北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

〒020-0021 岩手県盛岡市中央通3-17-7 北星ビル3F

TEL.019-621-1771

業務実績など

令和2年の取扱実績③生活上の問題(消費者・契約)、家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、令和2年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

亡父αから特定の土地を相続したAが、同土地を占拠するB(αから無償で借りた)に土地の明渡しを求めたところ、Bが「αから贈与された、仮に、贈与が認められなくとも、取得時効が成立する」と主張したため、訴訟を余儀なくされた案件を受任しています。

先般、1審で当方の主張を概ね認める判決がなされたものの、B氏が敷地内に建物を建築(隣接する自宅から越境建築)した部分に限り時効が認められ、現在、双方が控訴し審理が続いています。

他にも、Web上のやりとり(投稿)を理由とする名誉毀損や、男女の交際に絡む紛争など対人関係の紛争に関する対応(不当要求の拒否や関係清算など)、数十年前(祖父母などの世代)に自己が所有する土地に設定された担保権の抹消手続など様々な案件で対応の依頼を受け、無事に対処を完了しています。

他にも、多数の方々から、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件などの生活上の様々なご相談を受けたり、簡易な交渉対応に応じています。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用、親権関連紛争、面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など。否認事案を含む)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。

本年も、親権(監護権)を巡り厳しく対立する事案を受任したほか、夫からDV行為を受けた女性が別居を敢行し夫に離婚を求めた案件を、別居前から相談を受け円滑な離婚を目指して支援するなどの対応にあたっています。

成年後見に関しても、財産管理や後見支援信託など基本的な対処を行う事案のほかに、後見審判後も自宅で独居を続ける方に関し、様々な問題に対処・苦慮しつつ、生活の継続を見守った事案もあります(現在は施設に入居されています)。

また、高齢のご夫婦に後見手続がなされた案件で、夫が死去し、お子さんがいないため、妻の後見人として夫のきょうだいと遺産分割協議を行うなど、様々な対処を行っています。

相続分野では、亡夫の相続に関し前妻の子との交渉などの依頼を受けた事案や、亡父の遺産分割に関し相手方の特別受益など様々な論点の検討を要した事案強硬な相続人との交渉を要した事案相続財産管理人の選任申立を要した事案などを担当しています。

また「県内の山間の集落に多数の不動産を遺して亡くなった方について、相続人である兄弟姉妹らが長期間、相続手続をしなかったため、相続人が数十名、権利の調整を要する物件(相続不動産)も多数に上り、墓地の扱いなど様々な論点が存する(放置されたまま、現在に至った)案件」の依頼を3年前に受任し、幾つかの論点に目処を付けつつ、現在も、多くの関係者と協議しながら残余の論点の解決のため対処に追われています。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は今後、ますます増えていくと思われます。

なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方、遺言執行者などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政関係では、昨年までお伝えしていたサケ刺網訴訟は無事に当方(岩手県)の勝訴で終了しました。現在は、県内のある自治体の顧問をさせていただいており、庁内で問題となった様々なご相談や訴訟事件に対応するなどしています。

刑事弁護も、被疑者段階を含め、詐欺や傷害、業務妨害、道交法違反など昨年も幾つかの事件(少年審判を含む。大半は国選事件ですが私選の依頼はタイムチャージ形式で受任しています)を手掛けています。

その他の業務としては、県民生活センターが主催する消費者向け相談や県内の社会福祉協議会が行う住民向け相談事業など幾つかの相談事業を担当したほか、東北厚生局の訟務専門員として、保険診療の不正受給などに関する解決のお手伝いをしました。

令和2年の取扱実績②債務整理・倒産、交通事故等(賠償)

前回に引き続き、令和2年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(3) 債務整理と再建支援

10年以上前(リーマンショック期)と比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減り、新型コロナウイルス禍の中でも、この傾向は大きく変わっていません。

ただ、本年3月まで社会福祉協議会の相談担当をしていたせいか、「総債務額は大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入のため自己破産をせざるを得ない方」からの受任は一定数ありました。他にも、「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンの返済中で、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」の依頼があり、また、「諸事情により法的手続を希望せず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。

近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。
 
昨年も、債務額などに照らして民事再生又は自己破産の手続をとるべき債務者の方が、インターネットで広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を前代理人に支払うだけで数ヶ月を空費した)というケースを経験しています。

昨年、過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず後日に様々な問題が生じますので、そうしたことも視野に入れて早期のご相談をご検討ください。
 
企業倒産(破産管財)に関しては、昨年は「企業の管財事件」の受任はなく、小規模な企業の代表者個人のみの破産申立事案の管財人を担当した程度でしたが、中には、企業の関係者に様々な問題があり、労働者健康福祉機構への未払賃金立替請求が正当な理由なく行われていると判断され、それに対する対応に苦慮するなどした案件もありました。

