北奥法律事務所

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環境問題

岩手弁護士会・公害環境委員会の景観アンケート調査①

昨年、私が一応委員長となっている標記の委員会(以下「当委員会」といいます。)では、まち並み(歴史的建築物など)保護などを含む景観問題に関する取り組みの一環として、各地の弁護士会の景観問題への取り組みを照会するアンケート調査をしました。

全52会のうち計35会から回答をいただきましたが、景観問題は弁護士会の活動としてはメジャーとは言えない分野ということもあり、圧倒的な規模を誇る東京弁護士会と、歴史的建築物の保護の関係で先端的な取り組みをしている京都弁護士会など僅かな弁護士会からは詳細な回答をいただいたものの、多くの弁護士会では特段の取り組みはしていないとの回答でした。

とりあえず、ここではアンケートの内容をそのまま紹介します。

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1 貴会では、地域内の景観の保護(歴史的、文化的景観等を中心とするまち並み保護のほか自然的景観なども含む。以下同じ)について、現在又は概ね過去5年以内に以下の活動をなさっていますか。該当するものに○を付してご回答下さい。また、具体的な活動内容を余白部分又は別紙にご記入下さい(一部の文言を省略)

(1) 保護(法規制など)の当否が問題となっている個別事案の現地調査及び関連する法規制などの調査
(2) 当該事案ないし法制度に関する地方公共団体(都道府県及び市町村又はいずれか。以下「自治体」)や国などへの意見書の提出
(3) 景観保護等を目的とした市民向けシンポジウムなど、地域内の住民などへの働きかけ
(4) 景観保護等を目的とした自治体の審議会等への会員の推薦及び推薦した委員への条例化等に関する働きかけ、自治体の首長や地方議会議員への働きかけなど
(5) 上記以外の活動ないし運動
(6) 現在及び対象期間内に、上記(1)ないし(5)に該当する活動はしていない。
(7) その他・ご意見など

2 貴会は、地域内の景観の保護のため、以下の活動をし、或いは措置を講じていますか。該当するものに○を付してご回答下さい。補足説明をいただける場合は、余白又は別紙にご記入下さい。

(1) 自治体の景観審議会などの委員に関する貴会会員(特に、貴会公害対策環境保全委員会の委員)の推薦
(2) (1)で推薦した貴会会員など審議会の委員との定期又は不定期の意見交換等
(3) 地域内で景観保護などに取り組む団体、企業などとの協働、意見交換など
(4) その他の活動・措置
(5) 上記に掲げているような活動等は特に行っていない。
(6) その他・ご意見など

3 貴会がこれまで地域内の景観の保護を巡る制度(景観保護等を目的とした制度)に関し、非常に問題があり、特に優先的な改善を要すると感じている点(①景観保護を目的とする建築等の規制又は保護の措置の不足、②住民参加その他の手続上の不備のほか、③行政又は立法による不要・過剰な規制なども含む)と感じた例(論点)がありますか。あると感じている場合には、その内容をお知らせ下さい。

4 地域内の景観保護の問題に関し、行政による建築等の規制又は保護の措置以外の事柄(例えば、居住者・所有者の相続などの問題や空き家対策、近隣紛争その他の私法上の問題など)で、貴会のこれまでの活動などを通じて、特に喫緊の対策を要すると考える事柄はありますか。あると感じている場合には、その内容をご教示下さい。

5 その他、景観保全・活用などの問題を巡る弁護士会ないし弁護士の活動に関し、貴会において特に取り上げるべきと考える事項(ご意見)がありましたたら、ご教示下さい。  (以上)

東北油化の倒産と周辺環境の原状回復

先月頃から、奥州市江刺区にある東北油化という家畜の死骸処理を行う会社が周辺に悪臭等を生じさせたとして行政処分を受け、程なく自己破産申立をしたとの報道がなされています。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20141012_3

