北奥法律事務所

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相続・遺言など

相続財産管理をめぐる様々な不動産登記と負動産処理の実情

今回は、相続財産管理人の登記業務などに関する宣伝・・・というより愚痴です。

ここ1~2年、相続財産管理人で、通常の弁護士業務では馴染みの無い様々な登記と、登記申請の必要書類の取得のための交渉などを色々としなければならない事案が幾つかありました。

先日終わったⅠ事件では、山間部の別荘地帯にある買い手のつきにくい土地で、ウチならなんとかなるかもと仰る不動産屋さんにお願いして5年以上実を結ばず、受任から10年も経て、ようやく国庫帰属手続で完了したのですが、国への移転登記に先立ち、相続財産法人への名義変更のほか、

α 当該土地に付された根抵当権の抹消登記(休眠権利者企業への訴訟)
β 当該土地に付された買戻特約の抹消登記(登記原因証書の作成その他)

が必要となり、国庫帰属の条件(お約束)で、構図で隣接地所有者らを沢山調べて「引き取っていただけますか」のアンケート調査(当然、拒否か無視)をしなければならず、1円にもならぬ仕事(国庫帰属は対価ありませんので)のため膨大な作業に追われ、他に相続財産の全く無い事案(限られた予納金のみ)ということもあり、タイムチャージ換算で予想どおりの大赤字事案となりました。

また、Ⅱ事件では、被相続人Aの自宅が、いずれも故人である両親BやCの別々の名義の土地や未登記建物などで構成されており、まとめて売却するには、売買契約の許可申立の前に

①解体済みの旧自宅建物・甲1の建物滅失登記(業者滅失証明書は当然無し)
②現自宅建物・乙1の所有権保存登記登記
③現自宅土地・乙2の所有権移転=相続登記(A→C)
④旧自宅敷地・甲1の相続登記その1:B→A・C共同相続
⑤旧自宅敷地・甲2の相続登記その2:A持分のC相続
⑥自宅土地建物と旧自宅敷地の相続財産法人への表示変更登記

を行わなければならず、いずれも、弁護士が通常取り扱う仕事ではないため、法務局のサイトや文献などを色々調べて自分なりに登記申請書案を作成して法務局に相談→あれこれ言われて修正等→再相談→あれこれ、という作業を余儀なくされました。

これまで名義変更登記(や清算人選任など)以外はほとんど行ったことがなく、経験値がかなり上がりましたが、所詮、弁護士は登記の専門家ではありませんので、「俺は登記も分かる弁護士だ」などと叫んで司法書士さんと競争しようなどという発想・能力は微塵もなく、他の多くのレア事件(一生に一度くらいしか出逢わない類型)と同様、資格取得マニアの人のように、他に活かす機会もなく終わってしまいそうな気もします。

他にも、田園地帯の廃屋敷地等しか財産がない(ので相続放棄された)Ⅲ事件で、解体費用超過などを理由に不動産業屋さんに匙を投げられ、ダメもとで多数の近隣所有者を調査し照会したところ、運良く「タダ同然なら引取可」との回答を一人の方からいただき、譲渡に向けた準備を行っているものの、農地(実情は原野)が含まれているので、非農地証明による地目変更登記が必要になり、諸々の交渉の末、先日、地目変更を終えてこれから譲渡の作業に入るところです。

こうした事案に限らず、近時は、膨大な作業をこなさなければならないのに報酬(受任費用)は限られた金額しかいただけない大赤字事案が多く、株高云々で繁栄を謳歌する方々などは遠い世界のように感じるほかありません。

Ⅱ事件だけは、諸般の事情で珍しく黒字の期待が持てるものの、報酬審判は1年以上先なので、それまで滅んでなるものかと、某所で撮影した花火写真で自身を慰めつつ、ぢっと手を見る日々です。

裁判所による手続的虐待?の光景とマチ弁の愚痴(前)

裁判所と書いて「べんごしぎゃくたいじょ」或いは「こくみんぎゃくたいじょ」と読む、或いは、少なくとも、そのような顔も彼らが持っている、というのは、弁護士なら自明かと思います。

かくいう私も、半年以上前に某家裁に申し立てた事件で、裁判官(と調停委員?)から壮絶ないじめ被害?に延々と遭っており、一体いつになったら収束するのやら、という有様です。

詳細は差し控えますが、膨大な関係者がいる相続事件(内容自体、受任弁護士には大赤字にしかならないものの、ここで決着させないと困る人が非常に多くいるため、公的観点からも受任せざるをえない事案)で、協力を得られず、手紙・電話にも一切応答しない(ので、希望内容すら分からない)方が1名だけおり、その方との権利関係を決着させるため、やむなく遺産分割の申立を行いました。