申立代理人としては、震災後、辛うじて経営を続けていた小売業の会社さんがウイルス禍により継続を断念し事後処理を依頼された案件があり、商品売却などの目処をつけた上で、会社及び代表者双方の申立を行っています(特殊な事情があり、最初は代表者のみの破産申立を行い、後日、裁判所の勧告により会社の破産申立も行いました)。

今後はウイルス禍の長期化により倒産増加が懸念されており、小規模飲食店の経営者の方から営業不振による事業閉鎖を前提とした相談を受けたことが複数あります。

また、昨年から「金融機関(銀行等)にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を継続保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」を活用して解決すべき事案の依頼を受けています。金融機関の内諾を得て昨年中に概ね順調に換価作業などを終え、現在、弁済計画を策定し、交渉の山場にさしかかっています。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましいケースが多くあります。あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき、知人などで必要とする方がおられれば、伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、免責不許可事由の調査を要したケースや山林の換価が問題となった案件などを担当しています。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

昨年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により、本来であれば数十万円からそれ以上を要する弁護士(当職)への委任費用について、自己負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係と評価)が主たる争点となる事案物損の金額が争われる事案むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額算定が中心となる事案重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が必要となる事案など、幅広く取り扱っています。

過失割合が争点となった物損事故では、1審(簡裁)で納得できない判決を受けたため、控訴したところ、2審(地裁)で、1審を取り消し当方の主張も踏まえた新たな過失割合の勧告を得て、了解可能な和解で終了できた案件もありました。

事故直後など、加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、「神経障害に関する後遺障害(14級9号)」をはじめ、幾つかの後遺障害につき、認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

ともあれ、自動車保険などでは、必ず弁護士費用特約が付された任意保険にご加入ください(相談のみの特約に加入される方もおられるようですが、必ず委任費用を対象とした保険にご加入下さい)。近年、弁護士費用特約(保険)は、企業クレーム対応や労働事件、家事事件(離婚等紛争)などにも導入されており、活用をご検討ください。

 

令和2年の取扱実績①全体、中小企業法務

当事務所では年1回、前年の業務実績の概要を顧問先に送付した上で後日にブログで公表しています。顧問先には5月に送付しましたが、諸々の理由でブログへの掲載が遅れ、いつの間にか年末になってしまいました、

が、このまま越年するのもいかがなものかということで、今更ながら、昨年=令和2年の実績概要をお知らせします。本年=令和3年の実績概要は、来年の中頃?までお待ち下さい。

当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

当事務所は、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などに関する様々な紛争の解決や法的処理のご依頼に対応しており、昨年も、この5大分野が業務の柱となっています。

ここ数年は①と②の受任が多くなっていますが、他にも企業の深刻な内部紛争や個人間の各種の民事訴訟など、様々な事件の解決やご相談の対応にも注力しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する問題では、企業間の賃貸借に関する紛争や競業企業との対人トラブルに関して対処した事案のほか、従前から取引等のある企業間で不当とみられる金銭等の要求があり、要求を受けた側の依頼で、支払拒否や既払金返還請求などの対処を行っている案件があります。

これは、α社のA社長がβ社のB社長に勧めた商取引に関連し、豪腕経営者のBが、Aの勧めに応じる代わりにAに過当な要求を行い、立場の弱いAが念書に応じてしまったところ、後年にBから膨大な金額の請求を受けたため当職に支援を求めてきたものです。BがAに差し入れた念書は、内容の不当さもさることながら、法律上も多額の金銭請求が認められるべきではない(道義的念書に過ぎない)と感じられる案件です。

そこで、A側の依頼により、B側に対し支払拒否や正当な理由のない既払金の返還を求める訴訟を提起しましたが、Bも総力を挙げて対抗しており、厳しい対立の中、現在も予断を許さない状況で審理が続いています。
 
企業の内部紛争に関しては、「小規模な企業の経営者Bに頼まれ中途就職したAがBから企業承継(買取)を要請されて応じたものの、後日、Bに不正行為が発覚したとして、Bの法的責任を問う必要が生じた事件」を3年ほど手がけており、1審で概ね全面勝訴し、2審でもその判断が維持された勝訴的和解が成立しました。

この事案は、債権回収に様々なハードルがあったのですが、工夫や調査を重ねたところ、運良く「隠し財産」を発見し、無事に強制執行で判決に基づく全額を回収することができました。

また、特定の事業を営む自営業者の団体A(権利能力なき社団)が高齢従業員Bに対し様々な事情から定年時の再雇用拒否を行ったところ、Bが、Aの前代表者(団体の総会で退任した方)が退任前にBに定年後の雇用継続を約束したなどと主張し、地位確認等請求の訴訟を起こしてきた事案を受任しています。

