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雑記帳

 弁護士が、業務に関する経験や業務上感じた雑感等をコラム的に述べるコーナーです。

環境問題(廃棄物問題等)への取り組みについて

 弁護士の多くは、本業である「顧客の方々の法的利益を実現するための代理人・弁護人活動」のほかに、基本的人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の使命(弁護士法1条)に鑑み、公益を実現するための様々な活動(プロボノ活動)を行っています。

 当職が現在行っているプロボノ活動の中で、特に大きなものとしては、廃棄物問題への取り組みがありますが、これについては次の事情があります。

 当職は、二戸市で生まれ育った人間ですが、ご存知のとおり、二戸市と青森県田子町との県境において、平成11年に日本最大規模の産業廃棄物不法投棄事件が発覚しました。そして、不法投棄を行った処理業者が倒産したため、現在は、岩手・青森両県が、産廃特措法に基づき撤去計画を立案、多額の国費と県費を投入して撤去作業を進めています。

 当職は、この事件を知った当時は東京で勤務弁護士をしており、廃棄物問題にも岩手・二戸にも無関係な生活を送っていたのですが、「東京で都会生活を享受している自分が、郷里に都会のゴミが勝手に捨てられた問題に対し、知らん顔をし続けていいのか?」と疑問を抱くようになり、平成15年4月、日弁連の公害対策環境保全委員会の門を叩き、助力を要請しました。

 すると、ほどなくして日弁連として県境不法投棄事件の調査を行う旨が決定され、同年10月31日、11月1日に、日弁連・東北弁連の合同により岩手・青森両県庁及び二戸・田子両地元住民からのヒアリングと不法投棄現場の現場視察が行われました。

 そして、日弁連は、翌16年6月に、同事件の概要や視察結果をまとめた調査報告書、並びに、本件により我が国の廃棄物処理法制の不備がより一層明らかになったことを踏まえ、その抜本的改善を求めて様々な改善策を提言する意見書を発表しました。(日弁連ホームページ内「会長声明・意見書など」に、2004-07-15付で登載されており、ダウンロード可能です。http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/2004_39.html)これらにより、環境問題を扱う全国の弁護士さん達をはじめ、多くの方に、本件が適正解決が強く求められている重大事件であることなどを、多少なりとも伝えることができたのではないかと思っています。

 現在は、同委員会廃棄物部会のメンバーとして、他の不法投棄現場への視察(平成16年度は、福井県敦賀市と岐阜市の不法投棄事件を視察等しました。)や廃棄物処理法制の改善に向けた研究などを行っています。


弁護士の専門特化について(「貴方の専門は何ですか?」)

 弁護士としては、まだ若手の部類に属する当職ですが、非常に多くの方に、「貴方の専門は何ですか?」との質問を受けることがあります。このようなご質問は、「この弁護士には何を頼むことができるのだろう?」との気持ちでなさっていると理解していますので、当職は、「法律に関することで貴方が私に頼みたい又は頼むかもしれないと思っておられることには大概は対応できますから、まずはご遠慮なくご相談下さい。」とお答えすることにしています。

 そもそも、医師と違って、『自分はこの分野しかやらない』という専門特化した弁護士は、大規模事務所で企業法務に従事する方以外にはまだほとんどおらず、多くの弁護士は、一般民事・商事を中心に、様々な法律問題にすべて対処する態勢をとっており、「専門化」という点では、個々の事件との出会いや弁護士自身の関心・研鑽に応じて、幾つかの「得意分野」を形成するに止まるのが通常です。

 当職の場合も、東京での勤務弁護士時代から、中小企業及びその役員、従業員の方に関する様々なトラブルへの対応や相談等が業務の中心であり、企業間の売掛金等請求訴訟から契約書の起案、倒産処理、役員の方の相続問題から従業員の方の債務整理など、多岐に亘る仕事に従事しており、その中には交通事故や債務整理など経験の多い得意分野というものはありますし、今後も研鑽を積んで得意分野を増やしていくつもりです。

 しかし、「ウチはこの仕事しかやらない。」という意味での専門分化というものはしておりませんし、今後もそのような方向には進まないであろうと考えています。

 今後、弁護士の数が増えていくと、大都市の大規模事務所だけでなく、地方都市でも知財法や医療過誤など特定分野への専門特化を旗印にした事務所が出現してくるものと思われますが、多数の弁護士事務所が「内科医院」「整形外科医院」のように専門特化するのは、当面は考えにくいというのが当職の印象です。


県境不法投棄事件の核心部分
 平成17年11月7日に、岩手日報紙に掲載された投稿です。
 なお、原題は、「忘れられた県境不法投棄事件と郷土愛」です。
 
 ここ1年ほどの岩手青森県境不法投棄事件に関する本紙の記事を見ていると、ごく一部の業者に措置命令がなされた以外は、淡々と撤去工事が進んでいる旨の報道のみがなされているように思われる。県民からの怒りの声はほとんど聞こえることなく、あたかも不法投棄のことは忘れ去られ、何某かの公共工事が延々なされているだけのような錯覚すら覚える。しかし、本当にそれでいいのだろうか。

