北奥法律事務所

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弁護士業務一般

公的団体の内部不祥事と公表の議論を巡る内部の光景

先日、JR東日本が社員の着服事件を外部公表していなかったことを取り上げる記事が出ていました。

以前、私も所属する某団体で、この報道(従業員の横領事件)と似たような問題が生じたことがあります。

役員の方々が大変尽力され、団体の被害は完全回復されたそうなのですが、その事案を対外的に公表するか、団体内で議論がありました。

私は会場に赴かずにズーム参加したのですが、過去に団体の役員をつとめた有力会員の方からは、内部の問題であり公表不要との意見があり、会場内では異論がなされていないようでした。

私は、その団体が強い公的性格を持つ(と世間一般が感じている)以上、不公表は適切ではない、お役所や金融機関などで同種の不祥事が起きていれば必ず公表するだろうから、当事者等を特定する情報を全て伏せた上で、このような事件自体はありました、と公表すべきではないかと意見しました。

すると、会場内の他の有力な会員の方から「役所などとは全然違う」などと、それに強く反発する反論を受けました。

明言はされていませんでしたが、不祥事を起こした方は、長年その団体のため多大な尽力をされ、多くの会員が自分達の身内だと感じてきたような方であり、「どうしてお前は(本人が事実を全て認めて被害回復も実現したのに)自分達の仲間を苦しめようとしているのか」と非難するニュアンスを強く感じました。

その後、大ベテランの方から、私の意見に理解を示すコメントがあり、それ以上、他に意見もありませんでしたので、あとは役員の方々に一任することになりました(誰も意見は言いたくなかったでしょうし、私自身、公表を主張する方が他にいたなら、好んで意見をすることはなかったでしょう)。

それから少しして、結局、私の意見どおり、その団体が、当事者等の特定情報を全て伏せた上で、その事案について公表している報道を拝見しました。もともと外部への被害がなく内部では解決済みということもあり、それ以上、世間でその件が取り上げられることはなかったと思います。

そのことを、この話を伝えても許されるであろう、ある方に話したところ、「仮に、公表せず伏せていれば、週刊誌などで批判的なニュアンスを交えて取り上げられ、団体や業界の信用を傷つけることもありえたのではないか。上記のやり方が正解というほかない。誰かが、そうすべきだとの意見を言わなければならなかったのだ」とのコメントをいただきました。

ただ、自分達の仲間を守りたい、内部で責任を取ったのだから、それ以上は苦しめたくないという方々の心情も、何一つ間違っていないと思います。

確実に言えることは、私はその団体では昔も今も末端ヒラ会員であり、残念ながら、団体内の多くの方々と、あまり親しい関係を築けず疎遠なまま終わりそうだ、ということだけでしょうか。

或いは、その方が、司法の世界に身を置く者らしいのかもしれませんが。

 

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(最終回)

前回までに引き続き、先日の盛岡市議さん達との懇談会のため用意した(ものの出番なく葬られた)レジュメを載せます。

今回=資料3は、先般の市長選で当選された内舘茂市長の公約を市役所が実施しようとした場合、地域の弁護士がどのような形で役に立てるか、テーマを絞って考えたものとなっています。

標題のテーマ(地方で執務する弁護士が、地方における民主主義と人権保障の拡充の向上のため何を考え何をすべきか)に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

私にとっては残念な会合となりましたが、これまでお名前や写真等しか存じなかった何名かの市議さんに初めてお会いできたことは、有意な経験だったと思うことにします。

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資料3 内舘市長の公約等に関するノンポリ無党派弁護士からの一考察(雑駁なもの)

もともと、これが「当職が担当を配点されることになったきっかけ(元凶?)」ですが、資料1・2の作成で力尽きたこともあり(所詮「おまけ」扱いですし)、すいませんが、今回は簡易なレポートとさせていただきます。

ここでは、内舘市長の公約を網羅的に分析等することはしませんが、パンフレットなどからは次のようなものが掲げられていると理解しています。

Ⅰ 地域内の様々な経済的・社会的弱者支援

①高齢者等の交通支援(ミニバス・乗合タクシー)=(自動車に依存しない)外出支援
②戸別訪問ゴミ収集・在宅医療介護強化等=外出せずとも各種サービスを受ける制度
③Uターン就職者への返還不要奨学金、学校給食無償化・センター整備や保育料無償等
④いじめ対策、習熟度別の学習支援、不登校他ハンディキャップ児童等の教育環境整備
⑤教員の増員と就業環境改善
⑥市長対話・住民対話部門、除雪部門強化、各種DX、公共交通整備、自転車専用道路

Ⅱ 地元経済・事業者の活性化支援

①地元企業の売上向上支援、上場支援、起業支援、起業等移住若年世代の定住支援
②地域の魅力発信と各種文化・産物の魅力強化(いわゆるブランド化=高付加価値化)
③地域の歴史文化(街並み)・先人(原・新渡戸・啄木等)の発信強化(VR等)
④社会的弱者向けの街並み整備(点字・スロープ、トイレ整備ほか)
⑤各種ボランティア活動に対するポイント付与(市内商業施設での還元)
⑥公共施設での再生エネ事業、エネ地産、EVスタンド、農業支援等

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全般的な特徴は、社会的弱者支援が強調され、対人給付(奨学金や各種無償化=税対応、ポイント制など)が多く掲げられている(インフラ整備的なものは強調されてない)ことだと思われますが、ここでは政策自体の当否や財源問題などは取り上げず(その検討は、第一義的には議員さんのお仕事でしょう)、これらを実現しようとすれば、法制度上どのような課題が生じるか、実現のため弁護士がどのように役立てるかを検討対象とします。

ただ、網羅的な検討はできませんし、公約の大半が税金の使い道を述べているに過ぎず、市民生活や企業活動等への規制等を掲げた公約がほとんどみられないため、前者(法制度上の論点)は一旦置いて、後者(弁護士の使い道)を中心に検討します。