この件は、Aが零細自営業者の集まりで労働法等のルールに通暁していないことや団体の事情からA側にも一定の不手際がみられたものの、様々な事情を立証し定年後再雇用の合意がなく、労働契約法19条の類推適用なども認められるべきでないと主張したところ、Bが自らの主張を撤回し、当方の主張どおりの勝訴的和解により終了できました。
 
また、以前に共同経営していた親族同士が数十年前に分離して互いに単独で企業を経営していたところ、近年になって重大な問題が発覚し、複雑な法的論点が生じて訴訟を余儀なくされ、過去の様々な経緯から、双方が激しく対立する事案を担当し、本年、第1審で無事に勝訴判決を受けました(先般、控訴審で当方の勝訴的和解がなされています)。

また、企業内部の事柄(法的事務処理)として「会社の大半の株式を保有する株主が、ごく僅かな比率の株主から強制的に株式を取得するための手続(会社法179条に基づく株式等売渡請求)」を受任し、本年、無事に手続を完了した案件があります。

 

平成30年~令和元年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成30年~令和元年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用、面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など。否認事案を含む)については、現在も多数のご相談・ご依頼を受けています。

主なものとしては、夫婦の不和(親権争い)に伴い、夫が幼児を自身の実家に連れて行った上、妻に対し自宅からの単身退去を求めるなどしてきた案件で、それまで育児の大半を担っていた妻の代理人として「子の監護者指定及び引渡しの審判」の申立をした案件があります。

実務的には当然に認められるべき事件と判断して申し立てましたが、1審(盛岡家裁)で予想外の敗訴審判を受け、驚いて即時抗告(不服申立)を行ったところ、2審(仙台高裁)で無事に全面取消(当方勝訴)の決定をいただき、かなりの長期を要したとはいえ、無事にお子さんの引渡し等を受けることができました。

他にも、嫡出否認の問題を抱えた方(男性側)のご依頼で、女性側と交渉して必要な法的手続を行った案件もあります。

前回(交通事故の項)にも書きましたが、夫婦間の紛争を依頼される方の中には、弁護士費用保険を利用して委任される方もおられます。現在は勤務先など(所属団体)が従業員などを被保険者として契約する保険商品が主流のようですが、夫婦間の紛争はご本人・受任者双方にとって負担の多い手続になることが多く、保険の普及を期待したいものです。

成年後見に関しても、財産管理や後見支援信託など基本的な対処を行う事案のほかに、後見審判後も施設入居を拒否して自宅で独居を続ける方に関し、様々な問題に対処・苦慮しつつ、生活の継続を見守っている事案もあります。

また、意思疎通は問題がないものの身体に障害のある方で、家庭内に複雑な事情を抱えたご年配の方から財産管理の依頼を受け、福祉関係者と協議しつつ家庭内の問題への対処を含む様々な対応を行っている案件もあります。

相続分野では、亡夫の預金などの相続について、前妻のお子さんとの交渉等(遺産分割)の依頼を受けた事案や、亡父の遺産分割の対処の依頼を受け、相手方の特別受益をはじめ、様々な論点の検討が必要になっている事案などを担当しています。

また「県内の山間の集落に多数の不動産を遺して亡くなった方について、相続人である兄弟姉妹らが長期間、相続手続をしなかったため、相続人が数十名、権利の調整を要する物件(相続不動産)も多数に上り、墓地の扱いなど様々な論点が存する(放置されたまま、現在に至った)案件」の依頼を受け(相続人の調査等を対応された司法書士の方のご紹介)、現在も多くの関係者と協議しながら解決のため対処に追われています。

また、遺言により財産相続をしたAが、不和な状態にあるきょうだいBから遺留分減殺請求を受けたものの、B氏が生前贈与を受けていることなどから減殺(代償金の支払)はできないとして争った事案(A氏代理人として受任し当方の主張どおり解決)、相続財産管理人として受任し多数の関係者が生じている共有物分割請求(土地の権利関係の処理)に対処した事案自筆遺言の検認やその後の対処(他の相続人との交渉など)を要する事案親族関係者全員での相続放棄の申立事案(音信不通になっている親族との連絡調整を含む)などを担当しました。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は今後、ますます増えていくと思われます。

なるべく生前に、相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、特定の産業分野(行政の規制対象)で自治体に営業許可を申請して不許可となった多数の方々が、その行政処分に不服があるとして取消や許可の義務付けを求めて請求している訴訟(報道でも大きく取り上げられた「サケ刺網訴訟」)を、自治体(岩手県)の代理人として受任し、3年ほど膨大な作業を通じて闘ってきました。