 現在、同事件のうち少なくとも本県について定まっている枠組みは、廃棄物等の全量撤去とその処理費用約200億円(見込額)について、可能な限り当事者に責任追及を行った上で、残余の約6割を国が負担、約4割を本県が負担、というものである。そして、当事者の責任については、現に不法投棄を行った業者は倒産しており、排出事業者については、無許可業者に委託するなどの明白な違反行為があれば廃棄物処理法19条の5違反に基づく措置命令が可能であるが、現に発令されている業者がごく少数に止まっていることからも明らかなように、当該条項に違反すると立証できる業者数はさほど多くはないと思われ、問題は、その他の業者に過失責任を定めた同法19条の6を発動できるか、仮に発動できないとすれば他に費用回収の方法はあるのかにかかっている。そして、かかる手段による費用回収ができなければ、いよいよ、我々県民が、約80億円もの県税を、我らの地域や子孫のためではなく、都会から持ち込まれた、我々と何の関係もないゴミの処理費用に充てざるをえない羽目に陥ることが確定してしまう。

 私は、以前、日本弁護士連合会を通じて同事件の調査を行った際、幾人かの実務家の方から19条の6の発動の可否につき意見を伺ったが、不法投棄の事実から当然に過失を推認すべきだとの積極論もなされたものの、慎重論も少なからず見られた。発動実績が乏しくリスクの高い19条の6にのみ頼るのではなく、現在の法制度の運用以外のよりリスクの低い手段で、排出者側に撤去費用の負担を求めることも検討、実施されてよいと思われる。

 無論、ゴミの封じ込めなどすれば、馬淵川下流域全体を含む地域の環境に回復不能な影響を及ぼすおそれがある以上、全量撤去は当然の選択である。そうであればこそ、県庁任せにするのではなく、我々県民一人一人が、そのゴミを生み出し、持ち込ませた人々、そして持ち込むことがないよう監督すべきであった機関に対し、我々がその処理費用を負担させられるのは明らかに不公平ではないかと、怒りの声をあげていくべき責任を負っているのではないだろうか。しかし、ここ最近、そのような声は、私が知る限り、岩手県庁を除けば、本紙の投稿欄はもちろん、本県のどこからも聞こえてこない。

 かつて中央政府のエゴ・侵略に甘んじることなくこれと闘った郷土の先人達は、この光景をどのような思いで眺めているのであろうか。


競馬場問題に第三者検証を
平成19年2月14日に岩手日報紙に掲載された投稿(原文)です。
原題は、「競馬場問題に第三者検証を」です。

 岩手競馬については、現在、330億円もの県・盛岡水沢両市から競馬組合への融資(税金投入)の是非を巡って県民の関心を大いに集めているところである。先般、筆者も所属する盛岡青年会議所が県民向けに行ったアンケート調査でも、約900名もの回答者のうち盛岡・水沢の競馬場の一方又は双方を廃止すべきとの意見が全体の過半数を超えるなど、県民の多くが現状維持に納得していないことが窺える内容となっている。
 現在のところ、融資の是非については県議会等の良識ある判断に委ねるほかはないものの、仮に、融資案を可決して競馬場を存続させるのであれば、納税者の一人として次の2点を特に指摘しておきたい。
 1点目は、競馬場が県民・市民に税負担をさせるリスクを負わせてまで守らなければならないほどの価値があるのか、そのことについて再検討していただきたいという点である。筆者個人は本質的にはギャンブルに過ぎない競馬場の経営を自治体が税金を投入してまで行う価値はないと考えるが、馬事文化等を強調して存続を希望する方々には、競馬場にそこまでの価値があるのか納得のいく説明を求めたいし、公共的性格があるというのであれば、文化発信の事業や消費者教育等と絡めるなど単なる競馬場経営とは全く異なった手法も採られるのでなければ、県民・市民全体の理解は得られないと思われる。
 2点目は、回収可能性に不安のある巨額の県税を投入する以上、県を始めとする関係者の従前の対応等について、県境不法投棄事件で行われたような、専門家による第三者検証を行っていただきたいという点である。
 というのは、「県・市の対応に何某かの問題があった(可能性がある)ことにより、県民・市民が本来なら不要だったはずの税負担を強いられる」という点で、競馬問題と県境不法投棄事件とは、類似した側面を持っている。県境事件の場合、税負担について県民の理解を得るため、増田知事の主導で専門家(弁護士、行政法の学者など)による第三者委員会が設置され相当に充実した検証作業が行われ、それに基づく関係者の処分も行われている。なお、この検証委員会の設置や成果は環境省等にも評価され、その後に不法投棄の原状回復のため国が補助金を拠出するにあたっては、被害地の県庁が過去の対応について自己検証を行うべき旨が環境大臣の告示で定められるに至っており、いわば岩手が全国に範を示した形になっている。
 そのことに鑑みれば、同じ性質のある競馬場問題でも、第三者検証(と必要に応じた関係者への責任追及等)が行われるのでなければ、現状での回収不能のリスクのある融資に対する県民・市民の理解は得られないと思われる。
 十分な検討や検証もないまま、子孫に借金の負担を残すだけの結果に終わることのないよう、関係者には大いに熟慮を期待したい。