北奥法律事務所

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離婚

養育費などの未収問題の天引(給与分割)による解決と、憲法改正の前にやるべきこと(上)

以下は、平成25年に、養育費などの回収に関する法制度について憲法改正のことも考えつつ書いた投稿を再掲したものです。

前編が養育費問題で、後編で、そこから飛躍?して憲法改正について触れています。

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昔は、給与所得者たる夫に長年連れ添った専業主婦の方が離婚を余儀なくされた際に、年金の大半が夫に支給され、その形成に尽力したはずの妻がほとんど受給できないので、社会的に不公平だと言われていました。

当時の裁判所は「扶養的財産分与」などの理屈で多少の修正(改善)を図っていたものの、離婚を余儀なくされた妻の保護が不十分だということで、平成19年から年金分割制度が導入(施行)され、離婚した妻が年金の半分に見合う額を公的機関(支払元)から直接に受領できることになりました。

これにより、年金に関しては、分配の不公平はおろか、回収リスクという問題も完全に克服されることになったと思われます(夫に支給された年金を夫の口座に差押する場合には、手間と費用もさることながら、払戻による回収不能リスクが不可避です)。

これに対し、離婚等に伴い回収リスクが生じる同種の論点として、①養育費、②退職金(の財産分与)の2点があり、いずれも現状では回収不能のリスクが強く存在しており、引用のような記事がたびたび掲載されますが、一向に改善の兆しが見えません。

この点、養育費等に限らず、我が国の民事執行制度は、非常に欠陥が多い(高額な財産を有することが判明している者に対しては問題ないが、財産の所在が不明であったりその時点で財産を有していない者などに対する関係では無力に近い)とされてきました。

そのため、長年に亘り民事執行制度の強化が叫ばれており、最近の法律雑誌に発表された論考では、強制回収の実効性を高めたり任意の支払を促すための制度として、金融機関への照会制度の強化(債務者に関する財産情報の開示の徹底)や不払債務者の目録制度(信用情報登録)などが立法論として紹介されていました(判例タイムズ1384号)。

その論考では養育費等には特に触れていなかったとの記憶ですが、少なくとも「民事執行制度に頼らずに最初から天引することこそが、最良の債権回収制度」という観点に立てば、養育費等については、年金分割のように天引払い(給与分割)を実現する法改正が、必要かつ妥当というべきだと思います。

要するに、養育費を支払う義務がある親(非監護親)については、差押等の手続を要することなく職場が養育費相当額を天引して監護親に支払うものとし、退職金についても、離婚した配偶者が寄与した範囲の額については、支給時に対象額を分割し、配偶者に通知して直接に支払うことにするという方法です(いずれも、当然分割を前提に、勤務先が受給権者に対して直接に支払義務を負うという考え方をとります)。

大概の職場であれば、社会保険に加入するはずなので、社会保険を通じて勤務先等の情報を管理し受給権者に提供する形をとれば、制度の構築や運用にさほどの手間を要するとは思われません。

引用記事には養育費不払について国の立替制度なども紹介されていますが、税金一般も含めて真面目に払っている人にとっては肩代わり制度の安易な導入は納得し難い面があります。

まずは、上記のように、支払可能であるはずの債務者の履行を徹底させる方法をとった上で、就業困難などの事情により養育費の形成そのものが困難なケースなどについて、公的給付や金銭以外を含む支援を拡大させるというのが本筋ではないかと考えます。

(以下、次号)

 

令和2年の取扱実績③生活上の問題(消費者・契約)、家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、令和2年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

亡父αから特定の土地を相続したAが、同土地を占拠するB(αから無償で借りた)に土地の明渡しを求めたところ、Bが「αから贈与された、仮に、贈与が認められなくとも、取得時効が成立する」と主張したため、訴訟を余儀なくされた案件を受任しています。

先般、1審で当方の主張を概ね認める判決がなされたものの、B氏が敷地内に建物を建築(隣接する自宅から越境建築)した部分に限り時効が認められ、現在、双方が控訴し審理が続いています。