平成30年に1審判決があり、主要争点で当方の主張を全面的に認める勝訴判決を受け、昨年2月には控訴棄却(県勝訴)の判決がありました(先方が上告し、本年に上告棄却=当方勝訴で終了しました)。

刑事弁護も、被疑者段階を含め、窃盗や詐欺、傷害、器物損壊、住居侵入、迷惑防止条例(盗撮)事案などに関して幾つかの事件を手掛けています(大半は国選事件ですが、私選のご依頼はタイムチャージ形式で受任しています)。

否認事件や大規模な詐欺組織の構成員の国選弁護人として、無罪の主張立証や多数の被害者への弁償など様々な作業に負われたこともありました。

少年審判についても、保護観察がなされた事案のほか、「生育環境に気の毒な事情が多く見られたものの、従前の素行の問題や現在の生活環境の悪さから、やむなく少年院送致となった事案」も経験しています。

その他の業務としては、岩手県民生活センターが主催する消費者向け相談紫波町社会福祉協議会岩手県総合福祉センターの高齢者・障碍者向け相談など幾つかの相談事業を担当しているほか、東北厚生局の訟務専門員として、保険診療の不正受給問題に関する解決のお手伝いをしています。

 

平成30年~令和元年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成30年~令和元年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

現在も交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、大半の方が、ご自身等が加入する任意保険の弁護士費用特約により、本来であれば数十万円からそれ以上を要する弁護士(当職)への委任費用について、自ら費用の負担をせずに利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主たる争点となる事案、物損の金額(全損評価額・評価損など)が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額算定が中心となる事案、重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が必要となる事案など、幅広く取り扱っています。

事故直後など、加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、「神経障害に関する後遺障害(14級9号)」をはじめ、幾つかの後遺障害につき、認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

また、自賠責で等級認定が認められなかったものの、訴訟で14級相当の後遺障害の認定が認められた事案なども経験しています。

万一のときに後悔しないためにも、自動車保険などでは必ず弁護士費用特約が付された任意保険にご加入ください(某大手損保が販売している、相談のみの特約に加入される方もおられるようですが、必ず委任費用を対象とした保険にご加入下さい)。

近年、弁護士費用特約は企業クレーム対応や家事事件などにも導入されており、従業員などを被保険者として勤務先・所属先で契約する例もありますので、活用をご検討ください。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

投資詐欺の被害に遭った者同士が責任の所在を巡って争った訴訟」(主犯格Aの知人Bが、知人CにもAを紹介し、CがAの勧誘で多額の投資をして被害に遭ったことから、CがBにも紹介者責任があるとして訴えた事案)で、B氏代理人として対応しています。

B氏は詐欺的商法に対する認識が甘く、以前から懇意にしていたAに誘われるがまま、自ら少額の投資(金銭預託)をし一定の配当を受けたことから、Aらが破綻し自身への配当も停止するまで詐欺的商法との認識を持つことなく、主観的には善意でCにも勧めてしまったという事案で、B氏に過失によるCの損害の賠償責任(紹介者責任)が認められるかが大きな争点となりました(Aの受任はしていませんが、当然ながらCの損害の全部又は大半にAの賠償請求が認められることが前提です)。

結局、尋問を含め双方の主張立証が激しく争われた末、B氏にはAらのような巨額の賠償責任が認められないことを前提とした勝訴的な和解で終了しています。

また、転職後に前の勤務先から「職場で負担した仕事で必要な資格試験の受験料などを支払え」と請求された方の依頼を受け、基本的な法律論をもとに、請求棄却(勝訴)の判決を得ています。

昨年は、Web上のやりとり(誹謗中傷的な投稿)を理由とする名誉毀損企業の従事者の方が企業情報を他社に漏らしたことを理由に賠償請求を受けたケースなど、個人が特定の不法行為を行ったことを理由とする賠償問題で相談・依頼を受けた件も複数ありました。

他にも「D社に務めるEが退職後に同業他社に就職したところ、Dから競業避止義務違反だと主張され、賠償要求などを受けたため、E氏代理人としてそれが不当だとして反論した案件」職場内での個人間の暴行事件を巡る賠償請など、様々な事件を手がけています。

また、震災無料相談制度(令和3年3月終了見込)や扶助相談制度などを通じ多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件をはじめ、生活上の様々なトラブルに関するご相談や簡易な交渉対応などに応じています。

 

平成30年~令和元年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。ただ、本来の予定が大幅に遅れ、昨年=令和元年分は本年8月にようやく顧問先に送付しており、ブログでも載せようと思いつつ、余裕のない状態が続き、現在に至りました。

