北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

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岩手の弁護士の「Webサイトの歴史」と、そこから見えてくるもの(後編・県内の各事務所のサイト開設状況と特徴)

前回に引き続き、岩手の弁護士に関する「Webサイトの歴史」をテーマに取り上げます。といっても、前回は当事務所の実情を中心とした説明でしたので、今回が「本番」のようなものです。

まず、前回述べたとおり、「岩手でWebサイト(以下「HP」と表示)を作った最初の法律事務所」が当事務所であることは間違いないと思いますが、「最初の弁護士」であれば、正しくありません。

お名前を出してよいか分かりませんが、平成14年か15年頃?に、現会長である小笠原基也先生が個人としてのHPを開設されているのを拝見したことがあります。弁護士としての業務よりもご自身の趣味(B級グルメ?)に関する話題が中心だったように記憶していますが、残念ながら現在は閉鎖されているようです。

以下、私が把握している限りで、現在HPを開設している県内の法律事務所を大凡の開設時期順に列挙します。

他にもサイトを拝見したことがありますが、理由は存じないものの、現時点では閉鎖され閲覧できない状態になっていましたので、ここで取り上げるのは止めておきます(新サイトを開設されているのかもしれませんが、確認できておりません。ご存知の方はお知らせいただければ幸いです)

また、iタウンページや弁護士紹介サイトなどに登録されている方なら他に何人かお見受けしていますが、ここでは「事務所自身のサイト(HP)」を開設しているという方に限って取り上げています。

1 当事務所(H17。盛岡)
2 小原恒之先生(リーガルスピリット。H20頃。一関)http://www.obara-law.jp/index.html
3 前田毅先生(早池峰。H23頃。花巻)http://www.hayachine-law.com/
3 八木橋伸之先生(岩手総合。H23頃。盛岡)http://iwatesougou-law.jp/index.html
3 熊本賢吾先生(H23頃?。一関)http://kengo-law.jp/index.html
4 川見哲一先生(岩手銀河大船渡。H24。大船渡)http://gingaoofunatojimusho.seesaa.net/

5 安部修司先生ほか(はなまき。H25。花巻)http://www.hanamaki-lo.sakura.ne.jp/index.html
5 千田實先生(H25頃?。一関)http://www.minoru-law.com/index.html
5 深瀬墾先生(H25頃?。北上)http://hiraku.jp/
5 桝田裕之先生ほか(セントラル。H25。盛岡)http://cent-law.com/
6 村井三郎先生(H26。盛岡)http://www.morioka-murai-law.com/index.html
6 吉田瑞彦先生(H26頃。盛岡)http://iwate-law.com/
6 加藤文郎先生(岩手銀河水沢。H26。水沢)http://iwateginga.sakura.ne.j  p/wp/
7 小野寺泰明先生(H27頃。盛岡)http://lawyer-yasuaki.sakura.ne.jp/
8 川上博基先生ほか(H28頃。盛岡)http://kawakami-law.com/index.html

パートナー方式で経営されている(と思われる)事務所は「ほか」を付し、加入弁護士の先生(全員)が恐らくイソ弁(勤務者)と思われるところは複数事務所でも「ほか」を付さずに表示していますが、正確には存じていない先生も多く、その点はご留意下さい。また、全部で15件もありますので、H25前後で一行あけています。

よく見ると、分かる人にはすぐ分かるのですが、「岩手で弁護士としてのキャリアをスタートした人」は、最近開設した方々を別とすればあまりおらず、早い段階でHPを開設している方々は、ほとんど全員が東京や仙台で弁護士としてのキャリアをスタートさせ、それから岩手に移転してきた方になっています。

この点は、地元のご出身で最初から岩手で登録するなど、地縁=人脈=受任ルートの多い方は、十分な受任件数(体制)があり、「宣伝ツール」としてのHPは必要としていないということを示しているのかもしれません。

また、八木橋先生のように「岩手・盛岡を代表する有力弁護士」と認知されている先生のサイト(内容・体裁)は、宣伝(集客)目的というより、顧客たる企業・団体さんなどとの関係でHPくらいは作っておくべきというお考え(一種の企業イメージ戦略)に基づくのではないかと思われますし、他にも有力な先生のHPでそのような印象を受けるものがあります(宣伝色の薄いHPは、東京の大事務所などによく見られます)。

そんなわけで、「岩手でHPを作成する法律事務所のまとめ」としては、総じて次のようなことが言えるのではと思います。

・東京など「外」から来た人(外で働いた経験のある人。特に若い世代)ほどHPを作る傾向がある。地元出身者や最初から岩手で開業(弁護士登録)し、すでに一定のキャリアを積んでいる方は、最近までほとんどHPを作らなかった(特に、盛岡)。

・岩手の法律事務所のHPは、平成25年頃に一気に増えた(これは、弁護士激増や債務整理特需の終焉による地方の町弁の業界不況が本格化したことと同じタイミングである)。

・当事務所を例外とすれば、HP作りはもともと県南・花北で盛んだったが、近年は盛岡でも広がり、市内で最有力(代表格)と目されている先生方が次々にHPを開設するようになってきている

・中には、ご自身(事務所関係者)ではなく本格的なHP作成業者やコンサルタント?に依頼し東京の事務所のような強い広告効果を意識していると見られるHPもあるが、全体としては手作り感のあるものがほとんど。

・イソ弁の加入などにより複数事務所となった(或いは規模が拡大した)時点でHP開設に踏み切る先生(法律事務所)は、割と多いように感じる。

・県内の日弁連ひまわり基金事務所や沿岸地域の事務所は、HPを開設しているところがほとんどない(現時点で確認できたのは、大船渡の川見先生のみ)