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例えば「いじめ対策」や教員支援などに関し、近時は、いわゆるスクールロイヤー(教育委員会や学校法人等の依頼により、学校で生じる諸問題について継続的に相談や事件対応に応じる弁護士)が提唱されています。

内舘市長も範としている?兵庫県明石市は、人口比に照らし「日本で最も弁護士が常勤職員となっている自治体」と言われ(平成30年は7名とのこと)、教育委員会に所属しスクールカウンセラーやソーシャルワーカーと共に市内公立校の各種問題に専業的に対処する弁護士職員もいる(いた?)そうです。

この点は、弁護士会の「こども委員会」や「法教育委員会」の所属弁護士の方々(今回も参加されています)に発言を求めれば、様々な意見や提言がなされるのでしょうが、明石市のように「弁護士の常勤職員を多数雇用する」形でなくとも、市内の多数の弁護士の参画を得て、生徒や教員、或いは保護者等の様々な相談に対応する仕組みを作ることは、さほど難しくないと思われます。

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問題は予算措置(カネ)で、法テラスと連携したり、国の補助金対象事業化をお願いできれば有り難いですが、高額な予算がなくとも一定の対応は直ちに可能と思われ、弁護士会などに制度設計を要請の上、議会等で導入を検討いただければ幸いです。

スクールロイヤーや学校を巡る法律問題に関心のある方は、学校教員でもある弁護士の方が執筆した、神内聡「学校弁護士」(角川新書)をぜひご覧下さい。

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その他、高齢者・障碍者支援であれば弁護士会に担当委員会がありますし、地元企業の支援の一環として弁護士への相談等補助も検討いただきたいです。

カネの支援が無理でも、相談や事件対応のため必要となる事務作業などを、行政や商工会議所などが補佐する仕組みがあってよいと思います。

少なくとも、ご本人が適切な準備や作業ができないため、相談等できずに終わっている事案や、相談等がなされても「その先の作業=解決」に繋がらずに終わってしまう事案は珍しくありません。

歴史的景観保全等のための街並み整備などは行政の規制や居住者等支援が必要な分野ですが、日弁連公害環境委員会ではそうしたテーマも取り扱っており、条例整備であれ、個別事案対応であれ、市の顧問弁護士事務所の方々と役割分担をしつつ何らかの第三者的な形でお役に立てることはあるかと思います。

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市議の方々は、市長の公約云々に関係なく、市内の様々な課題を掘り起こし(光を当て)解決を推進することが求められていることは申すまでもありませんし、「掘り起こし」をする上で、市内で活動する弁護士達に、現在はどのような事案の相談や依頼等が多いか、どのような問題が発生しているか(住民や地元企業がどのようなことで困っているか)を定期的に聴取して全体像を把握し、それに基づいて市のあるべき施策を提言していくことは、市議会に求められている役割の一つだと言うべきではないかと思います。

私に関して言えば、震災前に山ほど受任していた個人や企業の債務整理等が大幅に減少した反面、近年、増加傾向にある類型として、次のものがあると感じています。

①全く身寄りの無い方の相続(相続人不存在事案や、被相続人と全く交流のない遠方在住の多数の甥姪などが相続人となる事案など。隣人が世話したり高額な相続預金等を有する例もある)

②老齢の親が重大な障害を抱えた子と二人だけで暮らしていたが、様々な事情で同居等が困難となり財産管理等のため弁護士の支援が必要となる事案(重大な紛糾例を含む)

これらは、社会内の人間関係(家族・親族・地域その他)の希薄化で「ひとりぼっち」「二人ぼっち」家庭が非常に多くなった結果として生じているもので、盛岡に限らず全国的な現象だと思いますが、被相続人の死去で、遠方の甥姪等(往々にして大都会に在住)に預金が移転(盛岡から流出)することが多いほか、相続人不存在であれば、国庫帰属の形で、国が全て取得する(市役所や県には一円も入らない)形となります。現行の相続財産清算人(管理人)制度の運用にも、疑問を感じる点は色々とあります。

ただ、そうした事案では、「もしかしたら、ご本人(被相続人や被後見人等)は、そのような形で財産が流出するのではなく、地元の近しい関係にある方に引き継いだり、地元のため有効活用して欲しいと願っていたのではないか」と感じることは珍しくありません。

条例で「相続人不存在事案を国庫帰属ではなく地元自治体へ」と定めても無効になるでしょうが(地方自治法14条)、例えば、推定相続人(財産を相続する予定の方)がいない(身寄りのない)方や推定相続人と疎遠になっている方(市民)に向けて、積極的に遺言書の作成(自身の死去後の財産等のありかたの検討)や弁護士等への相談等を促す施策があって良いのではと思います。

その一貫として、多額の資産(相続財産)をお持ちの方には市役所などへの寄付を呼びかけても良いのかもしれませんし、それは後見人無報酬事案の補助原資にもなりうるでしょう。

もちろん、その前提として、そうした方の生活を様々な形で行政が支援することが伴われるべきでしょうが。

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ご承知のとおり、盛岡市民には市役所から「健康診断に行って下さい」というカードが毎年送られてきます。身体の病に限らず、社会生活上の様々な病の未然防止のため、様々な論点・事案(必要性)を具体的に紹介し、「弁護士などに相談して下さい」と市の広報などで呼びかけることは、あって良いと思います。

岩手弁護士会サイトの弁護士名簿をご覧のとおり、岩手の弁護士の過半数以上が盛岡で執務しており、盛岡市(市役所・市議会)は弁護士の活用について強いアドバンテージを持っていると言えます。皆さんにも、そのことを生かしていただければ幸いです。

長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。 

 

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(第3回) 

前回に引き続き、先日の盛岡市議さん達との懇談会のため用意した(ものの、ボツ扱いで葬られた)レジュメを載せます。

今回=資料2は、盛岡市議の方々に、地方議会・議員として弁護士という存在=インフラを、どのように活用いただきたいか、考えたことをあれこれ述べています。

標題のテーマ(地方で執務する弁護士が、地方における民主主義と人権保障の拡充の向上のため何を考え何をすべきか)に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

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資料2 弁護士・弁政連と市町村議会議員の交流等のあり方に関する一考察

皆さんは、上川あや「変えてゆく勇気」(岩波新書)を読んだことはありますか?

