北奥法律事務所

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大船渡

法テラス気仙の落日?と「被災地」無料相談事業の行方(前編)

平成24年頃から月1回の頻度で法テラス気仙(大船渡市)に通っていますが、今年になってから私の担当日には相談件数が一挙に減り、3月から7月まで、5回連続でゼロ件(6月に受任事件の関係者に私から頼んで来ていただいたものが1度あっただけ)、8月は当日に飛び込み1件のみという惨状が続きました。

片道2時間ほどかけ、丸一日潰して(拘束されて)通っていますので、相談者ゼロ件が延々と続くと、さすがに厭戦気分というか、担当から抜けられるものなら抜けたいという気持ちを抱かざるを得ません。

私に限らず、沿岸に開設された2つの法テラス事務所(気仙、大槌)とも、最近は弁護士への相談件数が大幅に減ってきたとの話を伝聞ですが聞いており、下手をすると今年度末には法テラス気仙が廃止されるのではないかという噂も聞いたことがあります。

ただ、司法書士さん(週1回の担当)への相談状況がどのようになっているかは聞いたことがなく、ひょっとしたら土地の区画整理・自治体買収などに伴う相続登記の関係などで閑古鳥の弁護士と異なり大盛況になっているのではと想像しないこともありません。

そうであれば、すぐにでも弁護士相談=原則週4回を減らして、司法書士の相談日を増やした方がよいと思いますが、司法書士さんの担当日の来客状況などを伺ったことがないので、よく分かりません(先日、某先生のFBで、今日は来客なしと仰っていたのを拝見したので、弁護士と同じような現象が生じているのかもしれません。弁護士と異なり?高台移転や区画整理などで登記手続などの需要は多いのではと思いますが・・)

昨年の段階から1回あたりの相談件数がかなり減ってきたので、今年の相談担当の更新の際は辞退するか悩んだのですが、現時点で沿岸被災地の関係で従事している「弁護士としての支援活動」が他に特段なく、縁を切るのも忍びないということで無為に続けているのが恥ずかしい実情です。

気仙地区に関しては、訴訟等が必要な場合、地裁の管轄が一関市(盛岡地裁一関支部)になるため、私のように盛岡から出張してくる弁護士に相談するよりも、端的に一関で執務する弁護士さんの事務所に相談に行くという方も少なくないのかもしれません(統計情報などがあれば、ぜひ見てみたいものですが、恐らく誰も調査などはしていないのでしょうね・・)。

そうした話に限らず、いわゆるアウトリーチ問題(法テラス自身が沿岸の自治体や団体・企業などに働きかけ、担当弁護士を相談日に事務所に置いておくのでなく、ミニ講義+プチ相談に派遣するなどの事業をしなくてよいのかという類のもの。「役所」の典型たる法テラスには期待し難いかもしれませんが)を含め、「沿岸被災地の無料相談事業の低迷」は、様々な要因が複合的に関わっているのでしょうから、幅広い視野での総合的な検討が必要でしょうが、そうしたものもほとんどなされない(或いは、私のような現場の末端には伝わらない)まま終わってしまうのかもしれません。

と、ここまで書いて9月下旬の担当日のあとにでも載せようと思っていたところ、9月には過去最高?の5件(飛び込みを含む)のご相談があり、開設時に戻ったかのような感じがしました。

或いは、法テラス気仙を廃止をさせてなるものかという「見えざる力」が働いたのかもしれません。

(写真は4月の担当日の際に撮影したものです)

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春の気仙みち~H28版~

ここしばらく諸事に追われ、ブログの更新が滞ってしまいました。この間も、メモ的なものは書いているのですが、文章として仕上げる時間が取れず、ネタがやや古いものもありますが、その点はご容赦いただければと思います。

2週間以上前の話で恐縮ですが、4月12日に毎月1回の法テラスの担当日で、大船渡に行きました。が、4年ほど担当してきて初めて「予約もなく当日の飛び込み相談もない」という完全ゼロの日になりました。

反面、桜がすでに開花しており一部は満開状態でしたので、昼の時間を少し長めに外出し、碁石海岸まで足を伸ばしてレストハウス周辺の桜や「乱暴谷(らんぼうや)」の写真を撮って戻りました。