そんなところで、色々と感じたことを好き勝手に書き連ねましたが、やはり我々「岩手(地元)の弁護士」にとっての商売敵は、岩手で起きている事件(弁護士の支援を必要とする法律問題)を、派手な宣伝など何らかの「事件・当事者にとって、遠方の弁護士に依頼するのが必ずしも合理的でない理由」でさらっている東京や仙台その他の弁護士というべきだと思います。

そうした方々との「大受注競争」に負けないためにも、各人が個性を発揮したり研鑽を高め、そうした「地元業者の価値の増進」のため結束して立ち向かう仕組み作りや意識の涵養、さらには県民・県内企業などへの認知や信頼を高める努力が必要なのではと思っています。

などと偉そうなことも申しましたが、残念ながらそうしたことを話す機会も相手もなく、昔も今も独り不平を託っているというのが私の恥ずかしい実情です。

岩手の弁護士の「Webサイトの歴史」と、そこから見えてくるもの(前編・前置きとしての当事務所の実情)

私は平成12年に弁護士になり、平成16年11月に岩手に移転・開業しましたが、平成17年の秋頃に当事務所のWebサイト(以下、「HP」といいます。)を開設しています。

これは、東京ではすでに弁護士のHPも当たり前になりつつあったことや、私自身、「岩手は司法過疎の地域であり、弁護士にアクセスしたくても、上手にできず困っている人は沢山いるはずだ。そうした方のアクセス障害を取り除きたい」との気持ちが強かったことが最大の理由です。

後記のとおり、平成17年当時は「HPを開設している法律事務所」は岩手県内では誰もおらず、その意味では当事務所が「先駆け」となったことは間違いありません。

もちろん、盛岡に地縁・血縁等のない私にとって営業対策ということも頭になかった訳ではありませんが、当時は「弁護士過疎」の言葉どおり、とりわけ若い世代の弁護士には、刑事の国選・当番をはじめ、単価の大きくない仕事でしたら山のようにご依頼等をいただき、食べるのに困らない生活はできましたので、営業面ではHPを開設する必要はありませんでした(他の先生方も同様の状況だったからこそ、県内では誰も作る人がいなかったとも言えます)。

余談ながら、平成16年という年は何かと話題のアディーレ法律事務所が開設された年でもあります。開設直後のHPを見たことがありますが、代表の方の顔写真が最近ネット等でお見かけするご本人の写真と比べ、あまりハンサムに写っていなかったように感じた記憶があります。

HPを作って依頼が殺到したかと問われると、全くそうではなく、大雑把に申せば、平成20年頃までは1ヶ月に1、2件程度?の問い合わせがあったに止まったように記憶しています(ちなみに、同時期に大阪で開業された同期の方は「HPで毎日のように次々と依頼が来る」と仰っていました。現に、今ではその事務所は大阪でも有数の規模に成長されているようです)。

これは、旧HPをご覧になった方はご存知のとおり、ホームページビルダーを購入して自前で作成したという、見栄え的にも「ぱっとしない」ものだったせいかもしれませんが、それ以上に、岩手県民に「インターネットで依頼先の弁護士を探す」という文化が乏しかったということも大きいのではと感じています。

ちなみに、現HPも、同様にホームページビルダーを買い替えて平成25年に作成したものです。所内にPCの達人(元システムエンジニア。但し文系)がいますので、その点は大助かりしています。

結局、身内の事情や私自身の適性などの事情から、私(当事務所)に「拡大志向」がほとんどありませんでしたので、ネットなどを通じた集客宣伝や大量受注の受け皿としての新人弁護士の採用などといったことは一切することなく、受任(営業)を支える幾つかの柱の一つという位置づけで淡々と運営してきたというのが実情です。

大まかな記憶としては、平成20年から22年頃は、債務整理(過払金)絡みのご依頼をHP経由でいただくことはそれなりにあったと思います。これは、「過払金」が社会内で大きくクローズアップされ、東京の一部事務所が全国的な宣伝を行ったことから、社会内でも認知が高まった一方で、この時期はまだ岩手に「出稼ぎ」に来る東京等の事務所がなかったことなどが要因になっているのだと思います。

これに対し、(何度も書いていることですが)平成23年(震災の年)以後は、債務整理絡みのご依頼は急激に減少しています。これは、法改正や一部の貸金業者の倒産などに起因する社会問題としての高利金融被害(町弁業界にとっては特需)が終焉に向かったこと、その一方で県内の弁護士も激増して「パイの奪い合い」が顕在化したことのほか、岩手に関しては、沿岸まで片道2時間以上をかけて何度も被災地の相談活動に赴いた、我々「地元の町弁たち」を尻目に、地元紙やTVで過払金に関する大宣伝攻勢をして頻繁に県内の公民館等に陣取る「東京の法律事務所の出張相談会(私は「地方への出稼ぎ」と呼んでいます)」が盛んに登場するようになったことの影響が大きいのだろうと思われます。

他方で、平成25年頃は、「弁護士ドットコム」経由の相談依頼が多く寄せられたと記憶しています。主なものは不倫・離婚などの男女トラブルや相続など家庭内の問題や近隣トラブルなどでしたが、事件性が薄いなど相談のみで終了することの方が多かったように思います。

26年頃からは、盛岡市内の複数の法律事務所(有力な先生が運営されているもの)でもSEO対策などネット上での集客に力を入れるようになったせいか、「弁護士ドットコム」をはじめ、ネット経由でのお問い合せは、現在では平成25年頃と比べて大幅に減っています。

ただ、それでもHPを通じてご相談等を受ける機会は月に数件程度はいただいており、「債務整理や国選・当番を中心に次から次へと依頼があり、てんやわんやだった」という震災以前の恵まれた時代とは異なり、大変ありがたく対応させていただいているというのが正直なところです。

当事務所での「お子様づれ」のご相談とキッズルームが示す業界の近未来?