私自身は(少なくとも現時点で)この事件には全く関わっていませんので、報道されている以上の事実関係は知りませんが、岩手県から水濁法や条例に基づき汚水や悪臭の是正措置を命じられていた中で破産申立がなされたということは、一般論としては、法令に適合する是正措置を講ずるだけの資力がないのではと危惧されます。

当然、破産したからといって会社に是正措置を講ずべき義務が無くなるわけではありませんし、会社施設の原状回復(特に、周辺環境に著しい悪影響を生じさせるような有害物質等の除去)は、破産手続=管財人の業務上も優先性の高い事務とされています。

ただ、破産手続は、換価・回収可能な会社財産(破産財団)の範囲内で会社の財産の管理や配当を行う手続ですので、もし、同社が当該措置(水質などの原状回復工事)を行うに足る金融資産等を有するのなら、管財人が早急に当該措置に着手するでしょうが、それを賄うに足る資産がない場合は、管財人としては手の施しようがありません。

この場合、有害性の強い物質が拡散するなど周辺環境への悪影響が看過できないもので、税金を投入してでも原状回復をすべきだと判断されるときは、岩手県知事は、行政代執行により一定の除去工事を行う可能性があります(廃棄物処理法19条の8)。

仮に、上記の事情が認められるのに県が代執行を行わない場合には、住民は、豊島事件のように公害調停を申し立てることで、県に代執行を行うよう働きかけることが、方法としては考えられます(行政代執行の義務づけ訴訟という手段も考え得るかもしれませんが、ハードルはかなり高いと思われます)。

ただ、岩手県庁(環境部局)は、県境不法投棄で全量撤去を早期決定するなどの前例がありますので、現在の制度上、代執行の必要性が高い案件であれば、そのような手続を経ずとも、率先して一定の除去工事を行うことは期待できるのではないかと思われます。

なお、管財人(破産財団)が自ら実施できるにせよ、税金を投入(代執行)せざるを得ないにせよ、債権者や納税者の犠牲のもとに高額な原状回復工事を余儀なくされる場合には、そうした事態を招いた会社役員など主要関係者の個人責任を厳しく追及すべきではないかという問題があるかと思います。

水濁法は仕事上関わったことがないため詳しくは存じませんが、事案次第では、廃棄物処理法を含め、何らかの刑事罰の適用がありうるかもしれません。また、刑事罰に至らなくとも、会社等に対する民事上の賠償責任(特に会社法に基づく役員の賠償責任)は十分にありうるところです。

この事件が、そうしたスケールの大きい事件なのか、さほど除去工事に費用を要せず管財人が簡単に実施できるレベルなのか分かりませんが、周辺環境に禍根を残すような形にはならないよう、住民や報道関係者などは、今後も成り行きを注視していただければと思います。

また、報道によれば、同社は県内で牛の死骸の処理ができる唯一の施設で、県内の畜産農家への影響が懸念されるとのことですが、そのような企業であれば、経営破綻になる前に、行政が経営の健全性を何らかの形で調査したり、経営困難な事情が生じた場合には、破綻になる前に事業譲渡など混乱回避の措置を講じる仕組みづくりが必要ではないかと思われます。

そうしたことも含めて、一連の経過を検証し今後に繋げるような取り組みがなされることを期待しています。

自治体のゴミ分別回収に関する取り組みとゴミ袋開封条例

平成15年から、日弁連の公害対策環境保全委員会の委員(廃棄物部会)を拝命していたのですが、今年になって、他の方に席を譲らなければならないとのことで、残念ながら整理解雇されてしまいました。

ただ、また空席が出来れば復活したいとの希望があり(東京の弁護士会館に書籍を買いに行きたいからという理由が半分ですが)、お願いして廃棄物部会ML(メーリングリスト)には残留し、私が運営を預かっている岩手弁護士会の公害対策環境保全委員会の活動の参考にもさせていただいています。

