北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

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債務整理

信用生協相談と北上とのご縁の今昔

先日、信用生協(岩手弁護士会消費者委員会と協力関係にある岩手独自の特殊な金融機関)の相談事業の担当者として、北上駅前に行きました。

この相談会は、電車賃+α程度の日当が支給されるだけですので、新幹線で来ると実費だけで赤字になりますが、債務整理案件の相談を受けて受任することが多いと言われており、それ=受任報酬で「モト」をとってね(モトがとれるから担当してね)と内々では言われています。

私の場合、かつての弁護士過疎+債務整理特需の時代の後遺症?で、一人で稼がなければならない事務所の経費が若い同業の皆さんよりもかなり高額となっており(盛岡も、今や私のようなボチ弁は少数で、経費を分担する複数事務所が多い)、事務所の存続のためにも、こうした機会に少しでも債務整理事案の受任ができれば今月もどうにか事務所が存続できる・・との思いで、恥ずかしながら参加させていただいています。

が。

今回、北上地区を担当する弁護士は2名で、配点表を拝見したところ、債務整理系の相談は隣のブースで相談を受ける某先生に集中的に配点され、私の担当案件は、家族が残念サイトに手を出したとか、相続放棄したいとか、○○書にハンコ押しちゃったのよとか、相談のみで終了する(せざるを得ない)案件ばかり・・・

さすがに意図的というわけではない(偶然そうなった)のでしょうが、弁護士会の消費者委員会でも、ほぼ幽霊部員と化しているので、そうした人間には「日頃の行いが」の見えざる力が働いてしまうのでしょうね・・・

(と思っていたら、最後、早く終わった方に配点すると言われた1件だけ無事に受任見込みとなりましたが)

幸い、お昼は弁当を出していただき、実費ベースでもモトをとることができました。

が、数年ぶりの参加ということもあり、弁当を頂戴できるのを当日まで失念しており、昨日は北上のラーメン店情報を検索し、駅のすぐ北にあるオサレラーメン店の食べログ情報を眺めて脳内唾液を流しまくっていたのです。

というわけで、弁当をいただいた後、散歩がてらお店の目の前まで赴き、いつの日か必ず来るぞと脳内ヨダレ由来の涙を休憩時間が終わるまで落としはべりぬでした。

北上には、当番などで出動していた昔々と異なり、今はあまり行ける機会がないのですが、数年前に悪を打ち砕いたとしか言いようがないほど完勝させていただいた大事件があったほか、現在も電話やメール相談などで顧問料のモトをとっていただいている顧問先が複数あり、もっとご縁ができればと思っています。

ただ、いつ来ても、活気のある四号線エリアなどに比べて、駅西の寂れ具合はどうにかならないか、脱クルマ社会等のためにも?ぜひ、駅前の活性化やオサレ再開発に着手いただければと願っています。

あと、行きの新幹線は全席指定で立席ボタンもなく3360円も取られたのに対し、帰りの新幹線は自由席で1740円で済みました。この落差、何とかしてよJR。

 

破産管財を巡る都会と岩手の落差と債務整理に関する地方搾取?の光景

先日、弁護士向けの情報交換用FBグループ内で、東京で執務する先生が「岩手では免責調査型の少額管財が原則10万円と聞いて驚いた。この金額ではやっていけない」とコメントされており、東京?の弁護士さん達が、次々と「安すぎる」と声をあげていたのを拝見しました。

前提知識を補足しておくと、少額管財とは自己破産(破産手続)のうち、裁判所が破産管財人の選任が必要だと判断したもの=管財事件の一類型で、企業倒産(通常管財)ほど管財人の作業が重く(多く)はないため通常管財よりも少額の費用(管財人報酬。申立債務者が事前に調達する必要あり)で実施することが予定されている手続です。

免責調査型の少額管財は、破産者(申立債務者)に何らかの免責不許可事由(浪費など)が認められるものの裁判所の裁量で免責相当と判断される見込みが高い場合に、浪費の再発防止や生活の改善などを管財人が調査し裁判所に報告することを目的として運用されています。

東京地裁などでは、少額管財の予納金(事前準備額)は20万円を原則としており、冒頭の先生は東京を本拠とする弁護士法人の経営者で、岩手にも支店があり、裁判所から「10万円で管財人を引き受けて欲しい」と言われたので、それに対する不満を述べたもののようです。