で、従前の経過(や限られた費用で膨大な負担を余儀なくされていること)を説明し、そうした事案で先方に異議がなければすぐに決着させる手続である「調停に代わる審判」により、なるべく簡便に処理いただけないかと要請しました。

が、真逆の展開というか、裁判所からは、すでに了解済みの方々との関係も含め、無理難題や常識感覚からは不合理と感じる膨大な作業(明文や一般的な文献に記載のないものを含む)ばかり突きつけられ、「あんたがそれらをこなさないと、自分(裁判所)は何もしないよ(調停に代わる審判等はしない=相続登記など決着ができない)」と延々言われ続けています。

先日、ようやく先方の要求水準を満たすものを揃えたと思ったものの、あれこれケチがつき、また膨大な作業や多数の関係者への連絡が必要になり・・と辟易しているところで、まだ夜明けは一向に見えません。

相応の事情で当事者間に利害対立がある事案なら、諦めもつくというか、げんなりすることはないのですが、数十年前に死去した被相続人と何の関係もない方々ばかりの膨大な現相続人のうち、放置を続けているだけの、たった1人のせいで、どうしてこんなに延々と形式ばかりの作業を要求するのかと、期日のたびに嘔吐感を強いられながら、依頼者や解決に協力して下さる多数の方々の顔を思い浮かべて、どうにか踏みとどまっています。

この仕事をしていれば、裁判所に無理難題を突きつけられることは掃いて捨てるほど経験しますので、自分の力量不足と肚を括り対応し続けるほかないのですが、依頼者・関係者にも不合理な負担や長期化を延々強いることになり、申し訳なく思うばかりです。

せめて、家事事件手続法に欠席判決類似の「無気力当事者への簡便対処措置」の明文規定を定めていただければ、この種の話の改善につながるのではと思いますが、弁政連云々などが力になってくれるはずもなく、実務の片隅でぢっと手を見続けるほかないのでしょうね・・

この仕事をしていると、裁判ないし裁判所を蛇蝎の如く嫌悪・恐怖し不信感を表明する方にしばしばお目にかかりますが、その方々には、こうした光景や「それが嫌なら法律作ればぁ?まあ、できるかどうかは知らないけどね。アハハ・・」という底意地の悪い密林の毒蜘蛛のような、誰かの笑みが見えているのかもしれません。

(追記)
以上の話をfacebookに投稿したところ、ある司法書士の方からも「無気力当事者への簡便対処措置の規定が欲しい」とのコメントをいただきました。司法書士さんも相続関係で家裁と関わりを持つことが多いようですが、同じような苦労をなさっているのかもしれません。

預金の相続に関する最高裁平成28年12月19日判決と残された課題としての「親族間の断絶事案における費用負担の公平性の確保」

久しぶりに本業に関することで若干ながら投稿します。

預金の相続については、「預金は当然分割=相続人全員が同意しなくとも単独で自身の法定相続分に相当する額の払戻請求が可能」とした平成16年の最高裁判決により、近年では、銀行への払戻請求を求める方から依頼を受けることが何度かありました。

それらは、再婚のため前妻さんの子とは断絶状態にあるとか、配偶者やお子さんがおらず、きょうだい筋に相続権が生じたものの、多数の相続人がおり、音信不通になっている人もいるなどの事情で、かつ、相続財産も預金しかないので、ご自身(又は多数派を形成している相続人グループ)だけで相続手続を行いたい(ご自身の法定相続分にあたる預金の払戻のみを受けたい)といったケースであり、世間には、それなりに多く存在するものと思われます。

これまでは、銀行側に事情を説明し当方依頼者(相続人)の法定相続分相当額のみの払戻を受けることができたのですが、従前の判断を変更して預金は死亡時点では相続人全員の共有状態だとした今回(H28.12.19)の最高裁判決で、今後はそのような形をとることができず、不動産などと同様に、他の相続人との間で遺産分割の手続を行うのでなければ払戻を受けることができないことになりました。

この点は、日弁連の機関誌「自由と正義」の7月号でも特集が組まれており、行方不明の相続人がいれば不在者管理人の選任や失踪宣告の手続などをするほかないという趣旨のことが述べられています。

ただ、当然のことながら必要となる手続の負担が増えるほど、依頼する弁護士や「不在者管理人」の選任などに要する費用が嵩みますので、ややこしい論点や必要な作業が多い割に預金額がさほどではない事案などは、相続が捨て置かれ「休眠預金」化する事態が多く生じるかもしれません。

