北奥法律事務所

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企業倒産など

企業倒産の実務と経営者保証ガイドライン(盛岡北RC卓話)

先日、盛岡北RCの卓話を担当したので、時勢も踏まえ、企業倒産の実務を取り上げることにしました。

金融機関以外にはほとんど負債のない事業者であれば、経営者保証ガイドラインにより破産よりも遙かに良好な解決を得やすいのですが、世間一般には知られていませんので、同GLに力点を置いた説明にしました。

卓話で用いた事例とレジュメの目次を掲載しますので、事業者の方などは参考にしていただければ幸いです。

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小問1 

岩手県内で物販業(一般向けの生活用品の販売等)を営むA社の代表取締役Bは、長年に亘りA社の営業不振が続き、日々の運転資金の支払も銀行借入や各種債務の延滞などをしなければ困難な状況に陥り、現状では営業の継続は不可能と考えた。A社は、銀行3社(岩銀、北銀、みずほ銀)に計1億円(岩5000万円、北3000万円、み2000万円)、取引先20社に未払買掛金計2000万円(最大500万円、最小10万円)、未払公租公課(税金、社保料など)4庁・計500万円の債務があり、賃金も2ヶ月分・従業員10名計400万円が未払となっている。

他方、現時点の資産は、手持ち現金が50万円、未収売掛金が10箇所計300万円、商品在庫などが多数(定価どおりに販売できれば1000万円以上だが、販売目処の立たない老朽在庫も多い)となっている。

Bは、銀行3社(1億)と取引先も4社ほど(800万円)、連帯保証している。

A及びBの債務問題を解決するため現実的に可能な法的手続は何か、法的手続の概要や、受任弁護士が特に検討・対応すべき課題などを説明しなさい。

小問2

岩手県内で飲食店を営むC社の代表取締役Dは、先般から社会で生じた問題により数ヶ月売上の急減が続き、手持ち資金に余裕があるうちに、経営継続を断念することとした。Cの債務は、金融機関2社に計5000万円(東銀3000万円、公庫2000万円。D保証付き)のほかは、20万円以下の小口の買掛が数件あるのみである。他方、Cの営業資産は限られたものしかないが、現在300万円の現預金がある。Dは預金300万円のほか、数年前から住宅ローン返済中の自宅があり、Dは近々転職し給与収入で住宅ローンの支払を続けたい希望である。

C及びDにとって最も賢明な「店じまい」を実現するための法的手段は何か。また、実現にあたって特に検討すべき点を説明しなさい。

【目次】

第1 様々な債務を抱えながら資金枯渇した企業の倒産処理
1 企業の債務整理・倒産処理に関する法的制度
2 個人の債務整理・倒産処理に関する法的制度(参考)
3 東日本大震災で被害を受けた企業等を対象とする特例的な救済手続
4 新型ウイルス禍に伴う支援制度の紹介例や弁護士会等の取組み等

第2 小問1 多額・多様な債務を負う一方、現預金が足りない企業の場合
1 A社の手続の選択と初動対応
2 破産手続(申立後)の一般的な流れ
3 Bの手続

第3 小問2 ほぼ金融機関の債務だけの小規模事業者が早期撤退する場合
1 C及びDの置かれた状況と方針選択
2 経営者保証GLスキームに基づく会社債務の整理(換価・弁済)
3 経営者保証GLスキームに基づく保証債務の整理

第4 結語
かつてのように「生命保険で支払う」などは絶対にしない・させない

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以上の内容について、ご自身(の所属団体など)で話を聞いてみたいという方がおられれば、ご遠慮なくお声がけください。

ウイルス禍における賃料問題と廃業支援としての経営者保証ガイドライン

新型ウイルス禍で休業等を余儀なくされる飲食店などが休業期間中も賃料の負担を余儀なくされ廃業等に追い込まれる(ので支援を要する)という問題は、4月下旬頃から都道府県や国レベルで様々な救済策が検討・実施され、今も流動的な状況にあると思われます。

私自身は3月頃には賃料問題は今回の件で特に立法的解決が求められる問題ではないかと思っていましたので、この報道(論点)の行方には強い関心があります。

この種の事件を手がけておらず、込み入った検討はしていませんが、一般論として、ウイルス禍による休業を理由に貸主に賃料を請求する法律上の権利が借主にあるか(現行法上認められるか)と言われれば、貸主から使用停止を求められるなどという特段の事情がない限り、非常に厳しいのではと現時点では思っています。