他にも、Web上のやりとり(投稿)を理由とする名誉毀損や、男女の交際に絡む紛争など対人関係の紛争に関する対応(不当要求の拒否や関係清算など)、数十年前(祖父母などの世代)に自己が所有する土地に設定された担保権の抹消手続など様々な案件で対応の依頼を受け、無事に対処を完了しています。

他にも、多数の方々から、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件などの生活上の様々なご相談を受けたり、簡易な交渉対応に応じています。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用、親権関連紛争、面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など。否認事案を含む)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。

本年も、親権(監護権)を巡り厳しく対立する事案を受任したほか、夫からDV行為を受けた女性が別居を敢行し夫に離婚を求めた案件を、別居前から相談を受け円滑な離婚を目指して支援するなどの対応にあたっています。

成年後見に関しても、財産管理や後見支援信託など基本的な対処を行う事案のほかに、後見審判後も自宅で独居を続ける方に関し、様々な問題に対処・苦慮しつつ、生活の継続を見守った事案もあります(現在は施設に入居されています)。

また、高齢のご夫婦に後見手続がなされた案件で、夫が死去し、お子さんがいないため、妻の後見人として夫のきょうだいと遺産分割協議を行うなど、様々な対処を行っています。

相続分野では、亡夫の相続に関し前妻の子との交渉などの依頼を受けた事案や、亡父の遺産分割に関し相手方の特別受益など様々な論点の検討を要した事案強硬な相続人との交渉を要した事案相続財産管理人の選任申立を要した事案などを担当しています。

また「県内の山間の集落に多数の不動産を遺して亡くなった方について、相続人である兄弟姉妹らが長期間、相続手続をしなかったため、相続人が数十名、権利の調整を要する物件(相続不動産)も多数に上り、墓地の扱いなど様々な論点が存する(放置されたまま、現在に至った)案件」の依頼を3年前に受任し、幾つかの論点に目処を付けつつ、現在も、多くの関係者と協議しながら残余の論点の解決のため対処に追われています。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は今後、ますます増えていくと思われます。

なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方、遺言執行者などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政関係では、昨年までお伝えしていたサケ刺網訴訟は無事に当方(岩手県)の勝訴で終了しました。現在は、県内のある自治体の顧問をさせていただいており、庁内で問題となった様々なご相談や訴訟事件に対応するなどしています。

刑事弁護も、被疑者段階を含め、詐欺や傷害、業務妨害、道交法違反など昨年も幾つかの事件(少年審判を含む。大半は国選事件ですが私選の依頼はタイムチャージ形式で受任しています)を手掛けています。

その他の業務としては、県民生活センターが主催する消費者向け相談や県内の社会福祉協議会が行う住民向け相談事業など幾つかの相談事業を担当したほか、東北厚生局の訟務専門員として、保険診療の不正受給などに関する解決のお手伝いをしました。

平成30年~令和元年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成30年~令和元年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用、面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など。否認事案を含む)については、現在も多数のご相談・ご依頼を受けています。

主なものとしては、夫婦の不和(親権争い)に伴い、夫が幼児を自身の実家に連れて行った上、妻に対し自宅からの単身退去を求めるなどしてきた案件で、それまで育児の大半を担っていた妻の代理人として「子の監護者指定及び引渡しの審判」の申立をした案件があります。

実務的には当然に認められるべき事件と判断して申し立てましたが、1審(盛岡家裁)で予想外の敗訴審判を受け、驚いて即時抗告(不服申立)を行ったところ、2審(仙台高裁)で無事に全面取消(当方勝訴)の決定をいただき、かなりの長期を要したとはいえ、無事にお子さんの引渡し等を受けることができました。

他にも、嫡出否認の問題を抱えた方(男性側)のご依頼で、女性側と交渉して必要な法的手続を行った案件もあります。

前回(交通事故の項)にも書きましたが、夫婦間の紛争を依頼される方の中には、弁護士費用保険を利用して委任される方もおられます。現在は勤務先など(所属団体)が従業員などを被保険者として契約する保険商品が主流のようですが、夫婦間の紛争はご本人・受任者双方にとって負担の多い手続になることが多く、保険の普及を期待したいものです。

成年後見に関しても、財産管理や後見支援信託など基本的な対処を行う事案のほかに、後見審判後も施設入居を拒否して自宅で独居を続ける方に関し、様々な問題に対処・苦慮しつつ、生活の継続を見守っている事案もあります。

