北奥法律事務所

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被災ローン減免制度

弁政連岩手支部と県内の議員さん方との懇談会

2月20日に弁護士政治連盟(弁政連)岩手支部と県内の議員さん方との懇談会があり、参加してきました。

弁政連とは、事実上、弁護士会が作った政治運動?的な組織であり、同種のものは弁護士に限らず各士業で作られているものですが、他士業が自分達の職域拡大のため熱心に活動しているのに比べ、弁政連はそうした活動に積極的ではなく地元の議員さんとたまに懇談をする程度の活動に止まっている例が多いようで、岩手もその典型という感じではあります。

今回は、まず、総会の時間を利用し弁政連の会員でもある階猛議員から現在の国政に関する報告と題して階議員が取り組んでいる幾つかの事柄(憲法改正や財政、特定秘密法など)について、同議員の見解表明を含む問題意識に関する説明がありました。

続いて、各党の国会議員や県議会議員の方々が15名ほど出席された形で懇談会が始まり、震災問題が最重要テーマとして取り上げられ、陸前高田で活動する在間文康弁護士が、再建支援金(住宅)、援護資金貸付、各種給付金、災害公営住宅、災害関連死、被災ローン、造成地の瑕疵など、様々な話題についてご自身が取り扱った相談・受任事件などに基づく詳細な報告を行い、それに対し議員の方々が質問や意見を述べるというやりとりがあり、これで予定時間の大半を使った形になりました。

私自身は、在間先生が赴任される以前は陸前高田に当時あった相談センターなどに月1回以上のペースで赴いていたのですが、当時は他の被災地も含め、最も相談を受けていたものが「義援金等の受領者(世帯の代表者)が家族に配布せず独り占めしている」という内部紛争的なものでした。

そのため、当時から、立法?問題として世帯主に給付する形式はやめるべきで、内部的にも分配ルール等を定めるべき(不当な独り占めは不当利得返還請求等もできるものと明言されるべき)と感じていましたが、どういうわけか当時も今もこの話を問題にする方が誰もおらず、その点は今も不思議に感じています。

ただ、懇談の中で議員さん側から「賃貸アパートの貸主として生計を立てている人は、借主が支援金を受給するのに、自分は何も貰えず建築ローンのみが残って立ちゆかなくなった」という発言がありましたが、これは私も震災直後に宮古市などに赴いた際に何度か聞いた記憶があり、懐かしく感じました。

その際は、「多くの人が問題意識を共有しているので、何らかの制度が定まるまで待ってみては」とお伝えしていたのですが、結局、私的整理ガイドライン(いわゆる被災ローン減免制度)による銀行債務の一部免除以外にはさしたる制度ができていないように思われ、その点は残念に感じています。

他に、法曹養成制度(主に修習生の困窮)について弁護士側から議員さんに改善への後押しを求める陳情的な説明がなされていましたが、そこで時間切れとなり、私が準備段階の会合で取り上げて欲しいとお願いしていた「包括外部監査人など、政治部門(行政・議会)への地域の弁護士の関与の機会の拡大」というテーマには触れていただけませんでした。

以前にも書きましたが、私は「大雪りばぁねっと事件」に関する一連の民事訴訟に関わっている唯一の「岩手の弁護士」で、要のポジションにある方の代理人をしていることもあって、事後処理絡みを中心に様々な「残念な事情」を把握しています。

それだけに、できれば、守秘義務の範囲内でそうした話も交えつつ未然防止に関する制度改善や地域の弁護士の活用などの必要性を説明することができればと思っていただけに、残念に思いました。

そもそも、私が弁政連に加入したのは、狭義の政治運動(反政府闘争の類や業界権益絡みなど)に関わりたいからではなく、町弁業界が新人弁護士激増の受け皿となる「活動領域の拡大」(ペイに長期戦が必要なものを含む広義の「仕事」の増大)ひいては、それを通じた「地域社会への法の支配(法の正義を中心とする日本国憲法の理念を生かした社会形成)の浸透」について地道な努力をする必要に迫られており、地元の政治関係者への支援要請はそれに対する真っ当な方策ですので、そうした営みに汗をかきたいという理由からでした。

ですので、震災絡みであれ他の事項であれ、地域の様々な社会課題を取り上げ、かつ、「望ましい解決のあり方」を提言するというだけでなく、その解決の過程に「地域の弁護士を、このような形で活用してほしい」との提言、陳情を含むのでなければ、弁政連がそれを行う意義は乏しく、私が関わる必要もないと感じています。

そうした意味では、今回の懇談会が、上記の包括外部監査人のような「地元弁護士の仕事を増やすための陳情」よりも、修習生の窮状云々の説明という「業界への予算を増やしてほしいとか、弁護士の数を減らすべきという主張に親和性のある陳情」を優先させたことは、その文脈に照らしても残念な感じがしてしまいます。