他の先生のブログで、物件価値の大幅下落を前提とした賃料減額請求が検討されていましたが、その先生も、その場合は鑑定が必要になるなど現実的ではないと仰っていたと記憶しています。

他方、借主が望まぬ休業で契約上予定していた使用収益(による賃料原資の獲得)ができず、塗炭の苦しみを強いられているのに、貸主のみが何のリスクもなく契約どおりの賃料を支払え、というのは社会的公正ないし公平の観点から、相当に違和感があります。

その先生のブログでは、貸主側からの相談で、借主より強硬な減額要請を受け、やむなく応じているとの話を幾つも受けているとの記載があり、実際には貸主も大変な目に遭っている事案も多いのでしょうが、現行法でルールがないため「良心次第・交渉(大声)次第」という歪な状態になり、トータルで不公正な光景も相応に生じているのではと危惧されます。

結論として、疫病などで休業が不可避の状況にある場合は、一定の算式を作成して相応の減免等の請求を簡易に認めると共に、貸主(ひいては、その先にある銀行等)にも、相応の受益的措置(建設費などのローン支払猶予と利息停止や債務減額、固資税などの減免その他)を講じるような法的措置を早急に講じていただければと考えています。

話は少し変わりますが、厳しい経済情勢に伴い全国的には廃業や倒産の報道も増えてきましたが、当方に関しては、現時点でそのようなご相談はまだ全く受けていません。

小規模企業の債務整理に関しては、最後の選択肢である破産と、現状では金額面で利用困難な民事再生のほか、事案次第では利用でき、自宅の維持確保など破産などよりも遙かにメリットの大きい解決になりやすい「経営者保証ガイドライン」という、第3の選択肢があります。

田舎の町弁にはあまり接点のない(ので、岩手でも経験のある弁護士は多くはないはずの)手法なのですが、私は2年ほど前に小規模な福祉施設の店じまいの事案で活用しており、先般も、ウイルス禍が原因ではありませんが、店じまいをせざるを得ないという小さな地元企業さんで、GLで解決できる事案を受任し、現在、各種対応に追われています(2年ぶりで、これが実質2件目なので、試行錯誤的を交えつつではありますが)。

経営者保証ガイドラインは世間ではほとんど知られていない制度で、私が受任した案件でも、ご本人に「本件は、個人再生が無理な事案で、破産も自宅を手放さざるを得ない、GLなら自宅を守ることができるはず」とお伝えすると、そんな制度があるのかと驚き、強い安堵を示しておられました。

それだけに失敗は許されないとの姿勢で臨んでいますが、現下の情勢により店じまいを避けることができなくなった企業の方が、GLによる解決が可能であるのに知識不足や出会いに恵まれないことなどにより、残念な選択に至ってしまうことがなければと、願っているところです。

公的サービスを担う企業の突然死による混乱を防ぐためにできること

岩手県北地区を代表する製パン企業である、イチノベパンさんの破産開始に関するニュースが出ていました。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20170928_6

30年も前の話ではありますが、私も二戸市立福岡小学校・同中学校の元生徒として、こちらの会社さんに給食などでお世話になっており、小学校の社会科見学でお邪魔したこともありましたので(製造途中の白いパンのモチモチ感や香ばしさは今も記憶があります)、大変残念です。

最近、二戸駅前の書籍複合店さんなど県北の企業の倒産が続いているように見受けられますが、管財人・申立側いずれも関わる機会がなく、その点も含めて残念に思わないこともありません(私の精進が足りないからと言うほかないのでしょうが)。

それはさておき、この記事(同社の倒産)で一番残念な点は「突然の倒産で従業員だけでなく給食など(顧客、とりわけ公的サービスの需用者)にもサービスの供給が急停止したことによる混乱が生じていること」だと思います。

この点について参考になる話として、平成20年に私が奥州市水沢区所在の大きな企業さんの破産管財人を受任したときのことを書きたいと思います。

当該企業は相当以前から岩手県の中小企業再生支援協議会を通じて東京の大手税理士法人などからコンサル指導を受けていたそうで、その関係で、破産申立の直前に、事業として存続可能とみられる部門については営業譲渡を行い雇用も承継させた上で申立をするという対応をとっていました。

そのため、その部門は雇用や営業が維持されただけでなく、事業の価値を毀損させずに譲渡できたため、「管財人(たる私)が営業譲渡(や個別資産の譲渡)を試みたとしても到底ありえない高額な譲渡代金」が配当原資として引き継がれ、相応の配当を実施できました。

