北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

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業務実績など

平成28年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成28年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

争点としては、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案が多く、過去には死亡事故や重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案など、幅広い類型を取り扱っています。

事故直後など加害者側の示談案提示前の時期から受任し後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、実務では非常に多い「レントゲン等による所見が確認されない神経障害に関する後遺障害(14級9号)の成否」などについて、幾つかの例を通じ知見を深めることができた1年だったと思います。

また、本年は学校で生じた生徒間の事故に伴う賠償請求訴訟(後遺障害の評価が主な争点となったもの)、若年者間のスポーツ事故に関する賠償責任や関係者間の求償(加害者側と施設管理者の責任割合など)につき検討を要した事案など、加害者(損保)側の立場での検討を含め交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

他にも、福島第一原発の事故に基づく東京電力に対する賠償請求(県内企業が受けた被害の賠償を求めるもの)を手掛けており、特殊な事情から長期化したものの、先般、原子力紛争解決センター(ADRの手続)で相当な解決案が示されて無事に終了できました。

現在のところ弁護士費用特約は保険料も低廉でご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

個人間の貸金に関する紛争(授受の当事者双方が死去して貸主相続人が借主相続人に返済を求めたものの、相続人は双方が貸金に関与しておらず、領収書などの直接証拠が乏しく立証に課題のあった事件)、不動産の登記(古い登記の抹消など)に関する訴訟、労働審判(労働者側)など、多くの事件を手がけています。

不動産の賃貸借の紛争では、契約終了に伴う貸主からの借主への目的物返還や賃料などの請求を貸主代理人として扱った案件が幾つかありますが、中には、「貸主の相続人が借主に明渡等を求めたところ、借主が、被相続人から目的物を(廉価で)譲り受けたと主張し、被相続人と借主との間で売買契約が締結されたかどうかが争点となった例」もありました。

「被相続人(ご両親など)と相手方との間で何らかの問題が潜在し、相続の際にそれが噴出して相続人が法的対応を余儀なくされ、被相続人の真意や生前の協議内容などを巡る事実の立証などが問題となる事案」は、昔から非常に多くあります。ご高齢のご両親などが多くの権利関係を有するのでしたら、ご親族内部に相続紛争などの問題がなくとも、対外的に問題が生じる可能性があることも踏まえて、ご両親から事情を確認していただくなど適切な対応・ご準備を考えていただければと思います。

また、多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件など生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じており、大半の方が震災無料相談制度を通じて費用負担なくご相談いただいています。

(以下、次号)

平成28年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、1月か2月頃に業務実績を顧問先にお送りして、その後にブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

平成28年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。

全般的には、①②は件数も多く論点も様々で、③④⑤は件数こそ多くないものの作業量や問題となる点が多い大型案件の解決に力を注いだ1年になりました。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

①旧所有者による廃棄物の不法投棄に伴う撤去費用を請求した事件

A氏が建物の建築目的で岩手県内の某土地を不動産業者Bから購入しC社に建築工事を発注したものの、着工後まもなく土地の地下にコンクリートガラや廃材などの廃棄物が埋設されているのが発覚したのでC社が調査したところ、10年以上前に同土地でD社がコンクリート製の建物を建築して営業しており建物解体の際に不法投棄された疑いが濃厚だとして、D社の責任を求めたいという相談を、C社(A氏から相談を受けて被害解決の窓口役を担当)から受けたという事件があります。

直接の被害者はA氏ですが、瑕疵担保責任などの事情からA氏に土地を売却したB社にも被害が生じ、最終的にC社にも様々な損失が生じるおそれがあった事案で、実質的にはB・C社vsD社側の様相を呈しました。

様々な検討の結果、D社側に賠償責任を問うべき案件として請求したところ、D社は「残置物は自分達の建物の解体物ではなく埋設もしていない」などと全面的に争ってきたため、D社側を相手に賠償請求しました。

D社側が全面対決の姿勢を示し「埋設された物はどこから来たのか、どうしてその土地の地下にあるのか、個別の埋設物とD社建物との結びつきはどうか」などの様々な問題について広範な主張立証を余儀なくされたほか、撤去費用の相当性なども争点になり、2年以上を経てようやく裁判所から和解勧告が出て、完全な満足ではないものの埋設物がD社建物から生じたものであるとの前提でD社側が相当の費用(解決金)を支払うという当方の主張を十分に酌んだ内容の勧告をいただき、協議がまとまりました。

