北奥法律事務所

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民事一般

Web上の誹謗中傷に対処する制度の改善を巡る動きとIPアドレス開示等に関する4年半前の提言

現在、Web上の誹謗中傷が大きな問題となっている女子レスラーの方の件については番組等を拝見していないので詳細を存じませんが、そこまでの規模ではないものの、同種の問題については、数年に1度ほど、相談等を受けることがあります。

ただ、被害者から投稿者への責任追及となると、投稿者の特定のため最初に必要となるIPアドレスの把握(仮処分など)に時に容易ならざる面があることが災いしてか、未だにほとんど取扱経験がありません。

IPアドレス開示のための法的手続(仮処分)については、サイトによっては外国が絡んだりするなど色々とハードルや問題があり、現在も東京の限られた弁護士さんでないと対応が難しい面はあろうかと思います。

IPアドレスを通じて投稿者の契約先プロバイダさえ分かれば、その後の手続はフツーの町弁でも対応可能だと思っていますので、もし、今回の残念な事件を機に、制度の改善が図られるのであれば、この「入口」の件について、簡易迅速にサイト運営者側から開示を行うための法制度を講じていただきたいと思っています。

この点、5年近く前にツィッターのなりすまし被害の相談を受けた際、当該サイトは外国企業が運営している関係で法的措置に幾つかの難点があり、その克服のため次のような制度を導入してはどうかとブログで述べたことがあります

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①被害者が警察や弁護士などに適切な申告を行い、警察などがサイト運営者に開示するよう要請すれば、直ちに開示する仕組み・慣行を整備する

②他の方法として、被害者からサイト側にアドレス開示要請があれば、サイト側は特定の行政機関(消費者庁など)に投稿者のIPアドレスを直ちに通知するものとし、その上で、行政機関が被害者へのアドレス開示の是非を判断する(却下されれば、被害申告者は行政手続で開示を求め、通常の行政不服審査手続と同じく最後は裁判所が当否を決する)。

サイト側が行政機関の要請に従わない(通知しない)ときは、行政機関はサイトの閉鎖命令ができる(ので、通知制度の実効性が担保される)。

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他方、投稿者の賠償責任についても、以前に投稿者側から相談を受けて色々と調べたことがありますが、判例検索で出てきたのは、かなり込み入った事情のある特殊性の強い案件が多く(そのため、高額になりがち)、この種の投稿の典型と思われる「ちょっとした私怨・不満を晴らしたくて、Web上で他者の悪口を書いた」とか「Web上で誹謗中傷が横行している人の件で便乗して自分も少しだけ悪口を書いてみた」というケースで、どの程度の金額が通常なのかという相場観が判然としないと感じました。

また、既述の理由から、現在の法的責任追及には高額な調査費用が避けて通れない面がありますが、その費用負担という問題もあります。

そのため、被害者側だけでなく、加害者側も落差が大きい(たまたま見つかった人だけが不相当に高額な賠償負担を負わせられやすい)面があるのではとも感じています。

不正投稿を行った人の全部又は大半に、社会通念上適切な法的責任を果たす仕組み(被害者が重い負担を負わなくとも加害者を特定しやすい仕組み)を整えると共に、それを前提に、実害が乏しく第三者から見れば軽率との非難で足りるようなケースでは加害者側の責任も過度に重くなりすぎないようにすること、また、早期・確実に責任が問われることの周知などを通じて肝心の抑止力を高めることが、求められているのではと思われます。

引用ブログは4年半前の投稿ですので、現在では通用しない(前提などが異なっている)記載もあるかもしれませんが、参考にしていただければ幸いです。

併せて、実名・匿名の区別のあり方(匿名投稿を誰もが自由に行うことができる現在の状況が良いのかどうか)、開示(ひいては賠償責任)を要する誹謗中傷と、そこまでの必要は認めがたい正当な批判や軽微な揶揄の類との線引きなどについても、議論が深められることを期待しています。

リアル・エロティカセブンの詩とコンビニ報道の課題

金曜の朝のワイドショーで「変態コンビニ店長」が取り上げられているのを見ましたが、すぐに思い浮かんだのは、平成5年に放送された「悪魔のKISS」というテレビドラマの主題歌でサザンオールスターズが歌っていた「エロティカ・セブン」という享楽的な印象の強い歌詞の曲でした。

この番組は、常磐貴子氏の「出世作兼問題作」としても有名で、当時は大学2年くらいだった私も運良く?放送を拝見した記憶があるのですが、残念ながら録画しておらず、あとで悔やんだことは申すまでもありません。

同日中の報道で、予想どおりというべきか、コンビニのオーナー(フランチャイズ契約の当事者)でもある店長氏は契約解除(解約)と閉店を余儀なくされたという報道が出ていましたが、洗濯物を干しながら「モンダイの映像」をチラ見した限りでは、孤独な中年おじさんの悪ふざけの悲哀という印象もなきにしもあらずで、被害者の方々はともかく第三者的にみれば、こんなことにならずに済む方法はなかったのかなと思わずにはいられない面はあります。
https://www.asahi.com/articles/ASL9P3S0CL9PUUHB00C.html

