北奥法律事務所

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中小企業法務

次期日弁連会長(たぶん)にボロ負けした若僧が、18年後に一矢報いた?話~第2話~

恐らく次期日弁連長に選出されるであろう山岸良太弁護士と駆け出し時代の私が間接的に対決していたことに触れた話の第2話(私の関わり編)です。

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平成12年の春、就職後間もない私が夜に一人で事務所の記録庫を漁っていると(と書くと聞こえが悪いですが、ボスが手がけている事件を自主的に勉強したいとの目的です。たぶん・・)、おおっ、天下の森綜が相手の事件があるのか、しかもガチンコ支配権紛争だ、と興奮したのを今も覚えています。

もちろん自分が後日関わることになるとは微塵も思っておらず、ミーハー感覚で記録をチラ見しただけでしたが、半年ほど経過して、その事件の係属紛争の一つで、1審でB氏が敗訴した事件(相手はA氏ではなくα社。代理人も森綜ではなくα社の顧問弁護士さん)の控訴趣意書を私に起案せよとのお達しがボスからありました。

そして、私でよいのだろうかと思いつつ、多くの新人がそうであるように「巨大事務所を相手とする企業法務の大事件」にある種の憧れを抱いていた平凡な駆け出しイソ弁の一人として、その事件に関われることが嬉しくて、無我夢中で記録や文献を読み漁り、終電仕事を繰り返しながら、長文の控訴趣意書を作成しました。

ただ、その事件の特質(メインの受任者がボスではなく某先生であること等?)のためか、私は受任者(代理人)ではなく、ボス(及び代理人として書面に名を連ねる某先生達)のゴーストライター(起案代行)という立場であり、また、起案にあたりB氏からお話を伺うなどの機会はありませんでした。

当然のことながら、通常は、事務所の依頼者の方と直にお会いしお気持ちを伺ったり事実や証拠を確認した上で起案を始めますので、依頼者から説明を受けず「記録(と文献)だけで起案する」ことに疑問や不安を感じないこともありませんでしたが、私の内気さ(或いはボスの敷居の高さ)もさることながら特殊な事件という認識もあり、敢えて自分からボスに「B氏と会わせて下さい、某先生の事務所で行われる打ち合わせにも同行させて下さい、法廷も傍聴させて下さい」と求めることなく、純然たる「ただの起案屋さん」で終わってしまいました。

自分の名前が出ないこと自体は不満も何もありませんが、やはり、B氏との面談(打ち合わせへの同席など)を一度でもボスにお願いすべきだったのでは(起案担当者が依頼者と会わず肌感覚の心証もとれないというのは、いくら何でも間違っているのではないか)と感じざるを得ない面はありましたし、ボスはもちろん某先生も恐らくB氏も(たぶん、相手方たる山岸先生たちも)私=法廷に来ていない若いイソ弁が起案していることを分かっていたはずで、それだけに「貴方の顔が見たい(お前も出てこい)」という話が全くなかったことには、少し、さびしい面がありました。

その後、天王山というべき事件(もちろん、相手方は山岸先生たちです)の上告趣意書も任せていただいた(私が売り込んだのではなく、ボスから指示された)のですが、株主間契約の法的性質が中心争点であり、私が全く関与していない控訴審では「有効な合意だが当事者の合意から長期の期間が経過したので法的拘束力が失われた」との理由で敗訴していたため、そのような場当たり的な法律論が許されてなるものかとの思いで、東弁図書館などにあった株主間契約などの文献を徹底的に読み漁り、当時の書式(B5)で100頁超の上告受理申立理由書も作成しています。

今でこそ株主間契約は、企業経営に臨む方(とりわけ共同出資者間)の基本的な留意事項の一つですが、平成12~13年当時は、まだほとんど国内では表だった議論がなく、日本の文献ではほとんど触れていませんでした(そのせいか、1・2審の書面でも株主間契約の法的性質に関しさほど議論が行われていませんでした)。

反面、米国では幾つかの州で相応に議論や判例の集積があり、東京弁護士会の図書館にはそれに関する多数の書籍がありましたので、それらを徹底的に読み込み、文献の該当箇所を多数引用しながら「米国諸州では株主間契約に強い法的効力が認められており、米国会社法の影響下で成立した日本の株式会社法も同様の解釈がなされるべきだ」などと主張したため、今なら最高裁にクレームを受けるような長文書面ができあがったのでした(さすがに英文を読む力はなく翻訳書籍限定ですので、たかが知れた内容かもしれませんが)。

ともあれ、その事件をはじめ、全部で5~6件ほどの事件(平成13年頃から上級審又は1審で係属した主要な事件)の書面作成をことごとく私が担当することになり、山岸先生らの書面に「それは間違っている、こっちが正しい」と書き続けました。

今も、理屈で負けたとは思っていません。

しかし、皆さんのご想像どおり、結果は全敗でした。上告趣意書に至っては、業界人の誰もが経験することではありますが、最高裁は何も言わずに全部の事件とも三行半(受理しない)の一言で終わらせています。

理由は人によって様々な見方(私自身の力不足も当然含め)があるのでしょうが、根本的には、A氏がB氏を排除できた根本的な理由が、A氏側とB氏側の持株比率ではなく(その点はほぼ対等でした)、支配権の死命を決する役割を担ったのが、グループ本社の主要役員(平取締役)の方々の支持の有無であり、端的に言えば、その方々が一貫してA氏を支持し続けたことが、B氏の敗訴の根底にあるものだと感じられました。

その原因がどのようなものであるのか(B氏又はその父に責められるべき点があるのか、A氏が狡猾に幹部の方々を抱き込むなどという事実でもあったのか)、確証を得るだけの資料等がなく、私には全く分かりませんでした。

ただ、そうした事情が分かるようになってからは、この事件は、そこで勝負ありになっており、それ以上は、どのように理屈や制度をいじくり倒しても、本質的な部分で勝てない構図だ、と感じざるを得ないようになりました。