日弁連の機関誌「自由と正義」の7月号に、大阪弁護士会館にキッズルームが昨年に新設されたとの記事が出ていました。

確かに、弁護士会館にキッズルームがあるという話はこれまで聞いたことがなく、東京の日弁連会館(日弁連と東京三会が入居)に存在するのか知りませんし、岩手弁護士会(サンビル2階)はもちろん、仙台の弁護士会館にもたぶん設けられていないと思います。

これに対し、個々の法律事務所に関しては、何年も前から「キッズルーム完備!お子様づれも安心してご相談下さい!」とHPで標榜している事務所は珍しくありません。

かくいう当事務所も、いわゆる「キッズルーム」こそありませんが、諸般の事情で幼児向けの用品類(揺りかご風の幼児用ベッドや逃亡防止用?の柵のようなものなど)が色々とあり、少しですが幼児用の本なども置いていますので、ある程度、相談中にお子さんを飽きさせない工夫ができるようになっています(ちなみに、岩手弁護士会=相談センターには、私の知る限り、そのような設備云々は微塵もありませんし、法テラス岩手も同様ではないでしょうか)。

裏を返せば、岩手に限らず、ほとんどの弁護士会では、相談中に幼児をフォローするための設備すら全くない状態が続いているのであり、一向に「女性会長」の登場の気配がない日弁連の役員人事なども相まって、我が業界(の元締めたる弁護士会)の後進性を示すものの一つというべきなのかもしれません。

これをさらに進めて「弁護士会は業界の支えにならない。現代のニーズを多く取り入れている有力な弁護士事務所らによって業界が変革されるべきだ」などと言い出すと、まるで雄藩連合による幕府改革(或いは維新云々)の主張っぽくなってきますが、さすがに冗談が過ぎましょうか(今、「花燃ゆ」の実質的原作にあたる「世に棲む日日」を読んでますので、その影響の戯れ言とご容赦下さい)。

それはさておき、大阪弁護士会のキッズルームは、相談者や会員等による託児利用だけでなく、面会交流の場として使用する試みも始まっているそうで、この点は非常に画期的ではないかと思います。

裏を返せば、公的施設に設けられたキッズルーム等も、そうした形で利用したり、様々な可能性があるのではないかと感じますし、関係者の模索に期待したいところです。

そういえば、裁判所や検察庁には託児サービスがありませんので、彼ら(お役所)にそのような機運が生じないのであれば、盛岡に限らず全国の弁護士会の大半は裁判所等の近くにありますので、相談者等の利用に限らず、裁判期日に出廷(証人など)する方など向けに有料利用できるようにするというのも「小口収入」という点では一つの策かもしれません。

ただ、裁判所には面会交流向けの「キッズルーム(試行面会室=面会交流・親権紛争の調査施設)」がありますので、使用していない時間に裁判所の利用者のため開放するような試みはあってよいのではと思います。

こうした話は「国民の声」がないと動きにくいでしょうから、裁判員裁判に参加された方などから、裁判所の方々に向かってゲシゲシと嫌みの一つでも仰っていただければと思います。

平成27年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成27年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。芸能人の報道で話題になったように、当事者のデジタルの会話記録を入手、整理して不貞の事実を詳細に立証して高額な賠償金が認められた例もあります。

概ね、半年から1年程度の審理を経て和解する例が通常ですが、中には、子の引渡しや親権をはじめ不貞行為などを含め夫婦間に厳しい利害対立があり、2年以上に亘り様々な訴訟手続を行い争いを繰り広げた末に和解が成立し終了したという案件もあります。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻し母との接触を拒否したため、母の代理人として子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの、その逆に、別居した母が子と同居する父に子の引渡請求を行い、父側で受任したもの)も何件か受任しており、昨年に従事した事案では、当方依頼主の主張が認められています。

子を巡る紛争は、面会交流を含め近時は著しく増加しており、裁判所は子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所から、後見人のほか、保佐人・補助人として選任される例が増えています。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

相続分野では、自筆遺言証書に基づく財産相続を受けた方から、その内容を遵守しない他の相続人にやむなく訴訟提起し、遺言の内容(効力)が争われたものの、無事に当方の主張が認められた事案や、きょうだい間で不和が生じ当事者間で対話が難しい状況にある方のご依頼で遺産分割を行った例などがあります。

また、身寄り(配偶者や子、両親、近しいきょうだい)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、多数の親族関係者の意向調査や利害調整を伴う遺産分割や預金払戻などを手掛ける機会もありました。

昨年も、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、裁判所の要請で相続財産管理人に就任し権利関係の処理を行う事案が幾つかあったほか、関係者のご依頼で、特別縁故者に対する財産分与の申立を行った例もあります。

今後、身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案は増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

この点に関し、1月に明治安田生命(盛岡支社)さんのご依頼で相続や遺言に関するセミナーを行う機会がありました(現在も第2弾の真っ最中です)。相続に限らずセミナー講師等のご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘り区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、整理事業の実施に伴う建物等の撤去により自治体が提示した損失補償額に不服があるとして、県庁(収用委員会)による損失補償額に関する裁決手続を行った例があります、

また、先般、岩手県庁の依頼で、ある行政訴訟(県の行政処分を受けた方が不服があるとして取消請求している事件)を県の代理人として受任した事案があります。

他にも、特殊な事例で国に対する国家賠償請求訴訟を手掛ける機会もありました。

刑事弁護については、新人弁護士の増加により受任件数は減少傾向にありますが、被疑者段階を含め、窃盗や傷害など主要な犯罪類型に関し幾つかの国選事件を手掛けています。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています(当職は大船渡の法テラス気仙などを担当しています)。

平成27年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成27年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案のほか、過去には死亡事故や重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案も含め、幅広く取り扱っています。