また、意思疎通は問題がないものの身体に障害のある方で、家庭内に複雑な事情を抱えたご年配の方から財産管理の依頼を受け、福祉関係者と協議しつつ家庭内の問題への対処を含む様々な対応を行っている案件もあります。

相続分野では、亡夫の預金などの相続について、前妻のお子さんとの交渉等(遺産分割)の依頼を受けた事案や、亡父の遺産分割の対処の依頼を受け、相手方の特別受益をはじめ、様々な論点の検討が必要になっている事案などを担当しています。

また「県内の山間の集落に多数の不動産を遺して亡くなった方について、相続人である兄弟姉妹らが長期間、相続手続をしなかったため、相続人が数十名、権利の調整を要する物件(相続不動産)も多数に上り、墓地の扱いなど様々な論点が存する(放置されたまま、現在に至った)案件」の依頼を受け(相続人の調査等を対応された司法書士の方のご紹介)、現在も多くの関係者と協議しながら解決のため対処に追われています。

また、遺言により財産相続をしたAが、不和な状態にあるきょうだいBから遺留分減殺請求を受けたものの、B氏が生前贈与を受けていることなどから減殺(代償金の支払)はできないとして争った事案(A氏代理人として受任し当方の主張どおり解決)、相続財産管理人として受任し多数の関係者が生じている共有物分割請求(土地の権利関係の処理)に対処した事案自筆遺言の検認やその後の対処(他の相続人との交渉など)を要する事案親族関係者全員での相続放棄の申立事案(音信不通になっている親族との連絡調整を含む)などを担当しました。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は今後、ますます増えていくと思われます。

なるべく生前に、相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、特定の産業分野(行政の規制対象)で自治体に営業許可を申請して不許可となった多数の方々が、その行政処分に不服があるとして取消や許可の義務付けを求めて請求している訴訟(報道でも大きく取り上げられた「サケ刺網訴訟」)を、自治体(岩手県)の代理人として受任し、3年ほど膨大な作業を通じて闘ってきました。

平成30年に1審判決があり、主要争点で当方の主張を全面的に認める勝訴判決を受け、昨年2月には控訴棄却(県勝訴)の判決がありました(先方が上告し、本年に上告棄却=当方勝訴で終了しました)。

刑事弁護も、被疑者段階を含め、窃盗や詐欺、傷害、器物損壊、住居侵入、迷惑防止条例(盗撮)事案などに関して幾つかの事件を手掛けています(大半は国選事件ですが、私選のご依頼はタイムチャージ形式で受任しています)。

否認事件や大規模な詐欺組織の構成員の国選弁護人として、無罪の主張立証や多数の被害者への弁償など様々な作業に負われたこともありました。

少年審判についても、保護観察がなされた事案のほか、「生育環境に気の毒な事情が多く見られたものの、従前の素行の問題や現在の生活環境の悪さから、やむなく少年院送致となった事案」も経験しています。

その他の業務としては、岩手県民生活センターが主催する消費者向け相談紫波町社会福祉協議会岩手県総合福祉センターの高齢者・障碍者向け相談など幾つかの相談事業を担当しているほか、東北厚生局の訟務専門員として、保険診療の不正受給問題に関する解決のお手伝いをしています。

 

平成29年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成29年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用、面会交流、離婚後の養育費のほか破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争や離婚後の面会交流の拒否に伴う間接強制を巡る紛争など、親子間の問題に関する事案の受任も複数あり、依頼主の希望をはじめ子の福祉など様々な事情を考慮し各種の調整を行い、穏当な和解による解決に努めています。

成年後見の選任も増加傾向にあり、後見人のほか保佐人・補助人として選任される例もあります。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

昨年は、意思疎通には問題がないものの家庭内に複雑な事情を抱えたご年配の方から財産管理に関するご依頼を受け、福祉関係者と協議しながら家庭内の問題への対処を含む様々な対応を行った案件もあります。