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しかし、貧乏県こと岩手で法テラス案件(所得・資産の少ない方の破産事案)ばかり受任している申立代理人の立場からは、10万円の捻出すら困難な方が多いのが実情で、20万円と裁判所から言われた場合でも、本人の事情をあれこれ述べて10万円に止めて貰うことも珍しくありません。

昔に比べて管財指定される割合が圧倒的に高くなった現在では、指定可能性が高いと思われる案件では、事前に10万円の目処を立てて貰うか、「裁判所は半年以内に予納金を用意しろと言ってくるので、事前に5~6万円は積み立てて下さい。指定されたときは、1ヶ月1万円等のペースで、半年以内に残金を捻出できるよう頑張って下さい」と伝えています。

が、親族援助等のない方は、その準備だけで1年以上を要することも珍しくなく、長期化で代理人側の疲弊も累積するのが現実です。

現在の免責調査型管財人の業務がどの程度なのか存じませんが(ここ何年も裁判所から配点がないので)、10万円で採算がとれる程度の業務を本則とすれば足りるのではと思っています(昔々に配点を受けた際は、下記の事案を除き、10万円で足りる程度の仕事で済んだと記憶しています)。

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債務整理を巡る弁護士の報酬の問題に冠しては、任意整理=リスケジュールを(軽々しく)推奨する東京などのWeb広告弁護士・司法書士が、当事務所の数倍の費用で、実際には督促を止めるだけの作業しかしない光景の方が、遙かに問題だと思っています。

彼らは、(その程度の業務しかしていないという意味で)サービスに比して高額すぎるカネを支払わせた後、債権者との交渉や支払が始まる頃になって、債務者本人から「返済は無理だ」と申告がなされて、弁済すらまともに開始することなく破綻する(もともと無理な計画になっている)例を何度も見てきました。

そして、破産・再生するしかない→高額な委任費用の支払能力ありません→法テラスで地元弁護士=私ほか、というパターンを、5年以上前から何度も拝見しているので、貧乏県の弁護士としては、そちらの方を何とかすべきでは?と日々感じています。

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ただ、それとは別に、私自身も、少額管財人として「10万円じゃ仕事にならないよ」という経験をしたことが無いわけではありません。

10年近く前、免責調査型で管財人の配点を受けた事案で、後日に巨額の返戻金のある生命保険が発覚し、本人や代理人に伝えたところ、「母の名義借りでした」と膨大な資料が提出されたことがありました。

そのため、提出資料や文献を散々検討し名義借り(破産財団不構成=換価しない)を認めるべきとの報告書を提出し、裁判所も認めて不換価で終了したのですが、膨大な労力を費やしたため、10万円では時給換算で余りに不採算でした(このような論点を伴う事件では、予納金は20万円以上とするのが通例と理解しています)。

そこで、裁判所への報告書の末尾に「できれば、(不換価の代償として)本人側から10万円くらいを支払って貰う(事前の10万円と併せて管財人報酬を20万円とする)和解か何かをしたいですぅ~」と泣き言を書いたのですが、裁判官からは無慈悲に無視され、10万円で終わったという経験をしたことがあります。

ですので、そうした事案に限っては、「安すぎる!そんな価格でやってられるか」との声を全国の弁護士さん達から裁判所にお伝えいただければ幸いです。

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冒頭の先生によれば、県内の他の支部から少額管財の打診があったものの、裁判所への往復だけで3時間を要するため、さすがにそれで10万円は採算が合わないと感じた、というもので、その支部の管内の弁護士さん達が断ったので、(遠方にある)その先生の事務所に打診があったとのことでした。

詳細は分かりませんが、申立代理人は、地元の弁護士さんではなく、東京の「債務整理専門」を掲げて大々的に広告する弁護士等で、当事務所の通常価格(岩手の弁護士の相場)よりも遙かに高額な代理人費用を本人に支払わせて申立をしているとのことでした。

そのため、「こちら(管財人)に10万円で大赤字仕事を強いているのだから、代理人報酬に対し否認権を行使して、一部を(代理人弁護士から)取り上げてしまいたい」と息巻いていました。