また、学校で生じた生徒間の事故に伴う賠償事件など交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

他にも、福島第一原発の事故に基づく東京電力に対する賠償請求(県内の企業が受けた被害の賠償を求めるもの)を手掛ける機会あり、先般、原子力紛争解決センターに対するADRの申立を行っています。

現在のところ弁護士費用特約は保険料も低廉でご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

不動産の賃貸借(契約終了時の貸主の目的物返還請求、借主の保証金返還請求など)や金銭貸借に関する紛争、不動産の登記に関する訴訟に関する紛争などを取り扱う機会がありました。

また、後述の震災無料相談制度を通じ多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害近隣トラブル労働事件など日常的に生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じています。

本格訴訟としては、自宅建築目的で購入した土地で過去の所有者による不法投棄が判明し、証拠上、投棄への関与や監督責任があると認められる企業に賠償請求した事案を取り扱っています。相手企業側が強く争うことから投棄行為の立証のため様々な資料の提出を余儀なくされており、2年以上も続く難事件となっています。

その他にも、貸主側(貸主の相続人)の代理人として借主の賃料不払を理由に賃借物件の明渡請求をしたところ、借主側から、被相続人との間でその物件を購入する合意をしたとの反論があり、当否(売買契約の成否)が争われた事案(1審勝訴で相手方が控訴中)、数十年前に売買がなされた土地で、法務局に備え付けられている公図の表示などに問題があり、現在の登記などの状況では売却が困難であるため、当時の土地の使用状況や名義人の相続状況などを詳細に調査して取得時効による解決(移転登記請求)を図った事案(1審勝訴で完了)などを取り扱っています。

他にも、対人トラブルに起因する名誉毀損絡みの訴訟に関するご依頼もありました。

(以下、次号)

平成27年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。1月には昨年(平成27年)の業務実績を顧問先にお送りしていますが、遅まきながらブログでも掲載することにしました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し3回に分けて掲載します。

(1) 全体的な傾向など

平成27年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の事業や内部事務に関する紛争の3分野が業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として受任しています。受注した事業に関する行政手続上の不備で事業が頓挫しており、AB双方とも「契約時の相手方の説明に問題があった」と主張して賠償請求したという事件で、現在も訴訟が続いています。

このように、受発注の対象となった事業に何らかのリスクが内在する場合には、そのリスクが顕在化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかという点を予め契約書などで明示しておかないと、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じる可能性が高くなりますので、リスクを予め確認し責任の所在を明確化すること(弁護士の活用も含め)にご留意下さい。

内部紛争の例としては、ある協同組合の内部で問題を起こした組合員に対し組合が除名処分をしたところ、組合員が処分の無効を求めた訴訟について、組合側代理人として担当し当方(組合)の主張が全面的に認められて勝訴・確定したという例があります。

また、ある財産がA法人とB法人のどちらに属するかなどを中心に様々な法律上の争点が生じて複数の訴訟が係属している事件、転職した従業員が元の勤務先の顧客情報を転職後の営業活動に使用したとして賠償請求された事件などを手掛けています。

昨年も、中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっており、「高利業者との取引に基づく過払金請求」も法改正等の影響でほとんど無くなりました。

企業倒産に関しては、数年前は倒産分野の多数を占めた建設業界に代わって、IT関連のサービスを展開する企業高齢者向けの弁当配達事業を行う企業の方から破産申立のご依頼があったほか、「燃料等に用いる木製ペレット等の製造・販売を営む会社」の破産管財人に選任され、企業施設の譲渡や債権回収など様々な論点・事務の対応に従事しています。

近年、「金融機関以外には負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)向けに、一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い額を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)」が導入されており、これによる解決が可能か模索するご相談を受けたこともあります。

個人の債務整理については、昨年同様に過払金請求のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くなく生活保護やそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からの自己破産のご依頼が幾つか見られます。中堅所得者の方からの個人再生のご依頼(住宅ローンを維持して他の負債を減縮することを含む)も幾つか見られます。

破産管財人を担当した方では、親族の保証人となった関係で破産を余儀なくされ、所有不動産の処理(売却。関係者の支援を含む)などの問題が生じたケースや、小規模な個人商店を営んでいた方が親御さんの代から長年続いていた高額な負債や事業不振などの問題を解決するに至らず倒産のやむなきに至ったという事案などを担当しています。

(以下、次号)

平成28年の年頭のご挨拶

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

昨年末は28日で通常営業を終了し、4日まで年末年始休業となります。個人的には、溜まった日経新聞の閲読や判例雑誌の学習(DB作り)、事務所の書類整理に充てたいところですが、今回も家族の実家への帰省などであっという間に過ぎていきました。

昨年は、ここ数年の潮流である弁護士業界の大増員や高金利問題の終焉に伴う倒産・債務整理分野の需要減などの影響が本格化し、当事務所も厳しい荒波に揉まれました。

幸い、昨年も、家事(離婚や相続など親族間の紛争や広義の家族又は親族関係の法律問題)や交通事故をはじめとする賠償請求の分野を中心に、他の分野も含め多くのご依頼をいただき、現在も相応に忙しくさせていただいておりますが、事案の性質や依頼主のご予算などから利益率の低い仕事や不採算のものも多く、事務所経営者としては難しい判断を迫られる日々が続いているというのが率直な実情です。

弁護士業界を巡って生じたここ10年の時代の激変の中で、当事務所ないし私のあり方についても色々と考えていかなければならない点は生じていますが、時代の激変というマクロ視点と「一人一人の速度が異なる(特に、岩手は周回遅れと最先端の双方が混在している)」という幅広いミクロ視点の双方を見据えつつ、「地域社会やこの地を愛する人々のため、今、何が法律実務家に求められているか、何ができるか、すべきか」を基本に、皆様に必要とされ、ご期待に応えることができる事務所を今後も目指して、地道に努力し続けたいと思います。

