北奥法律事務所

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04月

民話の里の雪の妖精と青春の影

2ヶ月以上も前の話で恐縮ですが、盛岡地裁遠野支部に係属している企業倒産(破産管財)事件の関係で、2月に遠野に出張したときのことを書きます。

今回は少し時間ができたので、カッパ淵のあたりに立ち寄ることとしましたが、周辺には雪原が青空に映える美しい光景が広がっていました。

ふと、大学時代に、いわゆる司法試験受験サークル(研究室)の仲間だったある女性が、大学2年か3年の冬に白いウールのコートを着ていた姿を眩しく感じたことを思い出しました。

遠い昔の報われぬ記憶を懐かしんでも致し方のないことですが、改めて、そうした疼きが成仏できればなどと、年甲斐もなく思わずにはいられませんでした。

白纏う貴女に雪の妖精と言えぬ切なさ とうの昔に

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ちょうど、写真に撮った風景の中央に二本の枯木があり、その木々は、通学時などにささやかながらもその女性と二人きりで話した時間があったことや実ることなく終わった若き日の感情を象徴しているのだろうかなどと、馬鹿なことを思わないでもありませんでした。

続いてカッパ淵に移動し、数年ぶりとはいえ毎度ながらの光景をチラ見して帰路につきました。

大学時代の思い出に浸っていたせいか?或いは脳内の沈静化も兼ねて、ここでもテーマを変えて、もう一首作りたくなりました。

すると、私がその団体(真法会研究室)の入室試験に合格した際に「学生指導の責任者」を務めていらした大物弁護士の方(稲益孝先生)のことを思い出しました。

入室試験の発表直後に合格者(入室者)全員が集められた最初の会合の際、自己紹介で「自分は出生直後の病気のせいで左耳が聞こえません」と述べたところ、稲益先生に「私も片耳が聞こえないが、仕事は問題なくできている。君も挫けずに頑張れ」とのコメントをいただいたせいか、真法会のお歴々の方々の中では親近感というかご挨拶しやすい気持ちがありました。

ただ、稲益先生とは1年に1~2回程度にご挨拶する程度の関わりしかありませんでしたが、お会いするたびに必ず「君は今もあまり勉強してなさそうな顔つきだな」と言われていました。

まあ、そのとおりと言わざるを得ない面はありましたので(在学中の勉強では合格にほど遠い力量しか備わらなかった上、学生時代は高校の反動?で、光栄ゲーム廃人化した時期もありました)、悔しさをバネにして?勉強していましたが、合格した年に「先生、もう同じセリフは言わせませんよ」と申し上げようと心待ちにしていたところ、その年に、先生が病気で亡くなられたという報に接しました。

そうした意味では、冒頭の思い出だけでなく稲益先生との関係でも、ある種の喪失を経験したのかもしれませんし、そうした心情が、その埋め合わせを求めるように戯言じみた一首の形をとって表出している面もあるのかもしれません。

会うたびに勉学足りぬと喝破せし 師は合格の年に身罷る

以前にも遠野に出張すると短歌の真似事をしたくなると書きましたが、この地は人が心の奥底に封じ込めているものと向き合わせようとする力を有しているのかもしれません。

任意団体(権利能力なき社団)が自治体から借りて管理する緑地で生じた事故における法律問題~盛岡北RC卓話から~

私が所属する盛岡北ロータリークラブでは、各会員が年1回、20分ほどの卓話(スピーチ)を担当することとなっており、先日がその担当日でした。

ちょうど、その少し前の役員会で、当クラブが盛岡市から土地を借りて植樹し管理している「どんぐりの森」について話題になったため、万が一のリスクもありますよ、と余計なこと?を言ってみたくなり、以下のとおり「どんぐりの森で大事故が発生した場合のクラブや関係者の賠償責任如何」という設問を作成して、簡単ながら解説しました。

奥入瀬渓流国賠訴訟判決のアレンジという面もありますが、権利能力なき社団たる任意団体で賠償問題が生じた場合に広くあてはまる法的論点について取り上げた面もあり、それなりに参照価値があるかもしれません。

盛岡西北クラブの某大物ロータリアンの方に倣って「似たような話を皆さんのクラブの事業バージョンで聞いてみたい方は、卓話に呼んで下さい」と宣伝してみたい気もしないこともありませんが、「そんな縁起でもない話はイヤだ」とお叱りをうけるのが関の山かもしれません。

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盛岡北RC(以下「当クラブ」という。)が管理している「どんぐりの森」で、次の事態が生じた場合に、被害者は当クラブやその関係者(役員や一般会員など)或いは盛岡市などに賠償請求をはじめとする法的責任を追及したいと考えている。誰がどのような責任を負うか、説明しなさい。

(1) 近所の高校生Aが、当クラブに断りなく敷地内でバーベキューを始めたところ、Aの火の不始末により森が燃え上がり隣接するBの自宅に延焼して全焼し、逃げ遅れたBが死亡した。そのため遺族Cが賠償請求を希望している。