そんなわけで?久しぶりに「替歌の神様」が降臨し毎度ながら投稿せずにはいられなくなりました。

ただ、事件自体が報道直後に一気に収束したことなどを踏まえ長期の掲載は望ましくないと判断し、替え歌そのものは掲載の数日後に削除しました。この件に関心があり、どうしても見てみたいという知人の方がおられれば、個人的に楽しむ範囲内での提供は構いませんので、個人的に連絡して下さい。

もちろん当事者の方々(コンビニ本部を含め)を誹謗等する意図は微塵もなく、あくまで元ネタ(原曲)を思い出した方々にあの頃やドラマを懐かしんでいただければという趣旨ですので、ご容赦のほどお願いします。

ところで、ここまでの報道を見る限り、店長氏の奇行の原因や背景について触れたものは見かけませんでしたが、単なる「キャラの問題」だけに片付けることなく何某かの深掘りのある報道があっても良いのでは、と少し残念に思いました。

本件と関係があるかは全く分かりませんが、コンビニの零細経営者は長時間労働などの過酷な環境に置かれる方が少なくないとも言われており、そうしたものが本件にも関係しているのなら、何らかの報道があってよいと思います。

また、相当以前から地域内で問題視されていたとの報道もあり、どうしてそれが本部などに発覚せずに放置されていたのか(ご家族なども誰も何もできなかったのか)という管理体制上の問題なども、これだけコンビニが「地域の公器」のような様相を呈してくると、社会の関心事として取り上げてもよいのではと思いました。

余談ながら、ドラマ「悪魔のKISS」は、多重債務や悪徳宗教、薬物など様々な社会悪が若い女性に降りかかり、辛酸の末にそれを脱して終了、というストーリーになっていましたが、よくよく考えると、人々がそうした被害に遭わないようにする(遭っている人を救い出す)ことも我々町弁の重要な仕事の一つなわけで、ドラマのような強烈な修羅場には立ち会ったことはないものの、あの事件は一歩間違えれば、と思う経験はそれなりにしているような気がします。

コンビニ業界についても、従事者の就労環境の問題から弁当廃棄(値引禁止)などの問題まで色々と改善されるべき論点はあるように思いますので、そうしたことも視野に入れた報道などを考えていただければと思いますし、我々も、そのことにもっと関わっていければと感じています。

ともあれ、報道によれば大変反省しているという店長氏も、必要に応じた治療的なものも含め、しかるべき法的責任を踏まえつつ、適切な再出発を図っていただければと思います。

尋問で決めゼリフを言いたがる華々しい?弁護士と、それが似合わない地味な奴

相手方関係者に攻撃的な態度で接するのを好む弁護士の中には、反対尋問の最後に、詰問調で責め立てるような質問を一気呵成に畳みかけるように行った上で、「証人は、こんなロクでもないことを言ってましたということで、尋問を終わります」などと、わざわざ決めゼリフを述べて締め括る人がたまにいます。

そうした尋問を格好良いと思うか何酔ってんだコイツと思うかは、好みの問題や聞き手の立場もさることながら尋問の巧拙・奏功次第であることは申すまでもなく、巧妙な尋問によって決めゼリフを言われてもやむを得ないほど証人が粉砕されてしまえば何も言えませんし、そうでなければ滑稽なものでしかありません。

先日の裁判で関係者の尋問があり、相手方代理人の一人である新人弁護士が当方の担当者への反対尋問でそうした挙に及んでいたのですが、弾劾が奏功したわけでもないのに無理にそうした「証人を誹謗する決めゼリフ」を述べていました。

さすがに裁判所も苦言を呈しましたが、私も、その御仁の尋問態度の悪さに対する腹立たしさもあり思わず大声で「そんなことは言ってない!」と叫んでしまい、かえって裁判長から「静粛に」と窘められてしまいました。

我ながら他人の稚拙な尋問は軽くあしらう老獪な姿勢が求めらるとは思っているのですが、人間的成熟なるものは遠い彼方のようで、「反省だけなら・・」の類の汗顔の至りです。

見苦しい決めゼリフではなくとも、相手方関係者に対する糾弾ありきの態度が強すぎて、単なる信用性の弾劾に止まらず、証人の証言を過度に歪めようとしたり、人としての尊厳を蹂躙しようとするような姿勢が垣間見える弁護士はそれなりにいますが、そのような方の中には別な場で「憲法擁護!」などと叫ぶ人もいたりしますので(もちろん、その種の方だけのことではありませんが)、色々な意味で残念な感想を抱かざるを得ません。