以前、医療ドラマで「大学病院には、出世コースから外れた若い医者に対し、成功が絶対的に無理=患者が死亡を余儀なくされる手術ばかり担当させる=それによる遺族対応なども押しつけることがあり、敗戦処理係と呼ばれて日陰者扱いされ、失意のまま病院を去っていく」などという話(登場人物)が描かれているのを見たことがありますが、客観的に見れば、当時の私も、敗戦処理係を担当していたのかもしれません(事実、私が関与するようになったのは、主戦場たる事件の控訴審で和解協議が決裂し、敗訴判決が出た後でした)。

もちろん、当時の私は、薄々そのような感覚を抱きつつも、そのような帰結は、父達の期待に応え、それまでの相応に輝かしい人生を捨ててα社に身を投じたB氏にとって、あまりにも酷ではないか、仮に、親世代の二人が合意した内容の拘束力に疑義を呈すべき面があったとしても、せめて、B氏には何らかの救い(一定の金銭給付であれ、それ以外であれ)がなされるべきではないかと感じ、相手方に何か一矢報いなければならない、そして、局地戦で強力な一勝を得て、それをテコに再度の和解協議の素地を作りたいという、「不本意ながら太平洋戦争に臨んだ良識派軍人」のような?思いで、必死に闘っていたつもりです。

しかし、私はその思いを遂げることが全くできないまま、α社事件で敗訴判決を重ねた上、失意のうちに?平成16年に東京を去ることになりました。

もちろん、岩手(盛岡)での開業は私が自分で敷いたレールの核心部分ですので、「すべてのモラトリアムが終わり、ついに人生の本番が始まる」という高揚感はありましたが、「自分は東京で他の人にはできない特別な何かを成し遂げて凱旋したのだ」などという達成感は微塵もありませんでした。

(以下、次号)

ちぃたん☆vsチータンの法廷闘争が来る日?

最近、カワウソのゆるキャラを巡って関係者が紛糾状態にあるという報道が繰り返されていますが、1月中旬に「解任」の記事が出た直後、「じゃじゃ麺を擁する盛岡の人々は、何かコメントをしなくてよいのか」などと思ってFBに下記の戯言を掲載したことがあります。

先日のニュースでは、事の発端(舞台)となった高知県須崎市が、ちぃたん☆の運営会社(芸能事務所)に対し、市が権利を有する「しんじょう君」に関する権利侵害を理由に使用停止の仮処分を申し立てたとのことで、事態はさらに泥沼化しているようです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190222-00000138-spnannex-ent

請求の当否などは分かりかねますが、「ゆるキャラ」の元祖と言われる「ひこにゃん」では自治体と制作者との間で熾烈な法廷闘争が繰り広げられ判決もなされたと記憶しており、そうした展開もありうるかもしれません。

この種の事柄は、官製キャラクター商法と評してもよいのかもしれませんが、制作者と利用者との間の信頼関係が十分でないとか利用者側に多数の関係者が生じ思惑もバラバラである(適切な協議や統一がされていない)とか、一部の関係者に非常に無責任な姿勢があり、それに便乗し事態を悪化させる者が新たに生じて混迷を深めるといったパターンはよく見られるような気がします。

消費者(そのキャラクターを楽しむ側)であれば、「ゆるいから良いのだ」ということになるかもしれませんが、提供者側が「ゆるい」のでは無責任等の言い換えに過ぎないとの誹りを受けてしまうでしょうから、そうした話を全く聞かない熊本や船橋の方などをはじめ、キャラクタービジネスの権利管理や活用に長けた方々から学ぶ姿勢を大事にしていただければ良いのではと思います。

キャラクター商法に限らず大雪りばぁねっとのようなケースも含め、官民連携で行われる事業は「官の無責任」と「民の濫用」で惨憺たる事態に陥るリスクを内包していますので、公金や公共財を扱う資格のない者に物事を委ねることのないよう、適切な監視や監督がなされる仕組みの構築や運用に意を注いでいただきたいものです。

【虚構新報いわて支局速報 31.1.17】

お騒がせ中のゆるキャラ「ちぃたん☆」に対し、盛岡市商工観光部が、じゃじゃ麺の締めのスープである「チータン」との誤認混同を招きかねないなどとして、不正競争防止法違反を理由に名称の変更を求めていることが分かった。

17日に記者会見したタニフジ市長(仮称)は「チータンはじゃじゃ麺と共に市民が長年愛してきた宝。勝手に名前を使うのは盛岡ブランドへの重大な侵害だ」と憤る。

「ちぃたん☆」の運営会社は取材に対し盛岡市の要求に応じるつもりはないとした上で「今度は、チータンをたっぷり注いだ皿回しにちぃたん☆がチャレンジする動画を投稿する予定です」と回答。

これに対し、タニフジ市長も「そんな暇があるなら白龍で皿洗いでもさせて欲しい。当市も、ゆるキャラ『元祖ちぃたん★』を作って世界に伝えたい」と応酬し、両者の対立は深まるばかり。

一番かわいそうなのは、昔から人間のエゴに翻弄され今や絶滅したとされるニホンカワウソかもしれない。

任意団体(権利能力なき社団)が自治体から借りて管理する緑地で生じた事故における法律問題~盛岡北RC卓話から~

私が所属する盛岡北ロータリークラブでは、各会員が年1回、20分ほどの卓話(スピーチ)を担当することとなっており、先日がその担当日でした。

ちょうど、その少し前の役員会で、当クラブが盛岡市から土地を借りて植樹し管理している「どんぐりの森」について話題になったため、万が一のリスクもありますよ、と余計なこと?を言ってみたくなり、以下のとおり「どんぐりの森で大事故が発生した場合のクラブや関係者の賠償責任如何」という設問を作成して、簡単ながら解説しました。

奥入瀬渓流国賠訴訟判決のアレンジという面もありますが、権利能力なき社団たる任意団体で賠償問題が生じた場合に広くあてはまる法的論点について取り上げた面もあり、それなりに参照価値があるかもしれません。

盛岡西北クラブの某大物ロータリアンの方に倣って「似たような話を皆さんのクラブの事業バージョンで聞いてみたい方は、卓話に呼んで下さい」と宣伝してみたい気もしないこともありませんが、「そんな縁起でもない話はイヤだ」とお叱りをうけるのが関の山かもしれません。

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盛岡北RC(以下「当クラブ」という。)が管理している「どんぐりの森」で、次の事態が生じた場合に、被害者は当クラブやその関係者(役員や一般会員など)或いは盛岡市などに賠償請求をはじめとする法的責任を追及したいと考えている。誰がどのような責任を負うか、説明しなさい。

