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衆院選岩手1区の公開討論会

衆院選岩手1区の公開討論会


1ヶ月以上も前のネタで恐縮ですが、昨年12月に行われた総選挙に先立ち、12月1日に盛岡市でもJC主催の公開討論会があり、以前にも投稿したとおり、現役会員時代、この行事に関わっていたことなどから、参加して拝見してきました。

ただ、今回は急な解散であることのほか、少なくとも岩手1区では選挙戦としての盛り上がりも希薄で、それに付随する政策論争なども低調という印象だったせいか(復活当選を含め、現職が再選されたという選挙前と同じ結果になりましたし)、これまで以上に参加者が少ない(ざっと見た限りでは50人もいなかったように感じました)、残念な設営となっていました。

今回は、これまでと異なり、学者さん(岩手大の政治学の先生)ではなく、JCの理事長らが司会(コーディネーター)を務めていましたが、私の見た限りでは、これまでの学者さんの司会の進行ぶりを堅実に踏襲したものとなっていました。

私としては、自前で進行をするなら、良い意味で素人ならではの進行(大胆な質問とか)を試みるべきではと思っており、これまでどおり「論点ごとの政見発表会」型の運営に終始して候補者の議論を喚起させないような「上品(無難)な進行」に止まっているのは、視る側にとっては退屈なもので、残念に感じています。

ちょうど同じ頃、多くの大物芸能人が行っている年末のディナーショーについて、「その場でしか味わうことができない主宰芸能人との一体感を持てるような得難い経験(イベント)」を様々盛り込むことで、高額な参加費を徴収してもすぐに満員御礼になるというニュースが流れていました。

そのため、公開討論会の設営者(JC)は、芸能人の爪の垢を煎じて飲んでと言ったら怒られるでしょうが、少なくとも、こうした記事に学んで、討論会の趣旨に合致するとの前提を守りつつ、聴衆がお金を払ってでも来たくなるような「ここでしか味わえない得難い政治的経験のできる討論会」の設営を目指すべきではないかと感じました。

例えば、トークショーと言ったら語弊があるかもしれませんが、候補者同士が、ワークショップの類のように司会者の仕切のもとで壇上で一つの目的に向かって互いに何かの作業をする光景を作出し、その中で、「典型論点の公式見解」では出てこないような本音トークを交えた候補者間の議論を演出できれば、壇上があたかも即興の寸劇のような様相を呈し、聴衆にとっても見応えのある姿になるのではなどと思ったりもします。

ともあれ、何度も書いてきたことで、繰り返し書くのも馬鹿馬鹿しいですが、新聞に掲載される各人の政見表明の棒読みと大差ないような議論のない設営しか出来ないのであれば、遅かれ早かれ、人口減少社会ならぬ「そして誰も来なくなった討論会」にしかならず、外ならぬ出席いただく候補者に対して失礼になるのではないかと思います。

私自身は、過去に討論会の設営にも携わり何度か壇上の方々を拝見してきた身として、立場や熟度の差はあれ、選挙という厄介な場に身を投じている候補者の方々にはある種の敬意を感じているつもりです(少なくとも、私は色々な意味で、そうした場に立てる人間ではありませんので)。

ですので、公開討論会における議論というのは、優劣が強く出て誰かに恥をかかせるようなものではなく、互いの主張の不明瞭或いは検討不足と見られるところ(具体策や弊害防止の措置が不十分だといったもの)を指摘し、即興でどこまで具体的なことが言えるか見定め、足らざるところがあれば緊張感を与えてスキルアップを促すような営みとするのが、討論の望ましい姿ではないかと思います。

私がJC内部で一部の方に延々言い続けてきた、「議論のある討論会の設営」というのはそうしたものですが、担い手(設営サイド)の実力不足か胆力不足か盛岡の民度の問題かはさておき、本格的な賛同者がついに現れてくれなかったのが残念なところです。

今回は、これまで以上に集客が芳しくなかったように見えたので、そうした意味でも、「魅せる討論会」を真剣に考えないと、JCには候補者の方々に来ていただく資格がなくなるのではと感じたというのが、過去の分も含めて、JCの討論会に対する一番の印象です。

ともあれ、今年は盛岡市長選や岩手県知事選があり、盛岡市内での公開討論会の開催は必ずあるのでしょうから、真面目に設営に勤しむ現場の若い会員諸君のためにも、私と違って「公開討論会のやり方」について決定権を持つことができる方々は、智恵と蛮勇を発揮していただきたいところです。

もちろん、根本的には、国民一般(公開討論会が想定している聴衆一般)の実質的な政治参加(政治的意思決定や予算など政策資源の配分、政策実施過程への参画など)が進んだり、既存の決定権者の地位が揺らいで権力の交替(広義の革命)が生じるような事態にでもならない限り、政治(権力闘争)自体が盛り上がらないので、その延長線上に存するに過ぎない公開討論会が公衆を惹きつけることなどできるはずがありません。

欲を言えば、JCなどには、国民主権の質の向上という見地から、そうした政治参加の基盤作りも視野に入れた幅広い活動をしていただければと願っています。

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