その件では他にも様々な論点や事務があり、決して楽な事件ではありませんでしたが・・

当該部門が存続(採算)可能でなければ、そのような対応は困難だろうとは思いますが、「事業が突然死すると弊害が大きい業務」については、企業全体の帰趨(停止)とは適切な態様で区別し、事業価値を毀損させずに円滑に存続(譲渡)させ、事業自体の改善も図るというプロセスを辿らせる仕組み(外部者の後見的関与を含め)を整備したり、経営者に必要な対処を早期に執らせるための啓発の推進など、様々な方策について検討を深めていただきたいものです。

先日も「公会堂多賀」の閉店の記事をもとに、私が盛岡市中心部の著名店舗に関し企業側(申立)代理人として閉店セール(お別れ会)を実施した件を取り上げたことがありますが、地域に混乱を生じさせない「店じまい」のあり方を大切にする姿勢を持っていただければと思っています。

公会堂多賀の閉店と「地域に愛される著名店の突然死」を防ぐために弁護士ができること

新渡戸稲造博士と縁が深く「新渡戸メニュー」でも知られた盛岡を代表する飲食店の一つである公会堂多賀が、残念な形で閉店するとの報道が出ていました。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20170401_3

私自身は10年以上前に昼食で2~3回ほどお世話になっただけで、夕食にお邪魔することができずに終わってしまいました。

しばらくは家庭の事情などできちんとしたレストランに入店するのが容易でなく、そろそろ行けるかな、行きたいかなと思っていた矢先だっただけに、非常に残念です。

最近になって急に張り紙が出たようですが、できることなら1ヶ月以上前に予告の通知をしていただければ、「さよならディナー」をしたかったという方は、きっと私だけではないというか、恐らくは客が殺到したのではないかと思われます。

新聞記事では自己破産の可能性が示唆されていましたが、私自身は関わっておらず、市内の同業の方がすでに受任されているのかもしれません。街を代表する飲食店の一つということもあり、関係者の正当な利害に配慮した適切な対応がなされることを期待したいものです。

盛岡の著名店の倒産という点では、私自身は5年以上前に大通のシンボルの一つと言われていた楽器店さんから債務整理の依頼を受け、破産申立等の作業を行ったことがあります。

その件では、諸般の理由から突然に閉店することはせず、私の提案で2~3ヶ月ほど「さよなら閉店セール」をさせていただきました。

もちろん閉店セールの売上は、その間の従業員さんの給与など正当な経費を除きすべて管財人に引き継いで債権者への配当原資とさせていただいており、債権者の方々にも事情を説明して何らの混乱も生じませんでした。

主たる動機(原因)は内部事情によるものですが、地域の方々が愛着を持っている店舗であることは、私自身も過去に利用歴のある顧客の一人として存じていましたので、閉店セールを行ったことは、お店に愛着を持つ方々が、それぞれの立場で「お別れ」の形を持つ機会を提供できたという点でも、正しい判断だったと今も思っています。

公会堂多賀さんも相応の事情があるのだろうとは思いますが、早期の着手や弁護士への相談の仕方などによっては「さよならセール」があり得たのではと、その点は強く残念に感じてしまいます。

「新渡戸メニュー」をはじめ店名そのものも含めて一定の財産的価値があると言ってよいのではと思われ、盛岡市内の飲食店さんなどが営業譲渡に名乗りを上げて、復活させていただければと思っています。

10年ほど前、高齢のおばあちゃんが営む県北の小さな弁当屋さんの閉店のお手伝いをしたことがあります。

その弁当はかつて「名物駅弁」として親しまれ(地元の著名作家の方の熱い記事も見たことがあります)、私も大変美味しくいただきましたので、可能なら、レシピを譲り受けて継承していただける方がおられればと思っていましたが、そうした面ではお役に立てることのないまま終わってしまいました。

経営などについては栄枯盛衰の問題は避けて通ることはできないのでしょうが、地域の誇りになる味やブランドについては、花巻のマルカンなどを引き合いに出すまでもなく、良質な承継のあり方や仕組み作りなどに熱意をもって取り組む方が増えていただければと思っていますし、そうした営みに地元の町弁たちもお役に立ちたいと願っていることもまた、心に留めていただければと思います。

仙台で活躍する盛岡の方々と遠い外界を回遊したシャケ弁の私

さくら野百貨店(仙台店)の破産申立が波紋を拡げていますが、私も毎年1月の東北弁連某委員会の会合の後のバーゲン巡り(Uアローズ)とかブックオフで某海賊マンガを立ち読みするとか年甲斐もない話ばかりでお世話になったこともあり、今回の件は残念です。
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20170227-OYT1T50144.html