当事務所は、債務整理のWeb広告等が咲き乱れるようになった10年ほど前から、通常価格での自己破産の依頼が来なくなり、近年の自己破産の受任は法テラス基準内の収入しか存しない方ばかりとなりました。

恐らく、債務整理需用者の大半がWeb広告に誘導され、支払能力のある方は高額な(恐らく東京等の)弁護士等に依頼し、そうでない方は、彼らの「ウチではやらないよ」等を経由して地元弁護士(法テラス、無料相談会等)に流れてくるのかな・・と感じています。

というわけで、高額な受任費用で申し立ててきた代理人には、冒頭の先生のような強者の弁護士さんからゲシゲシ報酬否認をして管財人報酬を稼いでいただくと共に、10万円じゃやりたくないという恵まれた弁護士さんばかりの支部の方々は、書記官に「小保内、管財人やるってよ」とお伝えいただければ、当方にてお引き取りさせていただきます(笑?)。

ちょうど、つい先日も、管内の司法書士・弁護士が全員辞退したという成年後見の関係で、記録閲覧や関係者との協議のため、往復3時間以上をかけて、某市に行ってきたばかりでした、というのが、同業者が逃げた?案件ばかり拾い続けてどうにか生き残ってきた、当方のお恥ずかしい現実です。

ともあれ、隣の芝生ばかり羨んでも仕方ありませんので、まずは手持ちの仕事を地味にこなし続けたいと思います。

 

令和2年の取扱実績②債務整理・倒産、交通事故等(賠償)

前回に引き続き、令和2年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(3) 債務整理と再建支援

10年以上前(リーマンショック期)と比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減り、新型コロナウイルス禍の中でも、この傾向は大きく変わっていません。

ただ、本年3月まで社会福祉協議会の相談担当をしていたせいか、「総債務額は大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入のため自己破産をせざるを得ない方」からの受任は一定数ありました。他にも、「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンの返済中で、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」の依頼があり、また、「諸事情により法的手続を希望せず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。

近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。
 
昨年も、債務額などに照らして民事再生又は自己破産の手続をとるべき債務者の方が、インターネットで広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を前代理人に支払うだけで数ヶ月を空費した)というケースを経験しています。

昨年、過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず後日に様々な問題が生じますので、そうしたことも視野に入れて早期のご相談をご検討ください。
 
企業倒産(破産管財)に関しては、昨年は「企業の管財事件」の受任はなく、小規模な企業の代表者個人のみの破産申立事案の管財人を担当した程度でしたが、中には、企業の関係者に様々な問題があり、労働者健康福祉機構への未払賃金立替請求が正当な理由なく行われていると判断され、それに対する対応に苦慮するなどした案件もありました。

申立代理人としては、震災後、辛うじて経営を続けていた小売業の会社さんがウイルス禍により継続を断念し事後処理を依頼された案件があり、商品売却などの目処をつけた上で、会社及び代表者双方の申立を行っています(特殊な事情があり、最初は代表者のみの破産申立を行い、後日、裁判所の勧告により会社の破産申立も行いました)。

今後はウイルス禍の長期化により倒産増加が懸念されており、小規模飲食店の経営者の方から営業不振による事業閉鎖を前提とした相談を受けたことが複数あります。

また、昨年から「金融機関(銀行等)にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を継続保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」を活用して解決すべき事案の依頼を受けています。金融機関の内諾を得て昨年中に概ね順調に換価作業などを終え、現在、弁済計画を策定し、交渉の山場にさしかかっています。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましいケースが多くあります。あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき、知人などで必要とする方がおられれば、伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、免責不許可事由の調査を要したケースや山林の換価が問題となった案件などを担当しています。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

昨年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により、本来であれば数十万円からそれ以上を要する弁護士(当職)への委任費用について、自己負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係と評価)が主たる争点となる事案物損の金額が争われる事案むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額算定が中心となる事案重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が必要となる事案など、幅広く取り扱っています。

過失割合が争点となった物損事故では、1審(簡裁)で納得できない判決を受けたため、控訴したところ、2審(地裁)で、1審を取り消し当方の主張も踏まえた新たな過失割合の勧告を得て、了解可能な和解で終了できた案件もありました。

事故直後など、加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、「神経障害に関する後遺障害(14級9号)」をはじめ、幾つかの後遺障害につき、認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

