残され、その後は、GF側と小坂町との協議で、受入焼却灰の線量上限(4000ベクレル)や線量検査、埋立後の防水措置などの方法について協定がされ、それをもとに関東圏からの搬入も再開され、「問題となった焼却灰」の上に新たな焼却灰の埋立もなされている(ので、地表=現在の処分場の地上部から数十m?の奥深くに眠った状態になっている)という状況になっています。

要するに、「環境省通知に基づく汚染拡散防止対策をした」ので、県や自治体、事業者としては問題なし(解決済み)として焼却灰の受入が再開されているというのが現状ということになります。

こうした展開を辿ったことに対し、放射性物質汚染などを危惧する地域住民の一部は、「本件焼却灰の汚染発覚は、埋立後に松戸市から搬入した焼却灰と同じ場所で焼却された灰から1万強ベクレルの線量が検出されたとの通報があったことで判明したものである。よって、埋設された焼却灰そのものについて線量検査がなされたわけではなく、実際の埋立灰には1万を大きく超える線量があるかもしれないという不安がある。それなのに、県や施設側は、現物の線量検査=ボーリング調査(掘削)をすることなく、コンクリートを敷設しただけで足りるとしてしまった(但し、浸出水の線量検査などは従前から行われており、特段の異常値は出ていない模様)。それでは納得できないので、ボーリング調査を求めたい。」などと反発しています。

そして、本年6月頃に、支援者の方を通じて住民団体から日弁連(当部会)に視察調査の要請があり、当部会も震災から数年間に亘って「放射性物質に汚染された廃棄物の処理問題」を中心テーマとして取り組んでいたことから、すぐにこれに応じるとの方針になりました。

かくして、①住民団体、②小坂町役場、③GF小坂(処理業者)、④秋田県庁から事情聴取することと、併せて処分場など現地の関連施設を視察することとし、関係先に要請して実施してきたという次第です。

といっても、私自身は、日々の仕事と生活に精一杯のためか?放射能問題が絡む廃棄物処理の処理についてさほど知見を深めているわけではありませんので、難しい話は他の先生方にお任せして、小坂町が主要な目的地なので、運転手(盛岡駅から出発し、秋田県庁で解散となりました)兼宿泊先の手配係(大湯温泉に初めて泊まりました)というお気楽な役回りとさせていただきました。

部会では、今後は、本件の「決め手」になった環境省通知の内容や本件での関係者(搬出元たる松戸市、受入主たるGF、監督権者たる鹿角組合=小坂町や秋田県)がとってきた対応の是非などについて意見交換を検討しているとのことです。

私自身は、この事件について今年6月に説明を受けるまで、一般廃棄物の焼却灰は地元の(排出=焼却を実施した)自治体ないし都道府県内で埋立がなされているものと思い込んでいましたので、一廃(焼却灰)が首都圏から北東北まで広域移動(広域処理)されているなどという話は今回はじめて知りました。

もちろん、「首都圏の膨大なゴミ(有害性の強いものを含む)が、そのままの状態で山中に大規模不法投棄された」という岩手青森県境不法投棄事件とは異なり、あくまで焼却(中間処理)を実施した上で、現行法・現行実務上は「適法」に搬出・搬入されているものですから、単純に悪者視はできないでしょうけれど、それでも、「都会のゴミが、過疎地たる北東北に持ち込まれている」ことには変わりませんので、受入圏民としては、あまり好ましいこととは思えません。

廃棄物の広域移動については、「災害廃棄物の受入(広域処理)問題」で一時は脚光を浴びましたが、その後は(その前も)全く話題になっていませんので、ネットで少し調べたところ、環境省が廃棄物(一廃・産廃)の広域移動を調査した報告書を取り纏めており、首都圏の焼却灰が東北などに大規模に搬出されていることが分かりました(後日に再度、取り上げます)。
http://www.env.go.jp/recycle/report/h27-01/index.html

そうしたことの当否や、こうした出来事への「反対派(抗議派)」はもちろん、業者側(操業サイド)で働く地元民や、同和鉱業グループという「地域の圧倒的ガリバー企業(の今後の社会での生き残り戦略)」に様々な形で依存し支援せざるを得ない小坂町や秋田県などの難しい立場なども視野に入れつつ、色々なことを考えさせられながら帰途についたという次第です。

余談ながら、解散後に一人さみしく立ち寄った「道の駅協和」でウサギ肉が売っていましたので、土産に買って帰りました。マタギ文化?の関係で販売しているようですが、鶏肉のような味でした。