私は規模の大きい企業の破産申立を手がけたことがありませんが、9年前に水沢で様々な事業を手がける大きな企業さんの管財人になったことがあり、膨大な初動対応に追われたことなどを思い出しますし、記事にある「地権者の差押が申立のきっかけ」という点も、以前に破産申立をした企業さんで似たような経験をしたことがあり、色々と考えさせられます。

報道を見ると仙台では倒産分野で高名な先生の事務所で申立を手がけているようですが、ボスの先生などは盛岡のご出身とのことです。私はご挨拶する機会に恵まれてませんが、盛岡の他の先生のFB投稿でお見かけしたことがあります。

私は高校から県外に出て実務修習を除けば15歳から30歳まで外の世界を回遊していたせいか、弁護士に限らず東北の諸産業の実情には疎いのですが、東京が全国から人材を吸収するように、仙台市長さんをはじめ盛岡出身の方が仙台で活躍されている光景を目にすることが多くあります。

盛岡でも東京の司法試験業界では滅多に聞かない東北大のご出身の方が多く、仙台を経由して岩手で開業される方も何人かおられますし、近年では東北大の法科大学院の出身の方が非常に多くなっているように感じます。

そうした光景を見ていると、稚魚段階で外に出て遠方を回遊し戻ってきたサケのような前半生を辿った自分に異端めいたものを感じずにはいられませんが、異端なりに隙間産業であれ落ち穂拾いであれ、火炙りに陥ることなく、しぶとく生き続けたいものです。

今、岩手県のサケ産業のあり方などが争点となっている裁判を受任し様々な作業に追われているのですが、私自身がサケのような弁護士であるがゆえに、ご依頼をいただくことができたのかもしれません。

余談ながら、以前に、岩手県庁がもてはやす某兄弟を真似して岩手弁護士会は「べんごきょうだい」なる「ゆるキャラ」を売り出してはどうかとの投稿をしたことがあり、私には「ウニ弁」などは務まらないものの、上記の理由からシャケ弁なら向いているかもしれません。

企業の再建と倒産の狭間に揺れる「いのち」達と弁護士

前回に引き続き、旧ブログで中小企業家同友会の行事に参加した際の感想等を述べたものについて、あと1回、再掲することにしました。

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平成24年11月8日に、企業再建で有名な村松謙一弁護士の講演会が岩手県中小企業家同友会の主催で行われ、参加してきました。

田舎の町弁をしていると、企業の破産については申立代理人であれ破産管財人であれ、大小様々な案件を取り扱っていますが、企業の民事再生については様々なハードルのためか申し立てられる件数が少なく、私の場合、何年も前に申立代理人と監督委員を各1度だけ経験できたのみで、なかなかご縁がない状態が続いています。

まして、法的手段(民事再生)に依らざる企業再生、なかんずく金融機関等への救済融資などを求める交渉は、田舎の弁護士には滅多にご相談を受ける機会がなく、必然的にノウハウを培う機会にも恵まれません。

そこで、そうした論点に関する実務上の工夫などを少しでも伺うことができればと淡い期待を抱いて参加したのですが、NHKで既に2回くらい見ていた「プロフェッショナル」の番組が講演中にノーカット?で放映された上、番組で取り上げられていた企業の方に関するエピソードや倒産・再建実務を巡る理念的なお話が中心で、残念ながら、そうしたノウハウ的なことは取り上げられなかったように思われます。

まあ、弁護士向けの講義ではなく中小企業の経営者の方々向けの講演でしたので、どうしても理念的、総論的な話が中心となるのは致し方ないことなのかもしれませんが。

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それはさておき、村松先生が、企業倒産を巡る現場では、経営者が自死に身を委ねてしまう場面が非常に多いことを、ご自身の経験をもとに具体的に語られ、それだけは絶対にいけないのだと強調されていたことが、講演では最も印象に残りました。

私も、事件当事者のご家族にそうしたご不幸があったというお話を伺ったことが何度かありましたので、そのことを思い返してみましたが、私の場合、これまで実際にお話を伺ったのが3回で、いずれも従業員10~20名前後の小規模な企業の倒産が関わっている事件でした。