相続分野では、遺産分割を巡り当事者間に激しい対立があり、遺産の評価や寄与分、特別受益など複雑な争点を伴う事案のほか、被相続人が死去直前に親族に財産の一部を贈与する趣旨の書面を作成し、遺言としての様式は満たさないものの、贈与としては有効になされているとして、法定相続人に請求した事案(法定相続人が要後見状態になり、他の親族も巻き込んで複雑な展開となった事案)などを手がけており、必要な主張立証を尽くした上で、裁判所の和解勧告などに踏まえて解決しています。

また、身寄り(配偶者や子、両親)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、遺産の管理や付随する法的問題の対処などを行っている事案もあります。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は増えていくと思われます。

なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

他にも、相続登記が放置されたため多数の相続人が生じている不動産の権利関係の処理に関し、他の相続人への交渉が必要となった事案や、相続財産管理人として受任し共有物分割請求訴訟に対処する事案なども担当しています。

離婚・親子・相続などに関しては、以前にセミナーを行う機会がありました。それらの分野に限らず、セミナー講師などのご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、特定の産業分野(行政の規制対象)で自治体に営業許可を申請し不許可となった多数の方々が、その行政処分に不服があるとして取消や許可の義務付けを求めて請求している訴訟を、自治体(岩手県)の代理人として受任しています。

本年3月末に1審判決があり主要争点で当方(県)の主張を全面的に認める勝訴判決をいただいており(報道でも大きく取り上げられた「サケ刺網訴訟」です)、相手方(県が必要やむを得ない規制として定めた事項に不服のある一部の漁業者の方々)の控訴に伴い、今後も解決に向け対応を続けていく予定です。

刑事弁護も、被疑者段階を含め、窃盗や詐欺、傷害、覚せい剤事案など主な犯罪類型に関し幾つかの事件(大半は国選事件ですが私選のご依頼もありタイムチャージ形式で受任しています)を手掛けており、起訴前に示談し不起訴となった事案も幾つかありました。

中には、逮捕時に被疑者宅に多頭崩壊とみられる猫の大量残置などの問題が判明し、動物保護の関係者と協議しながら適正な対応を図った事案もありました。

少年審判(未成年者に関する刑事事件)についても、試験観察を経て保護観察(社会内処遇)が定められた事案など複数の事案も受任しています。

その他の業務としては、岩手県民生活センターが主催する消費者向け相談岩手県総合福祉センターの高齢者・障碍者向け相談など幾つかの相談事業を担当しているほか、東北厚生局の訟務専門員として保険診療の不正受給問題への対処のお手伝いをしています。

平成28年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成28年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚請求や関連紛争(離婚時までの婚姻費用、面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、様々な立場の方から多数のご相談・ご依頼を受けています。被害者側の受任事案で、加害配偶者側が不貞を争ったものの、携帯電話の会話記録などを整理して不貞の事実を立証して賠償金が認められた例もあります。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争離婚後に生じた子の引渡や親権の変更を巡る紛争など、親子の問題に関する事案の受任も複数あり、依頼主の希望をはじめ子の福祉など様々な事情を考慮し各種の調整を行い穏当な和解による解決に努めています。

成年後見に関しても、裁判所から、後見人のほか、保佐人・補助人として選任される例が増えています。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

相続分野では、遺産分割を巡って当事者間に激しい対立があり、遺産の評価や寄与分、特別受益など複雑な争点を伴う事案のほか、被相続人が死去の直前に親族に財産の一部を贈与する旨の書面を作成し、遺言としての様式は満たさないものの贈与としては有効になされているとして、法定相続人に請求した事案(法定相続人が要後見状態になり長期化した事案)などを手がけています。

また、身寄り(配偶者や子、両親、近しいきょうだい)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、相続財産管理人やそれらの一貫として遺産の管理や付随する法的問題の対処などを行った事案もあります。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は今後、急速に増えていくと思われます。

なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが紛争やトラブル発生の防止のため望ましいことが多いと思われますので、遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め、早期の対策などをご留意・ご検討下さい。

離婚・親子・相続などの問題に関しては、昨年中は幾つかのセミナーを行う機会がありました。それらの分野に限らず、セミナー講師などのご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、特定の産業分野(行政の規制対象)で自治体に営業許可を申請し不許可となった方々が、その行政処分に不服があるとして取消や許可の義務付けを求めて請求している訴訟を自治体側の代理人として受任しています。

