北奥法律事務所

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不動産登記

相続財産管理をめぐる様々な不動産登記と負動産処理の実情

今回は、相続財産管理人の登記業務などに関する宣伝・・・というより愚痴です。

ここ1~2年、相続財産管理人で、通常の弁護士業務では馴染みの無い様々な登記と、登記申請の必要書類の取得のための交渉などを色々としなければならない事案が幾つかありました。

先日終わったⅠ事件では、山間部の別荘地帯にある買い手のつきにくい土地で、ウチならなんとかなるかもと仰る不動産屋さんにお願いして5年以上実を結ばず、受任から10年も経て、ようやく国庫帰属手続で完了したのですが、国への移転登記に先立ち、相続財産法人への名義変更のほか、

α 当該土地に付された根抵当権の抹消登記(休眠権利者企業への訴訟)
β 当該土地に付された買戻特約の抹消登記(登記原因証書の作成その他)

が必要となり、国庫帰属の条件(お約束)で、構図で隣接地所有者らを沢山調べて「引き取っていただけますか」のアンケート調査(当然、拒否か無視)をしなければならず、1円にもならぬ仕事(国庫帰属は対価ありませんので)のため膨大な作業に追われ、他に相続財産の全く無い事案(限られた予納金のみ)ということもあり、タイムチャージ換算で予想どおりの大赤字事案となりました。

また、Ⅱ事件では、被相続人Aの自宅が、いずれも故人である両親BやCの別々の名義の土地や未登記建物などで構成されており、まとめて売却するには、売買契約の許可申立の前に

①解体済みの旧自宅建物・甲1の建物滅失登記(業者滅失証明書は当然無し)
②現自宅建物・乙1の所有権保存登記登記
③現自宅土地・乙2の所有権移転=相続登記(A→C)
④旧自宅敷地・甲1の相続登記その1:B→A・C共同相続
⑤旧自宅敷地・甲2の相続登記その2:A持分のC相続
⑥自宅土地建物と旧自宅敷地の相続財産法人への表示変更登記

を行わなければならず、いずれも、弁護士が通常取り扱う仕事ではないため、法務局のサイトや文献などを色々調べて自分なりに登記申請書案を作成して法務局に相談→あれこれ言われて修正等→再相談→あれこれ、という作業を余儀なくされました。

これまで名義変更登記(や清算人選任など)以外はほとんど行ったことがなく、経験値がかなり上がりましたが、所詮、弁護士は登記の専門家ではありませんので、「俺は登記も分かる弁護士だ」などと叫んで司法書士さんと競争しようなどという発想・能力は微塵もなく、他の多くのレア事件(一生に一度くらいしか出逢わない類型)と同様、資格取得マニアの人のように、他に活かす機会もなく終わってしまいそうな気もします。

他にも、田園地帯の廃屋敷地等しか財産がない(ので相続放棄された)Ⅲ事件で、解体費用超過などを理由に不動産業屋さんに匙を投げられ、ダメもとで多数の近隣所有者を調査し照会したところ、運良く「タダ同然なら引取可」との回答を一人の方からいただき、譲渡に向けた準備を行っているものの、農地(実情は原野)が含まれているので、非農地証明による地目変更登記が必要になり、諸々の交渉の末、先日、地目変更を終えてこれから譲渡の作業に入るところです。

こうした事案に限らず、近時は、膨大な作業をこなさなければならないのに報酬(受任費用)は限られた金額しかいただけない大赤字事案が多く、株高云々で繁栄を謳歌する方々などは遠い世界のように感じるほかありません。

Ⅱ事件だけは、諸般の事情で珍しく黒字の期待が持てるものの、報酬審判は1年以上先なので、それまで滅んでなるものかと、某所で撮影した花火写真で自身を慰めつつ、ぢっと手を見る日々です。

平成29年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成29年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

昨年も交通事故被害者側での受任事件が多数あり、ほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案のほか、過去には、死亡事故重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案も含め、幅広く取り扱っています。

事故直後など加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、神経障害に関する後遺障害(14級9号など)をはじめ、幾つかの後遺障害につき認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