膨大な労力を投入せざるを得ず、消耗の大きい事件でもありましたが、不法投棄問題に関しては日弁連の活動を通じ廃棄物処理法のルールを多少は存じており、その知見を活かすこともできたので、その点は何よりでした。

②業務委託契約で途中で問題が発覚し頓挫した後、報酬や損害の負担が争われた例

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として対応し、当方の請求を認める判決をいただき無事に回収して終了したものがあります。

受注した事業に関する行政手続上の不備(Aが事業のため用意した設備に関するもの)で事業が途中で頓挫したため、Bは「契約時のAの説明に問題があった」と主張して支払義務を争い、Aに賠償請求しましたが、契約の締結から事業の破綻までにいたる事実経過を丹念に説明し、双方の尋問結果も踏まえ、Aの対応に特段の問題はなかったとして、Bの主張が退けられました。

ただ、A側も事業の準備のため多額の経費を投じたものの経費を賄うだけの売上を得られたわけではなく、両社痛み分けに終わった面もないわけではありません(A側にも見通しの甘さなどの反省点はあったと思います)。

この件のように受発注の対象となった事業の継続性に何らかのリスクが内在する場合は、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じることが非常に多くあります。

事前にリスクを予め検討して明確化すると共に、そのリスクが現実化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかを予め契約書などで明示しておくことで、裁判等による紛争の長期化、高負担化を避けることができます。

契約前にそれらのリスクや不安を具体的に弁護士に説明いただければ、それに見合った文言などを整備し紛争に備えると共に、問題が生じる可能性や生じた場合の帰結を互いに意識しておくことで、リスク発生を防ぐよう互いに努力する契機とすることもできますので、事業者の方々におかれては、「ご自身が従事する事業に内在するリスクの確認と対処(弁護士への相談を含め)のあり方」を強く留意いたきたいところです。

③その他の紛争としては、「Bビルに入居していたA社が短期間でCビルに転居した際に、Bビルの入居時に差し入れた敷金の返還(破損部分の修繕を除いた残金)を求めたところ、AB間の契約書に壁紙やカーペットなども全面的に取り替える趣旨の特約(通常損耗負担特約)が含まれていたため、Bがそれらの交換費用等を理由に敷金全部の返還を拒否し、Aが納得できないとして返還請求した訴訟」をA代理人として対応しています。

事業者間の紛争であるため消費者契約法が適用されないものの、敷金に関し過去に積み上げられた議論や最高裁判決の趣旨などを踏まえ、本件では通常損耗を借主に負担させる合意は成立していないと主張し、それを前提とした勝訴的な和解勧告をいただき解決しています。

他に、中小企業庁が行う「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の不当対応についてご相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は、「総債務額が極端に大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方(生活保護の方を含め)」からの依頼が増えており、社会で広く言われている格差や貧困の問題を実感させるものとなっています。

企業倒産(破産申立)に関しては、約10年前に民事再生の手続の依頼を受けていた会社さんが様々な事情から法律上の問題が顕在化し、それらの整理・解決のため本年になって自己破産の申立を余儀なくされたという事案があります。

企業に関する破産管財業務では、平成27年に管財人に就任した製造業を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復作業などの事務処理や法的手続が必要となり、本年に受任した建設関係の会社についても多数の不動産の任意売却や賃借関係の処理、労働債権の対応など様々な法的対応に負われました。

また、金融機関に巨額の債務がある一方で、それ以外にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受けて、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せずに債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現すべく、現在も交渉している案件があります。

他に、個人の方の破産管財人を受任した事案で、破産手続前に親族への無償譲渡行為があり、否認権を行使すると共に、債権者への配当原資の確保のため様々な工夫を行ったケースなどがあります。

(以下、次号)

平成27年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成27年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。芸能人の報道で話題になったように、当事者のデジタルの会話記録を入手、整理して不貞の事実を詳細に立証して高額な賠償金が認められた例もあります。

概ね、半年から1年程度の審理を経て和解する例が通常ですが、中には、子の引渡しや親権をはじめ不貞行為などを含め夫婦間に厳しい利害対立があり、2年以上に亘り様々な訴訟手続を行い争いを繰り広げた末に和解が成立し終了したという案件もあります。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻し母との接触を拒否したため、母の代理人として子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの、その逆に、別居した母が子と同居する父に子の引渡請求を行い、父側で受任したもの)も何件か受任しており、昨年に従事した事案では、当方依頼主の主張が認められています。