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帰途も三陸道経由で陸前高田の竹駒地区などを廻って盛岡に戻りましたが、こちらも週末~翌週に満開になるのではと思われます(っていうか、この投稿の時点ですでに葉桜ですが)。

以前に投稿しましたが、私は震災があった平成23年の4月下旬頃(5年前の今頃)に大船渡や陸前高田の避難所を廻って「被災者向けの押しかけ無料相談会」をしたことがあり、津波被害による凄惨な光景の傍らで満開の桜を目にしていたことをよく覚えています。

それだけに、この時期に気仙地方(とりわけ、大船渡の盛~末崎半島、陸前高田の中心部や竹駒地区)に来て桜を見ると、震災直後の光景を思い出さずにはいられない面があります。

震災直後(3月上~中旬)は花の咲いていない季節であり、地元(被災者)の方々にとって、震災から1ヶ月を経過した4月は、避難所生活などで疲労が蓄積する一方で、はじめての「自然からの癒やし」として梅や桜に接したという方が多いのではないかと思います。

そうした意味で、まちを彩る草木が地域に存することの意義、価値を改めて感じさせられる面がありました。

そんなわけで、久々の一句

「あの街」の記憶を癒やす 気仙桜

4月14日には熊本で大地震があり、その後も余震が続くなど深刻な被害が生じていますが、九州も桜の代わりに様々な花の季節を迎えているでしょうから、人命救助や各種の被災者支援等に止まらず、そうしたものにも目を向けていただければと思います。

昨年の4月に法テラス気仙に出張した際は、散り際の桜の花弁をカモメに見立てた一句を作りましたので、こちらもご覧いただければ幸いです。
→春の気仙みちと桃源郷

震災から2ヶ月後(H23.5)の被災地相談~大船渡編~

先日に続き、震災から2ヶ月を経過した平成23年5月中旬頃に大船渡の避難所に初めて相談に赴いたときのことを記します。

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この日は大船渡市への出張相談を担当しました。今回は青森・秋田・神戸からそれぞれ派遣された弁護士さんを私の車両に乗せ、4人で被災地に向かいました。

配属先は、市の中心部に近く大船渡では規模の大きい避難所となっている「大船渡地区公民館」と大船渡の観光名所(碁石海岸・穴通磯)にほど近い「末崎中学校」の2箇所でした。

1 指定避難所まで

4月の弁護士会(対策本部)の会議で「他会の先生を自分の車に乗せるのはイヤ(事故等のリスクが怖い?)」との意見があったそうで、5月から、他会の先生については、タクシーに乗車していただくという制度?が導入されることになりました。

しかし、他会の先生は岩手の弁護士から情報を得ながら現地に向かいたいと思うはずで、タクシーに分乗せよというのは止めた方がいい(事故リスクの問題はありますが)と思い集合場所で協議したところ、もう一人の岩手の若い先生がタクシー利用を希望されたので(私に気を遣ったのかも?)、結局、私が3名を自車に乗車させ、もう一人の先生はタクシー2台に他会の先生を乗せ、ご自身は一人(自車)で現地に向かうという、かなり変な感じになりました。

これまでの経験や、この間の岩手会MLでの担当者レポートから、今回も従前以上に相談者の来ない閑散とした展開が予測されたので、遠方からお越しになる先生方に、せめて観光地の外観だけでもと、今回は、遠野(千葉家)廻りのルートで行きました(あまり遠野に関心がなさそうな方々でしたが・・)。

1時間前に現地に着きましたが、大船渡地区公民館は高台にあるため、先に被災状況を視察していただいた方がよいと考え、盛駅~大船渡駅周辺を巡回した上で、公民館に向かいました。国道沿いは断片的な被害しか見られませんでしたが、高台を降りて海岸沿いに走行すると、宮古の鍬ヶ崎のスケールを大きくしたような惨憺たる光景が広がっていました。

2 指定会場での相談

結論として、大船渡地区公民館(秋田と青森の先生が担当)が2名、末崎中(私と神戸の先生が担当)は0名という有様でした。貼り紙はありましたが、末崎では、担当の市職員の方?から「相談会は聞いてない」との発言があったり、やはり現場での広報等に至らない点はあるようです。