で、本題に入りますが、先日、部会MLに、標記の問題に関し識者が賛否の見解を表明した記事が紹介され、その記事では、弁護士の方が反対派(プライバシー保護重視)の立場で論陣を張っていました。

自治体の一般ゴミ(一般廃棄物)の細かい分別回収は、盛岡市でも10年近く前から導入され、「プラスチック容器包装」「紙容器包装」などに分けて出すようにと言われています。

ただ、分別回収については、全国的に、分別ルールに従わずに排出する人が一定数いるため、不公平感の解消などを理由に、袋を開封して当事者を特定し、改善指導したり罰則(過料)を課す条例を定める自治体も生じています。

ネットで検索すると、次の記事などが出てきており、いずれは岩手県内でも導入(条例化)するような話が出るかも知れません。
http://www.asahi.com/articles/ASG81347RG81PLZB00C.html
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140125/wlf14012513350012-n1.htm

岩手の上記委員会は、今も開店休業に等しい状態が続いていますが、何らかの機会に、現在行っている他の分別履行の確保策の有無なども含め、県内自治体にアンケート調査するとか、勉強と提言を兼ねた何らかの取り組みができたらと思わないこともありません。

ゴミ開封条例は違憲になるのではないかとの議論もあるようですが、その当否は、詰まるところ、抽象論ではなく分別の必要性や不遵守による弊害・損失等の程度をはじめ、ディテール(立法事実)をどこまで明らかにできるかで定まるでしょうから、その点でも、自治体ごとの細かい取り組みや実務の実情などを、どなたか整理して論点整理などしていただければ(或いは、そうした作業こそが、弁護士会=法律実務家集団の果たすべき役割ではないか)と思っています(自分がどこまでできるかはさておき)。

最近では、奥州市江刺区で「家畜の死骸処理を行う企業が周囲に悪臭を生じさせているとして操業停止命令を受けた企業があり、その問題についても、西日本であれば、とっくの昔に近隣住民が差止請求訴訟をしているのではないかと思ったり、当委員会として何かできることはないのだろうかと思ったりすることもありますが、単なる勉強会以上の域を出ていない集まりなので、まずは、事例学習的なことでもやってみるのが身の丈というべきなのかもしれません。

勉強せずに皆で悪臭だけを嗅ぎに行っても、物笑いの種にしかならないでしょうし・・

ともあれ、「自治体のゴミの分別回収」の問題について、岩手県内の自治体の取り組みなどをよくご存知の方がおられれば、ご教示いただければ幸いです。

盛岡の町家文化と地元弁護士の役割

先日、古い町屋群が保全されている盛岡市鉈屋町で開催された「盛岡町家 旧暦の雛祭り」と、北上川を挟んだ対岸の仙北町で開催された「森とひなまつり 明治橋仙北町界隈」の双方を拝見してきました。

とりあえず、関連HPを貼り付けますので、あまりご存じでない方はこちらをご覧下さい。
http://machijuku.org/event/
http://www.city.morioka.iwate.jp/event/event/028793.html

http://www.morioka-times.com/news/2014/1404/11/14041101.htm
http://www.morioka-times.com/news/2014/1404/09/14040901.htm

鉈屋町の方は、今年で10年目だそうですが、通り沿いの家々に雛飾りが溢れ、規模も大きく人力車や和装の方々のパレードなど、和服姿の女性(年齢層は様々でしたが)を沢山お見かけし、古い街並みを生かした華やかなお祭りとしての雰囲気が良く出ていました。

仙北町の方は、鉈屋町と比べると規模は遙かに小さいですが、「徳清(佐藤家)」と金澤家の2つの文化財的な価値のある邸宅の公開を兼ねており、「雛飾り」の規模も、私が拝見した限りでは全体を通じて金澤家の飾りが最も見応えがありましたので、鉈屋町と仙北町の双方を見ないと勿体ないと思いました。