子を巡る紛争は、面会交流を含め近時は著しく増加しており、裁判所は子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所から、後見人のほか、保佐人・補助人として選任される例が増えています。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

相続分野では、自筆遺言証書に基づく財産相続を受けた方から、その内容を遵守しない他の相続人にやむなく訴訟提起し、遺言の内容(効力)が争われたものの、無事に当方の主張が認められた事案や、きょうだい間で不和が生じ当事者間で対話が難しい状況にある方のご依頼で遺産分割を行った例などがあります。

また、身寄り(配偶者や子、両親、近しいきょうだい)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、多数の親族関係者の意向調査や利害調整を伴う遺産分割や預金払戻などを手掛ける機会もありました。

昨年も、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、裁判所の要請で相続財産管理人に就任し権利関係の処理を行う事案が幾つかあったほか、関係者のご依頼で、特別縁故者に対する財産分与の申立を行った例もあります。

今後、身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案は増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

この点に関し、1月に明治安田生命(盛岡支社)さんのご依頼で相続や遺言に関するセミナーを行う機会がありました(現在も第2弾の真っ最中です)。相続に限らずセミナー講師等のご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘り区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、整理事業の実施に伴う建物等の撤去により自治体が提示した損失補償額に不服があるとして、県庁(収用委員会)による損失補償額に関する裁決手続を行った例があります、

また、先般、岩手県庁の依頼で、ある行政訴訟(県の行政処分を受けた方が不服があるとして取消請求している事件)を県の代理人として受任した事案があります。

他にも、特殊な事例で国に対する国家賠償請求訴訟を手掛ける機会もありました。

刑事弁護については、新人弁護士の増加により受任件数は減少傾向にありますが、被疑者段階を含め、窃盗や傷害など主要な犯罪類型に関し幾つかの国選事件を手掛けています。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています(当職は大船渡の法テラス気仙などを担当しています)。

平成27年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成27年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案のほか、過去には死亡事故や重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案も含め、幅広く取り扱っています。

また、学校で生じた生徒間の事故に伴う賠償事件など交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

他にも、福島第一原発の事故に基づく東京電力に対する賠償請求(県内の企業が受けた被害の賠償を求めるもの)を手掛ける機会あり、先般、原子力紛争解決センターに対するADRの申立を行っています。

現在のところ弁護士費用特約は保険料も低廉でご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

不動産の賃貸借(契約終了時の貸主の目的物返還請求、借主の保証金返還請求など)や金銭貸借に関する紛争、不動産の登記に関する訴訟に関する紛争などを取り扱う機会がありました。

また、後述の震災無料相談制度を通じ多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害近隣トラブル労働事件など日常的に生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じています。

本格訴訟としては、自宅建築目的で購入した土地で過去の所有者による不法投棄が判明し、証拠上、投棄への関与や監督責任があると認められる企業に賠償請求した事案を取り扱っています。相手企業側が強く争うことから投棄行為の立証のため様々な資料の提出を余儀なくされており、2年以上も続く難事件となっています。

その他にも、貸主側(貸主の相続人)の代理人として借主の賃料不払を理由に賃借物件の明渡請求をしたところ、借主側から、被相続人との間でその物件を購入する合意をしたとの反論があり、当否(売買契約の成否)が争われた事案(1審勝訴で相手方が控訴中)、数十年前に売買がなされた土地で、法務局に備え付けられている公図の表示などに問題があり、現在の登記などの状況では売却が困難であるため、当時の土地の使用状況や名義人の相続状況などを詳細に調査して取得時効による解決(移転登記請求)を図った事案(1審勝訴で完了)などを取り扱っています。

他にも、対人トラブルに起因する名誉毀損絡みの訴訟に関するご依頼もありました。

(以下、次号)

平成27年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。1月には昨年(平成27年)の業務実績を顧問先にお送りしていますが、遅まきながらブログでも掲載することにしました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し3回に分けて掲載します。

(1) 全体的な傾向など

平成27年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の事業や内部事務に関する紛争の3分野が業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として受任しています。受注した事業に関する行政手続上の不備で事業が頓挫しており、AB双方とも「契約時の相手方の説明に問題があった」と主張して賠償請求したという事件で、現在も訴訟が続いています。