私は良くも悪くも朴訥な仕事しかできない地味系の町弁ですので、反対尋問では、相手方の主張に関する具体的な矛盾点や問題点の指摘に止めて、相手を誹謗したり当事者間の感情的対立を煽ることは極力差し控えるよう心がけており、それが、遠回りでも本当に憲法の本質=人間の個人としての尊厳を踏まえた紛争解決のあり方ではないかと信じて、徒に言葉を弄ぶことなく努力を続けたいと思っています。

まあ、単に私がパフォーマンスが不得手だということに尽きるのかもしれませんが・・

空家問題や「お隣さんから降って湧いた災難」の費用保険と行政支援

先日、法テラス気仙のご相談で、「隣の家の木の枝が越境して雨樋に落ち葉が溜まるなどの被害に遭って困っている」とのご相談を受けました。

それなら土地の所有者に切除請求(民法233条)すればいいじゃないかと思ったら、案の定というか、所有者はすでに亡くなり法定相続人は相続放棄したようだとの説明がありました。近時は、こうした「問題が生じているが、解決を申し入れるべき相手が誰であるか判然としない」というご相談は珍しくありません。

そのため、私からは、

①その問題を解決したいのであれば、所有者の相続人の調査(相続放棄したのであれば、申述受理証明書の交付要請を含め)を行い、その上で、相続財産管理人の選任を申し立て、選任された管理人に対し切除請求をするほかないこと、

②相続財産管理人の申立・選任の際は、当該所有者(被相続人)に十分な金融資産があることが判明しているのでなければ、相応の予納金の納付=自己負担が必要となること、また、選任申立も弁護士等に依頼するのであれば、一定の費用を要すること(フルコースで40~50万円前後?)、

③その上で、所有者が無資力(問題となる土地以外には資産がない)とのことであれば、管理人の同意を得る形で、自己負担で切除作業をするほかないこと、

④但し、その土地を売却して十分な現金が形成できるなら(管理人は職責としてそれを行う必要がある)、予納金の自己負担はなく、債権者として切除費用等を回収できる可能性があること、

を説明しました。ただ、毎度ながら、そうした問題を相談してくるのは高齢の方(しかもお一人)というのが通例で、ご自身では手間も費用も負担困難との理由で、そのまま放置(或いは、実害がないので違法を承知で仕方なく無断切除する)という展開もありうるのかもしれないとは感じました。

こうした問題に限らず、近年は「隣地に何らかの問題が生じ、当方の所有地(自宅等)に何らかの被害が生じているが、隣地所有者側にはきちんと対処できる者がいないというケースは、年々増加していると思います(上記のように死亡→全員放棄のほか、所有者が存命なれども「困った人」であるとか、所在不明、要後見状態(かつ後見人等の選定なし)といったパターンもあります)。

無縁社会・人口減少社会などと言われる現代では、そうした現象が生じるのは避けがたい面がありますが、その近所で生活する方にとっては、自身に何ら落ち度がないのに、突如、著しい手間と高額な費用を投入しなければ解決できない問題に直面することを余儀なくされるため、どうして自分が重い負担を強いられなければならないのかと、強い不遇感に苛まれることになると思います。

そこで、例えば、そうした問題に対象できる保険制度があれば、被害を受けている近隣住民は、保険会社に申請すれば、保険会社が代理人(弁護士)を手配して上記①の調査や申立を行い、相続財産管理人の予納金や被相続人が無視力の場合の切除費用も保険で賄うことができ、さしたる労力や出費を要することなく、一挙に解決することができます。

これに対し、そのような都合よい保険制度が簡単に構築できるわけがないじゃないかと言われるかもしれませんが、上記のようなケースでは、不動産の売却して十分な売得金が得られれば、その代金から上記の各費用の大半ないし全部を回収することも不可能ではなく、保険会社の「持ち出し」を抑えることができることができるはずです(保険金支払により債権が保険会社に移転するタイプの保険を想定しています。なお、ご相談の件は無担保でしたし、そうした事案では無担保が珍しくありません。むしろ抵当事案の方が、競売により買受人が対処してくれる期待が持てるとすら言えます)。

よって、保険会社側にもさほどリスクの大きくない保険として早急に導入を検討いただいてもよいのではと思われます。少なくとも、相続財産管理人の申立や管理人として実務を担う弁護士の立場からすれば、当事者が一定の経費と若干の手間さえかけていただければ、概ね確実に解決できると感じるだけに、そうした問題が長期放置されることなく解決に向けて進めることができる仕組みを整備して欲しいと思います。

単独の保険として販売するのはハードルが高いでしょうが、火災保険などに附帯する特約として少額の保険料で販売すれば、相応の加入は得られると思います。そもそも、上記のようなケースでは保険会社の持ち出しも大した額になりませんので、弁護士費用特約のように少額の保険料で十分のはずです。保険の対象範囲を、空家問題だけでなく騒音など生活トラブルに関するものも含めれば、かなりの契約者が見込めるかもしれません。