1件は、破産管財人を務めた県内の企業で、資金繰りに苦しむ状況の中で、高齢の社長の後継者で実務を担当していた息子さん(常務)が自死し、生命保険金の大半を運転資金に用いたものの、すぐに行き詰まり破産申立に至った事件。

1件は、同様に破産管財人を務めた県内の企業で、同様の状況下で熟年の社長さんが自死し、同じような経過で破産申立に至った事件。

1件は、申立代理人を務めた県内の企業で、数年前に創業者である社長(お父さん)が自死し、その際の生命保険金などで資金繰りを凌いできたものの、万策尽きて破産申立に至った事件。

私は平成12年から弁護士をしていますが、過労自殺など自死が関わる他の類型のご依頼を受けた経験がないこともあり、携わった事件に関連して当事者の方に自死があったというのは、この3件だけではないかと記憶しています。

その経験だけで一般化することはできませんが、企業経営に携わっている方々が、自死という問題に晒されるストレスやリスクを少なからず背負っていることは、もっと知られてよいことではないかと思います。

また、自死ではありませんが、「創業者(父)が亡くなった後、経営を引き継いだ兄が、資金繰りに困って、精神障害者(成年被後見人)である弟の預金(数千万円)を横領して運転資金に宛てたため摘発された事件」を扱ったこともあります。その事件では、横領したお金で取引先や従業員への支払を完済したそうですが、兄はあまりにも大きい代償(1審実刑判決)を払うことになりました。

敢えて尋ねませんでしたが、倒産を余儀なくされた場合でも、少なくとも労働者の賃金については8割相当の立替払制度がありますので、もし、その制度の利用で最低限の納得が関係者から得られるのであれば、倒産処理の途を選んでいただくべきではなかったかと悔やまれます。

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企業の経営者は、様々な責任感に押し潰されそうになる思いを余儀なくされることが多々あると思いますが、ご家族などを悲しませる行動にだけは及ぶことのないよう、孤独の淵に沈むことなく賢明に対処していただきたいと思わずにはいられません。

経営者にとって企業はご自身の子供のようなものだというお気持ちは、私も零細企業の経営者の端くれとして多少とも存じているつもりですが、そうであればこそ、「お子さん」が自らの力で生き続けることができないほど症状が悪化した場合には、終末期医療や葬儀を担当する弁護士という存在を適切にご活用いただき、最後を看取っていただくべきと考えます。

少なくとも、ご自身を投げ打ち「お子さん」の命を救おうとしても、残念ながら無理心中にしかならない可能性が高いという現実は、ご理解いただく必要はあると思います。

もちろん、投薬や手術で治療が可能な場合には、そうした面でも、弁護士を活用いただくと共に、再建関連法制の様々な使い勝手の悪い部分の改善にご協力いただければと思っています。

余談ながら、先日、士業向けに「中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関認定制度」が導入され、私は、(当時は)岩手県で認定を受けた恐らく唯一の弁護士ということになっています(といっても、興味を抱いて申請を出したのが私だけだったという程度の話で、特別の選抜をされたなどという類の話ではありません)。

どれだけ意味があるかよく分かりませんが、そうしたものも活かした形でお役に立てればと思います。

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ところで、上記の3つの自死事件は、いずれも死亡後に会社に生命保険金が支払われているようです。

10年以上前に、会社が従業員を被保険者として生命保険を契約し従業員が不慮の死を遂げた際に高額な保険金を受領することが社会問題視されたことがあったと記憶していますが、会社役員について同様の事態が生じた場合の当否については、議論があるのか存じません。

思いつきレベルで恐縮ですが、役員を被保険者、会社を受取人とする生命保険は上記のような弊害が大きいので、原則的には禁止すべきではないかとも思われます。

少なくとも、自死の場合でも保険金を受領できる契約にあっては、ご家族のみを受取人とするなど、弊害防止のための措置が講じられるべきではないかと思いますが、現在の保険実務はどのようになっているのか、ご存知の方はご教示いただければ幸いです。

企業再建に関する特定調停スキームと経営者保証ガイドライン

あまり知名度はありませんが、1、2年ほど前から、「中小企業の事業継続が困難になった場合に、債務者が少数の金融機関のみである場合など、債権者との合意で、一定の弁済(原則として破産手続よりも多い額)を行うことを条件に、破産や民事再生の手続をとらずに残債務の免除等を受けることができる制度」が設けられています。

中小企業円滑化法終了の対応策としての特定調停スキーム」というもので、2年前に中小企業円滑化法の終了により倒産が多発するのではないかとの懸念が広まった際、設けられています。