このように、受発注の対象となった事業に何らかのリスクが内在する場合には、そのリスクが顕在化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかという点を予め契約書などで明示しておかないと、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じる可能性が高くなりますので、リスクを予め確認し責任の所在を明確化すること(弁護士の活用も含め)にご留意下さい。

内部紛争の例としては、ある協同組合の内部で問題を起こした組合員に対し組合が除名処分をしたところ、組合員が処分の無効を求めた訴訟について、組合側代理人として担当し当方(組合)の主張が全面的に認められて勝訴・確定したという例があります。

また、ある財産がA法人とB法人のどちらに属するかなどを中心に様々な法律上の争点が生じて複数の訴訟が係属している事件、転職した従業員が元の勤務先の顧客情報を転職後の営業活動に使用したとして賠償請求された事件などを手掛けています。

昨年も、中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっており、「高利業者との取引に基づく過払金請求」も法改正等の影響でほとんど無くなりました。

企業倒産に関しては、数年前は倒産分野の多数を占めた建設業界に代わって、IT関連のサービスを展開する企業高齢者向けの弁当配達事業を行う企業の方から破産申立のご依頼があったほか、「燃料等に用いる木製ペレット等の製造・販売を営む会社」の破産管財人に選任され、企業施設の譲渡や債権回収など様々な論点・事務の対応に従事しています。

近年、「金融機関以外には負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)向けに、一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い額を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)」が導入されており、これによる解決が可能か模索するご相談を受けたこともあります。

個人の債務整理については、昨年同様に過払金請求のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くなく生活保護やそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からの自己破産のご依頼が幾つか見られます。中堅所得者の方からの個人再生のご依頼(住宅ローンを維持して他の負債を減縮することを含む)も幾つか見られます。

破産管財人を担当した方では、親族の保証人となった関係で破産を余儀なくされ、所有不動産の処理(売却。関係者の支援を含む)などの問題が生じたケースや、小規模な個人商店を営んでいた方が親御さんの代から長年続いていた高額な負債や事業不振などの問題を解決するに至らず倒産のやむなきに至ったという事案などを担当しています。

(以下、次号)

平成26年の業務実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成26年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を簡単ながらまとめました。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

相続分野では、死亡危急者遺言」(危篤時に第三者(証人)が作成し、後日に裁判所の確認を受ける制度)が作成され、被相続人の友人に多額の財産が遺贈されたという事案で、ご遺族から、遺言者の意思に反するとのご相談を受け、昨年から遺言無効等を求めていた訴訟について、当方の主張を認める旨の和解勧告があり、勝訴的和解が成立して終了したという例があります。

この件では遺言者(被相続人)の方に認知症がなく、遺言無効の主張が認められない可能性も否定できない事案でした(依頼者の方によれば、以前に他の弁護士に相談して勝訴は困難と断られたのだそうです)。

当職も、立証に課題があるとは感じつつ、事案固有の様々な事情から、遺言無効が認められるべきだと考えて、依頼主と共に膨大な作業時間を投入して様々な主張立証を展開したところ、全面勝訴に匹敵すると言ってよい、満足いく成果が得ることができました。

昨年は、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、利害関係者のご依頼で相続財産管理人の申立を行ったり、私自身が管理人に就任して権利関係の処理を行うという事案が幾つかありました。

以前に「無縁社会」などと呼ばれ、現在もその状態が解消されていない中、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ないケースは増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので、ご留意いただければと思います。

また、遺言に関し、自筆遺言証書の文言などに問題があり、あるべき対処(遺言の解釈など)についてご相談を受けたことが複数あり、中には、相続人間で訴訟を行っている例もあります。

お一人で遺言を作成するのは、内容が明確(財産全部を特定の相続人一人に相続させるようなもの)であればまだしも、解釈による紛争のリスクが否定できませんので、公正証書遺言に依っていただくか、どうしても自筆を希望される場合には、文言の当否についてご相談いただくなどの対処をご検討いただきたいと考えます。

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)についても、法テラスの無料相談制度(震災当時、岩手県などに在住の方は、資力などに関係なく一律ご利用できるもの)などを通じて多数のご相談を受けており、訴訟や家裁の調停等を受任した例も少なくありません。

昨年は、夫婦間の子の引渡を巡る紛争(母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻した挙げ句、母との接触を拒否したため、母が父に対し、子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの)を受任しており、逆の立場で受任した事件もあります。