さらに言えば、そうした保険商品が世に出るまでには相当の年月を要するでしょうから、少なくとも上記のような「相続放棄された土地の売却で概ね債権回収ができる事案」に対しては、行政が当事者に費用支援する(その代わり、支援した費用は債権譲渡等により行政が直接に売得金から回収できるようにする)という制度(行政の事業)が設けられてもよいのではと思います。

相当の債権回収ができる(いわば行政が立替をするに過ぎない)事案なら税負担もさほどのものではありませんし、それが「お試し」的に行われ、保険料を払ってでも利用したいという層が相当にあることが確認されれば、保険制度に引き継ぐ(行政は撤退する)こともできるはずです。

なお、上記の制度を構築するにあたっては、現在は「自腹扱い」とされるのが通例となっている相続財産管理人などの申立費用も事務管理などを理由に優先回収を認める扱いにしていただきたいと思っていますし、そのためには、行政・保険業界と司法当局(家裁や最高裁?)との協議などが必要になるのではと思っています。

ここ数年、配偶者や子のない高齢・熟年の方が、自宅不動産+α程度の資産だけを残して亡くなり、親族が相続放棄するため、その物件の管理や権利関係の処理などが問題となる例は多く生じており、私にとっても相続財産管理人の受任事件は、成年後見関係と並んで、ここ数年では最も受任件数が伸びている類型になっています。

特に、冒頭の事案のように、やむを得ない相続放棄などにより管理者不在となっている空家が増え、それが社会問題となっているという現状にあっては、それにより被害を被っている関係者の自主的な努力にのみ委ねるのではなく、負担の公正な分配を確保し、ひいては予防などに繋がるような仕組み作りが問われていると思います。

余談ながら、少し前に、法テラス気仙の相談件数が減少し存続が危ぶまれているという趣旨の投稿を書きましたが、運営者たる法テラスのお偉いさん方も、例えば、今回のように「実際の相談事例をもとに地域社会に注意喚起や問題提起をするような記事」を担当弁護士、司法書士らに作成させ、それを月1、2回の頻度で、自治体の公報や地元の新聞などに掲載させるなどの努力をすれば、かなり違ったんじゃないのかなぁと思います。

少なくとも、私がこんなところでボソボソ呟いていても、社会を変えることは微塵もできないでしょうから・・

この日の気仙の山々は紅葉のピークに入り、里の彩りは11月上旬ころまで続くと思われます。皆さんもぜひ、お出かけになって下さい。

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地方の町弁が「事件に呼ばれる」ということ

尊属殺違憲判決事件は、大学ではじめて法律や裁判を勉強する学生が最初に教わる判例の一つであり、かつ講義を受けたときの衝撃を忘れ難く感じる事件の代表格でもあると思います。

その事件に従事された弁護人の方については、さきほど、下記の記事を拝見するまで全く存じなかったのですが、どうやら地方都市の一般的な町弁の方のようで、業界人的には、金字塔というか雲の上のような方だと思う一方、片田舎でしがない町弁をしている身には、それだけで親近感が沸いてしまいます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/120100058/120200001/?P=1

私自身は、こうした業界で語り継がれる事件に関わることはないと思いますが、「特殊な事情から意気に感じるところがあり、限られた報酬で膨大な作業量を伴う大赤字仕事を手弁当感覚で従事する」経験をしていないわけではなく、本日、その典型のような事件(全国的に注目された、震災に絡む某事件から派生した民事訴訟。ちなみに「出会い」は有り難くないことに国選弁護人から始まってます)の1審判決がありました。

判決を受け取ったばかりなので深く読み込んでないのですが、主要な争点で当方の勝訴となっており、そのこと自体は感謝というほかないものの、相手方が控訴すれば、依頼主は控訴費用の負担が不可能と見込まれるため、手弁当=自己負担で控訴審(仙台高裁への新幹線代)に対応せざるを得ず、その点はトホホ感満載の状態です(東京と違って巨額の事件にはご縁がほとんどありませんので、1審勝訴の際は、いつも高裁の書記官に2審も陳述擬制=不出頭+初回から電話会議にして欲しいと愚痴を言ってます)。

控訴審で、当方の主張(要望)に基づく勝訴的和解ができればよいのですが、(尊属殺事件のように)万が一、2審逆転敗訴になったら大泣きですので、そうした展開にならないよう祈るばかりです。

ちなみに、尊属殺事件の引用記事の中に、「原則論で闘っても勝ち目は薄い、それより事案の特殊性にとことん言及すべきだ」という下りがありますが、私の受任事件も色々と特殊性のあるケースで、そうしたことに言及しつつ常識的な解決のあり方を強調する主張を尽くしており、その点が(判決での言及の有無はさておき)結論に影響したのではと思わないでもありません。