どこでも同じことが言われているようですが、弁護士会が避難所で相談会を実施しても相談希望者が集まらない要因として関係者等から指摘されたのは、

①被災者再建支援法などの情報が広まり「行政支援等のアナウンス程度の相談」が激減したこと

②避難所の利用者がピーク時の半分以下(約1/3とのこと)まで減少していること

③同じ避難所で何度も相談会を行っており、現時点での需要を一応満たしたこと、などでした。

同行の先生からは、

「避難所相談の時期は過ぎた。これからは込み入った相談が増えるだろうからプライバシーを確保できる市役所等に1本化すべき」

「(相談者があまりないことが常態化しているため)行く意味があるのかと自分の所属弁護士会で議論になっている。視察することに意味がある、と超熱心な某先生に説得されて渋々継続しているのが実情」

「当会ではタクシー分乗は不評」などの話もありました。

3 その他の避難所等の巡回

そんな次第で前回以上に他の避難所を熱心に廻ることにしました。とりわけ、末崎を担当した神戸の先生に関しては、神戸から来て避難所の体育館で1日中ぼけっとしただけでした、では「おもてなしの盛岡が聞いて呆れる」と言われそうなので、末崎では、12時半に「2時半に戻ります」と貼り紙をして、私と2人で末崎地区の避難所巡りをすることにしました。

が、6箇所の避難所を巡ったものの、同じような境遇に立たされた他の先生がすでに制覇していたようで、岩手弁護士会ニュースは概ね具備されていました。

なお、岩手会本部が末崎地区に神戸の先生と私を配転したのは、こうした展開になった場合に碁石海岸・穴通磯にも案内してガス抜きをせよとの指示を含むものと勝手に解釈しましたので、計20分ほど「今度は観光で神戸の皆さんを連れてきて下さいね」と観光タクシーあんちゃんに徹しました。

予想通り、両者とも以前と何一つ変わらない光景で、「壊滅したのは人の作りしものだけで、自然は無傷だなぁ」と都知事のセリフを思い浮かべました。(今回は、ヨブ記を引用する方が適切だと思いますが)

避難所巡りの最後に、避難所として使用(開放)されている某教団の道場に恐る恐る?行くことにしましたが、カーナビで山中を巡っても辿り着けず、ひなたぼっこ中のご老人に「ダーツの旅」風に尋ねたところ、「おれ、そこの避難者」と、同乗・案内いただけることになり、山奥に向かう凄い道を通って、辿り着きました。

高齢者を中心に10名弱いらしたのみで、幸い?弁護士会ニュースも見たことがないとのことでしたので、前回同様の「ミニ説明会+雑談」をして退去しました。

3時前に末崎中に戻りましたが、予想通り相談希望者はなく、その後も閑散としていました。公民館チームも同様の展開と見込んだので、そちらに移動することにしましたが、勝手に引き払うと本部の先生に怒られそうなので、神戸の先生を残し、私一人で公民館に向かいました。

公民館では、1名を残し1名を連れて近隣を廻るつもりでしたが、閑散としていたせいか、到着前の私の電話で撤収と誤解されたようで、やむなく3名で近隣を廻ることにしました。

毎度のパターンですが、公民館も不在者ばかりでチラシ(弁護士会ニュース)配りをしても効果なく、「相談者が来なくて困ってます」とアナウンスをして貰っても効果なしだったので、撤収希望という面もあったようです。

これまでのパターンから、公民館付近の人数の多い避難所(大船渡中やリアスホール)はどうせ弁護士会ニュースが山積みされているだろうと考え、少し離れた盛地区に進攻することにし、まずは、盛駅前のカメリアホール(中央公民館)に行きました。

館長さんにお尋ねしたところ「弁護士会ニュースは一枚だけある。貰えるなら世帯分だけ欲しい」とのことだったので、世帯数+αを置き退去しました。他の先生は、役所の方と雑談的に「悪徳商法被害(リフォーム系)が多発しているようだ」などと話しており、末崎に2名配置するくらいなら、こちらに1名配置した方がよいのでは?と思いました(盛地区なら周知さえあれば近隣の方も来訪するでしょうし)