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弁護士列伝のインタビュー記事と岸巌先生の言葉力

平成23年に、弁護士紹介サイト「弁護士ドットコム」が当時、全国の弁護士さんに取材し、毎日のように更新(連載)していた「弁護士列伝」という企画の取材依頼を受け、下記の記事を掲載していただいたことがあります。

幸い、今も掲載(公開)が続いていますが、サイトが閉鎖されることも想定し、データの予備として、勝手ながらこちらにも転載させていただくことにしました。

記事の中で、「ボスから、法律家は、法律3割、その他7割との教えを受けた」との部分がありますが、私が東京時代にお仕えした岸巌先生のインタビュー記事も、幸い、今も掲載されています。

岸先生は、残念ながら平成25年頃にご病気のため亡くなられており、インタビュー記事は平成22年(奇しくも、震災のちょうど1年前)に掲載されていますが、長い間、闘病生活を続けてこられた関係で、かなりお痩せになっているように見えます。

で、記事を拝見すると、やっぱりというか、上記と全く同じ言葉が語られていた上、学生記者の方も、この言葉が一番、心に残ったと述べています。

さらに言えば、私の記事を平成23年の掲載時にfacebook上で紹介したところ、大学の先輩でもある司法書士のF先生からコメントをいただいたのですが、その中でも、やっぱり岸先生のお言葉が印象に残ったと仰っていました。

そうしたことを思い返すと、改めて、岸先生の「言葉の力」には凄いものがあるというか、ご自身の実践や積み重ねがあってこそのものではないかと感じました。

私にとっては「とても近寄りがたい、オーラの塊のような大先生」でしたが(私と入れ替わりで独立された兄弁の先生も仰っていましたが、電話口でも直立不動になってしまうようなところがありました)、改めて、岸先生から今、何を学べるか、学ぶべきか、問い直してみたいと思っています。

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小保内義和先生にインタビューをさせていただきました。

Q1.弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。

A1.身も蓋もない回答をすれば、「一匹狼でも生きていける弁護士業の方が、窓際に追いやられそうな役人などより自分の性分に合うと思った上、大学受験で唯一合格できたのが中央大で、入学直後に真法会という業界では著名な司法試験受験生の養成団体の入室試験に合格できたので、その際、自分の道が定まったと思ったから」です。

ただ、これではつまらないので、長たらしい蛇足を加えると、次のようになります。

私の故郷である岩手県二戸市は、「豊臣秀吉天下統一の最後の戦が行われた地」として、一部の歴史ファンに知られています。一般的には、関東征服(北条氏滅亡)の際に、伊達政宗を筆頭とする東北の諸将が服属して統一が実現したかのように誤解されていますが、北東北のうち現在の岩手県北から青森県東部の一部地域だけは、名実ともに秀吉の支配に服属しない状態になっていました。

当時、北東北は、覇者・南部氏の跡目争いに一応勝利した南部信直、分家筆頭の九戸政実、南部氏から一方的に独立宣言をした津軽氏の3者が三つ巴で抗争しており、このうち信直公と津軽氏は小田原に参陣し本領安堵と引き換えに抗争停止命令に従いましたが、政実公は参陣せず服属を拒否したことから、豊臣秀次を総大将、徳川家康を副大将とし豊臣・徳川・東北の諸将が率いる大軍が、政実公の居城・九戸城に押し寄せました。

対する政実軍は上方軍の十分の一に満たないものでしたが、上方軍の総攻撃によく耐え、戦争では落城しませんでした。長期戦を恐れた上方軍は、政実公らが詰め腹を切れば他は助けると勧告し投降させましたが、とんでもない騙し討ちで、開城直後、上方軍は女子供を含む籠城者全員を殺戮し城を焼き払ったと言われています。

その後、秀吉から九戸氏旧領全域の支配権を認められた信直公は、一旦は版図の中央にある九戸城に本拠を移すも、ほどなく豊臣諸将の勧めで伊達氏との国境に近い盛岡に遷都し、以後、二戸地方は我が国の歴史から忘れ去られ、経済的にも国内有数の困窮地域として苦難の道を辿ることになりました。

私は、実家が九戸城址の三の丸跡にあったため、幼少時からこの物語を知り、荒れ果てた本丸周辺の物悲しい空気に触れながら育ったので、自分も、理不尽に地獄を強いられた人々の血と涙に報いるような、何事かをしなければならないのではという漠たる思いを持っていました。

その後、将来は盛岡で定職を得て生活したいと思うようになった際、いつの頃からか、「盛岡は、敵将である信直公が九戸一族を滅ぼすのと引き換えに得た都である上、規模や地理的条件などから、北東北の盟主と言ってよい都市である。この地で正しい仕事をして人々の支えになり、社会を盛り立て、必要な存在として認められていくことは、まさに九戸城の人々が成し遂げたかった生き方ではないか。」と考えるようになりました。

他の道に憧れを抱いたこともありますが、最終的に、盛岡で弁護士として生きることが腑に落ちた理由は、そうしたことによるのではないかと思っています。

Q2.弁護士になって特に印象に残っている案件(事件)を教えてください。

A2.東京で4年半、岩手で7年近く仕事をしていますが、岩手での仕事について詳しく書くのは憚られますので(事務所Webサイトに少し書いています)、東京時代のことで、一つ挙げることにします。

弁護士2年目に担当した、ある刑事国選事件が執行猶予判決で終了した後、被告人のお子さんが以前に受傷した交通事故に関する賠償請求を依頼されました。受任時点で家庭内に複雑で特殊な事情があったのですが、途中でご家族の関係が変容し、法律上様々な論点を含む深刻な不和が家族間に生じてしまいました(具体的な説明ができなくて申し訳ありませんが、野島伸司氏脚本のドラマ並みの事情とだけ述べておきます)。