(1) 近所の高校生Aが、当クラブに断りなく敷地内でバーベキューを始めたところ、Aの火の不始末により森が燃え上がり隣接するBの自宅に延焼して全焼し、逃げ遅れたBが死亡した。そのため遺族Cが賠償請求を希望している。

(2) 近所の小学生Dが、当クラブに断りなく「森」を散策中、植栽されていた木(遊歩道状に設置された通路に面するもの)が突如、倒れてDに衝突し、Dは脳挫傷など重大な傷害を負い、治療の終了後(症状固定後)も常時介護を要する全身麻痺(自賠責保険における後遺障害1級相当)などの障害が残存した。

事故後の調査でその立木の根本が遅くとも半年以上前から腐っており、強風や地震など一定の外力が加わるなどすれば倒木のおそれがあったことが判明したが、そのことを調査、指摘するという作業は当クラブ内ではなされていなかった。

(3) 当クラブが「森」の入口に設置している看板が、「100年に一度の大型台風」と報道された異常な強風のため杭から外れて近所のE社の事務所に衝突し、E社の建物を損壊したほか、相当の期間、E社の営業を困難にさせる被害を生じさせた。被害発生後の調査では、特に杭の腐食などの問題は確認されなかった。

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(レジュメの項目)

第1 ロータリークラブが管理する施設で賠償問題が生じた場合の法的主体(誰が義務を負うか)について
 1 ロータリークラブという団体の法的性格と賠償問題が生じた場合の権利義務の主体
 (1) 団体の法的性格
 (2) 団体の債務に関する構成員個人の責任
 (3) 団体の責任者、問題を起こした担当者などの賠償責任
 2 民事上の賠償以外の法的責任(刑事責任)

第2 小問(1) 失火と延焼に関する賠償問題
 1 A及びその親権者のB・Cに対する賠償責任
 2 当クラブのB・Cに対する賠償責任
 3 当クラブの会員個人(会長、担当委員長、一般会員など)のB・Cへの賠償責任
 4 盛岡市のB・Cに対する賠償責任
 5 B・Cの損害について

第3 小問(2) 施設内の立木に起因する被害に関する賠償問題
 1 当クラブのD(及び親権者)に対する賠償責任
 2 会員個人の責任、盛岡市の責任
 3 Dらの損害

第4 小問(3) 施設内の設備に起因する被害に関する賠償問題

第5 まとめ(予防策とおまけ)

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事故で賠償問題が生じた場合の対策ですので、当然ながら損害保険(賠償責任保険)への加入が望ましいという「まとめ」になるため、我ながら損保会社の回し者じゃないかなどと思ってしまいます。

反面、それならそれで、いっそ損保各社におかれては「我が社の保険商品の販売促進のため、その商品の出番になるような事例を作ってミニ講義をして欲しい」とのご依頼があれば、大歓迎という気持ちもないわけではありません。

が、よくよく考えると多くの会社さんが「交通事故などの賠償請求の相手方(当方が被害者代理人)」になっているため、残念ながら利益相反のため断念、という感じになってしまいそうです。

北風~他業界にも吹き荒れますように?~そして、フェアユースの本質としての多様性と尊厳

ここしばらく多忙等を理由にブログの更新ができず、ご無沙汰しております。おかげさまで、今年も超低空飛行ながら何とか年を越すことができそうです。

今日も今日とて兼業主夫業に負われる日々のため深夜に事務所に帰り寝袋で朝まで寝てしまうことも珍しくないのですが、午前4時前後に自宅に戻る日もあり、この時期は深夜に降り積もった雪が月明かりや道端の光で誰もいない街を明るく照らす光景を目にすることもあります。

そんなときは槇原敬之氏の「北風~君にとどきますように~」の歌詞が思い浮かんだりもしますが、「誰のせいでこんなに遅くまで仕事してるんだ」などと色気のない八つ当たり根性に囚われているせいか、毎度ながら自虐替え歌の歌詞ばかりが涌いて出てくる有様です。

まあ、おかげさまで当事務所もどうにか年越しだけはできそうですし、我が業界も今は混迷の真っ只中ですが、もうしばらくすれば多少は落ち着くのではと期待したいところですので、あまり愚痴っぽいことばかり書くのもどうかとは思います。

ともあれ、来年も、当事務所にとっても依頼主の方々にとっても、

もう裁判はしないなんて 言わないよ絶対~♪

といった感じで問題解決のため訴訟制度など(弁護士の活用)を前向きに考えていただけるよう、研鑽に努めていきたいと思います。

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いま君がこの雪に気付いてないなら
人並みに眠れて恨めしい 心から思った

深夜のカップ麺じゃ 根気も続かないような夜
事務所のソファの寝袋で 恵まれた過去なつかしむよ
今は滅入る話ばかりで 思い当たるのは
北緯40度の岩手には東京にいない貧乏神

昔よりひどく売上落ちてる
帳簿をそっと開けて僕は言葉なくす

北風が吹きすさぶ 町弁業界
毎晩文書作るのに 収入は凍えている
いま君がこの光景に覚悟がないなら
弁護士目指すのやめとけ 心から思った

どれだけたくさん仕事に 囲まれていても
なぜか働いてないような額しか預金が増えなくて
だから無理に首を縦に振っていたけれど
きっと同業者みんな 「おかしいだろ、これ」と言いたいはず

事務所を開いたその時から
法律の意味さえ 変わってしまう?

