北奥法律事務所

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街並み保全

岩手弁護士会・公害環境委員会の景観アンケート調査①

昨年、私が一応委員長となっている標記の委員会(以下「当委員会」といいます。)では、まち並み(歴史的建築物など)保護などを含む景観問題に関する取り組みの一環として、各地の弁護士会の景観問題への取り組みを照会するアンケート調査をしました。

全52会のうち計35会から回答をいただきましたが、景観問題は弁護士会の活動としてはメジャーとは言えない分野ということもあり、圧倒的な規模を誇る東京弁護士会と、歴史的建築物の保護の関係で先端的な取り組みをしている京都弁護士会など僅かな弁護士会からは詳細な回答をいただいたものの、多くの弁護士会では特段の取り組みはしていないとの回答でした。

とりあえず、ここではアンケートの内容をそのまま紹介します。

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1 貴会では、地域内の景観の保護(歴史的、文化的景観等を中心とするまち並み保護のほか自然的景観なども含む。以下同じ)について、現在又は概ね過去5年以内に以下の活動をなさっていますか。該当するものに○を付してご回答下さい。また、具体的な活動内容を余白部分又は別紙にご記入下さい(一部の文言を省略)

(1) 保護(法規制など)の当否が問題となっている個別事案の現地調査及び関連する法規制などの調査
(2) 当該事案ないし法制度に関する地方公共団体(都道府県及び市町村又はいずれか。以下「自治体」)や国などへの意見書の提出
(3) 景観保護等を目的とした市民向けシンポジウムなど、地域内の住民などへの働きかけ
(4) 景観保護等を目的とした自治体の審議会等への会員の推薦及び推薦した委員への条例化等に関する働きかけ、自治体の首長や地方議会議員への働きかけなど
(5) 上記以外の活動ないし運動
(6) 現在及び対象期間内に、上記(1)ないし(5)に該当する活動はしていない。
(7) その他・ご意見など

2 貴会は、地域内の景観の保護のため、以下の活動をし、或いは措置を講じていますか。該当するものに○を付してご回答下さい。補足説明をいただける場合は、余白又は別紙にご記入下さい。

(1) 自治体の景観審議会などの委員に関する貴会会員(特に、貴会公害対策環境保全委員会の委員)の推薦
(2) (1)で推薦した貴会会員など審議会の委員との定期又は不定期の意見交換等
(3) 地域内で景観保護などに取り組む団体、企業などとの協働、意見交換など
(4) その他の活動・措置
(5) 上記に掲げているような活動等は特に行っていない。
(6) その他・ご意見など

3 貴会がこれまで地域内の景観の保護を巡る制度(景観保護等を目的とした制度)に関し、非常に問題があり、特に優先的な改善を要すると感じている点(①景観保護を目的とする建築等の規制又は保護の措置の不足、②住民参加その他の手続上の不備のほか、③行政又は立法による不要・過剰な規制なども含む)と感じた例(論点)がありますか。あると感じている場合には、その内容をお知らせ下さい。

4 地域内の景観保護の問題に関し、行政による建築等の規制又は保護の措置以外の事柄(例えば、居住者・所有者の相続などの問題や空き家対策、近隣紛争その他の私法上の問題など)で、貴会のこれまでの活動などを通じて、特に喫緊の対策を要すると考える事柄はありますか。あると感じている場合には、その内容をご教示下さい。

5 その他、景観保全・活用などの問題を巡る弁護士会ないし弁護士の活動に関し、貴会において特に取り上げるべきと考える事項(ご意見)がありましたたら、ご教示下さい。  (以上)

盛岡の町家文化と地元弁護士の役割

先日、古い町屋群が保全されている盛岡市鉈屋町で開催された「盛岡町家 旧暦の雛祭り」と、北上川を挟んだ対岸の仙北町で開催された「森とひなまつり 明治橋仙北町界隈」の双方を拝見してきました。