ところで、私が「ひな祭り」を見に行ったのは今回が初めてだったのですが、私は雛人形の価値などが分かる人間ではありませんので、主たる目的は、これまで拝見したことのない鉈屋町の建物群や徳清倉庫などの内部を見学することと、もう一つの理由がありました。

私が一応の責任者(委員長)をつとめている、岩手弁護士会・公害対策環境保全委員会では、来月、鉈屋町側の主催団体である「盛岡まち並み塾」の事務局長である渡辺敏男氏(建築家)に、「歴史的景観の保全」等に関する講義をお願いすることになっています。そのため、鉈屋町等の町家の文化的価値やその保全活動などが講義のテーマになると予測されるので、予習としてお邪魔したという次第です。

ただ、「まち並み保全」というテーマは、歴史や古い街並みがそれなりに好きな人なら誰でも入っていけそうな感じがする反面、私の知る限り、日弁連(公害環境の委員会)でも取り上げられておらず、建築実務に携わっている方でないとピンと来ない建築規制の細かい話が取り上げられやすいこともあって、弁護士の出番がどこまであるのか(出番を作れるのか)、よく分からないというのが正直なところです。

反面、本丸というべき建築規制の話にこだわらず、その周縁で生じる様々な法律問題に関する御用聞きのような形であれば、平凡な弁護士にも色々と出番が生じる可能性はあるのではとも感じています。

例えば、数世代に亘り受け継がれている町家の中には、数十年前に亡くなった方の名義のままになっていて、現役の相続関係者の意思統一が困難であるなどの理由で、相続登記に困難を伴う例があるかもしれません。また、長期間、空き家の状態が続き、近隣の方にとっても防犯、安全面で不安があり、管理や権利関係の処理を速やかに行うことが望まれる例、敷地の利用関係が複雑であるとか境界などに深刻な対立を伴う例など、弁護士がお役に立てる、立つべきケースが幾つもありそうな気がします。

また、今回の徳清倉庫さんのように区画整理などの形で行政との接触(往々にして利用形態に関する干渉や変更要請)を受けることも多いでしょうから、中には行政と見解の相違が生じて法的検討、調整を必要としたり、或いは、利害関係者の多くの方が意思統一できているものの、一部の方の反対があって物事が進まず、早期解決のため弁護士による法的な対応が望まれるという例もあるのではと思われます。

そして、それらの具体的な対処を通じて現行法制の問題点や限界を明らかにできれば、「まち並み塾」のような団体さんと協力して、法律や条例等のあり方について深みのある提言をするということもありうるのかもしれません。

それらの事柄にお役に立つことを通じて、街並みを守っている方々が一致結束して文化的価値を高める営みをすることを下支えするような活動ができれば、「街並み」そのもの(文化的価値云々)について込み入った知識がなくとも、地元の弁護士としての役割を果たすことができるのではないかと思われ、その点も含めて、地域の「宝」の価値の保全や向上に取り組んでおられる方々との協働関係を持つことができればと願っています。

 

東京電力と「放射性廃棄物」の処理に関する措置命令

産廃処理ないし原発事故絡みの廃棄物処理に関心のある方向けの投稿です。

先日から、「福島の製材会社が、放射性汚染のため、東電の賠償金を原資として木くずの廃棄処理を業者に委託したところ、その業者が滋賀県などに不法投棄したという事案」のニュースが流れています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014040402000128.html

この点、廃棄物処理法の一般原則からは、不法投棄の実行者たる処理業者及びその関係者が撤去責任を負う(法19条の5。具体的には、投棄先の都道府県を管轄する知事等が撤去措置命令を行う)ことはもちろん、委託した排出事業者(製材業者)に、その処理業者が不法投棄を行うことについて過失がある(投棄を予測し得ただけの事情がある)場合には、その排出事業者も措置命令の対象となります(19条の6。但し、伝家の宝刀的な規定で、未だ発出例がありません)。