詳細は差し控えますが、その分野に関する長年の政策的な積み重ねの当否などが争点とされている事案であり、担当の方から様々なお話を伺うと共に、行政訴訟に関する基本的な法律論(取消訴訟の主張立証のあり方や行政裁量の問題など)の検討も積み重ねており、大変しんどい裁判ですが、固有のルールが複雑に重なる行政訴訟を手がける上では、学ぶところの多い事件となっています。

他にも、区画整理に伴う損失補償の問題に関する事件を手がけたこともあります。

刑事弁護については新人弁護士の増加により受任件数は多くありませんが、被疑者段階を含め、窃盗や覚せい剤事案など主な犯罪類型に関し幾つかの国選事件を手掛けています。

また、私選での少年審判の受任もあり、事件の背景や今後のあり方など少年の更生環境を検討したりご家族とお話しする機会がありました。

その他の業務としては、昨年に引き続き被災者支援の一環として弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています。数年に亘り大船渡の法テラス気仙など沿岸での相談を担当してきましたが3月に担当を外れ、本年は内陸部での相談が主となります。

平成27年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成27年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。芸能人の報道で話題になったように、当事者のデジタルの会話記録を入手、整理して不貞の事実を詳細に立証して高額な賠償金が認められた例もあります。

概ね、半年から1年程度の審理を経て和解する例が通常ですが、中には、子の引渡しや親権をはじめ不貞行為などを含め夫婦間に厳しい利害対立があり、2年以上に亘り様々な訴訟手続を行い争いを繰り広げた末に和解が成立し終了したという案件もあります。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻し母との接触を拒否したため、母の代理人として子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの、その逆に、別居した母が子と同居する父に子の引渡請求を行い、父側で受任したもの)も何件か受任しており、昨年に従事した事案では、当方依頼主の主張が認められています。

子を巡る紛争は、面会交流を含め近時は著しく増加しており、裁判所は子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所から、後見人のほか、保佐人・補助人として選任される例が増えています。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

相続分野では、自筆遺言証書に基づく財産相続を受けた方から、その内容を遵守しない他の相続人にやむなく訴訟提起し、遺言の内容(効力)が争われたものの、無事に当方の主張が認められた事案や、きょうだい間で不和が生じ当事者間で対話が難しい状況にある方のご依頼で遺産分割を行った例などがあります。

また、身寄り(配偶者や子、両親、近しいきょうだい)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、多数の親族関係者の意向調査や利害調整を伴う遺産分割や預金払戻などを手掛ける機会もありました。

昨年も、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、裁判所の要請で相続財産管理人に就任し権利関係の処理を行う事案が幾つかあったほか、関係者のご依頼で、特別縁故者に対する財産分与の申立を行った例もあります。

今後、身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案は増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

この点に関し、1月に明治安田生命(盛岡支社)さんのご依頼で相続や遺言に関するセミナーを行う機会がありました(現在も第2弾の真っ最中です)。相続に限らずセミナー講師等のご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘り区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、整理事業の実施に伴う建物等の撤去により自治体が提示した損失補償額に不服があるとして、県庁(収用委員会)による損失補償額に関する裁決手続を行った例があります、

また、先般、岩手県庁の依頼で、ある行政訴訟(県の行政処分を受けた方が不服があるとして取消請求している事件)を県の代理人として受任した事案があります。

他にも、特殊な事例で国に対する国家賠償請求訴訟を手掛ける機会もありました。

刑事弁護については、新人弁護士の増加により受任件数は減少傾向にありますが、被疑者段階を含め、窃盗や傷害など主要な犯罪類型に関し幾つかの国選事件を手掛けています。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています(当職は大船渡の法テラス気仙などを担当しています)。

盛岡北RCからの卓話依頼(男女問題など)

次の水曜(18日)の盛岡北ロータリークラブの例会で、急遽、卓話を担当することになり、某会員の方の熱烈なご要望?により「男女の愛と不倫を巡る法律実務」をテーマとすることになりました。当クラブの方は申すに及ばず、市内等の他のRC会員の方におかれても、ご参加いただければ幸いです。