当時、中小企業庁の音頭で経営革新等認定支援機関制度というものができ、私も「支援機関」に登録しているのですが、上記の手続は、支援機関としての弁護士が関与することが望ましいと考えられています。

実際には、政府の予想に反して全国的に倒産件数が少ない状態が続いていることもあり、私自身は、これまで当該手続に相応しい企業さんからその種の申込みを受けるなどのご縁に恵まれていませんが、いずれ、利用する機会があればと思っています。

また、上記の手続は、企業再建を前提とする場合だけでなく、企業(主債務者)が破産等を余儀なくされた場合でも、経営者などの連帯保証人が、冒頭の条件を前提に、その余の債務の免除を受けるために利用することもできるとされています。

例えば、代表者等の方の債権者は基本的に少数の金融機関のみであるなど合意による処理に適する場合に、破産手続で指定されている自由財産拡張の限度額(原則として99万円)以上の額を手元に残し、その余の財産は換価して按分弁済することを条件に残債務の免除を受けるという目的で利用することが想定されています。

昨年末に、弁護士会から「中小企業円滑化法終了の対応策としての特定調停スキーム(経営者保証に関するガイドライン対応)」に関するレジュメが届いており、その制度の利用方法に関する解説や書式などが掲載されていました。

そろそろ、中小企業の倒産件数の増加が見込まれてきていることもありますし、昔と違って、商工ローンなどの同意による解決が期待できない債権者への連帯保証が含まれていない(協議で解決できる金融機関のみとなっている)方も多いはずですから、利用に適する案件のご相談を受けた場合には、当事者の破産手続を避けるためにも、積極的に金融機関側に打診するなど、利用を試みたいと考えています。

倒産実務の低迷と相続財産管理業務の勃興?

盛岡地裁では、毎年10月下旬に「管財人協議会」という名称で県内で活動する多くの弁護士を招集し破産管財人の業務に関する論点などを話し合う場を設けており、私も、平成17年以後、毎年のように参加しています。

ただ、建設系を中心に多くの企業倒産があり裁判所に多くの破産管財事件が係属していた平成20年前後と異なり、震災後は企業倒産が大幅に減少した上、多重債務問題の収束もあって個人の破産申立事件も大幅に減少し、他方で、若手弁護士の激増で受任希望者は増える一方ということで、約5年前と現在とでは「一人あたりの配点件数」は、大きく減っています。

私に関しては、岩手に戻った直後(平成16~17年)は、新参者には配点しないという方針でもあるのか、ほとんど配点がなかったのですが、平成18年にベテランの先生が申し立てた事件で管財人に推薦していただくことが何度かあり、それで一生懸命働いたのが評価されたのかは分かりませんが、平成19年頃から裁判所から直に連絡が来ることが増え、平成22年頃までは10件前後(関連企業や代表者等の同時申立などを個別にカウントすれば、十数件)の配点をいただいていました。

当時、管財人業務の実務上の論点を網羅的に解説した書籍の刊行が相次いだこともあり、机に管財業務の解説書を幾つか並べて、毎日のように様々な論点と格闘しながら処理に追われていたのが懐かしい思い出です。

ところが、震災後は管財事件の受任は極端に減り、現時点では法人管財が1件、個人の管財事件が3件程度という有様になっています。法人の破産申立のご依頼も滅多に無く、企業倒産に関わる機会は、数年前に比べて非常に少なくなってしまいました。

私の認識する限り、仕事上大きなミスをやらかして裁判所から出入り禁止になったということもないはずですし、以前の管財人協議会など他のベテランの先生からも倒産事件の受任の減少を嘆く声を耳にしていますので、若手の激増によるパイの奪い合いという問題のほか、世情言われるように、社会的な倒産減少の影響が、「不幸産業」としての弁護士業界には不景気という形で働いているというほかないのかと思います。

そのせいか、数年前は、配当のあり方を具体的な実務上の論点について盛岡地裁の解釈(取扱方針)を示し参加者の了解を得るようなやりとりもあったのですが、ここ数年は「換価困難な資産に関する工夫例を報告せよ」とか「税務申告のあり方」など、抽象的な議題が出題され、エース級の先生方が一般的なあるべき仕事の仕方を若手向けに説明するといったやりとりはあるものの、それ以上の盛り上がりに欠ける、シャンシャン会議の様相を呈している印象は否めません。