贅沢や出費がかさむ 話題のたびに
かっこ悪いくらい 何も話せなくなるよ
明日もし 飲みに行こうと誘いが来たなら
小さく無理だといっても 君に聞こえない

北風で書類の山も雪に沈む
出番なく錆びついた 企業法務 忘れていく
いま君がこの業界に夢を見てるなら
誰より早く教えたい 心から思った

北風が深夜の街を白く包む
歩車道は雪原となり 孤独な帰路を癒やしている
明け方に この雪が積もったままなら
起きるの無理だと言っても 君に聞こえない

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ところで、替え歌は元ネタの作詞者の方の著作権(著作者人格権、著作財産権)との抵触の問題があり、我が国の法制ではいわゆるフェアユース規定が設けられていないため、替え歌の公表などは、現時点では違法とされてもやむを得ないと説明する業界人の方も少なくありません(というか、たぶんそれが主流なのだと思います。著作権に関する実務に関わる機会に恵まれませんので勉強しておらず、何となくですが)。

この点(違法性ないし損害の有無)は、以前に他の方の替え歌を載せたときにも書きましたが、基本的に原著作権者(作詞者等)の合理的意思解釈の問題だと思っており、利用(公表)の内容や態様が、作詞者側の収益等に関する正当な期待を害するか、作詞者の制作者(創造者)としての尊厳(同一性保持権)に照らして合理的意思(許容認識)の範囲内と言えるかを、諸般の事情をもとに総合的に判断すべきことだと考えています。

ただ、替え歌に関してしばしば伝えられる「風刺の文化」(原著作物の風刺というより社会風刺の手段として、人口に膾炙した存在たる人気楽曲の歌詞を拝借し、自分なりの創造を加えて何らかのメッセージを相当な態様で伝えようとする行為)については、原著作権者の狭義の意思だけで説明し尽くせない公的な要素も視野に入れるべきではないかと思われ、それは、「人の知的創造という営みに敬意を表し尊重・保護する」ものとしての著作権の本質に内在する事柄(原著作物の内在的制約?)ではないかと考えます。

思いつきレベルですし上手く整理できていませんが、良質な知的創造物ほど、原型(元ネタ)の創造者に敬意を払いつつ様々な他者の手で良質なアレンジを施して新たな息吹(メッセージ性の幅の広がり)を与えられるべき性質を内在しており、そうした観点から「フェアユース」としての替え歌のあり方を考えてもよいのではないでしょうか。

私自身は、申すまでもなく「戯言として作ったものを折角なので誰かに聞いて欲しいから」という程度の動機で載せているに過ぎませんが(商業的利用どころか「こんな変なものを載せる弁護士はヤバそうだから仕事は頼みたくない」などと仰る方もそれなりにいそうでビクビクしており、匿名ブログを別に作って載せるべきかもしれませんが、そんな技術も余力もありません)、良質な具体例が社会内で多く示されていけば、フェアユース法制を巡る議論も深まるでしょうから、そうした観点も交えつつ「作詞者に敬意を示しながら替え歌(を通じた社会風刺)を健全に楽しむ文化」が形成されてくれればと願わないでもありません。

久方ぶりの知財相談と田舎の顧問弁護士の未来像

先日、ある顧問先から商標権侵害に関する問題のご相談を受けました。さほど紛糾した問題ではなく一応の方針が出ている案件で、確認のための照会ということでしたので、私なりに検討した結果をお知らせして一旦終了となりました。

地域の大企業などに接点の乏しい田舎のしがない町弁をしていると、東京時代は相応にお話をいただいていた「企業法務」的なご相談にはめっきりご縁が薄くなってしまいますが、知財関係はその代表格のようなもので、商標権に関するご相談なんて最後に受けたのは一体何年前だろう?という感もあります。

もちろん、だからといってご相談に対応できないという訳ではありません。過去の経験もさることながら、商標であれ特許であれ著作権であれ、基礎的な勉強は多少はしていますので、常に「模範解答の即答」ができるわけではないにせよ、若干のお時間をいただければ、実務水準としては概ね問題ないレベルの回答ができることが多いだろうと自負しています。

私の場合、購読している判例雑誌について、地道な勉強の習慣として要旨のデータベース作りをしていますし、知財に限らず様々な分野の本を購入して積ん読状態になっていますので、判例を少し勉強した程度の分野のご相談を受けると、勉強したことをようやく生かせるとか、数年前に購入した本達の出番がようやく来たということで、机に本を山積みにして喜々として調べるという面もあります。

今回も、顧問先からメールで関連資料や事情説明に関する書面の送信を受け、電話では簡単なご説明をした上で、文献や判例なども踏まえ、自身の勉強も兼ねて、ある程度、詳しい内容の文章を書いてお送りしました。

当事務所サイトでも表示している「月額3000円」(税別)の顧問先ですので、滅多にご相談を受ける機会もないとはいえ、さほど売上や収益のある業務ではありません(所定時間を超えると別料金をお願いするルールですが、単なる勉強時間について加算するのは難しいですし)。

それでも、こうした形で様々な分野を手掛けることができれば、田舎の町弁をしていると時折襲ってくる「取り残され感」から少しは解放されるような思いもあって、有り難く思っています。

岩手に戻って間もない頃には、盛岡市内の企業さんから著作権侵害に関する賠償問題について受任したこともあったのですが、知財については悲しいほどご縁が薄く、東京時代の独立直前の頃、商標や著作権絡みの訴状を書いたのが懐かしい思い出という有様です。

2、3年前までは日弁連の主導?で作った「弁護士知財ネット」にも加入していたのですが、ご相談等も全くない状態が続いたため、経費削減の必要から辞めてしまいました(倒産ネットは今も続けていますが)。

こうした有様と対照的に、ここ数年は、個人間(親族や知人など)の積年のドロドロした感情のぶつかり合いの果てに訴訟に至る事件のご依頼が多く、時に、当事者の強烈な負の感情やそこに至る残念な物語が私自身の身体にヘドロのように流れ込み、のたうち回るような思いに駆られながら書面を書くことも珍しくありません。

それだけに、感情的な対立が希薄で、相応の勉強を重ねれば一定の答えが出せるような「ライトな企業法務」のご相談に、清涼剤に接するような感じもあって、今後も「相談して良かった、また頼もう」と思っていただけるよう精進を重ねていきたいと思っています。

ところで、ネットで少し調べると、最近は当事務所と同様に月3000円程度の顧問契約を宣伝する法律事務所も増えているようです。当事務所に関しては、5年ほど前にこの方針を打ち出した際、当初は有り難いことに数件のご依頼をいただいたものの、ここ2、3年は新規のお話をいただけておらず、悲哀を託っているというのが正直なところです。