当日は、「あるRC会員の家族(架空)を巡って生じた、起きて欲しくない物語」などと題して、壮年のごきょうだいの各人に、離婚や不倫、交際などを巡ってトラブルが起きたという想定で、代表的な論点や裁判所の一般的な考え方などをご説明したいと思っています。

RCの卓話は実質20分強しかありませんので、当日は論点紹介に止まるでしょうが、1時間とか90分などのバージョンでお話することもできますので、セミナー?などのご要望などがあるようでしたら、ご遠慮なくお声掛け下さい。

ちなみに、前回は、県内でCMソングなどの制作やナレーター等に従事されている菅原直子さんの卓話を拝聴しました。ホームセンター「サンデー」のテーマソングを歌っている方なのだそうで、冒頭でご本人のナマ歌をご披露いただき、ささやかな感動を味わいました。

他にも、世界的な話(ヴェスビオ火山ケーブルカーの件)から県内ネタ(岩手川、ペコ&ペコなどベーシックな話から近時の「焼き冷麺」、ドンドンダウンなど)も交えつつ、コーポレートアイデンティティや商品ポリシーの重要性(それを確立している企業ほど良いCMをすぐに作れる)を伝える内容になっており、大変勉強になりました。

平成26年の業務実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成26年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を簡単ながらまとめました。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

相続分野では、死亡危急者遺言」(危篤時に第三者(証人)が作成し、後日に裁判所の確認を受ける制度)が作成され、被相続人の友人に多額の財産が遺贈されたという事案で、ご遺族から、遺言者の意思に反するとのご相談を受け、昨年から遺言無効等を求めていた訴訟について、当方の主張を認める旨の和解勧告があり、勝訴的和解が成立して終了したという例があります。

この件では遺言者(被相続人)の方に認知症がなく、遺言無効の主張が認められない可能性も否定できない事案でした(依頼者の方によれば、以前に他の弁護士に相談して勝訴は困難と断られたのだそうです)。

当職も、立証に課題があるとは感じつつ、事案固有の様々な事情から、遺言無効が認められるべきだと考えて、依頼主と共に膨大な作業時間を投入して様々な主張立証を展開したところ、全面勝訴に匹敵すると言ってよい、満足いく成果が得ることができました。

昨年は、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、利害関係者のご依頼で相続財産管理人の申立を行ったり、私自身が管理人に就任して権利関係の処理を行うという事案が幾つかありました。

以前に「無縁社会」などと呼ばれ、現在もその状態が解消されていない中、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ないケースは増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので、ご留意いただければと思います。

また、遺言に関し、自筆遺言証書の文言などに問題があり、あるべき対処(遺言の解釈など)についてご相談を受けたことが複数あり、中には、相続人間で訴訟を行っている例もあります。

お一人で遺言を作成するのは、内容が明確(財産全部を特定の相続人一人に相続させるようなもの)であればまだしも、解釈による紛争のリスクが否定できませんので、公正証書遺言に依っていただくか、どうしても自筆を希望される場合には、文言の当否についてご相談いただくなどの対処をご検討いただきたいと考えます。

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)についても、法テラスの無料相談制度(震災当時、岩手県などに在住の方は、資力などに関係なく一律ご利用できるもの)などを通じて多数のご相談を受けており、訴訟や家裁の調停等を受任した例も少なくありません。

昨年は、夫婦間の子の引渡を巡る紛争(母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻した挙げ句、母との接触を拒否したため、母が父に対し、子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの)を受任しており、逆の立場で受任した事件もあります。

子を巡る紛争は、面会交流を含めて、近時は著しく増加しており、裁判所は、子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所の委託で後見人に選任されている例が複数あります。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘って区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、区画整理の一環として自治体が行った行政処分に対する取消請求訴訟や執行停止申立を行った例があります。

刑事弁護については、幾つかの国選事件のほか、若干の私選弁護(相当期間内で終了しタイムチャージ形式で清算するもの)が幾つかありました。詳細は伏せますが、ある団体について業務上横領罪で起訴された方が嫌疑を否認し、有罪の当否が激しく争われた事件を担当した例もあります。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として、弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています。大船渡の法テラス気仙に月1回の頻度で通っているほか、原発事故に起因する賠償問題なども扱いますので、必要に応じお問い合わせ下さい。