その上、さきほどブログを見返したところ、2年前=平成30年の業務実績の掲載を失念していたことに気づきました。

というわけで、今回は、平成30年・令和元年の実績概要をまとめてお知らせします。

当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

当事務所は、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部の紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などに関する様々な紛争の解決や法的処理のご依頼に対応しており、この5大分野が業務の柱となっています。

近時は①②の受任が多くなっていますが、企業の重大な紛争や大型の行政訴訟(現在は行政側での受任)など他の様々な事件の解決やご相談の対応にも注力しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する問題では、受注業務を巡る紛争や賃貸借に関する典型的な紛争などほか、2~3年前に社会問題化した「詐欺まがいの求人広告(無料出稿を装い簡易なFAXのみで契約させ、最初の無料期間経過後に当然に有料に移行したとして高額な請求を行うもの)の請求」に関する対応依頼などもありました。

また、「建築瑕疵の是非などを巡って複雑な争いがある賠償請求訴訟を建設会社側で受任した事案」、「商業店舗の賃貸借に関し、貸主側の対応の不備に起因し借主が退去等を余儀なくされたため、借主代理人として貸主に賠償請求した事案」などを受任し、責任論(賠償責任があるか)・損害論(責任があるとして、どの程度の請求ができるか)を巡り激しく対立した訴訟などを担当しています。

これらは相応に主張立証を尽くし、裁判所から相当な和解勧告を受けて解決しています。

他にも、取引先への売掛金請求に関する事案(請求者側)や、以前に契約関係にあった相手方企業から不当な要求を受けたため、必要な反論を行い要求を退けた事案などを扱っています。

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企業の内部紛争に関しては、「小規模な企業の経営者Bに頼まれ中途就職したAがBから企業承継(買取)を要請されて応じたものの、後日、Bに不正行為が発覚したとして、Bの法的責任を問う必要が生じた事件」をA氏側代理人として受任した案件があります(本年、1審で勝訴判決を得て、控訴審で勝訴的和解が成立しました)。

ある企業が有期契約社員の方が問題を起こしたため更新拒絶(雇止め)を行ったところ「辞めさせるのは違法だ」と主張され地位確認等(解雇無効)請求を受けた事案で、企業側代理人として2~3年ほど対応した案件があり、昨年、1審勝訴→2審も勝訴維持の心証を前提とした解決を得ています。

また、以前にA社を共同経営していた親族同士が数十年前にA社・B社に分離し互いに単独で企業を経営していたところ、近年になりB社がA社に重大な背信行為に及んだことが発覚したため訴訟を余儀なくされ(A社代理人として受任)、過去の様々な経緯から双方が激しく対立する事案なども担当しています。

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当事務所では、一般的な顧問料による顧問契約だけでなく、9年前から月額3000円(税別)による顧問契約をお引き受けしており、ここ2~3年は、顧問先の方々から、様々なご相談や簡易なご依頼などを受ける機会が増えてきました。

今後も、多くの県内などの中小企業・団体などの方々にとって利用しやすい利用頻度に応じたリーズナブルな顧問契約のあり方を追求すると共に、早期のご相談と必要な対処を実現し、手遅れになる事態の回避ひいては弁護士とご本人が共闘して物事の機先を制する、能動的・戦略的なリーガルサービスの提供につとめてまいりたいと思います。

(3) 債務整理と再建支援

震災以前に比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減りましたが、現在は「債務総額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入と住宅ローンがあり、住宅を維持しつつ他の債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」からの依頼が多い傾向にあります。

また「法的手続をせず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。

近年は、債務額などからは民事再生や自己破産の手続をとるべき方が、Web上で大々的な広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、成果もないまま後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を無為に前代理人に支払ってしまっている)というケースに遭遇した(依頼を受けた)ことが何件もありました。

過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず、後日に様々な問題が生じます。

債務整理に限らず、弁護士への依頼にあたっては、そうした事柄(後悔を余儀なくされた方が現に何人もおられるという現実)も視野に入れて早期のご相談をご検討ください。

過払金請求は時代の変化に伴い依頼を受けることがほとんどなくなりましたが、債権譲渡など特殊な論点が絡んだ事案の依頼があり、貸金業者側代理人との激しい闘いの末、裁判所から相応の和解勧告を受けて解決したものがあります。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成28年に受任した相応の規模の建設関係の会社について、権利関係の処理がようやく完了し配当に向けた手続を行ったほか、小規模な事業者の方の管財事件で、動産の売却や原状回復の問題など様々な法的対応に負われました。

近年はごく小規模な企業の受任に止まっていますが、債権回収などを巡って特殊な交渉が必要になった案件実質的な経営者である元従業員に色々と問題があり、相応の対応が必要になった案件などを担当しています。