子を巡る紛争は、面会交流を含めて、近時は著しく増加しており、裁判所は、子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所の委託で後見人に選任されている例が複数あります。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘って区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、区画整理の一環として自治体が行った行政処分に対する取消請求訴訟や執行停止申立を行った例があります。

刑事弁護については、幾つかの国選事件のほか、若干の私選弁護(相当期間内で終了しタイムチャージ形式で清算するもの)が幾つかありました。詳細は伏せますが、ある団体について業務上横領罪で起訴された方が嫌疑を否認し、有罪の当否が激しく争われた事件を担当した例もあります。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として、弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています。大船渡の法テラス気仙に月1回の頻度で通っているほか、原発事故に起因する賠償問題なども扱いますので、必要に応じお問い合わせ下さい。

平成26年の業務実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成26年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を簡単ながらまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

取扱う事例も、物損のみで過失割合(事故態様を巡る事実関係)が争点となる事案から死亡事故や高位の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が論点となっている例まで、幅広く取り扱っています。

今も激しい医学論争が続いている「低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)」の発症の有無などが争点となった事例を取り扱う機会もありました。その件は、本年3月まで在籍した辻弁護士が、依頼主(被害者)の主治医から詳細に事情を伺うなどして詳細な主張立証を行いました。

残念ながら、当該論点のハードルの高さ(主要な裁判所で大半は退けられています)もあり、和解協議段階で裁判所から難色を示されたものの、単なる頚椎捻挫事案とは異なるとの判断を前提に、一定の加算を受けることができましたので、そうした形で立証努力が考慮されました。

現在のところ、弁護士費用特約は保険料も低廉で、ご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

賃貸借(主として貸主側)、不動産売買学校生活(生徒側)に関する紛争などを取り扱う機会がありました。消費者側代理人として勧誘業者からの接触等の拒否を申し入れるなど、紛争に至る以前の対処についてご相談を受けることもあります。また、後述(次回)の震災無料相談制度を通じ、多数の方々にご来所いただき、日常的に生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じています。

本格訴訟としては、自宅建築目的で購入した土地で過去の所有者による不法投棄が判明し、証拠上、投棄の実行者又は責任者と思われる企業に賠償請求した事案を取り扱っており、相手企業側が強く争っているため、依頼主とも協力しながら投棄行為の立証のため様々な資料を提出すると共に、廃棄物処理法の知見なども生かして徹底的に闘っています(現在も訴訟が続いています)。

(以下、次号)

平成26年の業務実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から、毎年1回、前年度の業務実績の概要をブログで公表しています。昨年(平成26年)の業務実績は、顧問先には1月頃にお送りしたのですが、多忙等を言い訳に、ブログに掲載するのが遅れてしまいました。

長文ということもあり、今回は、3回に分けて掲載します。分類については、当事務所HPの「取扱業務」に基づいています。

(1) 全体的な傾向など

平成26年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の商取引や内部事務に関する紛争の3点が、受任業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

反面、本年も債務整理・倒産等の業務は、全国的な傾向と同様、数年前と比べて大幅に減少しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

食品製造委託取引を受注した企業Xが、発注者だと認識するY1社に代金請求したところ、Y1が「発注者はY1ではなく(XにY1社を紹介後、事業停止となった)Y2社だ」と主張してきたため、Y1が発注者(債務者)だと主張して支払を求めた事件で、無事に当方の主張が認められ、Y1から支払を受けたという例がありました。

複数の企業が発注側に介在する場合には、「誰が代金債務を負担するか(誰が発注者か)を巡る争い(支払責任をなすりつけ合う紛争)」は頻繁に生じますので、そのような取引に関与される際は、責任の所在を明らかにさせるよう、強くご留意いただきたいところです。

また、経営者が交替した法人で新経営陣が旧経営者に不正行為があると主張して訴えた事件で、旧経営者の依頼で役員欄に押印(名義貸し)した法人とは無関係の方が巻き添え的に提訴され、ご依頼を受けた事件があり、事実経過や相手方の主張の問題点を詳細に主張したところ、相手方(原告)が当方に責任がないことを認めて和解で終了したという事件もありました。

当方の主張が認められたとはいえ、名義貸しは多くのリスクを伴いますので、名義貸しの要請を受けた場合には、極力、拒否いただき、一定の形が不可避といことであれば、後難を避けるための適切な措置を講ずるなど(弁護士に相談いただくべきでしょう)、ご留意願います。