その上で、仮に、この事件で、製材業者ではなく(だけでなく)東電にも、処理業者が不法投棄を行うことについて過失が認められる場合(例えば、処理業者の選定などについて東電が深く関与し、かつその業者の処理対応能力について疑義を持ちうるだけの事情がある場合など)には、木くずを廃棄処理せざるを得ない原因を作り出した東電にこそ、法19条の6に基づく撤去責任を認めるべきではないかという立論が成り立つように思われます。

また、仮に、この廃棄物が「汚染対処特措法」の指定廃棄物(1㎏あたり8000ベクレル超)に該当するのであれば、廃棄物処理法ではなく同法の適用対象になるのではないか、その場合は、同法51条に基づき国(環境大臣)が東電その他に措置命令を出すのか(できるのか)など、さらなる論点が生じてきそうな気もします。

少し調べてみたところ、この件では、処理業者とは別の業者が撤去作業を実施したとのネット投稿を見かけたので(双方の関係などは不明です)、東電の責任云々の出番はなさそうですが、膨大な量の「放射性廃棄物」の発生に照らせば、今後も似たような事件が生じる可能性もあります。

私は、県境不法投棄事件をきっかけに、廃棄物処理法の措置命令について少し勉強したことがあったので、今後もこの種の問題の報道に関心をもって見守っていこうと思っています。

 

県境不法投棄事件における県民負担と果たされぬ総括

日本最大規模の不法投棄事件と言われた、岩手青森県境不法投棄事件(平成11年発覚)について、ようやく現場の廃棄物の撤去作業が終了したという報道がなされていました。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20140326-OYT8T00737.htm

報道によれば、撤去等のため両県併せて708億程度の費用を要した一方、岩手県が回収できたのは8億程度に止まるとされています。

私の記憶では、撤去計画が承認された平成16年頃の時点で、青森県の見積が440億、岩手県の見積が220億程度(大雑把に言えば、青森:岩手が2:1)となっていましたので、岩手県については、最終的な費用は236億円程度になったと思われます。

そして、産廃特措法により、国が費用の6割を補助するはずなので、単純計算で県の負担額は94.4億円となり、上記の回収額を全額、県が補填できるのであれば、最終的な岩手県=県民の負担額は、86.4億円となります。

岩手県の現在の人口が130万弱だそうなので、単純計算で、子供も含む一人あたりの負担額が6646円強、4人家族なら2万6600円ほどの費用負担を、首都圏など全国各地から運ばれてきたゴミの撤去のため、県民が強いられたという計算になります。

もちろん、100億円弱もの巨額の資金があれば、震災復興であれ県北その他の振興や福祉であれ、地域のため相応に有効活用できたはずです。

県境事件は、今やすっかり風化し単なる公共事業のように思われているのかもしれませんが、上記の機会を県民から奪ったものだと県民には受け止めていただきたいと思います。

ところで、この事件の顕著な特徴は、主犯格の2つの産廃処理業者が青森と埼玉で営業する業者であり、被害拡大に関しては、青森県と埼玉県の監督不行届が大きかったのではないかと指摘されている(そのため、岩手県は当初から、被害県だとアピールしていた)点とされています。

結局、現行制度の限界として、この点(青森県と埼玉県の監督責任)を法的な手続により問う機会は得られぬまま、この事件は幕引きを迎えてしまったのですが、果たしてそれでよいのかという点は、皆さんにも考えていただきたいところです。

この点に関し、平成22年の日弁連人権大会では、「A県の許可を受けた業者がB県で不法投棄事件を引き起こした場合、事情に応じてA県もB県が要した撤去費用の一部を負担する制度を設けるべき」という趣旨の提言をしています。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2010/2010_3.html

残念ながら、このような制度は未だ実現していないことはもちろん、公の場で議論の俎上にすら載せられていないでしょうが、少なくとも、岩手県民は、そのような制度がないことによって、上記の負担を強いられているのだという現実は、認識していただきたいところです。