ともあれ、自動車保険などでは、必ず弁護士費用特約が付された任意保険にご加入ください(相談のみの特約に加入される方もおられるようですが、必ず委任費用を対象とした保険にご加入下さい)。近年、弁護士費用特約(保険)は、企業クレーム対応や労働事件、家事事件(離婚等紛争)などにも導入されており、活用をご検討ください。

 

平成30年~令和元年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。ただ、本来の予定が大幅に遅れ、昨年=令和元年分は本年8月にようやく顧問先に送付しており、ブログでも載せようと思いつつ、余裕のない状態が続き、現在に至りました。

その上、さきほどブログを見返したところ、2年前=平成30年の業務実績の掲載を失念していたことに気づきました。

というわけで、今回は、平成30年・令和元年の実績概要をまとめてお知らせします。

当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

当事務所は、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部の紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などに関する様々な紛争の解決や法的処理のご依頼に対応しており、この5大分野が業務の柱となっています。

近時は①②の受任が多くなっていますが、企業の重大な紛争や大型の行政訴訟(現在は行政側での受任)など他の様々な事件の解決やご相談の対応にも注力しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する問題では、受注業務を巡る紛争や賃貸借に関する典型的な紛争などほか、2~3年前に社会問題化した「詐欺まがいの求人広告(無料出稿を装い簡易なFAXのみで契約させ、最初の無料期間経過後に当然に有料に移行したとして高額な請求を行うもの)の請求」に関する対応依頼などもありました。

また、「建築瑕疵の是非などを巡って複雑な争いがある賠償請求訴訟を建設会社側で受任した事案」、「商業店舗の賃貸借に関し、貸主側の対応の不備に起因し借主が退去等を余儀なくされたため、借主代理人として貸主に賠償請求した事案」などを受任し、責任論(賠償責任があるか)・損害論(責任があるとして、どの程度の請求ができるか)を巡り激しく対立した訴訟などを担当しています。

これらは相応に主張立証を尽くし、裁判所から相当な和解勧告を受けて解決しています。

他にも、取引先への売掛金請求に関する事案(請求者側)や、以前に契約関係にあった相手方企業から不当な要求を受けたため、必要な反論を行い要求を退けた事案などを扱っています。

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企業の内部紛争に関しては、「小規模な企業の経営者Bに頼まれ中途就職したAがBから企業承継(買取)を要請されて応じたものの、後日、Bに不正行為が発覚したとして、Bの法的責任を問う必要が生じた事件」をA氏側代理人として受任した案件があります(本年、1審で勝訴判決を得て、控訴審で勝訴的和解が成立しました)。

ある企業が有期契約社員の方が問題を起こしたため更新拒絶(雇止め)を行ったところ「辞めさせるのは違法だ」と主張され地位確認等(解雇無効)請求を受けた事案で、企業側代理人として2~3年ほど対応した案件があり、昨年、1審勝訴→2審も勝訴維持の心証を前提とした解決を得ています。

また、以前にA社を共同経営していた親族同士が数十年前にA社・B社に分離し互いに単独で企業を経営していたところ、近年になりB社がA社に重大な背信行為に及んだことが発覚したため訴訟を余儀なくされ(A社代理人として受任)、過去の様々な経緯から双方が激しく対立する事案なども担当しています。

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当事務所では、一般的な顧問料による顧問契約だけでなく、9年前から月額3000円(税別)による顧問契約をお引き受けしており、ここ2~3年は、顧問先の方々から、様々なご相談や簡易なご依頼などを受ける機会が増えてきました。

今後も、多くの県内などの中小企業・団体などの方々にとって利用しやすい利用頻度に応じたリーズナブルな顧問契約のあり方を追求すると共に、早期のご相談と必要な対処を実現し、手遅れになる事態の回避ひいては弁護士とご本人が共闘して物事の機先を制する、能動的・戦略的なリーガルサービスの提供につとめてまいりたいと思います。

(3) 債務整理と再建支援

震災以前に比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減りましたが、現在は「債務総額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入と住宅ローンがあり、住宅を維持しつつ他の債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」からの依頼が多い傾向にあります。