この点は、換価価値が乏しい(或いは換価困難な)不動産の相続などでも生じている現象ですが、自由と正義の特集も含め、費用対効果の問題について正面から触れている論考を見たことがなく、その点は残念に感じます。

とりわけ、相続の場面では、被相続人と交流のあった相続人A(のグループ)が様々な後始末に追われることが多く、Aが相続の解決の一環として費用を負担して弁護士に依頼する一方で、被相続人と交流がなく、相続権を有していたがゆえに財産を手にするに過ぎない他の相続人Bは、手間も費用も負担せず面倒な作業はA側(代理人を含め)に行って貰い法定相続分に相当する財産だけは手にするといった事態が生じることも珍しいことではありません。

以前に、そのようなケースで「被相続人の甥の一人」であるAさんの依頼で多数の相続人に通知して被相続人の預金の払戻の手続を行った際は、Aさん自身の法定相続権が僅かであり、全員が法定相続分に応じた利益(預金取得)を得ることから、私の費用はタイムチャージとし、回収した預金の全体から控除させていただく=関係相続人が相続分に応じて負担することで了解いただきたいと通知し、全員からご了解をいただいて対処したことがあります。

上記のように弁護士が関係相続人全員の利益のため活動するようなケースは珍しいことではないはずですから、そうしたケースでは代理人費用を共益的な費用として関係相続人が応分に負担することが広く認められてよいのではと思われます。

同様に、相続人の行方不明により不在者管理人の選任を要した場合なども、その経費は、相続人全員の共益費として相続財産(預金)から控除する制度が設けられるべきではと思われます。

相続に限らず、我が国の法制度では「問題解決のため率先して努力した人に負担が集中し、フリーライダーが得をする不公平な光景」が時折みられますので、そうしたものの是正や公平・適正な費用負担や負担軽減のあり方などについて関係者の議論を期待したいものです。

そうしたリスクの高い事案では、遺言書によって相続人の負担軽減を図るべきということになるのでしょうし、だからこそ、ご自身の相続に関する潜在的なリスクや事務作業などについて被相続人が生前に把握し対処の必要性を理解する機会が設けられるべきではないかと思われます。

それこそ、医師の定期健康診断のように、一定の年数に達した方のうち相続がややこしいなど一定の事情のある方には、弁護士等への相談を励行するような仕組み・慣行などを考えていただきたいものです。

養子制度から見た空家大国の近未来と震災

先ほど、日本国内に大量の空家が発生して深刻な社会問題になるはずだと述べた藻谷浩介氏の対談記事を拝見しましたが、私も、「遠方の被相続人(両親やきょうだい、叔父等)の死去等により、相続人が廃墟化した空家の対処(解体など)を余儀なくされたり、相続放棄等により第三者がその必要に迫られる事案」のご相談等を多く受けてきましたので、それが今後ますます増えるだろうということも含め、記事には共感できる面があります。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51118

ところで、「人口減少で家を継ぐ人が減って空家が増える」という点については、昔の日本(特に、多産が奨励された大戦前後の時代)なら、養子縁組で家を継ぐ(いわば空家化を防ぐ)ことが多く行われていたようです。

そうした話は去年読んだ「きょうだいリスク」という朝日新書の本に詳しく書かれていたのですが、現代では、そうした風潮ないし社会慣行は廃れたのでしょうし(金持ちが税金対策で養子との話を日経新聞で見かける程度です)、私の知る限り「養子の慣行を再興して空家対策をしよう」などと呼びかけている人がいるなどという話は聞いたことがありません。
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=17778

私の存じている同世代の方々も、単身生活を続けている方もいればお子さんが3人という方も相応に多くあり、昔なら養子云々という話になったのではないか、どうして今はそうならないのか、それは社会にとって悪いことなのか良いことなのか、以前と比べて社会の仕組みや人々の意識などの何がどう変化し、それはどのように評価すべきなのだろうなどと、色々と考えさせられる面があります。

それもまた、現代が良くも悪くも地域や個々人のつながりを分断させる方向にばかり社会インフラの舵を切ってきたことの帰結なのかもしれませんが、養子以外の形も含めて、「跡継ぎ・墓守」などという精神的な負担感を軽減した方法で空家の管理や所有を相応の個人や法人に移譲させる仕組み(空家承継)を検討・試行する機運が高まってくれればと思います。