正直、敗訴の可能性も覚悟しており、本音を言えば「ここで負けたら、ようやくこの事件から解放される・・」との気持ちもあったのですが、お前はまだ修行が足らん、もっと精進せよと仰る影が、背中に立っているのかもしれません。

この事件は、最初の段階で、昨年まで当事務所に在籍していた辻先生が少しだけ関わっており、そうしたことも含め、世の中には見えない力が確実に働いているというか、多くの弁護士が時折感じる「この事件に呼ばれた」感を、抱かずにはいられないところがあります。

ちなみに、尊属殺事件を担当された大貫先生に関心のある方は、こちらの記事もご覧になってよいのではと思われます。
http://ameblo.jp/spacelaw/entry-10907208061.html

私も、ある意味、この事件で一番の犠牲になったとも言える依頼主の尊厳ないし意地が多少とも回復できるような解決を実現し、その上で「私ごと忘れてしまいなさい」と言えるような終局を迎えることができるよう、もう一踏ん張り、二踏ん張りしなければと思っています。

マンションの管理組合の理事長が集会決議を経ずに業務委託した場合の紛争

ここしばらく、自宅等で勉強している判例などの紹介ができていなかったので(入力等の作業はそれなりに進んでいますが、紹介文まで作る余力等がありませんでした)、表題の件に関し、久しぶりに1件ご紹介します。

建物区分所有法では、マンションの共用部分の管理に関する事項は管理組合の集会の決議で決する(保存行為は各共有者が行使可)とされています(18条)。

甲マンションのY管理組合の理事長A(規約で管理者と指定されている者)が、平成23年5月に、Yの集会決議のないまま、X社に建物の調査診断等を委託しましたが、Yの臨時総会で契約を白紙に戻すと決議しました。

これに対し、Xは受託業務の完了を理由にYに代金150万弱を請求し提訴し、Aの行為は有効(権限あり)だとか、否としても権限ありと信頼した正当な理由があると主張しました。

これに対し、裁判所は、本件調査委託契約が甲の共用部分の管理に関する事項に該当するので集会決議が必要で、これを欠く行為を管理者Aが行う権限なし(管理者は共用部分等の保存、集会決議実行、規約指定行為の権限しかない。法26条)として、契約を無効と判断し(Xは代表理事の権限を定めた一般社団・財団法人法77ⅣⅤの適用を主張しましたが、退けられています)、Aが権限ありと信じたことにXに過失ありとして、表見代理(民法110条)も否定し、Xの請求を全部棄却しています(東京地裁平成27年7月8日判決判時2281-128)。

私自身はマンションの運営などに関する法的問題のご相談を受けたことはほとんどありませんが、近年はマンション絡みの紛争に関する裁判例が雑誌に掲載されることが増えており、盛岡もマンションが林立していますので、今後は、都会で生じたような様々な問題が、盛岡ないし岩手のマンションでも生じてくることは十分見込まれることだと思います。

マンションの居住者で管理組合の集会への参加はご無沙汰になっているという方は少なくないと思いますが、こうした判決なども参考に、出席して集会の様子などもご覧になっていただいてもよいのではと思います。

ツイッターのなりすまし被害と救済手続に関する現在の難点と改善策

先日、ツイッターのなりすまし被害(AがBの名前などを勝手に用いて自分をBと称して他者の誹謗中傷をするなどの方法でBの名誉を毀損するもの)の救済方法について勉強する機会がありました。

結論として、現在の法制度では、地方の一般的な弁護士がこれを手掛ける上では、初動段階で重大な問題(壁)があり、現状では東京などの一部の弁護士の方に依頼するか、その「壁」を警察に対処していただくか、どちらかを要するのではないか(但し、その「壁」を乗り越えることができれば、それに引き続く問題は、私にも問題なく対処可能)と感じています。

具体的には「ツイッター社に対し、なりすまし投稿者のIPアドレスを開示させる」という問題です。

そもそも、ツイッターに限らず「2ちゃんねる」や他の匿名掲示板であれ、インターネット上に名誉毀損やプライバシー侵害等にあたる投稿がなされた場合、被害者が投稿者を突き止めて賠償請求等を希望する場合、①第1段階として、当該投稿が表示されているサイトの運営者に、その投稿に関するIPアドレス等(アクセスログ)の開示を求める、②IPアドレス等の表示をもとに、その投稿が送られてきたプロバイダ会社(投稿者のアクセスプロバイダ)を確認し(基本的に確認可能とされています)、そのプロバイダに対し、投稿者に関する契約者情報(契約者≒投稿者の氏名、住所等)の開示を求めるという2段階の手順を踏むことが必要となっています。