最終的に、交通事故の賠償請求は訴訟で相当の和解勧告を受けて解決し、ご家族の関係も社会通念に照らしやむを得ない形で決着しましたが、ご家族・親族の間を綱渡りするような思いでやりとりしなければならない面が多々あり、弁護士倫理など様々な点で貴重な経験をしました。

現在も、駆け出しの弁護士が、こうした「狭義の受任対象である法律問題とは別に、およそ教科書に手がかりがない複雑・困難な事情が存するケース」に直面し、自分なりに、人の道、弁護士のあるべき関わり方を悩みながら解決を模索していかなければならない経験をすることは、珍しくないと思います。

私がお仕えしたボスのお言葉ですが、法律家は「法律3割、その他7割」の心構えで、直面した紛争の正しい解決を考え、実現するための地道な努力を重ね、胆力を練り上げていくほかないと思います。

Q3.弁護士のお仕事の中で嬉しかったことは何ですか。

A3.月並みですが、一定の努力を尽くせば相応の成果が実現できると想定できた受任業務で、人事を尽くして成果を達成できたときは、いつも嬉しいです。

また、そうした際、依頼者の方から「貴方に会えて良かった」と仰っていただけるときには、この仕事に就いたよろこびを何よりも感じることができると思います。

反面、精根尽くして債務名義を得た途端に相手方が破産してしまうなど、物心共に報われない思いを強いられることも少なくないというのが町弁の現実です。

Q4.弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。

A4.事務所を開設する町弁は零細自営業者であり、業務を通じて社会の役に立ちつつ、事務所と職員の雇用を守る責任を負っています。

事務所を維持するに足る受注を確保すること、それぞれの受任事件で、依頼者・受任者双方が納得できる真っ当な業務や価格の水準を確保することの2点が、現在、最も腐心し、大変だと感じるところです。

私が盛岡に移転し独立した平成16年から数年間は、岩手全域が弁護士過疎地で、債務整理特需の全盛期でもありましたので、幸い、受注不足に困ることも事務所維持に必要な売上確保に困ることもありませんでした。

しかし、①債務整理特需の終焉、②若手弁護士の激増に伴う従来型ルートを中心とする弁護士個々の受任機会の減少、③東京の弁護士事務所等の派手な宣伝活動やコミュニケーションツールの活用による地方需要の吸い上げに加え、④東日本大震災に伴う被災県の社会・経済活動の停滞、⑤被災県の弁護士に期待される各種ボランティア活動への参加の必要などにより、地方とりわけ被災県で活動する町弁の事務所経営は、すでに非常に厳しい時代へと突入しています。

反面、これを裏返せば、①借金問題から解放された人々による新たな法的サービス需要の発生、②若手と連携した新たな需要喚起・活動領域等の拡大、③他の弁護士等の広報・経営戦略などの研究、④今後の復興活動等に伴う法的サービス需要の発生、⑤ボランティア活動を突破口とする新たな人脈・弁護士業務の開拓など、様々な可能性や好機が生じていると捉えることもできるわけで、詰まるところ、ピンチをチャンスに変える力が自分にあるのか、日々問われているのだと痛感しています。

文章ではあれこれ書いていますが、実際には内向的で引っ込み思案の性格なので、そうした自営業に向かないところが最大の問題なのでしょうが・・・

Q5.休日はどのようにお過ごしですか。

A5.イソ弁時代は、自宅で夕方まで寝て、日暮れ時に事務所に来て終電まで仕事をするような荒んだ生活をしていましたが、現在は、仕事と兼業主夫との両立に追われる日々です。

Q6.弁護士としてお仕事をする上の信条・ポリシーを教えてください。

A6.平成16年に東京を去り自分の事務所を開設すると決めたとき、自分が何のため、誰のために働きたいのか、色々と考え、自分がこだわりたいキーワードとして、北東北という概念に辿り着きました。

これは、Q1で述べたことのほか、父方の一族が大昔に秋田県田沢湖近辺の領主をしていたとの伝承があり、母が青森県東部の出身で幼少時には母の実家をよく訪ねていたなど、個人的にも北東北三県に関わりがあり、自分にとっての広義の故郷が、この3県を中心とする地域ではないかと感じたことによるものです。

そこで、北東北の人々や社会への貢献を事務所の存在意義(コーポレートアイデンティティ)として明確に打ち出したいと思い、北東北を意味する「北奥法律事務所」と名付けました。

今も、岩手だけでなく青森や秋田(特に両県の東部地域)の人々や社会のお役に立てる機会があればと思っていますが、管轄や経費の関係で業務として成り立たせるのは容易でなく、転勤族の方などに多少のお手伝いをするに止まっているのが実情です。

Q7.ご依頼者様に対して特に気を付けていることは何ですか。

A7.一筋縄ではいかない事件・論点などでは、ご自身が直面する法的課題について、「弁護士に任せて結論・成果だけを待ってなさい」とするのではなく、その課題の本質・病因がどのようなものか、論点の法解釈なども含めた解決のあるべき姿がどのようなものか、弁護士(私)なりの理解・考えを極力分かりやすく伝え、認識を共有いただいた上で、共に解決を勝ち取っていく態勢を作ることに腐心しているつもりです。

受任事件の方針に対する正しい判断を依頼者自身が行うために必要な理解を深めていただくことが主たる目的ですが、弁護士との共同作業を通じて、ご自身が法的紛争に対する理解・分析や解決の力を高め、今後に繋げていただくことができれば、広義の社会貢献ができたと言えるのではないかと思います。

結果として、例えば、相手方への通知書や準備書面などがくどい長文になることもありますが、分かりやすい言葉で言い分を尽くしてくれたと依頼者の方々から感謝いただくときは、自分の方針が間違っていないと安心するものです。