次に、近くにある避難所として指定された老人福祉施設に行きました。こちらも弁護士会ニュースは1部しかないとの説明だったので補充して退去するだけかと思ったところ、相談希望の方がおられるとのことで、急遽、弁護士3名で相談内容を伺いました(訴訟の可能性のある本格的な事件相談でした)。

結局、その施設で時間切れになったので5時半に末崎中に戻り、やはりゼロ件のままということで、そのまま退去しました。

遠方からいらした先生方も色々と思うところはあったかもしれませんが、最後にお連れした盛楼閣で、それらもすべて吹き飛んだことでしょう。

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以上、計3回に亘り、宮古・陸前高田・大船渡の3ヶ所で、震災直後に私が従事した「他県の先生を引きつれた避難所相談」の実情を掲載しました。

4月3日の釜石北部の避難所相談を含め、震災から間もない時期に、沿岸の自治体の大半を廻り、様々な光景を見たり、お話を伺ってきました。

とりわけ、大船渡は震災2年目から現在まで法テラス気仙の相談担当をしており、その後の被災エリアや街並みなどの変貌を目の当たりにしてきましたので、当時の光景などを思い返すと、色々と考えてしまうところはあります。

あと1回、震災の半年後に釜石で行った相談について掲載しようと思いますが、当時の被災地の惨状や現地の混乱ぶり、ひいてはそれを踏まえた今後の改善等に関する問題意識が多少でも伝わったのでしたら幸いです。

繰り返し書いてきたとおり、避難所では、私に限らず「相談者がいなくともとにかく押しかける」という光景が多く生じましたが、私としては、これを今流行り?の「アウトリーチ」などと賛美する気には全くなれず、弁護士会の無為無策ぶり(現場サイドへの戦力投入の稚拙さ)を示すものとしか思えません。

私は、「弁護士は勉強し、かつ働いて(させて)ナンボである。だから、相談者の来ない相談会に往復数時間を含めて丸一日、弁護士を従事させる時間があるのなら、何か勉強でもさせるか、被災地向けの法律関係の広報でも書かせて自治体等を通じて伝達させた方が人の活かし方として正しい。少なくとも、懸命に勉強した人間(の能力や熱意)をそうした形で生かさずに時間等を浪費させるのは、社会悪ではないのか」としか思えない面があります。

少なくとも「15年戦争(日中・太平洋戦争)って、こうして負けたんだろうなぁ」と感じながら何度も運転を続けてきたというのが、末端の兵隊の正直な気持ちであることは間違いありません。

また、弁護士業界内の有名なネタで、民事訴訟法の泰斗・高橋宏志先生の「成仏理論」というのがあり、「世の中の人々のお役に立つ仕事をしている限り、世の中の人々の方が自分達を飢えさせることをしない」といったことが語られているのですが、「誰にも必要とされない相談会や押しかけ相談事業に駆り出される若手弁護士の姿」は、成仏?に向かってまっしぐらという町弁業界の未来を感じて暗澹たる思いを禁じ得ないところはあります。

結局、そうした気持ちが勝ちすぎたせいか、事実上その後は弁護士会の支援活動なるものからは距離を置くようになっていったような面はありますが、他方で、業界環境の激変などもあり「私なりの支援」を実践するどころではない状況が続いているという有様で、他人様に面と向かって偉そうなことを言うこともできず、こうして、細々とブログで問題意識を共有いただける方があればと願っているというのが、恥ずかしい現実です。

春の気仙みちと桃源郷

昨日は法テラス気仙の担当日でした。この日の岩手の桜前線(ソメイヨシノなど)は、盛岡は5分散り、花巻周辺はすでに散り際も多いものの、寒冷な遠野・宮守エリアの街道沿いの並木は満開~散り始めで、峠を下った住田町は散り際となり、大船渡に至るとほぼ葉桜、という状態でした。

反面、住田町内は新緑の開始時期で、山桜のほか芽吹いたばかりの新緑の淡い緑色や黄色、黄緑色などの多様なグラデーション(薄桃、薄紫の桜色を含め)が大変美しい状態にあるほか、街道沿いの民家には、桜かそれ以外(桃?梅?)か分かりませんが、満開になっている樹種も多く見られ、濃い桃色や赤みがかった花の様子なども楽しむことができました。