申立代理人としても、個人経営の飲食店の自己破産申立などを受任しているほか、本年になって「銀行等にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を将来も保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」により解決すべき事案のご相談を受け、現在も諸々の準備を行っている事案があります。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましい案件がありますが、あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき知人などで必要とする方がおられれば伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、山林の換価が問題となった事案や個人への貸付の調査が必要になったケースなど、幾つかの事案を担当しています。

 

平成29年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成29年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用、面会交流、離婚後の養育費のほか破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、昨年も多数のご相談・ご依頼を受けています。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争や離婚後の面会交流の拒否に伴う間接強制を巡る紛争など、親子間の問題に関する事案の受任も複数あり、依頼主の希望をはじめ子の福祉など様々な事情を考慮し各種の調整を行い、穏当な和解による解決に努めています。

成年後見の選任も増加傾向にあり、後見人のほか保佐人・補助人として選任される例もあります。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

昨年は、意思疎通には問題がないものの家庭内に複雑な事情を抱えたご年配の方から財産管理に関するご依頼を受け、福祉関係者と協議しながら家庭内の問題への対処を含む様々な対応を行った案件もあります。

相続分野では、遺産分割を巡り当事者間に激しい対立があり、遺産の評価や寄与分、特別受益など複雑な争点を伴う事案のほか、被相続人が死去直前に親族に財産の一部を贈与する趣旨の書面を作成し、遺言としての様式は満たさないものの、贈与としては有効になされているとして、法定相続人に請求した事案(法定相続人が要後見状態になり、他の親族も巻き込んで複雑な展開となった事案)などを手がけており、必要な主張立証を尽くした上で、裁判所の和解勧告などに踏まえて解決しています。

また、身寄り(配偶者や子、両親)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、遺産の管理や付随する法的問題の対処などを行っている事案もあります。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は増えていくと思われます。

なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので(遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め)、ご留意下さい。

他にも、相続登記が放置されたため多数の相続人が生じている不動産の権利関係の処理に関し、他の相続人への交渉が必要となった事案や、相続財産管理人として受任し共有物分割請求訴訟に対処する事案なども担当しています。

離婚・親子・相続などに関しては、以前にセミナーを行う機会がありました。それらの分野に限らず、セミナー講師などのご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、特定の産業分野(行政の規制対象)で自治体に営業許可を申請し不許可となった多数の方々が、その行政処分に不服があるとして取消や許可の義務付けを求めて請求している訴訟を、自治体(岩手県)の代理人として受任しています。

本年3月末に1審判決があり主要争点で当方(県)の主張を全面的に認める勝訴判決をいただいており(報道でも大きく取り上げられた「サケ刺網訴訟」です)、相手方(県が必要やむを得ない規制として定めた事項に不服のある一部の漁業者の方々)の控訴に伴い、今後も解決に向け対応を続けていく予定です。

刑事弁護も、被疑者段階を含め、窃盗や詐欺、傷害、覚せい剤事案など主な犯罪類型に関し幾つかの事件(大半は国選事件ですが私選のご依頼もありタイムチャージ形式で受任しています)を手掛けており、起訴前に示談し不起訴となった事案も幾つかありました。

中には、逮捕時に被疑者宅に多頭崩壊とみられる猫の大量残置などの問題が判明し、動物保護の関係者と協議しながら適正な対応を図った事案もありました。

少年審判(未成年者に関する刑事事件)についても、試験観察を経て保護観察(社会内処遇)が定められた事案など複数の事案も受任しています。

その他の業務としては、岩手県民生活センターが主催する消費者向け相談岩手県総合福祉センターの高齢者・障碍者向け相談など幾つかの相談事業を担当しているほか、東北厚生局の訟務専門員として保険診療の不正受給問題への対処のお手伝いをしています。

平成29年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成29年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

昨年も交通事故被害者側での受任事件が多数あり、ほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案のほか、過去には、死亡事故重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案も含め、幅広く取り扱っています。

事故直後など加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、神経障害に関する後遺障害(14級9号など)をはじめ、幾つかの後遺障害につき認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

交通事故以外でも、スキー場のゲレンデで転倒事故に遭った方が、運営企業の管理責任を問うた賠償請求訴訟(責任の有無が争点になり一定の勝訴的和解で解決)や犯罪被害に遭った方の賠償請求(実務上相当とみられる額で示談)を担当したり、介護施設での転倒事故に関して責任の所在などを検討するなど、交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

昨年も、交通事故などについては弁護士費用特約により自己負担なく依頼をなさる方が多くありました。自動車保険などでは、必ずこの特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