Q8.弁護士として特に関心のある分野は何ですか。

A8.ありふれた田舎の町弁の一人として、企業法務・知財・事業承継から債務整理・家事・消費者問題などに至るまで幅広い分野を射程にしていますので、関心も多種多様で、ここで延々と述べるのは適切ではありません。

ただ、敢えて一つ触れるとすれば、私の実家が零細ながら会社経営をしており、経営者の苦楽を垣間見て育ちましたので、中小企業のサポートになる類の業務には、特に関心を向けていると思います。今後、低額の顧問契約など、そうした方々との接点を高め、気軽に当事務所をご利用いただけるような工夫をしていくつもりです。

また、被災県の弁護士として、復興や街づくりに関して生起するであろう新しい弁護士業務に携わる機会を持てればとは思います。

Q9.今後の弁護士業界の動向はどうなるとお考えでしょうか。

A9.前記4のとおり、今後、町弁業界が厳しい時代を迎えることは間違いありません。その中で生き残る=選ばれる弁護士になるため、田舎の町弁も、①良質な受注機会の獲得、②受注業務を適正に解決するための研鑽の深化の双方を、ますます追い求めていかなければならないことは当然です。

①については、HPなど空中戦に力を入れるか、人脈づくり(地上戦)に精を出すか、各人で手法が分かれるでしょうが、②については奇策などあるはずもなく、基本書や判例雑誌、近時の実務状況をまとめた本などを地道に勉強し続けるほかありません。私自身は、これまで多少とも経験させていただいたように、地道に努力を続けていれば、今後も誰かがそれを見ているのだと信じて、腐らずに頑張っていきたいと思います。

Q10.先生の今後のビジョンを教えてください。

A10.当事務所は、債務整理特需の最盛期に事務局の増員とスペース拡張を行ったため、今後、これを維持できるのかという課題に直面しています。

弁護士を1、2名受け入れるだけのスペースがあるため、数年内には複数弁護士体制にしたいのですが、勤務弁護士に高収入を約束できる恵まれた事務所ではありませんので、どのような方法で弁護士の増員や経営安定を図るか、思案の最中です。

また、受注費用に関しては、公平さや透明の面からタイムチャージ的な手法による受注を増やしていきたいと考えており、この点も試行錯誤を続けています。

Q11.ページを見ている方々に対してメッセージをお願いします。

A11.都会の企業法務中心の大事務所など、私にとっても縁遠い世界のことは分かりませんが、少なくとも、地方の弁護士業界は、地元の著名企業など良質な顧客基盤を有し、伝統的な弁護士像を地でいく大ベテランの先生方を別とすれば、数年続いた債務整理特需の終焉と若手弁護士の大増員に不安を抱きながら、業務拡大など様々な模索を始めた変革期に突入しつつあると思います。

裏を返せば、ここ十数年間は、これまでに考えられなかった、新しく、現代に適合した合理的な弁護士の法的サービスを享受できるチャンスが到来したということでもありますので、供給サイド(弁護士)だけでなく、需要サイドの方々も、リーガルサービスのあり方について、検討を深め、弁護士業界に刺激を与えていただきたいと思っています。

Q12.ページを見ている法曹界を目指している方に向けてメッセージをお願いします。

A12.すでに延々述べてきたように、町弁業界は、厳しいピンチとチャンスの時代に突入しました。コストパフォーマンスの適正なども含め、真に社会に価値を供給できる法律家だけが生き残ることを許される、逆に、そうした法律家には、これまでの社会では実現できなかった多様な活躍の場が与えられるのだという認識をもって、研鑽に励んでいただきたいと思います。

また、法律以外の諸学問の基礎的理解は言うに及ばず、人情の機微に触れる力から未来の社会需要を見通す力まで、様々な力を養うための機会を大切にして下さい。私が言える立場ではありませんが、「ハンドルの遊び」があり、僅かな言葉・労力で相手を納得させる器量を持つ人ほど、多様な経験を重ね、センスやバランス感覚、胆力を養っていることは確かです。

私はそうしたものを養う機会をさほど持たずに実務家になりましたので、ツケを後日に支払うことになったとは思っていますが、それでも、学生時代や修習中に享受した幾つかの経験や業界の先輩を含む幾人かの素晴らしい方々から薫陶を受ける機会に恵まれたこと、様々なジャンルの読書などが、今の糧として生きていると確信しています。

Q13.その他特記したい事項やページを見ている方にお伝えしたいことがございましたらお願いします。

A13.当事務所のWebサイトも併せてご覧いただければ幸いです。
URL:http://www.hokuolaw.com/

<取材学生からのコメント>

今回、小保内先生にインタビューをさせていただきましたが、とても濃い内容だったのではないかと感じました。事前に先生に準備してくださったおかげでもありますが、インタビューの質問1つ1つが身に染みてきて、とても勉強になりました。

最後になりましたが、お忙しい中インタビューをお受けくださった小保内先生、ありがとうございました。

すべては、「あなたに会えて良かった」のために。

数年前から弁護士紹介サイト「弁護士ドットコム」に登録しています。1、2年前は同サイトをご覧になった方からのご相談のご依頼を時折いただいていたのですが、ここ最近は、残念ながら同サイト経由でご相談のお申し出を受けることがほとんど無くなっています。

先日、1、2年前からネットでも強力に広告展開されている某先生にお話を伺ったところ、HP経由の相談依頼が毎日のように寄せられていると仰っており、或いは、「HP経由で盛岡の弁護士にアクセスする方」は、悉く某先生の方に相談なさっているのかもと、悲しくならないこともありません。

さりとて、岩手での開業以来、様々な形でお世話になっている某先生に愚痴を申すわけにもいかず、自分の至らなさゆえと腹を括り、地道に研鑽を続けるほかありません。

というわけで、せめてもの悪足掻きということで、弁護士ドットコムのプロフィール欄を大幅に加筆しましたが、万一、同サイトが閉鎖等された場合のデータの予備も兼ねて、こちらにも転載することにしました。