これは、性同一性障害が社会に認知される以前の時代に、その「心」を持って生まれた筆者(MtF)が、艱難辛苦を乗り越え前向きに生きようとすると共に、区議会議員に立候補して当選し、性同一性障害性別取扱特例法(特定の要件のもと、戸籍上の性別を変更=人格に適合させることができる法律。先日、手術要件の違憲判決がなされた)の制定運動にも携わった方が、立法運動を含むご自身の半生を語った本(平成19年出版)です。

僭越ながら、私は、この本に、資料1で述べた「住民の民意反映と人権保障の担い手」としての地方議会議員の「あるべき姿」の一例を見る思いがしています。

と同時に、本書で描かれた上川議員の熱意と工夫溢れる立法活動を拝見すると、社会的的課題を立法(法律制定)によって解決するためには、立法化を強く希望する方が当事者として地方議会議員となり主要国会議員(政府を運営する関係者)に強く・賢く働きかけ理解を得る形をとらなければならない(そうでなければ実現は困難であろう)と感じます。

今や、盛岡をはじめ各自治体で「同姓パートナーシップ制度」の導入が盛んに行われていますが、本書が出版された平成19年当時には、現在の光景はほとんどの人が想像していなかったでしょう。

当事者でもある上川議員に限らず多くの方々の地道で熱心な活動の積み重ねと、それが(世界の潮流も含め)徐々に社会内で理解を得てきたことが、現在の光景に繋がったのだろうと思われます(某市長の当選もそれに似ているのかもしれません)。

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このような「小さい(ごく少数だ)けれど切実な声」は、LGBT等に限らず、社会に様々な形で存在しているのだろうと思います。自分達の地域社会に間違いなく存在するであろう、そうした声を拾い集め、専門家の力を得て、様々な艱難辛苦を受けつつも現実的に可能な解決に向けて努力していく。それこそが、皆さん(地方政治家)や我々(地方のフツーの弁護士)のあるべき仕事の一つであろうことは、申すまでもありません。

医療の世界では「かかりつけ医」が提唱されて久しいですが、地域の伝統的な相互扶助システムが崩壊し揉め事を仲間内で解決することが困難となった現在では、社会生活上の病の治療の担い手としての弁護士の果たすべき役割が飛躍的に増大しています。

そうであればこそ、地域住民の多くが、ご自身や大切な方に問題が生じたとき解決を真っ先に相談に行くべき「かかりつけ弁護士」を持つべきと言えるでしょうし、かつての「二割司法」の時代は弁護士大増員により終わりを告げ、それが可能な人的供給は十分に整えられた(整えられつつある)と言えます。

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とりわけ、支持者・支援者をはじめ多くの地域住民と関わりを持つはずの地方議会議員の方々は、様々な困りごと・悩みごとの相談等を通じて「これは(議員マターではなく)弁護士に相談して解決すべき」と感じる点があれば、地域内の弁護士への相談等を勧めていただきたいと思いますし、そのような意味で、地方政治家の方々こそ、そうした用途を含めた「かかりつけ弁護士」を(得意分野や年代別などに応じて)複数擁しておくことが望ましいと言えるでしょう。

何より、上記の理由(隣近所や親族との交流が絶え、勤務先の人間関係も希薄だなどという、かつて社会にあった地域相互扶助が崩壊したことに伴い、地域の相互扶助の再構築が求められていること)から、助けを求めている住民と、ニーズに応えられる専門家との媒介役(仲介者)としての地方政治家やその補助スタッフなどに求められる役割は、飛躍的に増大していると言えるはずです。

・・・が、盛岡で開業してはや20年。私(小保内)自身は、ただの一度も政治家の皆さんから、相談者のご紹介などを受けたことはありません・・

盛岡市議会や岩手県議会などでは、コイツに紹介するのだけはやめておけ、という悪評でも立っているのでしょうか?(笑?まあ、皆さん、重鎮の先生方や優秀な若手の方々を紹介され、しがない町弁は相手にされていないのでしょうが・・)

それはさておき、既述の理由から、地方政治家こそ「かかりつけ弁護士」を持つべきであり、多数の弁護士が参集する場で一人一人の顔や人となりを見ることができる「弁政連との懇談会」は、ご自身や支援者のための「かかりつけ弁護士」を選ぶ場(相性を含めたマッチング)としての機能も持ちうるものと言えます。

そのような観点から、この機会を積極的に生かしても良いのではないでしょうか。
(便乗して当方の営業活動をしているわけではありませんので、ご理解ご容赦のほどを)

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ちなみに、10年以上前、盛岡ではない某市役所の無料相談会を担当した際、地元の市議さんが、相談者に付き添って何度か来所されたことがありました。

私の知る限り当職への法律相談等の場に盛岡市議さんが同席されたことはありませんが(そもそも、どなたも紹介いただけないし・・)、とりわけご高齢の方などは、ご本人が当方の説明内容を十分にご理解いただけない場合もありますので、ご自身が同席されるかはさておき、そうしたことへの支援も地方議員さんの役割の一つとして考えていただいても良いかと思います。

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(第2回)

前回に引き続き、先日の盛岡市議さん達との懇談会のため用意した(ものの、会場でボツ扱いになり闇に葬られた)レジュメ(資料1)です。

標題のテーマ(地方で執務する弁護士が、地方における民主主義と人権保障の拡充の向上のため、何を考え何をすべきか)に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

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資料1 日本弁護士政治連盟や弁政連岩手支部の「きほんのき」と実情・課題の考察