そもそも、顧問弁護士という存在ないし方式自体が、廃れゆく文化なのかもしれないと感じる面はありますが、メール・電話のみでのご相談を受け付けるのは顧問先のみというのが一般的でしょうし、冒頭のご相談をいただいた顧問先も、盛岡から遠く離れた自治体に所在する企業さんであり、来所せずに済ませるという点(ご担当の時間の節約など)でも、意義があると思います。

そうした「頻繁ではないが時折メールや電話で相談をしたい」という需要がある企業さんにとっては、それなりに利用価値のある方法だと思いますし、時に、聞かれたことだけでなく、事案に即して他の点も留意して下さいねとお伝えすることもあります(それだけに、顧問先の方々には、問題が起きてからご相談というだけでなく、返答や検討の有無に関わらず、現在携わっておられる業務に関する様々な情報・資料などを随時、ご提供いただければという気持ちもあります)。

それらのリスク対策やセカンドオピニオンなども含め、地方の小規模な企業・団体さんなどにも、弁護士の活用のあり方について前向きに考えていただきたいところですし、普及し始めた「少額の顧問契約」というスタイルは、それを支えるインフラとして、意義があるのではと感じています。

もちろん、私自身が、実力と磁力の双方を身につけることが先決というべきでしょうから、今は「ドロドロ系の事件」をご依頼いただいている方々に感謝し、のたうちまわりながら研鑽を積みたいと思います。

企業の再建と倒産の狭間に揺れる「いのち」達と弁護士

前回に引き続き、旧ブログで中小企業家同友会の行事に参加した際の感想等を述べたものについて、あと1回、再掲することにしました。

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平成24年11月8日に、企業再建で有名な村松謙一弁護士の講演会が岩手県中小企業家同友会の主催で行われ、参加してきました。

田舎の町弁をしていると、企業の破産については申立代理人であれ破産管財人であれ、大小様々な案件を取り扱っていますが、企業の民事再生については様々なハードルのためか申し立てられる件数が少なく、私の場合、何年も前に申立代理人と監督委員を各1度だけ経験できたのみで、なかなかご縁がない状態が続いています。

まして、法的手段(民事再生)に依らざる企業再生、なかんずく金融機関等への救済融資などを求める交渉は、田舎の弁護士には滅多にご相談を受ける機会がなく、必然的にノウハウを培う機会にも恵まれません。

そこで、そうした論点に関する実務上の工夫などを少しでも伺うことができればと淡い期待を抱いて参加したのですが、NHKで既に2回くらい見ていた「プロフェッショナル」の番組が講演中にノーカット?で放映された上、番組で取り上げられていた企業の方に関するエピソードや倒産・再建実務を巡る理念的なお話が中心で、残念ながら、そうしたノウハウ的なことは取り上げられなかったように思われます。

まあ、弁護士向けの講義ではなく中小企業の経営者の方々向けの講演でしたので、どうしても理念的、総論的な話が中心となるのは致し方ないことなのかもしれませんが。

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それはさておき、村松先生が、企業倒産を巡る現場では、経営者が自死に身を委ねてしまう場面が非常に多いことを、ご自身の経験をもとに具体的に語られ、それだけは絶対にいけないのだと強調されていたことが、講演では最も印象に残りました。

私も、事件当事者のご家族にそうしたご不幸があったというお話を伺ったことが何度かありましたので、そのことを思い返してみましたが、私の場合、これまで実際にお話を伺ったのが3回で、いずれも従業員10~20名前後の小規模な企業の倒産が関わっている事件でした。

1件は、破産管財人を務めた県内の企業で、資金繰りに苦しむ状況の中で、高齢の社長の後継者で実務を担当していた息子さん(常務)が自死し、生命保険金の大半を運転資金に用いたものの、すぐに行き詰まり破産申立に至った事件。

1件は、同様に破産管財人を務めた県内の企業で、同様の状況下で熟年の社長さんが自死し、同じような経過で破産申立に至った事件。

1件は、申立代理人を務めた県内の企業で、数年前に創業者である社長(お父さん)が自死し、その際の生命保険金などで資金繰りを凌いできたものの、万策尽きて破産申立に至った事件。

私は平成12年から弁護士をしていますが、過労自殺など自死が関わる他の類型のご依頼を受けた経験がないこともあり、携わった事件に関連して当事者の方に自死があったというのは、この3件だけではないかと記憶しています。

その経験だけで一般化することはできませんが、企業経営に携わっている方々が、自死という問題に晒されるストレスやリスクを少なからず背負っていることは、もっと知られてよいことではないかと思います。

また、自死ではありませんが、「創業者(父)が亡くなった後、経営を引き継いだ兄が、資金繰りに困って、精神障害者(成年被後見人)である弟の預金(数千万円)を横領して運転資金に宛てたため摘発された事件」を扱ったこともあります。その事件では、横領したお金で取引先や従業員への支払を完済したそうですが、兄はあまりにも大きい代償(1審実刑判決)を払うことになりました。

敢えて尋ねませんでしたが、倒産を余儀なくされた場合でも、少なくとも労働者の賃金については8割相当の立替払制度がありますので、もし、その制度の利用で最低限の納得が関係者から得られるのであれば、倒産処理の途を選んでいただくべきではなかったかと悔やまれます。

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企業の経営者は、様々な責任感に押し潰されそうになる思いを余儀なくされることが多々あると思いますが、ご家族などを悲しませる行動にだけは及ぶことのないよう、孤独の淵に沈むことなく賢明に対処していただきたいと思わずにはいられません。

経営者にとって企業はご自身の子供のようなものだというお気持ちは、私も零細企業の経営者の端くれとして多少とも存じているつもりですが、そうであればこそ、「お子さん」が自らの力で生き続けることができないほど症状が悪化した場合には、終末期医療や葬儀を担当する弁護士という存在を適切にご活用いただき、最後を看取っていただくべきと考えます。

少なくとも、ご自身を投げ打ち「お子さん」の命を救おうとしても、残念ながら無理心中にしかならない可能性が高いという現実は、ご理解いただく必要はあると思います。

もちろん、投薬や手術で治療が可能な場合には、そうした面でも、弁護士を活用いただくと共に、再建関連法制の様々な使い勝手の悪い部分の改善にご協力いただければと思っています。