次回は、本件について「住民が執り得る(執り得た)手段」について幾つか考えましたので、こうした問題に関心のある方はご覧いただければ幸いです。

また、放射性物質に汚染された廃棄物の処理のあり方や、原発敷地からの汚染水対策(最近も話題になっている凍土壁問題)、健康被害対策の問題などに関心のある方は、昨年の日弁連人権大会決議もご覧いただければと思います。

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日本初の女性弁護士の知られざる物語と朝ドラ

今月の日弁連の機関誌「自由と正義」の冒頭で、鳥取出身の「日本の女性弁護士第1号」の方(中田正子弁護士)をNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)の主人公に抜擢して欲しいという鳥取の先生の投稿があり、サブヒロインなどの物語も交えた本格的な「あらすじ案」も載せられていて、なかなか読み応えがありました。

それによれば、その方の通学先の校長が新渡戸稲造博士なのだそうで、岩手弁護士会も支援し、バーターで新渡戸校長の出番を増やして欲しいと交渉しても良いのでは?などと余計なことを思いました(演じるのは誰が相応しいでしょう?丸いメガネが似合うイケメン紳士なら阿部寛氏?或いは「岩手の偉人ならどんとこい」の村上弘明氏?)

その学校で主人公に法律を教えていたのが「民法の神様」こと我妻栄先生で、キャラの位置づけが「五代さま」に近いのだそうです。テレビ化が実現すれば、米沢の生家(我妻先生記念館)に聖地巡礼する人も増えるのかもしれません(添付のとおり、私は平成25年にお邪魔しました)。

そういえば、我妻先生は安倍首相の祖父こと岸信介もと首相の親友とのことで(後年に安保条約改定を巡り対立したエピソードもあります)、若き岸青年の登場シーンも作れば、官邸(或いは官邸寄りと囁かれる?NHKの現会長)のテコ入れも得られるかもしれませんね(と言いつつ、実際の脚本では国家観を巡って二人に大喧嘩をさせたりして・・)。

或いは、大河ドラマ「山河燃ゆ」風に戦前戦後の司法(ひいては人権ないし人間の尊厳)のあり方を巡る様々な対立やエピソードを絡めた群像劇に仕上げていただければ、司法関係者としては見応えのある一作になりそうな気もします。

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本当は怖い?「サツキとメイの家」と縄文圏から吹く風~愛知編③~

愛知旅行編のラストです。毎度ながら大長文ですいません。

もともと、今回の旅行は、数年前に家族が「トトロ」をDVDで繰り返し見ている時間があったので、当時から一度はサツキとメイの家を見に行った方がよいのではという考えがあったからでした。

そして、同施設が保存されている「愛・地球博記念公園」に行き、実際に訪れたところ、幸い事前にコンビニでチケットを購入しなくとも無事に入館でき、最初の15分ほどを建物内、次の15分ほどを敷地周辺を巡る形で、つつがなく観覧を終了できました。

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私自身は「トトロ」ファンではありませんので(子供の頃はナウシカとラピュタは何度も見ましたが、トトロは女の子の見るものという偏見があり、大人になるまで見ませんでした)、淡々と中を拝見していましたが、お父さんの部屋の書棚を見ていると、不思議な光景に気付きました。

書棚には各県の民俗史や通史、考古学業界?関係の雑誌などが積み上がっていたのですが、埼玉県や同県などの市町村の歴史をまとめた本(自治体が編纂、出版しているもの)が並んでいる一角がありました。

で、そのコーナーを見ると、蕨市、大宮市や武蔵野市、武蔵村山市(旧・村山町)といった埼玉又は東京北部の自治体の史書が置いてあり、一般的にはこのエリア(狭義には狭山丘陵)が「トトロ」の舞台=本物の草壁家の所在地と言われていますので、そうしたことを考慮して選定されたものであろうことは、誰にでも分かることだと思います。

が、どういうわけか、その中に「北上市史」という本が含まれているのに気づきました。現在の埼玉県や東京都に「北上市」が存在しないことはもちろん、私の知る限り、このエリアにかつて北上市という自治体があったという話も聞いたことがなく、「北上市」とは、あの北上市、すなわち岩手県北上市しか思い当たりません。

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wikiで検索した限りでも、他に「北上市」という自治体は無いようですし、作品内でも北上市が何らかの関わりを持ったこともないはずですので、この棚の作り手(宮崎吾朗氏でしょうか)が、何らかの事情で東京・埼玉の自治体群の市史に混ぜる形で北上市の市史を差し込んだと考えるのが自然ではないかと思います。

誰がどのような理由でそれを決めたのか、私には分かりませんし、ネットで「サツキとメイの家 お父さんの本棚 北上市史」などと検索しても何の手がかりも見つけられませんでしたので、ここから先は完全に私の想像になりますが、私は、宮崎駿監督又は同氏の思想に共鳴する方が、次のような確固たる理由をもって意図的に北上市史を差し込んだものと考えます。