また「法的手続をせず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。

近年は、債務額などからは民事再生や自己破産の手続をとるべき方が、Web上で大々的な広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、成果もないまま後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を無為に前代理人に支払ってしまっている)というケースに遭遇した(依頼を受けた)ことが何件もありました。

過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず、後日に様々な問題が生じます。

債務整理に限らず、弁護士への依頼にあたっては、そうした事柄(後悔を余儀なくされた方が現に何人もおられるという現実)も視野に入れて早期のご相談をご検討ください。

過払金請求は時代の変化に伴い依頼を受けることがほとんどなくなりましたが、債権譲渡など特殊な論点が絡んだ事案の依頼があり、貸金業者側代理人との激しい闘いの末、裁判所から相応の和解勧告を受けて解決したものがあります。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成28年に受任した相応の規模の建設関係の会社について、権利関係の処理がようやく完了し配当に向けた手続を行ったほか、小規模な事業者の方の管財事件で、動産の売却や原状回復の問題など様々な法的対応に負われました。

近年はごく小規模な企業の受任に止まっていますが、債権回収などを巡って特殊な交渉が必要になった案件実質的な経営者である元従業員に色々と問題があり、相応の対応が必要になった案件などを担当しています。

申立代理人としても、個人経営の飲食店の自己破産申立などを受任しているほか、本年になって「銀行等にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を将来も保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」により解決すべき事案のご相談を受け、現在も諸々の準備を行っている事案があります。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましい案件がありますが、あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき知人などで必要とする方がおられれば伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、山林の換価が問題となった事案や個人への貸付の調査が必要になったケースなど、幾つかの事案を担当しています。

 

企業倒産の実務と経営者保証ガイドライン(盛岡北RC卓話)

先日、盛岡北RCの卓話を担当したので、時勢も踏まえ、企業倒産の実務を取り上げることにしました。

金融機関以外にはほとんど負債のない事業者であれば、経営者保証ガイドラインにより破産よりも遙かに良好な解決を得やすいのですが、世間一般には知られていませんので、同GLに力点を置いた説明にしました。

卓話で用いた事例とレジュメの目次を掲載しますので、事業者の方などは参考にしていただければ幸いです。

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小問1 

岩手県内で物販業(一般向けの生活用品の販売等)を営むA社の代表取締役Bは、長年に亘りA社の営業不振が続き、日々の運転資金の支払も銀行借入や各種債務の延滞などをしなければ困難な状況に陥り、現状では営業の継続は不可能と考えた。A社は、銀行3社(岩銀、北銀、みずほ銀)に計1億円(岩5000万円、北3000万円、み2000万円)、取引先20社に未払買掛金計2000万円(最大500万円、最小10万円)、未払公租公課(税金、社保料など)4庁・計500万円の債務があり、賃金も2ヶ月分・従業員10名計400万円が未払となっている。

他方、現時点の資産は、手持ち現金が50万円、未収売掛金が10箇所計300万円、商品在庫などが多数(定価どおりに販売できれば1000万円以上だが、販売目処の立たない老朽在庫も多い)となっている。

Bは、銀行3社(1億)と取引先も4社ほど(800万円)、連帯保証している。

A及びBの債務問題を解決するため現実的に可能な法的手続は何か、法的手続の概要や、受任弁護士が特に検討・対応すべき課題などを説明しなさい。

小問2

岩手県内で飲食店を営むC社の代表取締役Dは、先般から社会で生じた問題により数ヶ月売上の急減が続き、手持ち資金に余裕があるうちに、経営継続を断念することとした。Cの債務は、金融機関2社に計5000万円(東銀3000万円、公庫2000万円。D保証付き)のほかは、20万円以下の小口の買掛が数件あるのみである。他方、Cの営業資産は限られたものしかないが、現在300万円の現預金がある。Dは預金300万円のほか、数年前から住宅ローン返済中の自宅があり、Dは近々転職し給与収入で住宅ローンの支払を続けたい希望である。

C及びDにとって最も賢明な「店じまい」を実現するための法的手段は何か。また、実現にあたって特に検討すべき点を説明しなさい。

【目次】

第1 様々な債務を抱えながら資金枯渇した企業の倒産処理
1 企業の債務整理・倒産処理に関する法的制度
2 個人の債務整理・倒産処理に関する法的制度(参考)
3 東日本大震災で被害を受けた企業等を対象とする特例的な救済手続
4 新型ウイルス禍に伴う支援制度の紹介例や弁護士会等の取組み等