余談ながら、先日、士業向けに「中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関認定制度」が導入され、私は、(当時は)岩手県で認定を受けた恐らく唯一の弁護士ということになっています(といっても、興味を抱いて申請を出したのが私だけだったという程度の話で、特別の選抜をされたなどという類の話ではありません)。

どれだけ意味があるかよく分かりませんが、そうしたものも活かした形でお役に立てればと思います。

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ところで、上記の3つの自死事件は、いずれも死亡後に会社に生命保険金が支払われているようです。

10年以上前に、会社が従業員を被保険者として生命保険を契約し従業員が不慮の死を遂げた際に高額な保険金を受領することが社会問題視されたことがあったと記憶していますが、会社役員について同様の事態が生じた場合の当否については、議論があるのか存じません。

思いつきレベルで恐縮ですが、役員を被保険者、会社を受取人とする生命保険は上記のような弊害が大きいので、原則的には禁止すべきではないかとも思われます。

少なくとも、自死の場合でも保険金を受領できる契約にあっては、ご家族のみを受取人とするなど、弊害防止のための措置が講じられるべきではないかと思いますが、現在の保険実務はどのようになっているのか、ご存知の方はご教示いただければ幸いです。

中小企業家同友会の講義と企業経営という「地味な憲法学」の現場

数年前から岩手県中小企業家同友会に加入していますが、先日は11月例会があり、参加してきました。

今回は、広島県福山市で㈱クニヨシという鉄工所(船舶、道路、航空機などに用いる各種備品などの製造業)を経営する早間雄大氏の講演があり、厳しい状態にあったご実家の小さな鐵工所を短期間で大きく躍進させた企業家の方に相応しい大変エネルギーに溢れた講演で、大いに参考になりました。

同友会の例会は、1時間強の講演の後、休憩時間を挟んで、1時間弱の時間を使って、中小企業の経営のあり方などについて特定のテーマを与えられ、6人前後のグループでディスカッションして最後に各グループの代表が発表するというスタイルになっていますが、今回は早間氏から「自主、民主、連帯」というテーマで議論せよとの指示がありました。

で、私のグループでは、数人ないし十数人の従業員さん(同友会では、必ず「社員」と呼びます)を擁する企業や事業所の経営者や管理職の方がいらしており、例えば、「自主とは、自分をはじめ各人が、業務の従事者として必要十分な仕事を進んでできるよう身を立てること」、「民主とは、社員全員が、真っ当な従事者として行動できるような会社づくりをして、それを前提に社員一丸となって企業のよりよいステージを目指すべきこと」、「連帯とは、それらの積み重ねを通じて、社会全体に価値を提供し増進すること」といったことなどが、各人の業務や社内外の人間関係に関する経験談などを交えて、それぞれの言葉で語られていました。

法律実務家としては、そうしたお話を伺っていると、憲法学のことを考えずにはいられない面があります。

どういうことかといいますと、司法試験で憲法の勉強をはじめた際に、個々の制度や論点を学ぶにあたって、「自由主義(各人の人権と人格の尊重)」と「民主主義(多数派の合理的判断)」との対立と調和という視点を意識するようにという話を最初に教わったのですが、「自主と民主」という話は、それと通じる話ではないか、また、「連帯」は、憲法学的に言えば現代の福祉国家現象(広義の公共の福祉の増進のための国家や社会の役割の増大)に通じるのではないかと感じました。

憲法学は、「普通の町弁」にとって司法試験合格後はほとんど接する機会のない学問で、私の理解も十分なものではないでしょうが、今回の講義や討議は、「一人一人の多様かつ尊厳ある自由と、多数決などを通じた国家や集団による統一的な意思決定システムとの対立と超克を通じて、社会の健全な発展と人々の幸福(広義の公共の福祉)を目指すべき」という日本国憲法の基本理念を、中小企業の運営のあり方(苦楽の現場)を通じて学ぶといった面もあるのではと感じました。

以前、JC(青年会議所)が掲げているJCIクリード(綱領)について、日本国憲法との類似性を詳細に記載したことがありますが、私の場合、時の政権への反対運動のような憲法論やその逆(戦前回帰云々など)の運動といった類の「派手な憲法学」よりも、個々の現場での地道な日本国憲法の実践を感じる営みを発見、発掘し、私自身がその現場にどのように役立つことができるかを考える「地味な憲法学」の方が、性に合っているような気がします。

ところで、同友会の例会は「成功している社長さんによる創業から現在までの谷あり山ありの経験談を、社員さんとの関係づくりを中心に伺う」のが典型となっていますが、数十人~百人規模の企業の運営と、弁護士一人・職員僅かの法律事務所の運営や弁護士の業務を重ねるのは難しく、どのようなことを例会で学んだり討議で話したりするのが良いのか、今も試行錯誤というのが正直なところです(また、恥ずかしながら、私に関しては「本業の営業」には滅多に結びついていません)。

ただ、この仕事をしていると、中小企業の経営者や管理職の方から、実際に生じた事件、問題について様々なご相談を受けることはありますが、紛争とは離れた普段の中小企業の実情や経営者等の意識を学んだり肌で知るという機会は滅多になく、こうした場に身を置くことで、今後のご相談などにも深みのある対応ができる面はあるのでは、さらには、「顕在化していないニーズ」などを先んじて見極めて提案できるといったこともあるかもしれないと信じて、なるべく参加していきたいと思っています。

早間氏の講演でも、「営業しなくても仕事がやってくる企業や指示待ちではない社員の育成」、「企業の強み(専門性)を生かしながら幅広い業界のニーズに応える努力」といったことが強調されていました。

田舎の町弁業界は、数年前までは営業しなくとも仕事がやってくる典型的な寡占商売(極端な供給不足)の世界でしたが、それが様変わりした今こそ、多くの競争相手がいても本当に「営業しなくとも仕事がやってくる弁護士」になるため、考え、実践しなければならない課題があまりにも多くあるというべきで、今回の講義も、その糧にしていかなければと思っています。

会社の後継経営者の選定問題に端を発する兄弟一族間の支配権紛争

先日、盛岡北ロータリークラブの卓話(ミニ講義)を担当することになり、標記のテーマで、同族企業内で数年間に亘り多数の訴訟闘争が起きた実際の事案についてご紹介しました(もちろん、守秘義務の範囲内ですが)。