日本弁護士政治連盟は、日弁連の政策を立法等を通じ政治的に実現することを目的として昭和34年に設立され、昭和期はさしたる活動がみられなかったものの、平成期には、隣接他士業(司法書士・行政書士・税理士・弁理士など)の職域拡大に関するロビー活動に触発される形で全国の弁護士会ごとに支部設立が行われるようになり、岩手支部は平成23年(震災直前)に設立されています。

岩手支部は、発足以来、概ね年に1~2回の頻度で、県内選出の国会議員や岩手県議会議員の方々との懇談会を実施しており、基礎自治体(市町村議会など)との交流は前2者と比べて少ないものの、数年前には盛岡市議会議員の方々との懇談会を実施しています。

他方、首長(知事・市町村長)との懇談会等は、岩手では実施例がありません(他支部=他県等では実施例もあります)し、自治体行政部局との関係でも同様と思われます。

弁政連本部(日弁連会長OBなど重鎮の方々)は、定期的に主要各政党や政府(弁護士出身の政務三役、とりわけ法務省関係者など)との懇談会を行っているようです。

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冒頭のとおり、弁政連の趣旨・目的は「日弁連ないし弁護士業界が、社会正義や弁護士業務の適性確保などの見地から実現したい(すべき)政策(立法=法律・条例等の制定や行政による事業化・予算措置など)を政治部門を担う方々(議員や首長)にお伝えし実現を要請させていただく点にあります(他士業と違い?職域拡大への関心は低そうですが)。

そして、法律実務の専門家集団たる弁護士の団体である以上、単なる「陳情」に止まることなく、条例その他(政策実現のための各種文書)の起案であるとか、条例等の必要性を支える基礎事実(いわゆる立法事実)の収集・分析・報告等、政治部門(議員や首長、行政部局など)との折衝、さらには自分達の陳情だけでなく、政治部門の要請に基づく法律実務シンクタンクの受託者そしてロビー活動の従事者・補助者としての役割を果たすことが期待されていると言えます。

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が、いち末端窓際会員としての私が垣間見てきた限り、岩手支部は言うに及ばず弁政連本部や他県支部などが、その役割を現に果たしているのか判然とせず、実情としては各種議員さん達との単発的な(悪く言えば、その場限りの)懇談会等を続けているだけのように感じています。少なくとも、個別の陳情について、条例等であれ議会の決議等であれ、政策として実を結んだという話を聞いた記憶がありません。

また、岩手支部の過去の岩手県議さんとの懇談会では、関心をお持ちの議員さんが多いテーマ(震災対応、養育費など)を取り上げた際は、多くの質問等があって盛り上がったものの、その議論等が「その後に具体的な政策として生かされた」という話は存じません。

まして、多くの議員さん方に馴染みの薄いテーマ(ご自身の社会生活や議員活動で現に取り扱ったり接することが乏しい事柄。例えば、司法制度改革、刑事法制等)については、担当弁護士の資料に基づく説明を聴取等いただく以上のやりとりは無かったと思います。

所詮、相手(議員側)が強い関心を抱いているわけではない事柄の陳情(説明)ばかり繰り返しても、相手が関心のない(自分=話し手しか関心がない)話題で異性を口説こうとしているようなもので、上手くいくはずもありません。私が今回「内舘市長の政策を取り上げては」と話したのも、まずは聞き手が関心を持つテーマを懇談の対象とすべきでは(相手のニーズに適うサービスから始めるべきでは)と考えたからでした。

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また、弁政連のあるべき活動は、いわゆるロビー活動(ルール策定交渉)や「最近話題の法的論点」について政治家の方々と懇談等することに尽きるものではありません。

地方議会の主要な目的(活動原則)は、地方行政の運営者である首長及び自治体各部局に対し、適切な自治体運営がなされるよう監視や評価を行い働きかけることにありますが(盛岡市議会基本条例2条参照)、議会ないし各議員は、住民の代表者として選挙結果に基づく地域内の民意を適切に反映させる(民主主義)と共に、多数決の横暴・濫用にならぬよう、住民全員の権利擁護や福利(人権保障)も確保する(行政に確保させる)姿勢も強く求められている(それが憲法の地方自治制度に対する付託である)と言えます。

地方自治の本旨(憲法92条)は、団体自治(中央政府からの独立)と住民自治(民意反映)が強調されることが多いものの、根底には「多数決原理と人権保障の調整」という統治機構制度の全体に流れる基本思想を含んでいる=地方政治家はその担い手であることを銘じていただきたいと思います。

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そうであればこそ、地方政府の意思決定権者(首長及び地方議会議員)がご自身の職責を適切に果たすためには、人権保障の「もう一人の担い手」たる法律実務家(弁護士等)との協働(時には緊張関係)が不可欠なのであり、双方(地方政治家と地域内弁護士)は、様々な形で、「互いに関わる(刺激し合う)こと」が求められていると言えます。

米国では国会議員が議員立法などを行うため法律専門職たるスタッフを抱えることが珍しくないそうですが、それを直ちに模倣することは無理でも、例えば、市議会の委員会活動の充実化のため、弁護士会や個別弁護士に協力を求めること(そうしたものを通じて、日常的に業務上の関わりを持つこと)はあってよいはずです。

この機会を「単なる世間話と酒飲みの会」で終わらせないためにも、これを機に、皆さんの方から「よりよい市政のため、弁護士(会)にこうしたことをして(検討して)欲しい」と働きかけていただくことを、ぜひご検討下さい。

 

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(第1回)

本日、弁政連岩手支部と、盛岡市議会の最大会派「盛友会」の議員の方々との懇談会があり、名ばかりですが支部の理事をしていることもあり、参加しました。

それに先立つ支部の会議で「内舘市長の公約や市政の課題に関し弁護士の観点から議論すべきことを取り上げることはできないか」と述べたところ、支部長の先生から、貴方が準備しなさいとの指示を受けたので、自分なりに考えたことをレジュメにまとめて用意しました。