第2 小問1 多額・多様な債務を負う一方、現預金が足りない企業の場合
1 A社の手続の選択と初動対応
2 破産手続(申立後)の一般的な流れ
3 Bの手続

第3 小問2 ほぼ金融機関の債務だけの小規模事業者が早期撤退する場合
1 C及びDの置かれた状況と方針選択
2 経営者保証GLスキームに基づく会社債務の整理(換価・弁済)
3 経営者保証GLスキームに基づく保証債務の整理

第4 結語
かつてのように「生命保険で支払う」などは絶対にしない・させない

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以上の内容について、ご自身(の所属団体など)で話を聞いてみたいという方がおられれば、ご遠慮なくお声がけください。

平成29年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、2月前後に業務実績を顧問先に送付し、時間を置いてブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

平成29年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。

ここ数年は①と②の受任が多くなっていますが、③も自己破産や個人再生の受任が増加傾向にあります。企業の取引や内部紛争などに関するご依頼は件数こそ多くないものの、昨年も、大規模な事案を含む様々な事件の解決やご相談の対応に注力しました。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する紛争の例としては、商業店舗の土地建物の賃貸借に関し問題が生じ、借主が貸主に賠償請求している事案を担当しています。

少し具体的に述べると、商業店舗を営むX社がY社から建物を賃借し店舗経営していたところ駐車場用地の一部がY社ではなく第三者(以前に当該建物を所有していた企業の関係者A)の所有になっており、そのことをYが把握しないまま、Aが当該土地を隣地所有者Bに売却し、BがXに当該土地(駐車場用地)の明渡を請求をしたため、Xはこれに応じざるを得なくなりました。

そのため、Xは、駐車区画の大幅減少を強いられ集客に必要な駐車場用地が確保できず契約目的(店舗経営)が達成できないとして、賃貸借契約を解除し他所に店舗を移転し、移転経費や移転期間中の逸失利益についてYに契約違反を理由に賠償請求をしました。

当方(X)に対しYは「移転の必要はなかった」などと主張し全面的に請求を争っており、現在も裁判が続いています。

他にも、建築瑕疵の是非などを巡り複雑な争いがある建築紛争を建設会社側で受任した事案もあります。

企業の内部紛争に関しては「NPO法人αがA町から大規模な震災復興事業を受託した際、α自身が高額資産の所有者になることができないという行政のルールに起因して、事業の受皿企業としてβ社を設立し、αがAから送金された受託費をリース料名目でβに送金し、βの名義で資産購入とαへの貸与などを行っていたところ、αが破産し、管財人Xが『その資産の所有者はβではなくαだ』と主張し、βに対し資産の引渡しなどを求めた(が、β代表者γ氏には直ちにこれに応じることができない事情があり一定の交渉が必要となった)」という事件(協力関係にあった企業間の財産の帰属を巡る紛争)につき、β社から依頼を受けて対処する案件を担当しました。

これは補助金の巨額不正使用などで世間を震撼させた「大雪りばぁねっと」事件を巡る民事紛争であり、様々な偶然(ややこしい事情)から民事裁判の開始後間もなくγ氏(大雪の代表者ではありません)より依頼を受け、管財人の適正な業務に協力しつつ、γ氏として法律上正当な権利ないし利益の確保(利害調整)を目指すことになりました。

そして、膨大な関連事務を経て主戦場となった事件では1審で勝訴したものの2審で裁判所の勧告に従い和解で終了、という展開を辿りました。

大雪事件では民事・刑事で様々な弁護士が事件に関与していましたが、管財人や大雪の代理人をはじめ、民事事件を担当していたのはほとんどが東京の弁護士の方で、民事事件に関与していた岩手の弁護士は実質的に私だけでしたので、依頼者の正当な利益を図りつつ地元の弁護士として事件の適正解決に貢献するとの気持ちで取り組んでいました。受任から完了まで約2年半を要し、学ぶところの多い事件でもありました。