そして、②については、国内の企業(今ならソネット、ぷらら、ニフティなど)が行っているが通例でしょうから、訴訟手続(発信者情報開示請求)は決して困難なものではないのですが(多分)、①については海外の企業が開設者(運営窓口)になっているサイトがあり、この場合には、基本的にその国を巻き込んだ手続が必要になり、英語絡みの仕事をしていない大半の「普通の町弁」には、対処困難になっています。

例えば、ツイッターの場合、ネットや文献によれば、日本法人に対処能力がなく米国ツイッター社を相手に①の手続をする必要があるとされ、原則として、同社の本社がある米国の特定の州に提訴すべきところ、東京地裁でも提訴可能(逆に、日本で行うなら東京地裁でなければダメ)とされています(根拠は民事訴訟法3条の3第5号、同4条4項、5項、民事訴訟規則6条などのようです)。

この点は、中澤佑一弁護士の著作「インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル」71頁以下に詳細な説明があります。

さらに、裁判の基本ルールとして、相手方の登記事項証明書を取得する必要があり、米国に申請する必要があるため、その種の作業を行うノウハウ(語学力)のある方を通じないと入手は困難と思われます。この点については「ツイッター 登記事項証明」などと入力して検索して発見した、次のサイトが参考になるかもしれません。

また、開示を求める仮処分申立書も米国の住所等を表示しなければならないのでしょうから、そうした点や手続内で生じる様々な論点に英語(時には当該国の法律)で対処することも含め、残念ながら現状では「英語で仕事ができる弁護士」でないと(少なくとも後方支援がないと)対処が容易でない面が強いと思われます。

一般的にIPアドレスの保存期間が3ヶ月とされていることなども考えると、「IPアドレスの開示の仮処分」の申立を希望される方は、すでに実績を挙げている(と宣伝している)きちんとした東京の法律事務所か、上記の問題を十分にクリアできるだけの体制を備えた弁護士の方に依頼するほかないと言わざるを得ないように思われます。

ところで、こうした「名誉毀損投稿の受け皿サイトに外国企業が介在し権利行使の壁が大きくなるという問題」は、「2ちゃんねる」でも生じています。

私は、10年近く前に「2ちゃんねる」の誹謗中傷投稿について相談を受けたことがあるのですが、当時、「2ちゃんねる」の創設者たる西村氏が、事業をシンガポール国籍の企業に売却したとなどという話があったので、「2ちゃんねる」への投稿者のIPアドレスを開示させる手続(仮処分)も、同様の壁をクリアしなければならないので、地方の一般的な町弁では対処困難とお伝えし、実績を宣伝している東京の事務所をご紹介したことがあります。

ただ、この種の訴訟で支払が命じられる金額は必ずしも多くはありませんし、回収の問題もありますので、上記の手続を賄うに足りるだけの賠償金を得ることができるかは、慎重な判断が必要と思われますし、そのせいか、この種の問題(2ちゃんねるなどを含め)で訴訟等の手続がなされることは滅多にないように感じます。

それだけに、「違法投稿者の発信者情報の開示」については、名誉毀損等の刑事事件であるとの前提で、被害者の地元警察など(できれば弁護士一般も)が管理先企業に照会し即日に開示するような実務慣行ないし仕組みを直ちに作っていただければと強く思います。

少なくとも、いわゆるオレオレ詐欺やヤミ金融などで用いられた銀行口座の凍結については、被害者が警察等を通じて口座開設先の金融機関に申告すれば直ちに凍結される仕組みが出来上がっていましたので(私は利用する機会がありませんでしたが、10年ほど前から弁護士も所定書式を提出すれば凍結される仕組みになったはずです)、関係機関がその気になれば、法改正などを要せずとも十分に可能と思われます。

そもそも、一般人を対象とするなりすまし投稿のようなものは、以前に社会を震撼させた遠隔操作事件のような特異な例を別とすれば、被害者の身近な関係にある人(学校なら同級生など在学生・学校関係者、会社なら同僚、社会人なら「ママ友」のような知人など)が行うことが多いと言ってよいはずで、それだけに、事件の本質は近隣関係者による理不尽な加害行為であり、地元の警察など司法機関が解決のため活用されるべきですし、その前提で、当たり前の仕事を行う際に支障(壁)になる実務上の問題があれば、それを除去する工夫が必要だと思います。

そうした意味で、「IPアドレスの開示のため外国企業を訴えなければならず、一般的な実務家では対処困難な壁がある」というのは明らかに不適切な状態になっているというべきで、至急の改善を要すると思います。

被害者の立場からすれば、上記のように、警察等に被害申告をすれば直ちにIPアドレスを開示する制度が一番望ましいですが、それが困難ということであれば、例えば、社会内で一定以上のユーザーが生じているなど違法投稿が問題となる(なりうる)サイトについては、消費者庁の指定制度を作るなどして指定されたサイトを運営する外国企業は違法投稿の被害申告があればIPアドレスを即日に特定の行政部門に開示するものとし(これに応じなければ営業停止=サイト閉鎖などの処分の対象とする)、被害者は開示情報を保管する行政庁に被害状況などを証明して開示申立をし、行政がその適正を迅速に確認して開示の当否を判断するというような「被害者がIPアドレスの開示に関し企業を相手に訴訟手続等をしなくともよい(他の機関で代替可能とする)仕組み」を作るべきだと思います。