そのような空間を運転していると、視界全体に優しい色が広がり、優しさに包まれているような、まるで桃源郷にいるかの如き印象を受けました。

住田町は、観光地的な桜の名所というのは聞きませんし、ソメイヨシノ等の群木などもありませんが、狭隘な谷間を囲む山々の新緑のグラデーションは、春を描いた巨大な日本画の屏風絵を続けざまに見ているような印象があり、こうした美しい光景は、住田町に限らず、北上高地ならではという面があります。

住田町は、晩秋から冬にかけての気仙川の渓流も大変美しいのですが、こうした心地よいドライブコースは、もっと知られてよいと思いますし、見応えのある場所の展望場所の整備なども考えてよいのではと感じています。

昼食は大船渡の魚市場食堂でいただきましたが、デッキの間近では、冬はあまり見かけなかったような気もする無数の海鳥(ウミネコ又はカモメ)が羽ばたき、快晴の空や海の青さと鳥の白さのコントラストが心地よく感じられました。

桜並木が散った後の葉桜の光景は、どことなく寂しい印象がありますが、港町では、海鳥たちが、空に舞い散った桜の白い花弁が姿を変えたかのような趣で、その寂しさを慰めてくれるのかもしれません。

そんなわけで、最後に一句。

花ふぶき海鳥となる気仙桜

被災地・被害地の最近の法律相談とメンタル問題

先日、福島の浜通り(津波被災地であると共に、原発被害地でもある)で活動されている弁護士の方のお話を伺う機会があったのですが、その方は、現地の方々の多くが、メンタル上の問題(疾患等)を抱えた状態にあるということを強調されていました。

とりわけ、土木工事等が本格化している岩手・宮城と異なり、いつまでも先が見えない状態が続き過ぎているため、気持ちの面で挫けてしまう方が少なくないのだそうです。

また、原発賠償金を生活再建とはかけ離れた用途(パチンコ代等)で浪費してしまう人も一定数いるという話も出て、その原因として、そうした自身の将来の見えない状態が続くことが心を蝕み、そうした方向に流されることの原因になっているのではないかとのお話もありました。

岩手でも、震災から間もない時期には、義援金等をそうした用途に費消している被災者が一定数見られるという話題が出ていましたが、震災1年目頃のことで、さすがに現在では全くと言ってよいほど聞きません。

それだけに、そうした話題が現在も出ているという福島の現状には、時が止まっている(原発のせいで時が止められている)かのような印象を受けます。

ただ、現在の岩手の被災地でも、メンタルの問題を抱えた方が少なくないという話題は、よく出ているように思います。私自身、震災直後から月1、2回の頻度で沿岸に通い、2年ほど前からは法テラス気仙の担当をしていますが、メンタル面の問題を抱えた方から相談を受けることは珍しくありません(自己申告がされる場合もありますし、一見してそうした印象を受ける方も少なくありません)。

そうした「比率」は、盛岡よりも遥かに高いと感じますし、震災直後には、被災地でもその種の問題を抱えた方の相談を受けたことはほとんど無く、年を追うに連れ増えてきているという印象はあります。

ざっとした印象論ですが、街全体が巨大土木工事の現場となって変貌を遂げつつある中で、そうした「新たに出現する街」に感情移入できず、まして、そうした営みからは疎外されている一部の高齢者や若者など(いわゆる弱者層)に、メンタル面での問題が生じているのではないかと感じます。

その点で、少なくとも岩手の被災地では、そのような層に疎外感を抱かせることなく、震災後の社会の一員、担い手であるという意識を涵養する工夫、仕組みなどが、強く求められているのではないかと思います。

相談内容に関しては、震災そのものがダイレクトに論点になっているもの(震災関連死とか私的整理GLのようなもの)は少ないものの、何らかの形で震災が関係しているものは珍しくないと感じています。例えば、企業関係のトラブルなども、震災後に復興等のため立ち上げた事業や法人に関する話であることが多いように思われます。