とりあえず、関連HPを貼り付けますので、あまりご存じでない方はこちらをご覧下さい。
http://machijuku.org/event/
http://www.city.morioka.iwate.jp/event/event/028793.html

http://www.morioka-times.com/news/2014/1404/11/14041101.htm
http://www.morioka-times.com/news/2014/1404/09/14040901.htm

鉈屋町の方は、今年で10年目だそうですが、通り沿いの家々に雛飾りが溢れ、規模も大きく人力車や和装の方々のパレードなど、和服姿の女性(年齢層は様々でしたが)を沢山お見かけし、古い街並みを生かした華やかなお祭りとしての雰囲気が良く出ていました。

仙北町の方は、鉈屋町と比べると規模は遙かに小さいですが、「徳清(佐藤家)」と金澤家の2つの文化財的な価値のある邸宅の公開を兼ねており、「雛飾り」の規模も、私が拝見した限りでは全体を通じて金澤家の飾りが最も見応えがありましたので、鉈屋町と仙北町の双方を見ないと勿体ないと思いました。

ところで、私が「ひな祭り」を見に行ったのは今回が初めてだったのですが、私は雛人形の価値などが分かる人間ではありませんので、主たる目的は、これまで拝見したことのない鉈屋町の建物群や徳清倉庫などの内部を見学することと、もう一つの理由がありました。

私が一応の責任者(委員長)をつとめている、岩手弁護士会・公害対策環境保全委員会では、来月、鉈屋町側の主催団体である「盛岡まち並み塾」の事務局長である渡辺敏男氏(建築家)に、「歴史的景観の保全」等に関する講義をお願いすることになっています。そのため、鉈屋町等の町家の文化的価値やその保全活動などが講義のテーマになると予測されるので、予習としてお邪魔したという次第です。

ただ、「まち並み保全」というテーマは、歴史や古い街並みがそれなりに好きな人なら誰でも入っていけそうな感じがする反面、私の知る限り、日弁連(公害環境の委員会)でも取り上げられておらず、建築実務に携わっている方でないとピンと来ない建築規制の細かい話が取り上げられやすいこともあって、弁護士の出番がどこまであるのか(出番を作れるのか)、よく分からないというのが正直なところです。

反面、本丸というべき建築規制の話にこだわらず、その周縁で生じる様々な法律問題に関する御用聞きのような形であれば、平凡な弁護士にも色々と出番が生じる可能性はあるのではとも感じています。

例えば、数世代に亘り受け継がれている町家の中には、数十年前に亡くなった方の名義のままになっていて、現役の相続関係者の意思統一が困難であるなどの理由で、相続登記に困難を伴う例があるかもしれません。また、長期間、空き家の状態が続き、近隣の方にとっても防犯、安全面で不安があり、管理や権利関係の処理を速やかに行うことが望まれる例、敷地の利用関係が複雑であるとか境界などに深刻な対立を伴う例など、弁護士がお役に立てる、立つべきケースが幾つもありそうな気がします。

また、今回の徳清倉庫さんのように区画整理などの形で行政との接触(往々にして利用形態に関する干渉や変更要請)を受けることも多いでしょうから、中には行政と見解の相違が生じて法的検討、調整を必要としたり、或いは、利害関係者の多くの方が意思統一できているものの、一部の方の反対があって物事が進まず、早期解決のため弁護士による法的な対応が望まれるという例もあるのではと思われます。

そして、それらの具体的な対処を通じて現行法制の問題点や限界を明らかにできれば、「まち並み塾」のような団体さんと協力して、法律や条例等のあり方について深みのある提言をするということもありうるのかもしれません。

それらの事柄にお役に立つことを通じて、街並みを守っている方々が一致結束して文化的価値を高める営みをすることを下支えするような活動ができれば、「街並み」そのもの(文化的価値云々)について込み入った知識がなくとも、地元の弁護士としての役割を果たすことができるのではないかと思われ、その点も含めて、地域の「宝」の価値の保全や向上に取り組んでおられる方々との協働関係を持つことができればと願っています。