が、当初から予定されていた他のテーマ(成年後見人の報酬助成等)のほか、直前に別のテーマが追加され、それらで時間切れだとの理由で、当方のレジュメ等には一切触れられることもなく、あたかも最初から存在しないものとして、終了が宣告されてしまいました。

私は、支部運営をされている他の同業の方々とは活動のあり方について多少異なる考え方を持っているほか、私よりも若い方々とは人間関係も希薄で疎遠になるばかりの有様で、その点も、そうした取り扱いに繋がったのかもしれません(心底嫌われているのかもしれませんが・・)。

ともあれ、いじめ被害だなどと嘆いても致し方ありませんし、もともと様々な方に考えていただきたいテーマでもありましたので、市議の方々にお伝えするのに代えて、こちらで掲載することとしました。

地方の弁護士と地方議会議員が関わりを持つ意味、或いは地方自治における民主主義(国民主権)と人権保障の実現・調整などという抽象的なテーマに関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

まあ、私にとっては日暮れて道遠しというほかなく、己の無力を嘆くばかりですが・・

今回は、レジュメ本文を載せ、第2回から第4回までは今回の末尾に資料1~資料3として表示(記載)した文章を載せることとしました。

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弁護士政治連盟・岩手支部 R05.11盛岡市議(盛友会)懇談会 担当資料
~弁護士と市議会議員との交流のあり方に関する考察と実践について~

文責 弁護士(弁政連岩手支部会員・理事) 小保内義和

はじめに(本稿の経緯及び趣旨について)

今回、盛友会(盛岡市議)の方々との懇談会を行うにあたり、どのようなテーマ(市議の皆さんへの陳情対象)を取り上げるべきか、支部理事会で協議がありました。

その際、会内で長年の課題になっている「成年後見人の無報酬事案に対する公的助成」(身寄りのない方への公的支援その他の必要性から後見申立がされ、弁護士等が後見人に選任されることになったが、被後見人が資産ゼロで僅かな年金又は生活保護費しか収入がなく、施設費や生活費等で完全に使い切ってしまうなど、後見人への報酬原資が全く無いため、後見人がタダ働きせざるを得ない=自営業者たる弁護士には本来は受任不能の事案について自治体に報酬相当額の助成を陳情したいという件)を取り上げるべきとの意見が出ました。そして、後見等に関する他の問題の説明等も含め、Y弁護士に担当いただくことになりました。

が、それ以外に、どのようなテーマを扱うべきか、さしたる意見が出ませんでしたので、当職から次のような意見を述べました。

「内舘市長の当選に伴い、新市長が従前と異なる新たな政策等を打ち出してくると見込まれるが、推進の立場であれ批判の立場であれ、掲げられた政策を実現する上で取り扱わなければならない(直面する)であろう法的課題を検討・協議することが、市議会議員と弁護士の懇談のテーマとして相応しいのではないか。

いずれの立場であれ、市長・市役所(行政側)が承認を求めてきた政策について、実現する上で直面するはずの課題を抽出し、賛同側であれば解決の道筋を立て市長・担当部局に提言したり、反対側であれば、解決困難な法的論点を確認・指摘し市長らに軌道修正を求めることが、市議会議員に求められる主要な役割の一つというべきである。

ゆえに、その前提(議員が職責を全うするための補佐)として、政策のうち法的な事柄について、課題の抽出や検討、提言(多数の住民にとって利害関心のある事柄についての法的シンクタンク機能)を担うこと(そして、それを議員側が活かすこと)が、弁政連=地元弁護士集団と地方議会議員との交流のあるべき姿ではなかろうか」

・・結論として、「だったら、お前がやれ」ということで、担当のお鉢が回ってきました(余計なことを言うんじゃなかった?)。

ただ、その後、テーマが追加(生活保護、再審)され、私の担当は「その他」=オマケ扱い(時間切れならカット)となったので、長講釈は不要であることが分かりました。

また、事前情報によれば、今回の懇談会は谷藤前市長の慰労会と重なり、議員の方々の多くが懇親会(宴会)の途中で退席なさるとのことで、他の方々の報告・懇談のあとは、むしろ、フリートーク的な場にした上で、議員の方々に弁護士(弁政連)に期待すること(自分達=市議会・市政のため汗をかいて欲しいと思っていること)などを自由に語っていただいた方が望ましい(ので、私が下らない話をベラベラ喋って時間を浪費しない方がよい)とも思われました。

また、私の知る限り、これまで「何のために我々(弁政連岩手支部)は地方議会議員の方々との交流の機会を求めているのか(地方政治家と地方の弁護士との関わりは何のためにあるのか、何を目指すべきなのか)」について、原点・本質に立ち返った協議等をしたことが無く、一度はそうしたことを整理してお伝えすべきではないかと思っていました。
 
そこで、私の担当時間(せいぜい10分程度?)は、これらに関する基本的な考えや、内舘市長の掲げた公約等について、私なり「弁護士の立場から見た感想」、或いは、この機会に議員の方々にお伝えした方が良いと考えたことなどをレポートにまとめて、手短に口頭でお伝えし、あとは、それを踏まえて、感想であれ、ご自身のお考えであれ、議員の方々に(とりわけ懇親会に不参加又は途中退席される予定の方を中心に)、自由にご発言いただくこととしました。

交流の実を結びますよう、積極的なご意見・ご発言をよろしくお願いいたします。

なお、申すまでもありませんが、今回のレポートは全て、私(小保内)個人の意見等を述べたもので、弁政連や岩手支部としての見解等では微塵もありません(内部で取り上げられることもないので、折角の機会を活用し、これまで思ってきたことを書いてみました、というのが実情ですので、関心のある方は、後ほどチラ見いただければ十分です)。