卓話後にクラブ広報に載せる原稿も作成して欲しいとのご指示があったので下記の文章を作成したのですが、ご了解をいただき、こちらにも掲載させていただきます。

今回は、20分しか時間がないこともあり、駆け足の事案紹介だけで終わってしまいましたが、もともと、10年近く前に岩手大学で講師を務めた際の講義のため作成したものであり、1~2時間程度をいただければ、紛争の内容に関する本格的なお話もできるかと思います。

県内の中小企業さんの経営者団体などで、こうした話を聞いてみたいという方がおられれば、一声お掛けいただければ幸いです。

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今回は「父が創業した会社を引き継いだ兄弟が、互いに協力して大規模な企業を育て上げたものの、どちらの子を後継者とするかに端を発して不和になり、従業員取締役の支持を得て主導権を握った弟側が兄側を経営陣から追放したため泥沼の紛争が生じ、多数の訴訟が起きた事例」をご紹介しました。

本稿では、当日の卓話を踏まえつつ、お伝えできなかったことなどを含めて記載します。

当日は、次の項立てで、私が平成13年頃に東京で従事した事件の内容を抽象化してお伝えしましたので(それでも、事案説明だけで数頁になります)、欠席された方でレジュメをご覧になりたい方がおられれば、私までご連絡下さい。

第0 株式会社などの支配権確保や意思決定に関する基本的ルール
第1 事案の概要
第2 会社の支配権の当否を巡る裁判(会社法上の訴訟)
第3 経営から放逐された側から放逐した側に対する賠償請求
第4 関連して生じた紛争について
第5 教訓ないし内部紛争の予防に関する視点

紙面の都合上、事案の詳細(若干の脚色等をしています)は省略しますが、要するに、特殊な製品を取り扱う甲社をはじめ企業グループ4社(従業員数百名規模)を作り上げた兄X1(社長)と弟Y1(専務)は、対等に経営する見地から同一比率で株式を保有し(但し、X1・Y1のほか、甲社の株式の一部を乙社が持ち、乙社の株式の一部を丙社が持つなどしています)、両者の合意がないと企業グループ全体を経営できない仕組みを作ってきました。

両名は、昭和62年に、互いの子X2・Y2を中核企業の甲社に入社させ、数年内に取締役、その後に二人とも代表取締役としてX1・Y1と交代する旨を合意しました。

そして、社長もY1に交代し、X2・Y2も入社しましたが、数年後、甲乙各社の従業員取締役がY1支持の姿勢を示したため、Y1は約束を反故にして、平成9年頃から甲社・乙社の株主総会でX1とX2の取締役再任を拒否し、X側を甲社らの経営から追放してしまいます。

これに対し、X側は、合意違反を理由に、株主総会決議の取消等やY1に対する巨額の損害賠償を求める訴訟を提起すると共に、対抗措置として、株式持ち合いの根幹に位置する丁社の取締役会で、特殊な手法によりY1を解任する決議をしました。これに対し、Y1はその決議が無効だと主張しX側に訴訟提起しています。

また、これに関連して、Y側が、乙社が有する甲社の株式をY1の知人に譲渡する出来事があり、X側が、当該譲渡は無効だなどと主張する訴訟や株主代表訴訟も起こしました。

レジュメで省略した訴訟や仮処分なども含め、10件以上の泥沼の訴訟闘争を数年間に亘り繰り広げたのです。

この事件では、結局、X側が起こした訴訟は全て退けられ、丁社に関してX側が行った決議も法律違反だとして無効となり、Y側の全面勝訴という展開になりました。

中心となる訴訟の最中には、XY間で企業分割などの協議も行われたものの不調に終わり、私が関与していた期間(平成15年頃まで)は、従前の株式の持ち合い状態のまま、従業員サイドの支持を受けたY1がX側を排除して甲社らの経営権を保持する状態が一貫して続いていました。

そのため、X2は甲社グループとは別に、一部の元役員の方と共に同種企業を他に設立し、現在も活動を続けています。

他方、Y2はY1の社長職を承継せず平成15年頃には経営陣から姿を消し、現在は別の方が社長となっています。

正確な理由は分かりませんが(訴訟内では、Y側の方針として同族経営を止めたいとの発言はありました)、XY双方とも自身の子に経営を託すことができない事態になったわけです。

精緻な持ち合い構造を作っても泥沼の対立劇が生じることや、株主間合意だけによる経営権確保の限界、従業員取締役の支持が死命を制することになったことなど、企業経営に携わる方には学ぶところが大変多い事案です。本来は、裁判所の考え方を含め、2時間以上かけてお伝えすべき事柄ですので、もし、他団体の会合などで改めて話を聞きたいとのご要望がありましたら、お声をお掛けいただければ幸いです。

最後になりますが、こんな日に限って?メイクアップで出席された吉田瑞彦先生(盛岡西RC前会長。日頃より大変お世話になっております)から、机を叩いて「異議あり!」コールを受けたらどうしようと恐怖していましたが、暖かく見守っていただき、安堵しております(笑)。

 

会社分割に関する基礎知識

先日、ある会社さんから、会社分割を検討しているので、基本的な知識ないし枠組みなどを教えて欲しいとのご相談を受けました。

会社分割は、倒産絡み(詐害行為問題)など幾つかの裁判例の勉強を通じて関心を持っていましたが、仕事上お付き合いさせていただいている「規模の大きい企業さん」の数が多いとは言えない田舎の町弁の悲しさで、これまで会社分割に仕事で関わることが皆無に等しく、数年前に購入した実務書も埃を被った状態でした。そこで、貴重な勉強の機会を頂戴したと受け止め、書籍のうちご相談に関係する部分を一通り読んでご説明したところ、必要に応じて改めてご相談いただくというご返事をいただき終了しました。

会社分割は、大きく分けて、他社による吸収合併等が伴う「吸収分割」と、それが伴わない「新設分割」の2つの類型があり、そのご相談は、新設分割を目的とするものでした。

新設分割をする場合、おおまかな手続としては、
①会社法所定の分割計画書等を作成し、取締役会や株主総会の承認を得ること
②労働者に関し、新設会社への雇用承継や分割会社(本体)への残留者が生じることなどから、労働者(組合又は代表者)と協議する(了解を得る)こと
(会社分割に関する労働契約承継法に基づく通知等の手続を要します)
③債権者や株主のための公告等
などを行った後、分割に関する登記(新会社の設立登記)を申請することになります。