せっかく弁護士が激増しているので、日弁連をはじめ、そうした立法運動を盛んに行っていただける方がおられればと思われ、なおのこと残念に感じてしまいます。

当事者として申し立てる、はじめての原発ADR

先般、当方が破産管財人をお引き受けしている企業さんについて、福島原発事故に基づく被害があるものの賠償問題が未解決ということで、一旦は東電に請求したものの芳しい対応が得られなかったので、現在、原発ADR(損害賠償紛争解決センター)の申立を準備している案件があります。

単なる賠償に止まらない色々な論点がある一方で、会社のご担当がご年配とか他の問題でそれどころでなかった等の事情で、当方の関与時まであまり話を進めることができないまま今年に至ったようです。

平成25年春頃、岩手県の企業も風評被害の賠償請求ができるという第三次追補が出されたことや弁護士会の公害環境委員会が相談窓口を仰せつかったことをきっかけに、当時、県内の事業者の方などから多くのご相談をいただいたのですが、ADR等の手続を私に依頼したいという方には残念ながらお会いする機会がなく、その後は、岩手でも被害対策弁護団が立ち上がり、運営を他の先生方にお任せしたことなどもあって、原発被害問題からはすっかり遠ざかってしまいました(この点は、今年の1月に書いた別の投稿もご覧いただければ幸いです)。

そのため、福島からの避難者の方なども含め、この手続にご縁がない状態が続いていたのですが、まさかこんな形で原発賠償問題にご縁ができ、当時収集した資料に出番がくるとはということで、不思議に思っています。

さきほど、センターの和解解決例を久々に見たところ、当時ご相談を受けた会社さんが申立人と思われる事案を見つけ(ご相談の内容に特徴があり、すぐ分かりました)、ご相談の際に仰っていた希望も採用されたという趣旨の解説が付されていました。

その件の注釈を見ると弁護士費用の計上がされていないので、恐らく(私がイヤで他の先生に頼んだという類ではなく)ご担当の方が自ら作成して申立をなさったのだと思いますし、お会いした際のご担当の方の事務処理能力が高かったことも覚えていますので、その件ではそれがベストの対応だったのだと思います。

ただ、企業さんによっては、自ら申立書を作成するのが困難であるとか、作成はしたものの内容について確認を受けた方が望ましいという例もあるでしょうから、そうした方々は、適宜、原発被害向けの無料相談制度などをご利用いただければと思います(個人も企業も利用可能です)。

さすがに事故(震災)から4年以上を過ぎて、少なくとも「風評」に関しては通常であれば新たな被害は考えにくそうですし、私自身、ご縁がないまま終わると思っていた矢先に、こうした事案の配点を受けて驚いているというのが正直なところですが、冒頭の会社さんのように、何らかの事情で先送りの状態が続いている方もおられるかもしれませんので、そうした方には、上記の制度などをお伝えいただければ幸いです。

その事件は、損害賠償以外にも岩手でその問題に詳しいのは私を含めごく少数という特別な論点(詳細は差し控えますが、地域や公の利害にも関わります)が潜んでいる事案ということもあり、久々に「呼ばれた」という感覚を禁じ得ませんでしたが、ADRを成功させないと先に進むこともできませんので、まずは優しい仲介委員や調査官の方に配点していただけるよう、精一杯お祈りしようと思います。

学校からの「不当退学勧奨」と隣接する法律問題

かなり前の話ですが、ある学校に通学中の方(Aさん)のご親族から、学校側から「Aさんが、ある問題行動を起こし、退学処分相当と判断している」と言われ、処分保留?のまま出席停止扱いになっているが、Aさん自身はその「問題行動」をしていないと申告しているとの相談を受けたことがあります。

詳しく内容を伺ったところ、「問題行動」の内容について事実認定のレベルで非常に問題がある(Aさんと学校側で主張内容が大きく異なる上、Aさんが大きな問題を起こしたと主張する学校側の認定事実の証拠がない)ばかりか、学校側の認定事実を前提にしても、退学処分に見合うとは考えにくい(仮に、学校が退学処分に踏み切れば、裁判所が裁量逸脱を理由に無効の判決を出すことは確実)と言えるものだと分かりました。

そこで、すぐに学校側に、対応が法的に誤っていることを詳細に指摘し、Aさんの復学等を求める趣旨の通知を出したところ、ほどなくAさんの復学が認められました。

その件では、従前の経緯(学校側が、必ずしも正当と言い難い理由で長期間Aさんに出席停止を命じていたこと)について学校の責任を問うという選択肢もあり得るとは思いますが、円満解決のご希望もあり、私の関与は終了となりました。