もちろん、岩手以上に高額な負担を余儀なくされた青森県はもちろん、古くから産廃問題に苦しんできた埼玉県にとっても、有り難くない話だとは思いますが、そうした制度の存在が、行政の担当者に緊張感を与え(言うまでもありませんが、そのような形で自治体=住民に生じた負担については、事実関係によっては自治体の担当者や首長などが住民訴訟の形で責任を問われる可能性があります)、結果として早期の監督権の行使=被害の防止に資するという見方はできるのではないかと思います。

撤去完了により事件の幕引きが見えてきたという現状を踏まえ、岩手・青森両県の住民の手で、改めて、事件の総括を考える機会があってもよいのではと感じています。

 

岩手教育会館の建替と「歴史まちづくり法」

盛岡城址(岩手公園)の袂にある岩手教育会館(7階建)が、3年後を目処に4階建の建物に生まれ変わるという報道がありました。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20140319_3

盛岡では、古くより盛岡城(石垣)から岩手山を望む眺望を誇りとする市民感情があり、景観法(平成16年制定)が作られる遥か以前(昭和59年頃)から、「盛岡城址の石垣の上から岩手山を結んだ線よりも高い位置まで建物を立てるのは禁止」というガイドラインを作成していたそうで、実際、その後に、少し離れた中央通に計画された商業ビルが、市の強力な「行政指導」で高さ制限を受けたという例もあったと聞いています。

ただ、その話については、「盛岡城の石垣(二の丸~本丸)の真正面(岩手山が見える北東面)には、産業会館(サンビル)、教育会館、農林会館の3つの巨大建物がドデンと居座っており、それらのせいで岩手山の眺望がちっとも見えないじゃないか」と思わざるを得ないところがあります。

少し調べてみると、この「岩手山眺望阻害三兄弟」などと言ってみたくなる3つの建物は、いずれも昭和30~40年代に竣工された建物なのだそうで、反対運動的なものがあったかどうかは知りませんが、少なくとも、当時は、法令上の規制は言うに及ばず、行政指導すら無かったのでしょうから、その意味では、非難できる筋合いでもないのだろうと思います(時系列的に見れば、この三兄弟の出現が、上記のガイドラインの登場に一役買っているかもしれませんが)。

他方、上記のガイドラインは、現在、景観法に基づき盛岡市が平成21年に策定した景観計画に引き継がれており、法律上の明確な根拠がありますので、これに沿った形で教育会館が建て替えられることについては、上記の眺望(景観)に価値を感じる者の一人として、率直に歓迎したいと思っています。

折角なので、サンビルと農林会館も、余勢を駆って建替(或いは移転)を検討されてはいかがでしょうかと思ったりもします。ちょうど、岩手山の眺望問題をさほど考えなくてもよさそうな東側の岩手医大が移転することから、そちらに「新・産業農林会館」を、飲食店舗などを交えた複合施設として作っていただいてもよいのではと思わないでもありません。

ところで、教育会館の建替にあたっては、景観等の観点から、もう一つ、指摘しならない事柄があり、このことは、とりわけ盛岡市民の方々には、よく考えていただきたいことだと思っています。

平成20年に、城跡など歴史的な名所・旧跡を残した風景の保全やまちづくりの活用への支援等を目的として、「歴史まちづくり法」という法律が制定されています(正式名称は、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律)。

法律の内容や活用状況は、以下に引用した国交省サイト(パンフレット等)をご覧いただければと思いますが、代表例として金沢城趾とその周辺地域の整備や保全などが掲げられており、金沢市を手本として城下町整備をすべきと思われる盛岡城趾及びその周辺地域についても、この法律の適用を受け、景観の保全や充実化に取り組んでよいのではないかと思われます。
http://www.mlit.go.jp/toshi/rekimachi/toshi_history_tk_000003.html