(2) 近所の小学生Dが、当クラブに断りなく「森」を散策中、植栽されていた木(遊歩道状に設置された通路に面するもの)が突如、倒れてDに衝突し、Dは脳挫傷など重大な傷害を負い、治療の終了後(症状固定後)も常時介護を要する全身麻痺(自賠責保険における後遺障害1級相当)などの障害が残存した。

事故後の調査でその立木の根本が遅くとも半年以上前から腐っており、強風や地震など一定の外力が加わるなどすれば倒木のおそれがあったことが判明したが、そのことを調査、指摘するという作業は当クラブ内ではなされていなかった。

(3) 当クラブが「森」の入口に設置している看板が、「100年に一度の大型台風」と報道された異常な強風のため杭から外れて近所のE社の事務所に衝突し、E社の建物を損壊したほか、相当の期間、E社の営業を困難にさせる被害を生じさせた。被害発生後の調査では、特に杭の腐食などの問題は確認されなかった。

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(レジュメの項目)

第1 ロータリークラブが管理する施設で賠償問題が生じた場合の法的主体(誰が義務を負うか)について
 1 ロータリークラブという団体の法的性格と賠償問題が生じた場合の権利義務の主体
 (1) 団体の法的性格
 (2) 団体の債務に関する構成員個人の責任
 (3) 団体の責任者、問題を起こした担当者などの賠償責任
 2 民事上の賠償以外の法的責任(刑事責任)

第2 小問(1) 失火と延焼に関する賠償問題
 1 A及びその親権者のB・Cに対する賠償責任
 2 当クラブのB・Cに対する賠償責任
 3 当クラブの会員個人(会長、担当委員長、一般会員など)のB・Cへの賠償責任
 4 盛岡市のB・Cに対する賠償責任
 5 B・Cの損害について

第3 小問(2) 施設内の立木に起因する被害に関する賠償問題
 1 当クラブのD(及び親権者)に対する賠償責任
 2 会員個人の責任、盛岡市の責任
 3 Dらの損害

第4 小問(3) 施設内の設備に起因する被害に関する賠償問題

第5 まとめ(予防策とおまけ)

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事故で賠償問題が生じた場合の対策ですので、当然ながら損害保険(賠償責任保険)への加入が望ましいという「まとめ」になるため、我ながら損保会社の回し者じゃないかなどと思ってしまいます。

反面、それならそれで、いっそ損保各社におかれては「我が社の保険商品の販売促進のため、その商品の出番になるような事例を作ってミニ講義をして欲しい」とのご依頼があれば、大歓迎という気持ちもないわけではありません。

が、よくよく考えると多くの会社さんが「交通事故などの賠償請求の相手方(当方が被害者代理人)」になっているため、残念ながら利益相反のため断念、という感じになってしまいそうです。

肘折峠ものがたり

東北某県の奥地、隣県との境に、かつて肘折峠と呼ばれた場所があった。現在は大きな迂回道路があるが周辺に人里や観光地などはなく、ほとんど利用者はない。

かつては断崖に沿って急坂の峠道があったが、廃道になり利用者はない。麓側の入口には進入禁止の警告看板がある。

昭和40年代頃のこと。一人の男が看板の奥を進んでいくと、間もなく岩を這うようにしてよじ登らなければならない急坂となり、これが延々と続いた(これが峠の名称の由来)。

そして、それを越えると、斜面に沿って階段状に作られた、階数や奥行きなどがよく分からない大規模な木造の一軒宿(温泉?)が現れた。

宿は少し前に廃業したらしく無人だが、宿の脇は断崖や這松帯となっており、峠(尾根)に向かうには宿の中の廊下や階段を進む必要がある。男も建物内を通って峠に向かった。

すると、建物から幾人かの人が現れたが、その人々は亡者であった。亡者は、この地やこの宿に未練があり、酒肴らしきものを片手に今も生前の思い出と共にここで暮らしていると述べていた。

しばらくして、どのような事情か判然としないが、白装束の若い女の亡者が現れて男を殺そうと攻撃してきた。女亡者は猫を2匹(黒猫と茶猫)従えており、女亡者が猫に触れると猫が凶暴化して男に襲いかかってきた。

男は猫に肩を食いちぎられる重傷を負ったが、辛うじて男が女亡者にかけられた呪いを解き、女は正気に戻った(女性は生者のようである)。そして、他の亡者は消えていき建物は崩壊して、以後、肘折峠は封鎖され、迂回の車道以外は誰も通らなくなった。

それから数十年を経た現在。隣県から峠道を越えてきた家族が尾根周辺で自動車を停めて散策していたところ、家族のうち誰か(判然としない)の姿が見当たらなくなった。

行方不明になった誰かが進入したと思われる目新しい踏み跡は、かつての肘折峠の尾根側の入口であった・・

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という夢を、つい先日に見ました(記憶の断片を一部編集していますが概ね夢の内容と同じです)。実話の類かと思った皆様、夢ネタですいません。

起床後しばらくは夢の中で鳴り響いていた悲しげなテーマ曲が脳裏を離れなかったのですが、朝食後には忘れてしまいました。

ちなみに、ネット検索すると、山形の肘折温泉の近くに未舗装区間を含むエグい峠道(冬季閉鎖される国道)の記事が出てきますが、「肘折峠」という名称の場所を見つけることはできませんでした。