まず、「トトロ」は日本に昔から存在(居住)する化物(神)を指しているところ、このような異形の神を信奉する観念は、弥生文化(人間中心主義、科学的合理主義)ではなく縄文文化(アニミズム=自然崇拝)に属するものと理解しています。

そして、西から興り古代日本を制圧した大和朝廷は弥生文化を信奉する王朝であり、これと対峙した「蝦夷」の社会は、国家として統合されることなく集落(部族)ごとに集団生活を営むのを原則とするなど縄文文化の痕跡を色濃く残していた社会だと一般的には考えられていると思います。

また、日本書紀などでは大和朝廷に征服される以前の多くの蝦夷らの部族によって形成されていた社会を、総体として「日高見国」と呼んでおり、この日高見国(の本拠地)がどこにあったのかという歴史論争も過去にはあったように聞いたことがありますが、少なくともヤマトタケルの時代であれば、大和朝廷と戦っていた蝦夷の本拠地は、まさに武蔵国のあたりになるのではないかと思います。

このように考えると、あの本棚の制作者はトトロの棲家たる狭山丘陵周辺を「トトロを神として敬ってきた蝦夷のクニ(日高見国)の本拠地」と考え、その思想を表現するため、日高見国の名を継ぐ唯一の自治体である北上市の市史を敢えて本棚に差し込んだのではないかというのが、私なりの想像です。

ちなみに、北上にも、三内丸山や大湯環状列石ほどメジャーではありませんが、樺山遺跡という縄文時代の面影を残すエリアがあり、なかなか良い味わいがあります。
http://www.kitakami-kanko.jp/kanko.php?itemid=193

なお、wikiによれば、トトロの元ネタは宮沢賢治の「どんぐりと山猫」なのだそうで、その線も考えられなくもないのですが、そうであれば、賢治自身とほとんど関わりの無い北上市ではなく花巻市史か盛岡市史を差し込んだはずで、やはり「日高見国」がキーワードではないかと考えます。

もちろん、以上は私の想像に過ぎませんので、本当の理由をズバリご存知の方がおられれば、ぜひご教示いただければ幸いです。

ところで、縄文文化に光を当てた芸術家といえば何と言っても岡本太郎氏が有名ですし、私自身は、宮崎監督の作品群からはアニミズム(縄文的な感性)との親和性を感じ、岡本氏と同じ系譜に属する方ではないかと思っています。

そうした「縄文的な感性」を今に伝える巨匠が現在もいるのか(誰か)と考えると、ちょっと思い当たりません(先日に投稿した「シン・ゴジラ」考で述べた印象からは、庵野監督はこの系譜とは少し違うような気がしています。庵野監督がこの系譜に属する方なのであれば、次回作ではゴジラに変わる現代の異形の怪物を造形していただければと願わないでもありません)。

考えすぎかもしれませんが、縄文文化(アニミズム)の精神を現代に伝える巨匠の不在が続くと、やがては我国における縄文文化(多様性や異形の存在への畏敬)と弥生文化(社会・人民の統合と科学的姿勢)のバランスを危うくし、後者が勝ちすぎた挙げ句、仕舞いには画一的、統制的で驕慢な社会を生み出すことに繋がらないかという危惧がないわけではありません。

「トトロ」に関しては物語の内容をホラー的に解説する都市伝説を拝見することもありますが、上記のような文化的衰退が生じることこそが本当の意味での「恐ろしさ」というべきで、そのような事態にならないよう、現代人としての気概が求められるというべきではないかと思っています。

そんなことを考えつつ、サツキとメイの家の周辺の森を散策しながら一首。

巨匠らの夢に宿りし いにしえの森と風の精 いまはいずこに

その日の午後は、名古屋港水族館に行きました。凄まじい大混雑で、じっくりと生物を見ることができませんでしたが、沢山の魚介類などに混じって、ザラブ星人とケムール人を思わせる方々を発見しました(未見の方のネタバレ防止のため、写真の引用はしませんが、知りたい方は「名古屋港水族館 怖い」などと検索してお調べになって下さい)。

そんなわけで、愛知の旅を無事に終えることができましたが、今回の旅は、これまで述べてきたとおり、最初の東京編も含め、サツキとメイの家(古代)、犬山城(中世)、明治村(近代)、ジブリ展(現代)といった形で、様々な時代を幅広くかつバランスよく感じながら進めることができたように思います。

非日常の体験を通じて様々な時代に思いを馳せつつ現代人としての生き方を考える機会を与えられるということこそ旅の醍醐味でしょうから、同行する家族に感謝しつつ、今後も、こうした経験を享受できるよう、まずは日々の軍資金づくりに地道に勤しみたいと思います。