キャッチコピーは思いつきですが、某ビールの宣伝文句に似ていないこともありません。その点はご愛嬌というか、ご容赦下さい。

余談ながら、ここで用いた言葉は、平成15年頃に妻と出逢った際、自己紹介がわりに用いた言葉で、当時、ある重い事件が終局した際、依頼主の方から頂戴した言葉です。ただ、妻は、その時点では、ナンパ目的のニセ弁護士だと思っていたなどと述べていました(笑)。

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例えば、ふさぎ込んだ相談者の方に、論点を整理して解決の道筋をご説明したとき。大きな問題が生じた困難な事件で、依頼主と共に全力を尽くし、艱難辛苦を乗り越えて有意義な解決を掴んだり、ご本人が人生の新しい道筋を切り拓いたとき。

そんなとき「あなたに会えて良かった」と心からの笑顔で仰っていただいたことが、何度もありました。

私は、田舎の小さな商家の次男として生まれ、幼少時に大病を患い運動能力を著しく欠いた状態で少年期を過ごしたせいか、家でも学校でも、「要らない子、皆にとって扱いに困る子」という思いを抱えながら育った一面があります。

時を経て弁護士になり、東京時代は終電に向かって走る日々を、岩手での開業後も朝から朝まで働く日々を過ごしてきたのも、詰まるところ、皆さんと社会に求められ役立っているとの実感を、私自身の救いとして必要としてきたからなのだと思います。

平成12年の弁護士登録以来、約15年にわたり、ご家庭の問題から事故の賠償、各種生活トラブルや企業取引、経営上の紛争、債務関係など、幅広い分野を取り扱ってきました。

今も、お客さまの「会えて良かった」のため納得できる最善の解決を目指して、そして、願わくばその積み重ねの末に、ふるさとの礎となることができるよう、全力で闘っています。

「あれこれ言わずともオーラと権威で相手を圧倒し、要求を呑ませることができる大物弁護士」を希望する方は、私に依頼なさるべきではありません。数十年たっても、どんなに努力を重ねても、私は、そのような「偉い人」にはなれないのだと思っています。

反面、理不尽に見舞われ時に傷つきながらも、正しい解決を目指して立ち上がり、二人三脚で共に闘う弁護士を必要とする方には、私にもお役に立てることがあるはずです。

これからも、そんな方々の力になれるよう、何より、選んでいただけるよう、研鑽を重ねて参ります。

取扱業務や実績に関する詳細は、事務所HPをご覧下さい。

また、平成23年に当サイト(弁護士ドットコム)が運営されている「弁護士列伝」にインタビュー記事が掲載されていますので、ご覧いただければ幸いです。

平成26年の業務実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成26年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を簡単ながらまとめました。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

相続分野では、死亡危急者遺言」(危篤時に第三者(証人)が作成し、後日に裁判所の確認を受ける制度)が作成され、被相続人の友人に多額の財産が遺贈されたという事案で、ご遺族から、遺言者の意思に反するとのご相談を受け、昨年から遺言無効等を求めていた訴訟について、当方の主張を認める旨の和解勧告があり、勝訴的和解が成立して終了したという例があります。

この件では遺言者(被相続人)の方に認知症がなく、遺言無効の主張が認められない可能性も否定できない事案でした(依頼者の方によれば、以前に他の弁護士に相談して勝訴は困難と断られたのだそうです)。

当職も、立証に課題があるとは感じつつ、事案固有の様々な事情から、遺言無効が認められるべきだと考えて、依頼主と共に膨大な作業時間を投入して様々な主張立証を展開したところ、全面勝訴に匹敵すると言ってよい、満足いく成果が得ることができました。

昨年は、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、利害関係者のご依頼で相続財産管理人の申立を行ったり、私自身が管理人に就任して権利関係の処理を行うという事案が幾つかありました。

以前に「無縁社会」などと呼ばれ、現在もその状態が解消されていない中、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ないケースは増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので、ご留意いただければと思います。

また、遺言に関し、自筆遺言証書の文言などに問題があり、あるべき対処(遺言の解釈など)についてご相談を受けたことが複数あり、中には、相続人間で訴訟を行っている例もあります。

お一人で遺言を作成するのは、内容が明確(財産全部を特定の相続人一人に相続させるようなもの)であればまだしも、解釈による紛争のリスクが否定できませんので、公正証書遺言に依っていただくか、どうしても自筆を希望される場合には、文言の当否についてご相談いただくなどの対処をご検討いただきたいと考えます。

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)についても、法テラスの無料相談制度(震災当時、岩手県などに在住の方は、資力などに関係なく一律ご利用できるもの)などを通じて多数のご相談を受けており、訴訟や家裁の調停等を受任した例も少なくありません。

昨年は、夫婦間の子の引渡を巡る紛争(母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻した挙げ句、母との接触を拒否したため、母が父に対し、子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの)を受任しており、逆の立場で受任した事件もあります。

子を巡る紛争は、面会交流を含めて、近時は著しく増加しており、裁判所は、子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所の委託で後見人に選任されている例が複数あります。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘って区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、区画整理の一環として自治体が行った行政処分に対する取消請求訴訟や執行停止申立を行った例があります。

刑事弁護については、幾つかの国選事件のほか、若干の私選弁護(相当期間内で終了しタイムチャージ形式で清算するもの)が幾つかありました。詳細は伏せますが、ある団体について業務上横領罪で起訴された方が嫌疑を否認し、有罪の当否が激しく争われた事件を担当した例もあります。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として、弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています。大船渡の法テラス気仙に月1回の頻度で通っているほか、原発事故に起因する賠償問題なども扱いますので、必要に応じお問い合わせ下さい。