交通事故以外でも、スキー場のゲレンデで転倒事故に遭った方が、運営企業の管理責任を問うた賠償請求訴訟(責任の有無が争点になり一定の勝訴的和解で解決)や犯罪被害に遭った方の賠償請求(実務上相当とみられる額で示談)を担当したり、介護施設での転倒事故に関して責任の所在などを検討するなど、交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

昨年も、交通事故などについては弁護士費用特約により自己負担なく依頼をなさる方が多くありました。自動車保険などでは、必ずこの特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

昨年も個人間の貸金に関する紛争、不動産の登記(古い登記の抹消など)に関する訴訟、不動産の賃貸借を巡る紛争(明渡、立退問題ほか)など、多くの事件を手がけています。

不動産の登記を巡る紛争では、訴訟上の争点となった消滅時効の成否だけでなく対象となる不動産の売却とそれに伴う納税などの問題が複雑に絡み合い、法的な主張立証のほか多くの関係者と様々な利害調整が必要になった事案なども担当しています。

明渡請求に関しては、建物が簡易なプレハブで未登記であるなどの事情(また、相手方の行方不明の問題など)から、訴訟での請求内容や強制執行にあたり様々な配慮を要した事案なども担当しました。

他にも、弁護士会の「精神保健当番弁護士制度」により、精神科病院に医療保護入院中の方から退院請求の手続について依頼を受けた事案があります。本人の症状や関係者への聴取などから退院が認められるのは困難な事案であり、請求そのものは退けられましたが、精神科医療の実情や制度などについて知見を深めることができた面がありました。

また、震災無料相談制度を通じ多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件など生活上の様々なトラブルに関するご相談や簡易な交渉対応などに応じています。

平成28年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成28年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

争点としては、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案が多く、過去には死亡事故や重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案など、幅広い類型を取り扱っています。

事故直後など加害者側の示談案提示前の時期から受任し後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、実務では非常に多い「レントゲン等による所見が確認されない神経障害に関する後遺障害(14級9号)の成否」などについて、幾つかの例を通じ知見を深めることができた1年だったと思います。

また、本年は学校で生じた生徒間の事故に伴う賠償請求訴訟(後遺障害の評価が主な争点となったもの)、若年者間のスポーツ事故に関する賠償責任や関係者間の求償(加害者側と施設管理者の責任割合など)につき検討を要した事案など、加害者(損保)側の立場での検討を含め交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

他にも、福島第一原発の事故に基づく東京電力に対する賠償請求(県内企業が受けた被害の賠償を求めるもの)を手掛けており、特殊な事情から長期化したものの、先般、原子力紛争解決センター(ADRの手続)で相当な解決案が示されて無事に終了できました。

現在のところ弁護士費用特約は保険料も低廉でご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

個人間の貸金に関する紛争(授受の当事者双方が死去して貸主相続人が借主相続人に返済を求めたものの、相続人は双方が貸金に関与しておらず、領収書などの直接証拠が乏しく立証に課題のあった事件)、不動産の登記(古い登記の抹消など)に関する訴訟、労働審判(労働者側)など、多くの事件を手がけています。

不動産の賃貸借の紛争では、契約終了に伴う貸主からの借主への目的物返還や賃料などの請求を貸主代理人として扱った案件が幾つかありますが、中には、「貸主の相続人が借主に明渡等を求めたところ、借主が、被相続人から目的物を(廉価で)譲り受けたと主張し、被相続人と借主との間で売買契約が締結されたかどうかが争点となった例」もありました。

「被相続人(ご両親など)と相手方との間で何らかの問題が潜在し、相続の際にそれが噴出して相続人が法的対応を余儀なくされ、被相続人の真意や生前の協議内容などを巡る事実の立証などが問題となる事案」は、昔から非常に多くあります。ご高齢のご両親などが多くの権利関係を有するのでしたら、ご親族内部に相続紛争などの問題がなくとも、対外的に問題が生じる可能性があることも踏まえて、ご両親から事情を確認していただくなど適切な対応・ご準備を考えていただければと思います。

また、多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件など生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じており、大半の方が震災無料相談制度を通じて費用負担なくご相談いただいています。

(以下、次号)