【添付資料】
1 日本弁護士政治連盟や弁政連岩手支部の「きほんのき」と実情・課題の考察
2 弁護士(ないし弁政連)と市町村議会議員の交流等のあり方に関する一考察
3 内舘市長の公約等に関するノンポリ無党派弁護士からの一考察(雑駁なもの)
4 当事務所ブログ集(今回に関わりのあるもの)
①上川あや氏(世田谷区議)の著作書評、②前回市長選の投票日直前に掲載した論考

(以下、次号)

 

岩手弁護士会・会員名簿のビックリ情報とデタラメ翻訳の世界

良い子のみんなのお待ちかね、本日の岩手弁護士会びっくり情報だよ~

本日たまたま会員名簿を閲覧しようと弁護士会サイトを検索したところ、なぜか「中国語(繁体字)のページを翻訳しますか?」と表示されました。

ターゲット言語が日本語と表示されており、日本語を日本語にでも翻訳するのかと思って?何も考えずに翻訳ボタンを押したところ・・

当事務所が「北オーストリア法律事務所 内 浩峰 義和」と表示されてました!

その上の東海林先生の事務所メンバーも、大変なことになってるし・・

これらはまだマシな方で、登録順ナンバー2の大重鎮・安達孝一先生は、

「チャブ法 安田 浩一」

チャブ法って何だよ・・あんまりだ・・

その他、当事者が見たら吹き出しそうなメチャクチャ表記が多数出てきて、大笑いまくりで老化克服にもバッチリという感じです。

左脇の自治体名の表示も「北リスティング市」など味わい深いものだらけです。

というわけで、ぜひ、皆さんも岩手弁護士会名簿にGO!

ともあれ、幾つかの写真を載せておきますので、ご参考まで。

なお、本日は弁護士会の相談担当日であり、事務局には報告済みです。

あと、翻訳しますかボタンを無視すれば通常どおり閲覧できますので、念のため。

以上、岩手弁護士会非公認組織・地下広報部からのお知らせでした。

追記。「ターゲット言語を日本語」というのは、よくよく考えると、文字のうち中国語(繁体字)にあたると判断したものを勝手にソレの日本語にあたる言葉に置き換える、という意味なのでしょうね・・ともあれ、昔の海外旅行あるあるの「メチャクチャ日本語案内文」の世界を堪能できました。

    

 R05.10.20 追記

発見時、まさかヒマな中国人ハッカーの攻撃か?と勘違い?したこともあり、念のため、昨日中に弁護士会事務局にお伝えしたところ、先ほど、「業者に連絡して速やかに改善させる」とのご連絡をいただきました。

反面、後になって、既にご存知で密かに楽しんでいた(ので、小保内、余計なことしやがってと怒っている)先生も多数おられるのではと怖くなり、お詫びを兼ねて?また、未見の方々は、今のうちにご覧の上、日頃のストレスを解消していただきたく、先ほど弁護士会MLでもお知らせしました。

サイト修正後(閲覧不能後)に本投稿に気づいて「ああ、見たかった・・」という方は、当職ブログ記事でご満足いただければと思いますが、せっかくなので盛岡と一関(いちかん市)ほか、現時点で翻訳表示されたものだけPDF保存しており(花北は事務所PCでは何度押しても表示されませんでした)、欲しい方はご遠慮なくどうぞ。

現状では少額しか認容されない長期困難訴訟(セクハラその他)に関する抜本的改善策(弁護士費用保険、短期審判+費用負担命令など)について

プロスポーツ選手(ガールズ競輪)の養成指導者がセクハラ行為をしたとの理由で提訴された訴訟で、450万円の請求に対し、指導者による一定のモラハラ行為が認定され賠償が命じられたものの、認容額が11万円であったとの報道を拝見しました(無料公開された限度でのみ)。

記事の事案そのもの(認容額や認定事実の当否)については具体的なことを何も存じませんので意見を述べる考えはありません。

が、事案から離れた一般論として述べると、11万円の認容額のために膨大な苦労と精神的負担を余儀なくされる訴訟を起こしたいと思う人はいませんし、弁護士も通常は受任できません。

この事件の審理状況などは存じませんが、熾烈な主張立証の応酬と複数の尋問を含むフルコース訴訟なら、弁護士費用保険(日弁連LAC)のタイムチャージ換算で50万円でも大赤字、100万円でトントンになるかどうかというレベルだと思います(当事務所の経費換算では)。

そして、裁判所が現在決めているこの認容額。これらの事情は、この種の相談を受ける都度、すべて私が相談者に説明している事柄であり、そのせいか、私はこの種の相談は時折受けているものの、訴訟を受任したことは一度もありません。

この訴訟の原告代理人がどれだけの費用をいただいているかは存じませんが、ご本人等が富裕層で認容額に関係なくタイムチャージどおり支払ってくれるなどという有り難いお話でなければ、恐らく(私も法テラス系など少なからぬ事件で経験しているように)限られた費用で大赤字に耐えて尽力されたものと思われます(事務所経費の負担があまりない低コスト弁護士さんもいますので、一概に言えないことですが)。

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もちろん、コミュニケーションのトラブルは、往々にして「どっちもどっち(お互いさま)」の要素が絡んでいることが珍しくなく、認容額が少額となっているのも、裁判所がそうした認識に立っていることの表れで、そのこと自体は多少やむを得ない面があると思います。

ただ、「自分は強い辱めを受けた、このままでは終われない、相手に一矢報いたい」という気持ちを抱えて生きることを余儀なくされた人達にとっては、こうした形で「今の社会では諦めるしかないんですよ」と扱われてしまうと、社会に希望を失い、やがて様々な形で社会に復讐することもあるのかもしれません。

そうしたリスクを抱えて人々の不満を抑圧する現在の社会を続けるか、敢えて不満と向き合い決着の場を支援する社会に切り替えるか、我々の選択が求められていると言えます。

結論として、軽微又は本人の非が大きい無理筋事案はさておき、現在の社会通念に照らして看過すべきでない、法廷に持ち込むべき価値のある事案については、弁護士費用保険などを強化して、本人の負担を大幅に軽減する形で真っ当な価格で弁護士に依頼できる仕組みを作るべきだと思います。