有責配偶者からの離婚請求が長期間の別居等の事情がなくとも認容された例

震災後、不倫が絡んだ法律問題についてご相談を受ける機会が増えましたが、その多くは、慰謝料請求の当否に関するご相談で、「不貞をした配偶者(有責配偶者)が自ら相手方配偶者に対し離婚請求できるか」という論点については、ご相談を受ける機会はさほどありません。

この点(有責配偶者の離婚請求)は、昭和62年の最高裁判決が、①夫婦の別居が当事者の年齢や同居期間と対比して相当の長期間であること、②未成熟子がいないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど離婚を認めることが著しく社会正義に反する特段の事情がないことを要件として指摘したため、それらを満たすケースでないと認められないという考え方が根強くありました。

とりわけ、「長期間の別居」については、7~8年程度が相場として挙げられることが多く、実際、熟年者同士の離婚訴訟で、有責配偶者たる夫が、ちょうどそれくらいの別居期間を経た後に提訴したところ、認容されたという判決を見たことがあります。

ただ、上記の最高裁判決が有責配偶者の離婚請求を制限しているのは、「一家の収入を支えている夫が、不貞の挙げ句に、妻子を放逐して経済的に不安定な状態に陥れるのは社会正義に反する」という考え方に基づくので、そうした事情がなく、離婚請求を認めるのが社会正義に反しないと言えるケースであれば、長期間の別居等の事情がなくとも離婚請求を認めてよいとする意見が以前から強く述べられていました。

先日、「妻Xが夫Yと不和になって他の男性と不貞をした後、未成熟子2名を連れて別居し、Yに対し離婚等を請求した件で、Xを有責配偶者と認定しつつ、①Xの人格へのYの無理解が不貞の原因になっていること、②Xは就労しながら子らを適切に監護養育しており、離婚によって子らの福祉が害されないこと、③Yに1000万円弱の年収があり、離婚の認容でYが著しく不利益になると言えないことを挙げ、判決までの別居期間が2年ほどしか経ていなくとも離婚請求を認容し、子らの親権者をXに指定し、養育費を計12万円(1人6万円)とした例」が掲載されていました(東高判H26.6.12判時2237-47)。

Xがフランス国籍という事情があるものの、外国人女性だから特別扱いというわけではないでしょうから、日本人同士の夫婦にも十分にあてはまる話で、現に、こうした類型の紛争では、離婚を成立させる調停や和解で終了することも多いはずです。

もちろん、「専業主婦家庭での夫からの離婚請求」に関しては、従前の枠組みがあてはまることが多いでしょうから、それぞれの夫婦の実情などを詳細に主張立証する工夫が必要になってくると思います。

上記判決の解説には有責配偶者の離婚請求に関する判例や学説などが整理されており、その点でも参考になると思います。

育児家庭に関する婚姻費用請求の整備の必要性

町弁をしていると、離婚をはじめとする夫婦・男女関係の紛争事案は日常的にご相談を受けますが、この種の案件は、コストその他の事情から、当事者間の適正な合意や裁判所への申立による解決等がなされず、問題がそのまま放置されているケースも少なくありません。

特に、見聞する機会が多い問題の1つに、婚姻費用が挙げられるのではないかと思います。

婚姻費用(の分担請求権)とは、別居中の夫婦の一方(収入の少ない側)が、収入の多い側に生活費の支払を求める権利のことで、養育費+配偶者の生活費と考えれば、分かりやすいと言えます(子がいない夫婦でも請求できることは申すまでもありませんが)。

夫婦の一方又は双方が離婚を希望すると、まずは別居から始めるというのが通例ですが、別居が開始された時点で、離婚成立までは収入の多い配偶者は、他方配偶者に対し、相当額の婚姻費用を支払わなければなりません。この種の紛争の典型は「妻が子を連れて夫宅から別居するケース(又は夫が単独で別居するケース)」ですので、通常は、夫が別居中の妻子の生活費として、妻に相当額を支払わなければならないということになります。