また、この種の会合には常のことではありますが、様々な方が多様な論点や問題意識につき意見を仰るものの、百家争鳴して話は全く進まずという感は否めず、その点も残念に感じました。

根本的には、上述のような「弁政連(岩手支部)とは何をする組織なのか」という定義付けの問題があるのですが、多くの団体や支持者などと関わりを持たなければならないという意味で、時間が限られているであろう議員さん方との懇談の機会を持つにあたっては、個別実務に関する問題意識を説明するだけでなく、その改善を具体的に実現するための法律や条例などの案(改正を含む)や現行規定の具体的な運用案のような形(それを議員さんがそのまま議会等に持って行き、立法活動や議会からの行政への要望という形で伝達できる)で提言し、実現過程の協議まで繋げるような工夫が必要ではと思いました。

もちろん、問題意識そのものが浸透していない論点では意識喚起の説明だけで精一杯にならざるを得ないでしょうが、震災絡みの論点の多くは問題意識そのものは異論なしという話も多いでしょうから、なるべく各論(改善案)の話を進めていただければと感じています。

ところで、弁政連(岩手支部)は「不偏不党」という政治運動と真っ向から矛盾するような?スローガンを掲げていることもあり、開催にあたっては県内の国会議員と県会議員の全員の方々に参加依頼をしており、出席予定者に関しては、概ね各党の方々が参加を表明されていたのですが、どういうわけか、自民党系の県議さん(予定者3名)が当日は全員欠席となり、高橋ひなこ議員は参加されていたもののすぐに所用?で退席されてしまったので、結果として、階議員をはじめとする民主系と主濱議員をはじめとする小沢氏ないし達増知事系、旧地域政党いわて系列(いわて県民クラブ。平野議員は欠席でした)、あとは共産党と公明党と無所属の県議さんのみという出席者構成になっていました。

私は弁政連の立ち上げのときから参加しており(力のない窓際会員ですが)、私の記憶でも、議員さんとの懇談会は例年とも民主系列など(国政野党)の方は割と多く参加されるのに対し、自民系列の方の参加はいつも少ないという印象が強く、弁政連側のポリシー(特定政党に偏する支持はしていない)という点に照らしても、残念に感じています。

階議員の本来の職業が弁護士(しかも岩手会所属)であることや、その関係で弁政連側も階議員(や系列の民主県議の方)と懇意にされている方が割と多いように見える(逆に、自民系の国会議員さんや県議さんと親しくしている方は私の知る限りではあまりおられない?)ことも、そうした背景にあるのかもしれません。

ただ、旧地域政党いわて系の方々も例年よく参加されているように感じますので(平野議員も今回はたまたま急用とのことでした)、その点はよく分かりません(単純に、自民系の県議さん達は地元の弁護士は相手にしていないということなのでしょうか?)。

40年も前の話で恐縮ですが、私の祖父は自民系列の県議(二戸選挙区)として1期を務めており、残念ながら2期目で落選して引退になったのですが、どこまで本当かよく分からないものの、福岡工業高校を誘致したのは祖父だとか政治に手を出したせいで家業が倒産寸前まで追い込まれたとか、子供の頃は、そうしたことで色々な話を聞いたことがあります(なので父は政治に関わることを強く嫌っていました)。

それだけに、私自身が選挙と関わることはないでしょうけど(人気投票には適性なさすぎですし)、地域のニュートラル(やや保守系のノンポリ無党派層)な法律実務家として、与野党を問わず地域の課題抽出や立法過程などに汗をかいて欲しいと求められれば、お役に立ちたいとの思いを募らせつつ、そうした機会に恵まれないまま鬱屈した日々を過ごしているというのが正直なところです。

今回の懇談会も引き続き議員さん方との懇親会があり、上記の観点から地元の県議さんで私を必要として下さる方にお会いすることができればと思っていたのですが、妻が外せない飲み会があるということで、残念ながら弁護士側では私だけが不参加となり、この種の話がある際の通例として夕食は近所のスーパーで家族の割引弁当を買いに行くというトホホな夜になりました。

兼業主夫の宿命なのか高校進学時の呪いなのか分かりませんが、弁護士会であれJCであれ議員さん方であれ、もっと盛岡や岩手の方々と距離を縮める機会があればと思いながら、どういうわけか私には引力よりも引き離そうとする力のほうが強く働いてくるような感じがあり、そういう星の下に生まれたのだろうかと時に悲哀を感じながらも、まずは自分にできることを地道に模索し続けたいと思います。

ともあれ、弁政連関係者の一人として、ご参加いただいた議員の皆様に御礼申し上げます。