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例えば、モラハラ問題に限らず、解雇などを含む業務上のトラブルに関する紛争を対象とする弁護士費用保険を作り、保険料は所得に応じて年間数百円+α程度を源泉徴収しつつ、企業や自治体などが補助を出したり特約で保険料を上乗せすれば、タイムチャージの限度額を超えた対応も得られる(自己負担がなくて済む)、といった制度があれば、依頼する弁護士の費用負担は劇的に解消されるでしょう。

被保険者を同居家族とすれば、学校でのトラブルなども対象にできるかもしれませんし、自治体の援助内容次第で、住民獲得競争などにも影響するのかもしれません。

ただ、モラハラ申告などは交通事故と比べて無理筋相談が頻発せざるを得ないので、保険適用の可否を判断する事前審査が必要であり、その点も含めて保険会社や弁護士業界との協議が必要になると思います。現実には、事前審査で却下される例が多数生じるでしょうから、そこが事実上の第1審になるのかもしれませんが。

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また、弁護士費用以前の問題として、「もともと少額しか認容されない訴訟に膨大な手間や高額な経費が必要となること自体が間違っている=早期・簡易の紛争解決を可能とする仕組みを整備すべきでは、という点があります。

この点は、冒頭で述べた「フルコース訴訟」という展開になる前に、例えば、現在の労働審判のように、早ければ第1回又は第2回期日で裁判官が暫定的な心証を示して和解勧告し、なるべくその内容で和解を成立させる(尋問用陳述書や尋問など膨大な作業を当事者に強いるのを避ける)ことができれば、日弁連LACの基準(タイムチャージ30時間)の範囲内で大半の訴訟を決着できるはずです。

あくまで和解勧告ですので、形式的には双方に拒否権を与えますが、裁判所は拒否した当事者に対し、その後の判決等までの審理のために拒否された側が要した弁護士費用の実額(タイムチャージ制を前提とすれば、膨大な額になります)の全部又は大半を負担させる制度を作れば、事実上、勧告拒否に対する極めて強力な抑止力になり、大半の事件が和解勧告で終了することになります。

この種の訴訟は、被害者(請求)側だけでなく加害者(被請求)側も相応の事情があれば(不当・過大請求とか過失と評価できるなど)、弁護士費用保険が利用できるようにすべきだと思いますが、双方とも現行LACの30時間制で運用すべきで、かつ、勧告を拒否した場合は原則として以後の保険利用を不可とすれば、加害者(被請求)側の不当拒否への抑止だけでなく、被害者(請求)側の過大請求への抑止力としても十分に機能するはずです。

もちろん、相手方(敗訴者)負担に慎重な対応をとるべき事案もあるかとは思いますが、大半の事案では適切な運用が図られ、少額事件で膨大な時間と労力を当事者が強いられる(受任弁護士も大赤字を余儀なくされる)ことが大幅に減ると思われます。

その上で、裁判所や行政などが認定基準や慰謝料その他のガイドラインなどを作成・公表すれば、現在の小規模交通事故の大半のように、短期・簡明な解決が大きく促進されると思います。

十数年前、弁護士費用の敗訴者負担制度に関する議論が盛り上がった際には、環境系訴訟など「大企業相手に困難な訴訟に挑む、勝てないが社会的に意義のある訴訟」に従事する方々の猛烈な反対で頓挫したと認識しています。

が、そのような特殊事案には適用しないとの前提で「普通の少額事案を早期・簡明に終わらせるため(勧告拒否へのペナルティ=受諾のインセンティブ)としての「勧告拒否者の弁護士費用負担制度」を考えて良いのではと思っています。

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なお、「そもそも11万円では被害者が報われない」との点については、日本の裁判所が言葉の暴力への対処に冷淡な態度を続けてきたことが根底にあり、非常に根深く難しい問題です。

何より、裁判官は物理的暴力はしませんが(だからこそ、物理的暴力=事故のケガ等には高い慰謝料を命じる)、真綿でジワジワと首を締めるような言葉の暴力は大好きですので(弁護士や検察官も)、言葉の暴力にカネを払えというのは裁判官(法律家)の自己否定につながりかねず、容易に解決できることではありません。

(皆、膨大な勉強を続けて激しい知的対決を要する高ストレスの厳しい世界で生きている方々ですので、知的怠惰を感じた相手に厳しい態度を示すのは職業病としてやむを得ない面はあります。法律家に限らず医師など高学歴系職業に共通の性癖でしょうが)

結局のところ、人間の尊厳とは何か、総論と各論の議論をそれぞれ深めた上で、最終的には法律や各種GLなどで慰謝料増額要素の基準を明確化して裁判所に働きかけていくほかないのかもしれませんし、それは政治=国民に求められる役割だとも言うべきでしょう。

本当は、弁政連岩手支部などでも、地元の県議さんや市議さん達などと、こうした議論(ひいては議会決議などに繋げる)ができればよいのですが、万年窓際会員の身には、雑談や宴会の段取りばかりの光景を黙って拝聴する程度のことしかできず、非力さを嘆くばかりです。

・・・あっ、これも「言葉の暴力」ですかね・・かくて人類は不毛なりき。

 

顧問先とのやりとりと弁護士の不養生

先般、ある顧問先から破産管財手続中の不動産の購入に関する問い合わせ受けて、実務の一般的な見通しなどを説明しました。

当方は顧問契約を月額3300円からお引き受けしており、年2時間は電話・メールを含む相談に無料対応(超過時間は追加料金ですが柔軟な運用となっています)としていますので、

富裕層や大企業のような高額な顧問契約なんか出来ないけれど、年に1回~数回は弁護士に聞きたいこと・聞くべきことが生じる

という方には利用価値があると思いますが、他の同業の方々に比べるとさほど多くの申込を頂戴したわけでもなく、目立つ広告でも出した方が良いのかなぁと思いつつ何もできていない状態が延々続いています。

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で、宣伝はこの辺にして、ここからが毎度の本題?です。

上記の有様ですので、何年もお世話になっている昼飯割引帳(昨年12月から本年3月末までの版)を、今年の4月1日に開いたところ

最終頁のグルメスタンプラリーの投函締切日が、前日(3月末)だった!