在学契約を巡るトラブル(学校の利用者に対する退学勧奨など)は、弁護士にはあまりご縁のない類型の仕事ですが、実際に手がけてみると、労働者(労働契約)に関する退職勧奨(及びその先にある解雇問題)や、大企業と中小企業との継続的取引における契約解消の問題など(これらは多数の紛争事例があり、私もそれなりに関わっています)と非常に似ている面があると感じました(ですので、事案検討の際、それらとの異同も視野に入れながら考えたりしました)。

で、それら類似分野との比較で感じたのは、学校問題は、これに類似する他の法分野に比べ、色々な意味で遅れているのでは(法的保護のスキームも当事者の意識等も未成熟ではないか)という点でした。

例えば、労働問題(退職勧奨)であれば、不当勧奨だと感じた労働者が、すぐに自ら弁護士に相談したり、労働組合の支援を受けるなどといった方法をとることもできます(もちろん、皆がそのような行動に出るかという問題はあるでしょうが)。

これに対し、学校問題の場合は、当事者が未成年(時にはかなりの若年者)ということもあり、自ら正しい事実を主張し、それを前提とする法的保護を求めて、能動的に他者の支援を求めるということが容易でなく、親権者等の庇護者を通じて行わざるを得ないため、親権者等が十分にその理解を持ち、率先して行動に移していただける方でないと、入口段階で時間を空費する可能性が高くなります。

また、未成年者こそ「弱者」の最たるものと見るべきなのに、労働組合のような支援組織がおよそ存在しないという点でも、最近よく指摘される「子どもの貧困」問題と通じる面があるように思われます(大人の弱者保護の制度ばかり充実させて、子供の保護の制度を設けようとしないなどと言ったら、それはそれで、その種の運動をされている方に叱られるかもしれませんが)。

今回の件でも、私は、相談を受けた当日に「それは絶対におかしい、すでにかなりの時間を経過しているので、今すぐに学校側に善処を申し入れるべきだ」と述べ、(幸い、ご本人が事実関係を整理してお持ちになっていたことや時間が確保できたこともあり)当日に長文の内容証明郵便を書き上げて郵送したのですが、Aさんの損失(相当な期間の学校生活を失ったこと)に照らせば、もう少し早く行動していただきたかったと思わないこともありませんでした。

また、学校(担当教員等)の対応についても、利用者の正当な権利、利益を尊重した上で、これと学校側の利益等との正当なバランスを図るべきという姿勢や、それを欠いていれば学校側が利用者から法的な責任追及を受けるリスクがあるのだという意識をきちんとお持ちなのだろうかと感じる面がありました。

労働問題でも、優良企業からブラック企業までピンキリだとは思いますが、「デタラメなことをしていれば責任を問われる」という意識は、少なくとも学校に比べれば割と浸透している(聖域視されるということはない)のではないかと思います。

そうした意味では、学校等から、在学の当否などの基本的な事柄について、筋違い(或いは処分の内容が重すぎる)と感じるような措置・勧告を受けた方(の関係者)は、その措置等に関する法的なルールも確認した上で賢明な対処を考えていただければと思いますし、学校や利用者の双方が適切な対処を積み重ねることで、学校と利用者の双方に、いわゆるコンプライアンスの意識が高まっていくことが期待されているのではないかと思います。

人が居住する物件の競売に関するリスク

住宅ローンの支払途絶などにより住宅が競売される例は珍しくありませんし、大半は、平穏に立退が実現されることも多いのだとは思いますが、中には、居住者が退去を強硬に拒否し、競落人は難しい対応を迫られることもあります。

私自身は経験がありませんが、修習生の頃に、他の地方で修習していた方から、包丁を振り回すような居住者もいたという趣旨の話を聞いた記憶があります。

また、居住者が将来を悲観して室内で自殺するという事案も考えられますが、このような事態は、任意退去の拒否とは異なるリスクを競落人(買受人)に生じさせることになります。

例えば、他者に賃貸させる目的で、競売に出ているマンションを購入したところ、競落直後に居住者が室内で自殺するという事態が生じた場合、その物件を賃貸する際には、借受希望者にはその旨を説明すべき信義則上の義務が生じ、故意に告げずに契約をさせた場合には、借主に対し賠償義務を負うことになります。

先日の判例時報で、そのように借主の貸主への賠償請求を認めた例(契約の約1年前にそのような事実があったことを知り、解除・退去して賠償を求めたもの。認容額100万円強)が取り上げられていました(大阪高裁平成26年9月18日判決判時2245-22)。

その物件を競落・取得した貸主は、弁護士の方だそうですが、素人が競売に関わることのリスクを、改めて感じさせるものと言えるかもしれません。