ただ、突如、別居された場合などは、妻に対する不満から、夫が支払を拒否する例も珍しくなく、その場合、妻は家庭裁判所に婚姻費用分担の調停申立をし、調停又は審判で定まることになります。具体的な金額は、典型的な家族構成の事案では裁判所の基準表が公開されており、これに夫婦双方の収入等をあてはめて算出することになります。

裁判所の基準表で算出される額は、「支払側の生活費を確保した上で、残金を受給側に支払わせる」というコンセプトで算出されている感があり、収入の低いご家庭では、その金額だけではおよそ生計を立てることができるものではないというのが通例となります。

そのため、現在では、別居中の配偶者(妻)も、パート等の勤務をしながら子育ても行っていることが通例で、お子さんが幼い場合などは、仕事・育児家事に加え、夫との紛争の問題という三重苦を抱えて、本当に大変なことだろうと感じます。

そのような観点から、生活費=生きる糧そのものというべき婚姻費用の支払(分担)に関する裁判所の手続は、なるべく簡明・迅速に行うようにすべきではないかと思うのですが、実際には、受理から相手方(夫)の呼出だけでも1~2ヶ月も要し、夫が色々な主張をして紛糾した場合などは、決着まで数ヶ月以上も要することが珍しくありません。

また、上記のとおり、富裕層などを別とすれば婚姻費用の額はさほど大きくないことや、特殊な論点を抱えた事案を別とすれば、裁判所の算定表で機械的に計算される面が大きいことから、多くの事案では、弁護士に申立を依頼=多額の費用を投入する意義が乏しく、当事者ご自身で手続を行った方が賢明という面が大きいと思います(私も、特殊性の強い事案で離婚などと併せて受任する場合はともかく、婚姻費用単独での受任は経験がありません)。

なお、以上の点は、養育費(離婚後の、配偶者を除いたお子さんの生活費)にも概ね当てはまると言ってよいと思います。

ただ、そうはいうものの、上記のように「仕事、育児家事、配偶者との紛争」という重荷を抱えた方にとっては、上記のような長期の調停の負担など相応の負担がある現在の婚姻費用を巡る実務を前提にすれば、常にご自身でなさってなさって下さいという考え方が適切とも思われません。

折しも、安部内閣は「働く女性の支援」を重大なテーマとして掲げているのですから、何らかの形で、婚姻費用や養育費を巡る実務について、当事者の負担軽減を目的とする措置を講じていただきたいところです(自民党は、民主党などと比べて、公助(公的給付)よりも自助=当事者の相互扶助を重視する政党と評されていましたので、自助を行いやすくするための制度の整備は党の精神にも適うと言ってよいのではないでしょうか)。

1つの方法として、まず、婚姻費用等(養育費を含め)は、原則として、申立後、直ちに相手方の呼出(意思確認や資料提出要請)をするなどして、短期間(例えば申立から2週間以内)で結論を出すのを実務の通例とさせるという方向が考えられると思います。適切な資料が提出されない場合などは、暫定的に仮の命令(保全処分など)を行って、後日、金額を調整するなどという方法も、あり得ると思います。

そして、上記の「2週間で給付(支払)を定めるところまで決着させる手続」で完全な解決に至らない紛糾事案や、性質上、弁護士の支援が必要と認められる事案などは、暫定的な給付額を決めた上で、最終的な決着について時間をかけて調停ないし審判を行うこととし、その際には、少なくとも債権者(受給者)側はなるべく法テラス等を利用でき、かつ、費用償還については事案の性質に応じ、免除(国費負担)など(将来的には相手方負担=立替、求償を含め)を弾力的に運用することも考えてよいのではないかと思います。

震災前後から家事関係の事件に従事する機会が増えていますが、家裁の手続は、一般の民事訴訟などと比べても、裁判所本位というか、当事者には非常に使い勝手が悪いと感じることがあります。

倒産・債務整理分野に関しては、私が弁護士になった平成12年頃から、少額管財手続や最高裁の相次ぐ引直計算の判決などを通じて、使い勝手がよくなった面がありますが(但し、法人の同時廃止がほぼ認められなくなり、予納金を調達できない法人が破産できないという問題もあります)、家事手続も、最近話題の父子の面会交流に限らず、全般的に需要が高まっているはずですので、手続の改善について、より善処を図っていただきたいところだと思います。