それでも、他の先生方の業務姿勢などを拝聴する貴重な機会でもありますので、今後も参加し続けたいとは思っているのですが、どうせ県内の裁判官と弁護士が多数集まる会合でもありますので、具体的な実務上の問題について、主要文献には書いていない論点の解釈や取り扱い、ノウハウなどの意見交換が盛り上げるための工夫があってもよいのではと感じています。

ところで、下火になる一方の企業倒産とは逆に、最近、関わる機会が増えている業務が幾つかあり、その代表格として、相続財産管理人の仕事を挙げることができます。

相続財産管理人は、相続に関し、法定相続人が存在しない場合や相続人全員が放棄した場合に、相続人に代わって財産管理をするのが業務ですが、多数・多額の債権者がいる事案では、相続財産を換価して相続債権者に配当することが業務の中心になるという意味で、管財事件に類する面があります。

以前には、借金問題を抱えたまま亡くなった方について、管理人に選任され換価配当を行ったことも何度かありましたが、最近では、借金問題がなくとも、法定相続人が存在しないため管理人の選任を要する方や、多額の資産があるのに特殊な事情から家族全員が相続放棄したという例にも接しており、そのような場合には、換価配当とは異なった形で関わることになります。

管財人とは異なり、相続財産管理人に関する業務は、相続人不存在の場合であれ限定承認や遺産管理人の場合であれ、法の整備も実務ノウハウの蓄積や公表等も十分ではないように感じており、いっそ、裁判所の管財人協議会も、それらの業務や成年後見人なども含む、「裁判所が弁護士に委託する財産管理、配当などに関する業務に関する協議会」などと銘打って、それぞれの時代において需要が多く議論が整備されていない業務類型に関する論点などを積極的に取り扱ってもよいのではと考えることもあります。

東北油化の倒産と周辺環境の原状回復

先月頃から、奥州市江刺区にある東北油化という家畜の死骸処理を行う会社が周辺に悪臭等を生じさせたとして行政処分を受け、程なく自己破産申立をしたとの報道がなされています。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20141012_3

私自身は(少なくとも現時点で)この事件には全く関わっていませんので、報道されている以上の事実関係は知りませんが、岩手県から水濁法や条例に基づき汚水や悪臭の是正措置を命じられていた中で破産申立がなされたということは、一般論としては、法令に適合する是正措置を講ずるだけの資力がないのではと危惧されます。

当然、破産したからといって会社に是正措置を講ずべき義務が無くなるわけではありませんし、会社施設の原状回復(特に、周辺環境に著しい悪影響を生じさせるような有害物質等の除去)は、破産手続=管財人の業務上も優先性の高い事務とされています。

ただ、破産手続は、換価・回収可能な会社財産(破産財団)の範囲内で会社の財産の管理や配当を行う手続ですので、もし、同社が当該措置(水質などの原状回復工事)を行うに足る金融資産等を有するのなら、管財人が早急に当該措置に着手するでしょうが、それを賄うに足る資産がない場合は、管財人としては手の施しようがありません。

この場合、有害性の強い物質が拡散するなど周辺環境への悪影響が看過できないもので、税金を投入してでも原状回復をすべきだと判断されるときは、岩手県知事は、行政代執行により一定の除去工事を行う可能性があります(廃棄物処理法19条の8)。

仮に、上記の事情が認められるのに県が代執行を行わない場合には、住民は、豊島事件のように公害調停を申し立てることで、県に代執行を行うよう働きかけることが、方法としては考えられます(行政代執行の義務づけ訴訟という手段も考え得るかもしれませんが、ハードルはかなり高いと思われます)。

ただ、岩手県庁(環境部局)は、県境不法投棄で全量撤去を早期決定するなどの前例がありますので、現在の制度上、代執行の必要性が高い案件であれば、そのような手続を経ずとも、率先して一定の除去工事を行うことは期待できるのではないかと思われます。

なお、管財人(破産財団)が自ら実施できるにせよ、税金を投入(代執行)せざるを得ないにせよ、債権者や納税者の犠牲のもとに高額な原状回復工事を余儀なくされる場合には、そうした事態を招いた会社役員など主要関係者の個人責任を厳しく追及すべきではないかという問題があるかと思います。

水濁法は仕事上関わったことがないため詳しくは存じませんが、事案次第では、廃棄物処理法を含め、何らかの刑事罰の適用がありうるかもしれません。また、刑事罰に至らなくとも、会社等に対する民事上の賠償責任(特に会社法に基づく役員の賠償責任)は十分にありうるところです。