昨年も個人間の貸金に関する紛争、不動産の登記(古い登記の抹消など)に関する訴訟、不動産の賃貸借を巡る紛争(明渡、立退問題ほか)など、多くの事件を手がけています。

不動産の登記を巡る紛争では、訴訟上の争点となった消滅時効の成否だけでなく対象となる不動産の売却とそれに伴う納税などの問題が複雑に絡み合い、法的な主張立証のほか多くの関係者と様々な利害調整が必要になった事案なども担当しています。

明渡請求に関しては、建物が簡易なプレハブで未登記であるなどの事情(また、相手方の行方不明の問題など)から、訴訟での請求内容や強制執行にあたり様々な配慮を要した事案なども担当しました。

他にも、弁護士会の「精神保健当番弁護士制度」により、精神科病院に医療保護入院中の方から退院請求の手続について依頼を受けた事案があります。本人の症状や関係者への聴取などから退院が認められるのは困難な事案であり、請求そのものは退けられましたが、精神科医療の実情や制度などについて知見を深めることができた面がありました。

また、震災無料相談制度を通じ多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件など生活上の様々なトラブルに関するご相談や簡易な交渉対応などに応じています。

平成29年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、2月前後に業務実績を顧問先に送付し、時間を置いてブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

平成29年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。

ここ数年は①と②の受任が多くなっていますが、③も自己破産や個人再生の受任が増加傾向にあります。企業の取引や内部紛争などに関するご依頼は件数こそ多くないものの、昨年も、大規模な事案を含む様々な事件の解決やご相談の対応に注力しました。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する紛争の例としては、商業店舗の土地建物の賃貸借に関し問題が生じ、借主が貸主に賠償請求している事案を担当しています。

少し具体的に述べると、商業店舗を営むX社がY社から建物を賃借し店舗経営していたところ駐車場用地の一部がY社ではなく第三者(以前に当該建物を所有していた企業の関係者A)の所有になっており、そのことをYが把握しないまま、Aが当該土地を隣地所有者Bに売却し、BがXに当該土地(駐車場用地)の明渡を請求をしたため、Xはこれに応じざるを得なくなりました。

そのため、Xは、駐車区画の大幅減少を強いられ集客に必要な駐車場用地が確保できず契約目的(店舗経営)が達成できないとして、賃貸借契約を解除し他所に店舗を移転し、移転経費や移転期間中の逸失利益についてYに契約違反を理由に賠償請求をしました。

当方(X)に対しYは「移転の必要はなかった」などと主張し全面的に請求を争っており、現在も裁判が続いています。

他にも、建築瑕疵の是非などを巡り複雑な争いがある建築紛争を建設会社側で受任した事案もあります。

企業の内部紛争に関しては「NPO法人αがA町から大規模な震災復興事業を受託した際、α自身が高額資産の所有者になることができないという行政のルールに起因して、事業の受皿企業としてβ社を設立し、αがAから送金された受託費をリース料名目でβに送金し、βの名義で資産購入とαへの貸与などを行っていたところ、αが破産し、管財人Xが『その資産の所有者はβではなくαだ』と主張し、βに対し資産の引渡しなどを求めた(が、β代表者γ氏には直ちにこれに応じることができない事情があり一定の交渉が必要となった)」という事件(協力関係にあった企業間の財産の帰属を巡る紛争)につき、β社から依頼を受けて対処する案件を担当しました。

これは補助金の巨額不正使用などで世間を震撼させた「大雪りばぁねっと」事件を巡る民事紛争であり、様々な偶然(ややこしい事情)から民事裁判の開始後間もなくγ氏(大雪の代表者ではありません)より依頼を受け、管財人の適正な業務に協力しつつ、γ氏として法律上正当な権利ないし利益の確保(利害調整)を目指すことになりました。

そして、膨大な関連事務を経て主戦場となった事件では1審で勝訴したものの2審で裁判所の勧告に従い和解で終了、という展開を辿りました。

大雪事件では民事・刑事で様々な弁護士が事件に関与していましたが、管財人や大雪の代理人をはじめ、民事事件を担当していたのはほとんどが東京の弁護士の方で、民事事件に関与していた岩手の弁護士は実質的に私だけでしたので、依頼者の正当な利益を図りつつ地元の弁護士として事件の適正解決に貢献するとの気持ちで取り組んでいました。受任から完了まで約2年半を要し、学ぶところの多い事件でもありました。

企業の内部紛争に関しては、他にも、未払賃金などの労使紛争、企業の役員の不正行為が発覚し責任追及をした事件などで代理人として対応しています。企業取引に関しては、中小企業庁の「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者に対する売掛金請求や発注者の不当対応への対処についてご相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は「総債務額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンがあるため、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」、「銀行に数十万円の借入があり、リスケジュールのため任意整理を希望する方」からのご依頼が増えています。