その他、特殊な工事の代金請求に関する紛争(当方は受注者側。相手方が、当方の責任で工事が頓挫したと主張し支払拒否しているため、責任の所在が争われているもの)、採用後ほどなく退職した元従業員の方が申し立てた労働審判(企業側代理人として担当)、協同組合の内部で問題を起こした組合員の処分の当否を巡る訴訟(組合側代理人として担当)などを手掛けています。

中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき、小規模な下請業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっていますが、企業倒産に関しては、かつて多数を占めた建設業界に代わって、福祉やITなど広義のサービス業に携わる企業の方からご依頼がありました。

個人の債務整理については、昨年同様、「完済後の過払金請求」のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くはないものの、生活保護ないしそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からのご依頼が増加傾向にあります。

破産管財人を担当した方で、多数の農地等を有するものの市場性が乏しく売却に困難を来したり(様々な手法をとることで、一定の農地を売却できたこともあります)、保険契約などで名義貸し(実際の保険料を親族が支払っている事案)が関係する例(原則として名義人の財産として換価対象となりますので、ご家族の名義でご自身が保険料を支払って契約をなさっている方はご留意下さい)などがありました。

管財手続が終了した後の会社の権利関係の処理(放棄された不動産の売買など)に従事することも何度かありました。

(以下、次号)

平成25年の業務実績

当事務所では、数年前から、毎年1回、前年度の業務実績の概要をブログで公表しています。ご一読いただき、当事務所へご相談等に関する参考としていただければ幸いです。なお、顧問先には、これに若干加筆したものをお送りしています。

(1) 全体的な傾向

本年は、交通事故を中心に、介護や保育の際の事故も含めて、事故の被害者の方からの賠償請求事件が大きな割合を占め(交通事故では大半の方が弁護士費用保険を利用されています)、離婚関係や相続関係などの家事事件も多数手がけました。反面、本年も債務整理・倒産等の業務は、全国的な傾向と同様、数年前と比べて大幅に減少しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

数年前から手掛けていた、「大手企業による継続的取引の不当停止に対する下請企業からの賠償請求」で、勝訴判決を受けています。これは、首都圏から岩手に進出したY社から下請取引(食品加工の業務委託)を受注したX社が、自社に何らの帰責性もないのに、Y社から突然に取引停止を言い渡されたという事件でした。

また、建設工事や食品製造委託取引に関連し、契約当事者(注文者=債務者)が誰であるか等が争点となった事件などを担当しています。この種の紛争(受注時に発注者サイドに複数の関係企業が生じ、後日に誰が契約当事者か=誰に代金請求できるか等が争われる例)は非常に多く、貴社におかれても、新規の取引を行う際に複数の当事者が生じる場合は、ぜひお気を付けいただきたいところです。

その他、企業取引に関し、ソフトウェアの利用等を目的とする契約に関する紛争への対応、「下請かけこみ寺」事業に基づく無料相談のご利用による企業取引上のトラブルに関する相談などを担当しています。

企業内部の問題では、不況(リーマンショック)で業績が悪化した企業から早期退職者募集制度や整理解雇の進め方等についてご相談を受けた例などがあったほか、法人関係者の責任追及の当否に関する訴訟も受任しています。

(3) 債務整理と再建支援

過去に比べ大幅に受任件数は減りましたが、建設会社や消費者向け物販企業など幾つかの企業や経営者の方の申立代理人や破産管財人を手がけています。

小売業の企業の自己破産の申立に関し、受任時に十分な申立費用が確保できず、当事務所の関与のもとで、閉店セール等の換価作業を進めて費用を確保した後に、裁判所に申立を行うという例もありました。

個人の債務整理については、いわゆる多重債務事案(多数の消費者金融業者から多額の高利借入をしている方)の相談を受けることがほぼ無くなった一方で、信用情報登録を回避したい方から、金融業者に約定額を完済した後に過払金を請求するご依頼が多くなっています。

自己破産等に関しては、生活保護世帯など非常に低所得又は無収入の方からのご依頼の比率が高くなっており、格差や貧困の問題を感じさせるものとなっています。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も、交通事故の弁護士費用保険を通じて、被害者側での受任事件が増加しており、物損のみの事案や比較的軽傷の事案、重大な後遺障害が生じた事案や死亡事故まで、様々な案件を取り扱っています。

顕著な成果が生じたものとしては、専門性の高い仕事を行っていた方が被害を受けた件で、職務の性質上、自賠責保険の認定等級よりも高位の後遺障害が裁判で認定され、保険会社の提示より遥かに高額な賠償を受けることができたケースなどを担当しています。