企業の内部紛争に関しては、他にも、未払賃金などの労使紛争、企業の役員の不正行為が発覚し責任追及をした事件などで代理人として対応しています。企業取引に関しては、中小企業庁の「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者に対する売掛金請求や発注者の不当対応への対処についてご相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は「総債務額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンがあるため、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」、「銀行に数十万円の借入があり、リスケジュールのため任意整理を希望する方」からのご依頼が増えています。

また、10年以上前に借り入れた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け消滅時効などにより解決を求める事案も増えています。

過払金訴訟は時代の変化に伴い依頼を受けることがほぼなくなりましたが、債権譲渡を含む特殊な対応が必要となる事案の依頼があり、業者側も多数の論点について全面対決の姿勢を示しているため、適正解決のため懸命に取り組んでいます。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成27年に管財人を拝命した製材等を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復などの事務処理や法的手続が必要となり、平成28年に受任した建設関係の会社についても、多数の不動産の任意売却や不動産利用を巡り錯綜していた権利関係の整理、労働債権の対応など、様々な法的対応に負われました。

また、金融機関に巨額の債務がある一方で他にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受け、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で定める額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現するため、不動産の任意売却などを含め、2年ほど交渉を続けた事案で、昨年に特定調停により自宅マンション(無担保)を処分せず残存させるなど当方の希望に沿う解決を実現することができました。

個人の方の破産管財についても、破産手続以前に親族への無償譲渡行為があり否認権を訴訟で行使し配当を実現した例や個人事業主の方など、幾つかの事案を担当しています。

「広告で大々的に過払金回収の宣伝をしようとした弁護士」に関する泥沼の内紛劇

岩手では、震災の少し前(平成22年頃)から、東京から「債務整理に関する出張無料相談」を新聞チラシやCMなどで熱心に宣伝、集客する法律事務所が登場するようになりました。

それ以前の平成20年前後にも債務整理の集客の熱心さで東京では知名度があった事務所(H社改めM社とか、某ライオンことI社。いずれも、東京時代に少額管財人として、先方が申し立てた破産事件の仕事ぶりを拝見したことがあります)のCMを見た記憶がありますが、当時は、岩手までわざわざやってくる事務所はありませんでした。

それが、震災直後くらいから冒頭のとおり3~4社ほどの事務所が次々と押し寄せてくるようになり、今もまだ頻繁に来ている事務所もあります。

それらの事務所がどこまで集客できているのかは全く把握できていませんが、当事務所の場合、それらの事務所(の広告)が登場するのと入れ替わるように、債務整理関係の受任が激減したことは確かです。もちろん、そもそも平成23年頃からグレーゾーン金利問題の沈静化が本格化して多重債務者自体が激減したことや岩手の弁護士自体が増えたことなどの影響もありますので、上記の事務所だけが原因というわけではありませんが。

ともあれ、こうした現象は岩手だけではなく全国的なものだそうで、お隣の青森県の新聞でも2年前に同じような話がニュースとして取り上げられています。

記事によれば、そうした弁護士は、広告代理店にチラシの作成など各種の広告や集客の作業を委託しているようですが、以前に、他県の弁護士さんのブログでも同じような話を見たことがあります。確か、その県に出張相談に来ている弁護士は、代理店(コンサルタント)にお膳立てを頼んで、複数の県を渡り歩いて客集めをしているという趣旨のことが書いてあったとの記憶です。

で、何のためにこの話を取り上げたかというと、判例タイムズで、そうした「債務整理の宣伝をコンサルに委託して集客するため設立された事務所」に関する泥沼の内紛劇に関する裁判例が取り上げられていたのですが、当事者の欄をよく見たところ、「非弁行為(無資格者が違法に弁護士業務を行い収益を得ること)の目的があった(ものの、実行には至らなかった)」と認定された業者の代理人に、岩手に「出張無料相談」の広告を大々的に掲げて頻繁に来ている事務所の代表弁護士(及び所属弁護士)の方が表示されているのに気付きました。

そのため、(その弁護士さんが当事者として雑誌に掲載された判決文に表示されているわけではありませんので事件との関わりは不明ですが)問題ある業者と関わりがある弁護士さんなのかなぁと感じたというのが、こんな話を長々と書くことになったきっかけです(さすがに、個人が特定できる情報は差し控えますので、関心のある方はご自分でお調べ下さい)。