夢での光景は霧に包まれた高層高原でしたので様相は異なりますが、そちらの峠もかなりの急斜面のようです。

最近はあまり夢を見る機会がなくなりましたが、以前はこうしたストーリー性のある夢(いささかホラーな感じの夢)をよく見ていたので、思わず投稿したくなった次第です。

前回の投稿で記載した「イギリス海岸に行った日」の晩に見た夢ですので、宮沢賢治の魂が乗り移って、こんな物語じみた夢を見たのかもしれませんが、「女亡者」は某ピースに登場する四皇こと大物海賊の方(2匹の猫はゼウスとプロメテウス)の見過ぎかもと思わないでもありません。

追伸。その次の日あたりに、職員から「最近、ブログが雑談ばかりで仕事に関する話をちっとも書いてませんが、そんなんでいいんですか」と叱られる夢を見ました・・(幸い、現在も相応に仕事をお引き受けしており、仕事関係のネタを時間をかけて書くだけの時間はあまり確保できていません)

賢治に献じる花のうた

今年は、桜の季節に遠方に赴くだけの余力がないとのことで、やむなく紫波の城山公園と花巻市周辺を少しだけ訪ねました。

最初に向かった城山公園では大渋滞に遭いましたが、ピーク日だけあって、十分に見応えがありました。ただ、この日は曇天気味だったので、「桜は晴天に限る派」の私としては、少し残念に思いました。

次に、4号線を南下して花巻に行き、花巻城址の桜を車内からチラ見した後、同行者の要求によりマルカン百貨店の大食堂で一休みし、その後、いわゆるイギリス海岸(北上河畔)付近に約10年ぶりくらいに行きました。

雪解けの季節ですので、当然ながら今回も「海岸」を見ることはできませんでしたが、隣接する公園や堤防に桜並木が整備されており、その点は見応えがあって幸いでした。そんなわけで、毎度の一首。

日高見のケルトの浜は見えねども 献じて偲ぶ桜ひとひら

余談ながら、先日読んだ松木武彦「縄文とケルト」(ちくま新書)では、縄文文化(遺跡群)とイギリス各地に点在するストーンヘンジなどの古代遺跡群で確認される古代ケルトの文化には共通する文化的・精神的な要素があるなどと書かれており、賢治のまなざしは、そうしたことも見据えていたのだろうかと考えてみるのもまた、良いのではないかと思います。

ところで、私が花巻に来た本当の目的は、花巻城址(鳥谷ヶ崎公園)の桜をきちんと見るというものでしたが、公園の駐車場がどこにあるのか分からず、周辺をウロウロしているうちに疲れてマルカンに向かってしまったという体たらくでした。

今調べたところ、この公園には(ある意味、信じがたいことに)専用の駐車場がないとのことで、要するに隣接するヨーカドーの駐車場を使って下さい(その代わり、タダ駐車はよろしくないので、帰りに何か買って帰って下さい)ということなのだろう、と思わずにはいられませんでした。

九戸城址を筆頭に城址大好き人間ですので、数年前に花巻支部に出頭した際も鳥谷ヶ崎公園に行こうとしたものの駐車場が分からず諦めて帰ったことがあり、次回の出頭の際には時間を確保して、上記のパターンで必ず公園に行こう(でも、やっぱり桜の時期に行きたかった・・)と思いを新たにした次第です。

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今年の石割桜が見届けた事件たち

盛岡も石割桜が満開となり、快晴の中、多くの観光客が訪れていました。

そんな日に限って午前に調停期日があり、諸事情により直ちに調停が成立し終了するかと思ったのですが、毎度ながら延々と待たされ、結局、毎度ながら2時間以上(うち1時間半くらいが待ち時間・・)という有様でした。

色々と悩ましい事件で、依頼主が複雑な思いを伏せつつ窓の外を向いていた横顔に、代理人として何をすべきか、何ができるか(できたか)、考えずにはいられないものがありました。

午後には、盛岡圏内で生じたビジネス上のトラブルに絡んで、ある大企業に契約違反などを理由とする損害賠償請求をしている裁判の期日がありました。

軽口好きの身には、盛岡地裁が1年で一番華やぐ日に東京から出廷した相手方代理人に対しては、訴訟での対決はさておき、とりあえずラッキーでしたねと言わずにはいられない面があります。そんなわけで一首。

先方に今日が期日でよかったねと毎年述べる地元弁護士

ただ、去年の同じ頃に期日があった事件で遠方から出廷した相手方代理人は、そんな私のセリフに破顔一笑していましたが、今年の相手方代理人の方からは「お前は何を言っているんだ」と言わんばかりの仏頂面でサクッと黙殺されてしまいました・・

で、法廷の帰りに「桜に興味がないのかなぁ、これだから企業法務中心の大事務所の人は・・」などと独り呟いたところ、危うく裁判所の階段を踏み外しそうになりました。

私がもっと元気よく話せば言わんとすることが伝わったのかもしれませんが、ともあれ、つまらない愚痴などを言っても我が身に跳ね返ってくるばかりなのでしょうから、なるべく前向きに生きたいと思います。

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