保育・介護事故対人トラブルに基づく傷害事件についての賠償問題なども担当し、いずれも穏当な形での訴訟外の和解を成立させています。

また、被害者代理人として加害者の資産調査や債権執行(預金等の差押)を行う例も増えていますが、現在の執行法制の不十分さ(債権者にとっての使いにくさ、回収の難しさ)を痛感させられることも少なくありません。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

借地契約の終了に付随して当事者間で紛争が生じた事件(先日、勝訴判決を受けました)や個人間の貸金などの訴訟を扱ったほか、紛争性は低いものの、関係者との直接のやりとりを避けたいとのご希望から、円満処理のための調整業務をタイムチャージ形式でお引き受けすることが増えています。

後者の例として、「競売で落札された物件に居住(賃借)中の方が、落札した不動産業者から法律上問題のある要求を受けたので、その対応や退去時の調整等を依頼された件」や「自宅の隣接地の枝が自宅敷地に伸びてきたため、隣接地に立ち入って切除をしたいが、所有者が遠方に居住し面識がないため、所在調査や連絡調整、合意書作成等の依頼を受けた件」などがあります。

また、訴訟等に発展していないものも含め、不動産取引に関する相談(購入後に敷地内に廃材の不法投棄が発覚した例など)を受けることが増えています。埋設をした者が倒産している場合(倒産企業の所有地を購入した場合など)には責任追及に大きなリスクを抱えることになります。その種の取引を行う場合は、リスク調査(当職へのご相談を含め)を十分に行って下さい。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚に関し、「住宅の購入の際に妻の両親が多額の援助をした場合、離婚の際に夫は妻の両親に援助金の返還義務が生じるか(贈与か貸金か)」「退職まで10年以上の期間がある場合の退職金予定額に関する財産分与の当否」などが争われた訴訟を担当しました。

また、面会交流の調整が主たる争点となり、調停の場で試験的な交流を繰り返してルールを定めるなど、きめ細かい対応を必要とする例もありました。

相続分野に関しては、「死亡危急者遺言」(危篤時に第三者(証人)が作成し後日に裁判所の確認を受ける制度)が作成された件で、遺言者の意思に反することなどを理由に遺言無効の当否を争っている事案、数十年前に亡くなった方の相続が放置されたため、数十人の当事者が生じて不動産の相続処理に様々な論点が生じている事案、親子関係の存否等が問題となった事案などを担当しています。

その他、成年後見の申立や後見人の受任案件、被災地の出身の方の相続財産管理人として被災地の土地の権利関係の処理を担当している案件などがあります。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする訴訟の受任はありませんでしたが、昨年までに受任していた事件を機に、県内のある基礎自治体(町)から顧問契約をいただき、自治体の業務を巡って生じた法律問題について相談を受けています。行政(別の自治体)を相手方とする相談も幾つか受けています(区画整理関係など)。

刑事事件については、若手弁護士の激増の影響で国選事件は大幅に減りましたが、私選弁護の受任が増え、長時間の従事を必要とする複雑な事件や起訴されずに釈放され短期間で終了する事件まで、様々な案件を扱っています。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として、弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています(大船渡の法テラス気仙などの相談担当のほか、県内企業の風評被害を含む原発事故に起因して被った被害の賠償問題を対象とする無料相談制度などを担当しています。)。

 

平成23年の業務実績の概要(H23.12.30記事再掲)

平成23年から、顧問先に年1回、当事務所の業務実績等に関する概要(事案等は抽象化しています)をご報告しており、ブログでは、顧問先ごとにカスタマイズした部分を除いて掲載しています。

再掲にあたり、体裁等を修正しています。継続中の事件に関するコメントは、次年度(平成24年版)も参照いただければ幸いです。

1 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

平成20年に受任した「ある団体で、金銭管理を一人で行っていた代表役員による多額の不明金問題が生じたため、団体が役員に金銭返還等を求めた事件」で判決があり、概ね請求を認容する趣旨の判決を得ました。双方とも控訴し、23年末現在も控訴審が続いています(24年に勝訴的和解)。

また、「県外から岩手に進出した著名企業が、現地子会社を設立する際、地元でスカウトした経営者に子会社を任せたものの、後日その経営者と企業との間で紛争が生じ、企業が経営者に対し巨額の損害賠償等を請求した事件」で、地元の経営者の方から受任し、全面勝訴して解決しました。