また、10年以上前に借り入れた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け消滅時効などにより解決を求める事案も増えています。

過払金訴訟は時代の変化に伴い依頼を受けることがほぼなくなりましたが、債権譲渡を含む特殊な対応が必要となる事案の依頼があり、業者側も多数の論点について全面対決の姿勢を示しているため、適正解決のため懸命に取り組んでいます。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成27年に管財人を拝命した製材等を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復などの事務処理や法的手続が必要となり、平成28年に受任した建設関係の会社についても、多数の不動産の任意売却や不動産利用を巡り錯綜していた権利関係の整理、労働債権の対応など、様々な法的対応に負われました。

また、金融機関に巨額の債務がある一方で他にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受け、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で定める額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現するため、不動産の任意売却などを含め、2年ほど交渉を続けた事案で、昨年に特定調停により自宅マンション(無担保)を処分せず残存させるなど当方の希望に沿う解決を実現することができました。

個人の方の破産管財についても、破産手続以前に親族への無償譲渡行為があり否認権を訴訟で行使し配当を実現した例や個人事業主の方など、幾つかの事案を担当しています。

平成28年の取扱実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成28年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚請求や関連紛争(離婚時までの婚姻費用、面会交流、離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)については、様々な立場の方から多数のご相談・ご依頼を受けています。被害者側の受任事案で、加害配偶者側が不貞を争ったものの、携帯電話の会話記録などを整理して不貞の事実を立証して賠償金が認められた例もあります。

夫婦間の子の引渡を巡る紛争離婚後に生じた子の引渡や親権の変更を巡る紛争など、親子の問題に関する事案の受任も複数あり、依頼主の希望をはじめ子の福祉など様々な事情を考慮し各種の調整を行い穏当な和解による解決に努めています。

成年後見に関しても、裁判所から、後見人のほか、保佐人・補助人として選任される例が増えています。前者(後見)は重度認知症などの方を対象とし、後者(保佐・補助)は疾患等があるものの一定の意思疎通が可能な方のために財産管理を支援する業務であり、ご本人の日常生活への配慮など後見とは異なる難しい配慮が必要となる例もあります。

相続分野では、遺産分割を巡って当事者間に激しい対立があり、遺産の評価や寄与分、特別受益など複雑な争点を伴う事案のほか、被相続人が死去の直前に親族に財産の一部を贈与する旨の書面を作成し、遺言としての様式は満たさないものの贈与としては有効になされているとして、法定相続人に請求した事案(法定相続人が要後見状態になり長期化した事案)などを手がけています。

また、身寄り(配偶者や子、両親、近しいきょうだい)のない独居の高齢者の方が亡くなり、親族(後順位相続人である兄弟姉妹や代襲相続人)のご依頼で、相続財産管理人やそれらの一貫として遺産の管理や付随する法的問題の対処などを行った事案もあります。

身寄りのない方であれ、身内の「争族」が危惧される方であれ、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ない事案や、信託のような特別な配慮をするのが望ましい事案は今後、急速に増えていくと思われます。

なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが紛争やトラブル発生の防止のため望ましいことが多いと思われますので、遺言の内容や書き方などに関する弁護士等へのご相談も含め、早期の対策などをご留意・ご検討下さい。

離婚・親子・相続などの問題に関しては、昨年中は幾つかのセミナーを行う機会がありました。それらの分野に限らず、セミナー講師などのご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出下さい。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、特定の産業分野(行政の規制対象)で自治体に営業許可を申請し不許可となった方々が、その行政処分に不服があるとして取消や許可の義務付けを求めて請求している訴訟を自治体側の代理人として受任しています。

詳細は差し控えますが、その分野に関する長年の政策的な積み重ねの当否などが争点とされている事案であり、担当の方から様々なお話を伺うと共に、行政訴訟に関する基本的な法律論(取消訴訟の主張立証のあり方や行政裁量の問題など)の検討も積み重ねており、大変しんどい裁判ですが、固有のルールが複雑に重なる行政訴訟を手がける上では、学ぶところの多い事件となっています。

他にも、区画整理に伴う損失補償の問題に関する事件を手がけたこともあります。

刑事弁護については新人弁護士の増加により受任件数は多くありませんが、被疑者段階を含め、窃盗や覚せい剤事案など主な犯罪類型に関し幾つかの国選事件を手掛けています。

また、私選での少年審判の受任もあり、事件の背景や今後のあり方など少年の更生環境を検討したりご家族とお話しする機会がありました。

その他の業務としては、昨年に引き続き被災者支援の一環として弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています。数年に亘り大船渡の法テラス気仙など沿岸での相談を担当してきましたが3月に担当を外れ、本年は内陸部での相談が主となります。