なお、上場企業など企業規模が大きい場合には、独禁法絡みの手続があります。また、新設会社の承継資産が分割会社の資産の1/5未満であれば、株主総会の承認を要しないとする手続もあります。

会社分割に関して紛争が生じる典型例は、次の2つではないかと思われます(少なくとも、会社分割に絡む裁判例は、この2類型に集中しています)。

①経営が行き詰まった企業が、不採算部門を分割会社に切り離して(或いは、優良資産を新設会社に移して)債権者に無断で不良債権処理しようとする(その結果、債権者=金融機関から様々な訴訟を提訴され紛争となる)ケース(紛争予防のためには、不採算部門の整理などを含む事業再生などについて金融機関と十分に協議をする必要があるとされています)

②労働問題(労使紛争など)を抱えた企業が、解雇等を希望する従業員を、解雇可能性の高い不採算部門に承継又は残留させたため、不満のある従業員から地位確認等請求訴訟などを起こされるケース

裏を返せば、そうした問題を特段抱えているのでなければ、粛々と手続を進めることができるのではないかと思いますが、実際に手続を進めて行くにあたっては、分割の目的を明確化させると共に、分割という手段ないし手続が、その目的に合致しているか(阻害していないか)について、多角的分析する姿勢が、担当する弁護士等はもちろん、経営者側にも強く求められるのではないかと思います。

冒頭記載のとおり、私自身に会社分割に携わった経験がなく、また、県内の弁護士で、この手続に関与した経験がある方が多いとも思えませんので、スムーズに手続を進行する上では、弁護士に限らず、適切な経験のある方(紛争性のない一般的な分割案件であれば、登記の関係で関与した経験のある司法書士の方は県内におられるのではと思います)に相談いただいてもよいかと思われます。

もちろん、当方も、文献等に基づいて、分割計画書のベースなど、一定の書面の作成や手続に関するご説明などをすることは可能ですので、会社分割に限らず、必要に応じ、ご相談、ご連絡いただければ幸いです。

名誉毀損のネット投稿に関する責任追及など

インターネット上で名誉毀損となる投稿がなされた場合、一般的には、サイトの運営者に対し投稿者のIPアドレス等の開示を求め、その開示を受けた後、IPアドレス等から把握できる「投稿者が契約しているプロバイダ(経由プロバイダ)」に対し、投稿者の住所氏名等の開示を求めるという方法を取るべきものとされています。

これは、いわゆるプロバイダ責任制限法に基づく手続なのですが、実際には、サイトの運営者が任意にIPアドレス等の開示請求に応じないことも多く、その場合には、裁判所に対し、その運営者を相手方として、IPアドレス等の開示を求める申立を行い、その命令をもとに強制的に開示させる以外には、手段がないと思われます。

ただ、その場合には、サイトの運営主体をどのように把握するか、その住所等(申立書の送達先)をどのように調査するか、管轄等はどうなるか、仮処分命令がなされたとして、運営者が現実に従うのか(従わないとして、強制的に開示させるには、どのような方法を講じることができるのか)といったハードルがあり、この制度も、決して万能ではありません。

そして、私の知る限り、この点が顕著な壁となって生じるのが、インターネット掲示板「2ちゃんねる」ではないかと思います。

5年以上前のことですが、2ちゃんねる上に名誉毀損の投稿をされたという方から、投稿者を特定して責任を問いたいという趣旨のご相談を受けたことがあります。それまで、この種の問題を扱ったことはありませんでしたが、当時、2ちゃんねるの投稿被害が社会的にも多いに問題となっており、盛岡に、その問題を専門的に扱う方がいるという話も聞いたことがありませんでしたので、お役に立てればとの思いで調査等をお引き受けして色々と調べるなどしたのですが、結局、上記の壁(ちょうど、2ちゃんねるの運営が創業者の西村氏からシンガポール国籍の会社に譲渡されたなどという報道が飛び交っている時期で、その点でも幾つかのハードルがありました)にぶち当たり、当方では対応困難として、お断りせざるをえませんでした。

その後、平成25年に2ちゃんねるなど各種の掲示板での名誉毀損の投稿に対する削除及び発信者情報開示請求の手続について詳細に記載した書籍が出版されており(中澤佑一「インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル」)、同書には、平成25年当時における2ちゃんねるへの発信者情報の取得のための仮処分の申立等の方法(シンガポール国籍の会社を相手方とする申立の方法や必要書類の取得方法など。なお、法務局に納付を要する供託金は30万円とされています)及び仮処分命令に基づく2ちゃんねるのサイトへの発信者情報の開示請求の手続などについて、詳細に説明がなされています。

ただ、さきほど、2ちゃんねるのサイトを確認したところ、現在、同サイトの管理会社として、上記会社とは別の会社(ネット情報では、フィリピン国籍と表示しているものもあります)が表示されており、現在も、2ちゃんねる絡みの投稿問題で発信者情報の開示請求を行う場合には、当事者の特定や所在などで厄介な論点が存するため、上記の問題を取り扱って成果をあげた、限られた弁護士でないと対応が困難ではないかと思われます。

私に関しては、その後に2ちゃんねるの投稿問題に関しご相談を受ける機会はなく、社会的にも、2ちゃんねるに関しては、当時に比べれば沈静化した面はあるのではないかと思っていますが、違法行為(名誉毀損投稿)の温床になっている社会的存在(2ちゃんねる)が、当事者の特定や所在などという、法的責任を問うための事実調査のレベルで大きな困難を伴い、結果として権利保護(被害者から投稿者=加害者への責任追及)が困難になるというのは望ましくないことは明白で、上記の壁をクリアできるような、何らかの立法的解決を要するのではないかと思います。

例えば、名誉毀損投稿が頻発しているようなサイトについては、消費者庁が指定して、サイトの運営者は被害者から削除や発信者情報開示の請求がなされた場合には直ちにこれに応じることができるシステムを構築しなければならない(その認証等を受けなければ、サイトの閉鎖命令に応じなければならない)とするような特例法を考えてもよいのではないかと思っています。