その他、以下のような事件を手掛けています。

取引先B社が顧客との関係で背信的な行為をしたため、A社がB社に損害賠償を請求した事件(B社から相当額の和解金の支払を受けて解決)

下請取引に関する売掛金請求訴訟(一次下請の倒産に伴い、二次下請会社が元請会社に対し、二次→一次の売掛金の保証をしたことを理由に保証債務の履行を請求した事件。勝訴確実とみられたが、訴訟中に元請会社が破産してしまい、残念ながら回収不能で終了)

2 債務整理と再建支援

平成23年も、高利金融業者に対する過払金請求や引直残高が生じる場合の和解交渉、多重債務の方の自己破産、個人再生などを多数手がけました。ただ、グレーゾーン金利問題の沈静化に加え、若手弁護士の激増や東京の弁護士等の宣伝活動による受任競争の影響から、22年までと比べ、この分野の受任は大幅に減少しました。

法人の自己破産等(申立代理人、管財人等)も、幾つかの事件の取扱いがあったものの、件数は前年度までと比し大きく減少しました。全国的な傾向であり、金融円滑化法(返済猶予)の影響などによるものとされています。

反面、破産手続を終えた企業で後日に残務処理の必要が生じたため、清算人として残務に従事するなど、これまで取扱いの少ない特殊な企業倒産処理に携わる機会が幾つかありました。

震災に関し、津波で生活基盤を奪われ、巨額の住宅ローンが残存したものの、共済金等の支払により多額の現預金が残存した方について、自己破産を申し立てると共に、震災の特殊性等を考慮し、裁判所の一般的な基準を大きく上回る金額を手許に残すことができた例もあります。

3 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

平成23年から、交通事故に関する受任が非常に増えました。前年末に某損保会社さんから加害者側でのご依頼を受けるようになったのですが、被害者側でも、弁護士費用保険を活用し受任する機会が増えています。

過失割合を争う物損事案が多いですが、後遺障害の評価を巡る争い(自賠責の基準を上回る認定等級を主張するもの)に加え、自賠責への対応(被害者請求や後遺症等級認定の異議申立)、仮払仮処分などを含めた対処を必要とする事件も受任しています。

また、交通事故以外でも、スキー中の事故に関する賠償問題を受任し、過失割合等を検討した例もありました。

4 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

相談や簡易な通知のみの案件も多いですが、変わった例として、「数十年前に土地を購入したが、移転登記手続を失念したまま、売主が死去して相続人が数十名になってしまった件」で、買主の方から依頼を受け、相続人の方々に事情を説明し、それらの方々を被告とする訴訟を行って、買主への登記手続を命ずる判決(手続のため必要なもの)を受けたケースがあります。

5 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

平成23年から、離婚や男女関係に関する訴訟の依頼を受ける機会が多くなりました。男女間のトラブル(不貞行為を理由とする慰謝料請求など)の対処依頼が増えており、慰謝料を巡る判例や法理論を調査、検討することが多くなっています。

また、事情の変化(減収や当事者の再婚等)に伴う養育費の減額請求や婚外子の方に関する認知等の手続など、親子間の法律問題についても受任事件がありました。養育費については裁判所の基準表だけでは算定ができない論点を含むものがあり、適正額の算定のため様々な調査を行いました。

成年後見では、申立代理人を手がけたほか、裁判所から後見人就任の依頼があり、財産管理等のほか、選任申立の直前に生じた契約上のトラブルを巡る訴訟の対応を行いました。

相続分野では、遺留分減殺請求訴訟を1件、遺言の有効性が問題となる訴訟を1件手がけており、いずれも、当方の主張をベースとした勝訴的な和解で終了しています。

また、相続放棄をしたものの、被相続人(亡父)が行っていた事業の関係で、放置できない事情があったため、私が相続財産管理人となり事業の関係者や債権者などへの対応を行った例もあります。

6 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政が当事者となる事件では、税法上の処分の違法性を理由とする民事訴訟を納税者側で1件、国賠請求訴訟を行政側で1件、受任しています。

刑事事件については、被疑者国選制度の導入に伴い、捜査段階から否認事件を含む多数の事件に対応しています。

その他の業務としては、震災後、月1、2回の頻度で沿岸被災地の無料相談(避難所や弁護士会等が開設した相談会の担当)に従事しており、場所等は変わったものの、現在も続けています。