この事件が、そうしたスケールの大きい事件なのか、さほど除去工事に費用を要せず管財人が簡単に実施できるレベルなのか分かりませんが、周辺環境に禍根を残すような形にはならないよう、住民や報道関係者などは、今後も成り行きを注視していただければと思います。

また、報道によれば、同社は県内で牛の死骸の処理ができる唯一の施設で、県内の畜産農家への影響が懸念されるとのことですが、そのような企業であれば、経営破綻になる前に、行政が経営の健全性を何らかの形で調査したり、経営困難な事情が生じた場合には、破綻になる前に事業譲渡など混乱回避の措置を講じる仕組みづくりが必要ではないかと思われます。

そうしたことも含めて、一連の経過を検証し今後に繋げるような取り組みがなされることを期待しています。

中小企業の経営再建と弁護士の需要

中小企業庁の「経営革新等支援機関」という制度に登録している関係で、先日、「いわて企業支援ネットワーク会議」という会合に参加してきました。

経営革新等支援機関とは、中小企業金融円滑化法の終了に伴い、金融機関の格付けが落ちて融資の返済要求を受け、これに耐えられずに倒産する企業が多数生ずるのを防ぐため、必要な支援を行うことを目的に設けられた制度です。

具体的には、リスケジュールや様々な経営改善計画の策定や経営指導等を通じ、格付け低下=融資引き揚げを防ぐと共に、経営内容や収益を改善させていくことを内容としています。

上記の会議は、今回が4回目だそうで、これまでも通知は受けていたのですが、制度の運用状況として、あまり弁護士の出番がなさそうな展開になっていることもあり、参加を見合わせていたものの、一度くらいは出てみたいということで、今回が初めての参加になりました。

で、予想どおり、弁護士で参加したのは私だけで、ほとんどの参加者(認定支援機関)は税理士さん又はその事務所の方でした。

また、会議の構成団体等として、国の出先機関や中小企業再生支援協議会、県内の主要金融機関の方などが参加しており、現在の運用状況の説明などがありました。

それによれば、岩手県は、統計上は200社が対象になるはずだが、現時点で支援事業に対する相談は20件弱、申請がなされたのは6件のみということで、役所側にとっては、見通しを大きく下回る状況とのことでした。

岩手の場合、平成23年頃から自己破産等の申立も非常に少ない状況が続いており、建設業などの震災特需が影響しているのかもしれません。

報告によれば、全国的にも件数が多くはないほか、支援事業に従事しているのは税理士が5割、コンサル会社や金融機関が3割強で、弁護士が従事した案件は、全体の僅か1%しかなかったそうです。

これでは、やっぱり弁護士には関係の乏しい制度なのかな(ひいては、経営再建の分野そのものが、弁護士に関しては、企業再生で有名な村松先生のようなごく一部の方だけの専業分野に止まらざるを得ないのかな)、と思わざるを得ません。

ただ、それでも敢えて、支援機関に登録したり、たまに会合や研修に参加しているのは、私の場合、出自などの事情で、昔から中小企業を支援する類の仕事に強い関心があるということもありますが、経営再建問題を抱えた企業は、法律問題の「るつぼ」であることが多いという点があります。

例えば、経営不振の原因が経営者の資質によるものであれば、そこに経営陣内部(ご家族などを含めた)の不和の問題があるかもしれませんし、取引先との関係にあるのであれば、契約内容や売掛金の回収などを巡って、様々な法的論点があるかもしれません。

過剰な人件費によるものであれば、解雇問題に直面するかもしれません。過剰施設の閉鎖等にあたっても、法的紛争が生じることもあります。

少なくとも、民事再生の手続をとった場合には、それらの問題が一挙に噴出し、債務者企業の代理人である弁護士がてんやわんやの対応に追われることは珍しくありません。

企業再生に関する相談は、資金繰りに関するものから始まるため、弁護士よりは金融機関や税理士さんの方に話が行きやすいでしょうが、先に相談を受けた他の専門家の方が、ご本人が気づいていない法的論点などを見出した場合には、弁護士への相談や対処をご紹介いただければと思っており、その一助になればと思って登録しているというのが、正直なところです。

ただ、ざっと拝見する限りでは、認定支援機関の主たる業務(合実計画・実抜計画の策定等)は、金融機関が交渉相手ということもあってか、被災地で用いられている「個人版私的整理ガイドライン」にやや感覚が近い面があるかもと感じています。

脇役だけでなく、認定支援機関としての主たる業務でも、お役に立てる機会があれば幸いです。