そして、教育会館の建て替え(新会館の建築)にあたっても、「盛岡城址に隣接する主要建築物」としての教育会館のあり方・位置づけを再検討いただき、デザイン等はもちろん、会館の機能等のあり方も含めて(言うなれば、佐藤可士和氏的な発想で)、石垣等と調和し歴史的な風致の向上を強く支えるような会館を造っていただきたいと思いますし、場合によっては、そのプロセスには、会館の施工主や市役所以外の方(歴史的景観の保全等に知見等のある専門家や住民等)が関与してもよいのではと思ったりもします。

例えば、藩校(明義堂・作人館)の写真や図面等が残っているのであれば、その意匠をデザインに取り入れるのが、「教育会館」に相応しいと思わないでもありませんが、いかがでしょう。

残念ながら?、盛岡市は、まだこの法令に基づく「歴史的風致維持向上計画」の認定申請をしていないようですので、ぜひ、地元の各種団体等(某「明るく豊かな社会を作ることを目的とした団体」など)におかれては、そうしたことにも取り組んでいただければ幸いに思いますし、住民一般にも、この点に関心を寄せていただければと思っています。

 

地球温暖化対策プロジェクトチーム

平成16年から18年頃まで、日弁連公害対策環境保全委員会の「地球温暖化対策プロジェクトチーム」に所属していたことがあります。

日弁連の公害環境委員会は、私が所属する廃棄物部会のほか、水部会、化学物質部会、環境法部会、自然保護部会、原子力・エネルギー部会など、7つの部会に分かれて活動しています。

そして、それとは別に、部会横断的なテーマや新たなテーマを取り扱う場合に、有志がPTを作って、調査・意見書などの活動をしており、地球温暖化、水俣病、低周波音、東アジアの環境問題などを取り扱っています。

私は、平成16年に地球温暖化PTが発足した際、廃棄物部会からも一人を出向させよとの話があり、当時、部会では一番下っ端(若手)だったため、拝命に抗うこともできず、参加していました。

主力の先生が京阪神の方々だったため、何度か大阪に出張し会議に参加したほか、経団連や東京都庁への聴取に参加したことなど、懐かしい思い出です。

私自身は、地球温暖化の専門家などと言える身ではなく、主力の先生方の議論を拝聴し、意見書のごく一部のパートを担当するのが精一杯でしたが、当時、排出権取引(キャップ&トレード)や自治体の取り組みなど、地球温暖化を巡る様々な論点に関する資料を頂戴し、多少は勉強させていただきました。

地球温暖化PT自体は、平成18年に意見書を出して一旦解散し、その後、平成20年?頃に第二次PTが編成されたのですが、そちらは参加を辞退させていただいたため、平成18年以後、地球温暖化問題には全く縁のない状態が続いています。

最近、事務所の古い記録の整理(廃棄)を始めているのですが、温暖化PTの記録も、あれから出番がないまま、先日、ようやく当時の記録の大半を廃棄することになりました。

その中には、当時、温暖化問題を巡って議論されていた様々な関連テーマに関する新聞記事や欧州の温暖化対策法制など、地球温暖化問題に本腰を入れて取り組んでいる方にとっては、資料としての価値が相当にあるものも多く含まれていました。

そのため、県内等でそうした方にお会いする機会があれば、お渡ししたかったのですが、機会に恵まれず、残念というほかありません。

地球温暖化以外にも、公害対策環境保全委員会の関係者が作成した、日弁連等の様々な意見書も、平成10年頃から現在のものまで、ある程度は保存していますが、出番のない状態が続いています。

当事務所としても、古い記録の廃棄等が必要な段階に来ていることもあり、どうしたものやらです。

弁護士を15年も続けていると、何年も前に、色々なことと関わっていたことを思い返すことがありますが、現在まで何らかの形で続いているものは必ずしも多くはなく、その点は残念に思います。

時代の変化なのか、社会が大切なものを置き去りにしているのか、自分でもよく分からないというのが正直なところです。