ところで、先日の法テラス気仙の担当日には、盛岡では著名なラーメンチェーン店「宝介」の大船渡店に初めてお邪魔したのですが、同店のみのオリジナルメニューである「さんま味噌ラーメン」をいただきました。

食べてみて驚きましたが、大船渡の有名店「黒船」のような「サンマで出汁をとったラーメン」ではなく、サンマそのもの(一本のサンマをグツグツに煮込んでいるようです)というか、サンマの味が全面に出ており、「ラーメンの形をしたサンマ」を食べているような感じでした。

私は、サンマの匂いが苦手な人にはあまりお勧めしませんが、反面、サンマが大好きな方や、「他のどこにもないようなサンマ味のラーメン」を食べたいという方は、一度、召し上がって損はないと思います。写真はありませんが、こちらのブログをご覧いただければ、イメージが掴みやすいと思います。
http://sanriku-ofunato.blogspot.jp/2013/05/blog-post_654.html

最後に、食後に赤崎エリアから撮影した大船渡湾と、尾崎岬から太平洋側を撮影した写真を掲載して、締めくくりとさせていただきます。

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震災復興とインフラツーリズム

昨年10月の日経新聞で、新たな旅行形態(ニューツーリズム。産業施設観光やエコ・グリーン系、健康・医療系など)の一つとして、土木構造物の建設現場を見学する「インフラツーリズム」なるものが取り上げられており、例として、高速道路のジャンクション建設現場のツアーが紹介されていました。

それを見て、すぐに思い浮かんだのは、被災地では、現在、三陸道や防潮堤、嵩上げ工事や高台の造成、各種建造物の復旧・新造など、至るところで様々な工事が行われたり計画・準備されたりしていますので、それらを見学できるツアーを現地で提供しても良いのではということでした。とりわけ、震災の風化や関心低下等が叫ばれて久しい状況にあるのですから、そうしたことで遠方の方々の関心を喚起する意義は大きいのではないかと思います。

また、インフラ見学に限定する必要はないでしょうから、建設現場と地元の自然景観等の鑑賞を交えたツアーを販売しても良いと思います。私は法テラス気仙の担当のため月1回のペースで大船渡に行っているのですが、大船渡湾は、嵩上げ等の復興土木工事現場だけでなく、太平洋セメントの巨大工場もありますので、これを洋上から鑑賞したり被災廃棄物の焼却等を見学するツアーでもあれば、「期間限定」の希少価値も相俟って、工場萌えの人々が押し寄せるのではないかと思います。

また、湾岸クルーズ船のコースとして、大船渡湾の牡蠣養殖棚を間近で見学したり(いっそ、その場で食べさせたりとか?)、余勢を駆って大船渡のシンボル・穴通磯なども間近で鑑賞できれば、そうしたものを見たい人にも大いに需要があると思います。国道45号線に沿って坂の上に街が広がる大船渡町周辺の光景も、参加者に心地よさを提供することでしょう。

もちろん、本格的にインフラツアーをしたい方には、三陸道の工事現場や隣の陸前高田の一本松のすぐ隣で大々的に行っている巨大コンベアーや嵩上げ工事現場なども視察し、本気度の高い方々にはオプションで地元関係者との意見交換企画なども付加すればよいと思います(冗談抜きで、地元関係者の会合を見学し議論に参加できるツアーなどもあってよいと思います)。

例えば、地元自治体などが企画して最初に地元や首都圏などのカメラマンや旅行業者、学術関係者などを対象にツアーを行い、宣伝して貰ってもよいのではないかと思うのですが、どうでしょう。

なお、この程度のことは、既に多数の人が考えているのだろうと思ってネットで「インフラツーリズム 被災地」と入力して検索したところ、残念ながらというか、国交省の東北地方整備局の文書が出てきた程度でした。
http://www.thr.mlit.go.jp/Bumon/B00097/K00360/guide-tohoku/guide-t3.pdf

先日、法テラス気仙の担当日で市内を少し自動車で廻った際、屋形船が就航しているという看板を見つけました。今年の3月から始まった企画とのことですが、単なる観光事業としてだけでなく、上記のような「震災復興のインフラツーリズム」のツールとしての活用や小型船の導入なども考えていただければと思います。
http://www.55027104031.com/

地元関係者の奮起を期待したいところです。