ということに気づきました。ちなみに、2月末までにはハンコを全部揃えて、郵送だけ忘れてました。

これぞ、ホントのエイプリルフール(4月1日のバカ)。

で、次号では同じ過ちは犯さないぞと固く決意し、4月の最新版も6月頃にはハンコを全部揃えていました。

が、昨日、パスポ終了。

で、昨日、今回のグルメスタンプラリーの投函締切日・・

というわけで、たった今気づいた我が身に捧げる一首。

俺バカと自分で言うバカ言わんバカ
二度あることは三度ありなむ

というわけで、ご祝儀・・ではなく慰めの顧問申込募集中!

なんて書いていると既存の顧問先の皆様にまで逃げられそうなので、止めておきましょうね・・・

ともあれ、一仕事終えたあとの戯言はほどほどに、普段は仕事に邁進しておりますので、ご容赦のほどを。

あと、本業では期限徒過(一発懲戒)したことはありませんので、念のため。

新人時代に、やらかした大センセイの尻拭い(後始末)を担当し大変な目に遭ったことはありますが・・

岩手弁護士会・公害対策環境保全委員会の活動とお願い

私は標記の委員会の委員長を拝命していますが、諸事情で首が廻らず、他の委員も本業で環境問題を本格的に手がける「専門家」の方がいないこともあり、委員会としては、事実上の休眠状態が延々と続いています。

先日、弁護士会の他の委員会から自治体向けの業務提携の広告文案と意見照会が来ましたが、照会の対象文書(チラシ)には、当委員会の取扱分野である、公害対策及び環境保全に関する自治体支援の活動に関する記載が全くなかったので、昼行灯委員会だからそのような扱いを受けるのだろうと残念に思いつつも、次のような内容を加筆いただきたいと要請しました。

【公害対策・環境保全】法律相談業務受託、弁護士推薦、講師派遣など

自治体内で生じた各種の公害・環境問題について、自治体・住民・地元企業など様々な立場で法律相談に対応するほか、法律問題に関する勉強会の講師派遣、各種協議会や第三者委員会などの委員を推薦します。

典型七公害(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭)に限らず、自然保護・廃棄物・エネルギー(太陽光・風力など)・景観・化学物質等に関する被害などのほか、動物愛護・動物福祉に関する問題(虐待、殺処分、多頭崩壊など)も対象とします。

まあ、当然ながら、その書面を送ったところで直ちにどこかの自治体から当委員会に申出がくるとは言えないでしょうし(それどころか、申入自体、捨て置かれる可能性も十分あるのでしょう)、本気で「自治体連携」をする気があるなら、当委員会として、県庁や県内各自治体或いは各種団体に、独自に書面を作成して送付する程度のことをしなければとは思っています。

他の委員会の取扱は存じませんが、例えば、「講師派遣」の報酬を委員会予算から支出できるのなら、先方の費用負担無しでも対応できるので、勉強会等を希望する自治体などはどうぞ、と言いやすくなるとは思います。

というわけで、他人をアテにすることなく委員会の活性化のために自分から率先して動かねばとは思っているので、そろそろ行動に移すことができればと思います。

この投稿をご覧になった方で、当委員会の支援等を希望される方がおられれば、当方までお声がけいただければ幸いです。

北上から呼ぶ声

半年ほど前の話になりますが、ホテルエース盛岡の昼食ビュッフェを調べていた際にホテルのサイトを見たところ、公式ブログ「盛岡放浪記」のトップ写真が盛岡ではなく北上市の風景になっているのに気づきました。
https://www.hotel-ace.co.jp/blog/?p=6987

盛岡のホテルなのにナゼ?と不思議に思った矢先に、北上の会社さんからご相談の問い合わせがあり、新規の顧問契約の申込みまで頂戴しました。

お話しによれば、以前から当事務所のサイトをご欄になって、いつかは顧問を頼みたいと思っていたところ、弁護士に相談したい出来事があり、それをきっかけに依頼されたと伺ったので、大変有り難くお引き受けしました。

当事務所では、主として県内の小規模な企業さん向けに月額3300円の顧問契約を定めており、私自身が「高額な顧問料を支払う有力企業から次々お声が掛かる大物弁護士」にほど遠いこともあって、当方の顧問先の大半も、このコース(A型)をご利用いただいています。

(っていうか、それ以外の顧問先はほとんどありません。幸い、ゼロではありませんが・・)

上記の契約(A型)では、タイムチャージ(採算単価)に準じて年間2時間を無料対応時間と定めていますが、瞬発力で済ませる電話はともかく、メール相談にあれこれ調べたり考えたり入力していれば、あっという間に所定時間になるため、多少のオーバーは気にせず、というスタンスで行っています。

さすがに、以前にA型でお引き受けしていた某自治体さんは、近年にご利用時間が激増し大赤字になったので、若干の追加料金+次年度の微増をお願いしましたが・・

顧問契約(をどれだけ増やせるか)は人気投票や男女交際に類する面があり、万年窓際族でボッチ系の私には、あまり向かない世界だと感じることはあります。

ただ、時には、今回の会社さんのように「貴方だからこそ頼みたい」と仰っていただける方との出逢いに恵まれることもありますので、腐らずに頑張っていきたいと思います。

そんな出来事があったこともあり、その後に伺ったエース盛岡の昼食ビュッフェは、大変美味しくいただきました。

現在、昼食ビュッフェは休業中とのことですが、いずれまた、お伺いしたいものです。