事案は、その業者から法律事務所開設の資金提供を受けた弁護士である原告が、事務所の発足や運営に何らかの形で関与した計18名もの関係者(弁護士から宣伝広告を受託する企業などを含む)を、非弁行為の共謀をしたという趣旨で根こそぎ訴えたというものです。

簡略化すれば、「弁護士Xが、従前の所属先から給与の支払がないなど待遇に不満を感じていたところ、別の事務所の事務員として債務整理を行っていたY側の関係者に勧誘され、Yから資金や人材の提供(派遣)を受けて、過払金回収を主たる業務とする法律事務所を開設した。XとYは収益を分配する趣旨の協議をしていたが、開設の4ヶ月後にXがY側に事務所からの退去を求めた」という経過を辿り、YがXに提供資金の返還を求める訴訟を提起していたところ、XがYに対し非弁行為の勧誘等を受けて無用の負担等を強いられたと主張し、不法行為を理由とする賠償請求をしたという流れです。

正確には、Xは、Xの事務所の宣伝に従事した広告会社や、Yが最初にXに紹介したYの勤務先の事務所(非弁提携がなされていたことを仄めかす認定がなされています)の弁護士などにも同様の賠償請求をしています。

これに対し、裁判所(東京地裁平成25年8月29日判決判例タイムズ1407-324)は、YがXに行った資金提供は、Yの目的が非弁行為をすること又はXに非弁提携をさせるもので、弁護士法27条、72条違反の行為を誘発するものとして、上記各条の趣旨に反するものと言わざるを得ないが、その金銭の提供を受けることが直ちに非弁行為と評価されたり、非弁行為に直結するものとまでは認められず、YがXの事務所で非弁行為をした事実は認められないとして、YがXに不法行為をしたとは言えぬ=請求は棄却との判断をしています。

要するに、Yは違法行為を計画していたが金銭提供段階に止まり違法な計画を実行していないので提供を受けたXに対する不法行為があったとは評価できぬと判断したものですが、他ならぬX自身が、Yと非弁行為の共謀をしていたとの認定も受けていますので、そうした点も判断に影響を与えているのではないかと思われます。

ちなみに、判決文で引用された「広告会社がXに提訴した別件判決」と思われるものを取り上げた記事がネットで検索でき、その事件と本件が同一なのだとすれば、X弁護士の事務所はすでに閉鎖されXも廃業(登録取消)したのではないかと思われます。

X氏は恐らく私より期の若い弁護士さんではと推察されますが、自身の甘さが招いたこととはいえ、Y側や広告会社が訴えた別件訴訟で多額の支払が命じられており、踏んだり蹴ったりの憂き目にあったものと思われます。

私も駆け出し期の頃は「弁護士資格を悪用しようとする輩が金や仕事がない若手弁護士に甘言を弄して勧誘することがあるが、身を滅ぼすから気を付けろ」とのアドバイスを受けたことがあります。幸い、私の場合、カネはさておき仕事と兼業主夫業に追われる生活が続いたせいか、今のところ、その種の勧誘を受けた記憶はありませんが、こうした裁判例も他山の石として、平穏無事な事務所経営を今後も続けていきたいと思っています。

ともあれ、「大々的に債務整理(過払金回収)の広告宣伝をして地方に出稼ぎ(集客)に来る東京などの事務所」のすべてがこうだということは全くないとは思いますが、中には、こうした問題を抱えたところもあるのだということは、業界外の方も知っておいてよいのではと思います。

弁護士への依頼は通常は短期間に止まるとはいえ、一定の信頼関係を重要な基礎とし、時には人生の大きな転機と関わることもありますので、誤解を恐れずに言えば、男女交際などに類する面があると思います。

それだけに「相性が大事」であると共に「相手をよく見て、相手のことをよく知った上で」お付き合いする方を決めていただきたいものです。

余談ながら、私が、事務所HPで業務の内容や実績について多少とも記載しているのは、そうしたことも踏まえたものですが、残念ながら「●●の仕事で実績を挙げたと書いてあったので、頼むことにしました」という依頼者の方には未だ巡り会ったことがなく、その点はトホホといったところです。

弁護士を巡る広告については以前にも投稿したことがありますので、併せてご覧いただければ幸いです。
→ 弁護士会のCMから考える、弁護士と弁護士会の関係