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年祝い

盛岡の奇習・歳祝いと「正義を実践する世代」

1ヶ月半も前の話で恐縮ですが、3月上旬頃に、盛岡JCの関係で行われた「歳祝い」に参加してきました。

この行事(歳祝い)は、いわゆる男の厄年に関連するものですが、盛岡では、白菜や大根、亀の子タワシやカラタチの枝などを集めて、対象者(年男)が上半身裸になり、参加者がそれらを手にとっては、年男の裸身を擦ったり叩いたりするというものになっています。

私も詳しい由来は存じないのですが、もとは地域に伝わる歴とした伝統行事(飾るものの裸身に云々は無し)であるものが、いつ頃からか、宴会形式で沢山の人が集まり、年男の上半身を真っ赤にするための?行事として圏内に普及したようです。

ケンミンショーで取り上げられたこともあるので、他県の方もご存知かもしれませんが、ご存知でない方は、「歳祝い(年祝い) 盛岡」で検索いただいたり、こちらのブログホテルのサイトなどをご覧になればよいと思います。

かくいう私も、平成26年の3月には、その前年(25年12月)に盛岡JCを一緒に卒業した方々と共に、「合同歳祝いの会」を行っていただいています。まあ、私はJCで活躍したメインの方々の末席にオマケ的に加えていただいたというのがお恥ずかしい実情のせいか、皆さん遠慮がちで強烈な一撃を下さる方はあまりおらず、もっと派手にゴシゴシやっていただきたかったなぁと思わないこともありませんでしたが。

ともあれ、合同歳祝いの会を主催されたJCの先輩方のお言葉を借りれば、JCの歳祝いは単なる厄払いや地域行事の類ではなく、JCの卒業式(40歳)と相俟って、「地域社会のため尽くす志を持った同い年の面々が、卒業と同時に共通の通過儀礼を持つことで、各人が志を実践して社会に奉仕するための結束や相互扶助の基盤とする」という独自の意義があります。

盛岡JCの合同歳祝いは、諸事情により一旦中断(一部の方だけの個別実施型)し、3、4年前に復活したと伺っていますが、卒業生の大半が歳祝いに参加した我々の期は、リーダーのIさんのもと、現在も非常によい関係が続いており(恥ずかしながら、私は現在も半端な参加しかできていませんが)、今後、盛岡JCを卒業される方々も、ぜひ合同歳祝いを続けると共に、なるべく卒業生の全員が参加できる方向で取り計らっていただければと思っています。

ところで、最近、半年分以上溜まった日経新聞を斜め読みで処理しているのですが、昨年8月の「私の履歴書」を担当された東大寺長老の方(森本公誠氏。宗教家であると共に高名なイスラム研究者だそうです)が連載を終える際に、アフガニスタンの古代遺跡で発見されたデルフォイ(古代ギリシャ)の哲学者の碑文を紹介していました。

いわく「少年のときには良き態度を学び、青年のときには感情を制御することを学び、中年には正義を学び、老年になっては良き助言者になることを学ぶ。そして、悔いなく死ぬ。」

この碑文のうち、「少年」を成人する(又は社会に出る)までの時代、「青年」をJC世代(20歳~40歳)、「中年」を40歳から一般的な職業人としての熟練期(個人差はあるにせよ概ね60~65歳)まで、それ以後を「老年」と解釈し、かつ、「学ぶ」とは習得だけでなく実践を含むのだと理解すれば、この碑文を違和感なく受け止めることができそうです。

そうした意味では、盛岡に生きる方々には「歳祝い」を正義を実践する責任を再認識するための通過儀礼として大切にしていただければと思っています。

また、盛岡では女性について「歳祝い」に相当する行事があるのか存じませんので、40歳かどうか、ゴシゴシ系とする否かはさておき、女性についても、責任世代として心機一転する意識を醸成できるような通過儀礼的な行事を考えても良いのではと思います。

上記の森本氏の連載は、「世界は美しいもので、人の生命(いのち)は甘美なものだ」というブッダの最晩年の言葉で締めくくられていましたが、そうした実践を通じて、個々人が美しい生き方をし、世界全体を美しいものにしていくことができればと思っています。

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R03.03.22追記

先週のケンミンショーでも、この件が再び取り上げられており、昭和40年代に盛岡の酒造関係者の組合の青年部が、酒類販売が落ち込む2月のテコ入れのため、伝統行事の「おまけ」として発案し広めたのが、この奇習の始まりだ(要は、バレンタインチョコのようなもの)、という解説がなされていました(この投稿を載せた際にも、そのようなコメントをいただいた記憶があります)。番組(映像記録)内に、存じ上げている方の姿も拝見でき、驚きました。