本日は「震災の日」ですが、数年前に沿岸被災地で多くの方から相談を受けていた頃、養子縁組が絡んだご相談(例えば、遠方在住の養子が弔慰金を受け取ったのに葬儀もお墓の面倒も見ないので憤慨しているといった類のもの)を受ける機会が多くあり、盛岡など内陸部の方からは養子絡みのお話を聞くことがほとんどなかったので、不思議に思ったことがあります。

かつては、沿岸の方が内陸に比べて多産多死(なので養子の必要が生じやすい)社会だったのか、震災のため、そうしたご相談がたまたま多く寄せられただけなのか(実は内陸にも養子は沢山いるのか)、分かりませんが、そうしたことも含めて、学者さんなどに幅広い視野をもって地域社会の実像を解き明かしていただき良質な対策につながってくれればと思っています。

余談ながら、住宅業界に限らず弁護士業界も15年ほど前に、藻谷氏が述べるような「供給を増やせば市場価値も上がるという、市場経済原理とは真逆の、謎の信念」を唱えて増員と法科大学院の導入等を推進(狂奔?)してきた方が多くいましたので、そうした観点からも、現場で様々な苦労や忍耐に直面せざるを得ない身としては、色々と考えさせられる対談だと思います。

まあ、えせ老骨が価値の暴落ばかり嘆いても仕方ありませんので、せめて、それをバネにして「若い人ばかりという現代日本とは真逆の人口構成になっている弁護士業界」が、上記の問題の対策に関する実働なども含め社会に良質な価値をもたらす原動力になってくれればと願わないこともありません。

空家問題や「お隣さんから降って湧いた災難」の費用保険と行政支援

先日、法テラス気仙のご相談で、「隣の家の木の枝が越境して雨樋に落ち葉が溜まるなどの被害に遭って困っている」とのご相談を受けました。

それなら土地の所有者に切除請求(民法233条)すればいいじゃないかと思ったら、案の定というか、所有者はすでに亡くなり法定相続人は相続放棄したようだとの説明がありました。近時は、こうした「問題が生じているが、解決を申し入れるべき相手が誰であるか判然としない」というご相談は珍しくありません。

そのため、私からは、

①その問題を解決したいのであれば、所有者の相続人の調査(相続放棄したのであれば、申述受理証明書の交付要請を含め)を行い、その上で、相続財産管理人の選任を申し立て、選任された管理人に対し切除請求をするほかないこと、

②相続財産管理人の申立・選任の際は、当該所有者(被相続人)に十分な金融資産があることが判明しているのでなければ、相応の予納金の納付=自己負担が必要となること、また、選任申立も弁護士等に依頼するのであれば、一定の費用を要すること(フルコースで40~50万円前後?)、

③その上で、所有者が無資力(問題となる土地以外には資産がない)とのことであれば、管理人の同意を得る形で、自己負担で切除作業をするほかないこと、

④但し、その土地を売却して十分な現金が形成できるなら(管理人は職責としてそれを行う必要がある)、予納金の自己負担はなく、債権者として切除費用等を回収できる可能性があること、

を説明しました。ただ、毎度ながら、そうした問題を相談してくるのは高齢の方(しかもお一人)というのが通例で、ご自身では手間も費用も負担困難との理由で、そのまま放置(或いは、実害がないので違法を承知で仕方なく無断切除する)という展開もありうるのかもしれないとは感じました。

こうした問題に限らず、近年は「隣地に何らかの問題が生じ、当方の所有地(自宅等)に何らかの被害が生じているが、隣地所有者側にはきちんと対処できる者がいないというケースは、年々増加していると思います(上記のように死亡→全員放棄のほか、所有者が存命なれども「困った人」であるとか、所在不明、要後見状態(かつ後見人等の選定なし)といったパターンもあります)。

無縁社会・人口減少社会などと言われる現代では、そうした現象が生じるのは避けがたい面がありますが、その近所で生活する方にとっては、自身に何ら落ち度がないのに、突如、著しい手間と高額な費用を投入しなければ解決できない問題に直面することを余儀なくされるため、どうして自分が重い負担を強いられなければならないのかと、強い不遇感に苛まれることになると思います。

そこで、例えば、そうした問題に対象できる保険制度があれば、被害を受けている近隣住民は、保険会社に申請すれば、保険会社が代理人(弁護士)を手配して上記①の調査や申立を行い、相続財産管理人の予納金や被相続人が無視力の場合の切除費用も保険で賄うことができ、さしたる労力や出費を要することなく、一挙に解決することができます。

これに対し、そのような都合よい保険制度が簡単に構築できるわけがないじゃないかと言われるかもしれませんが、上記のようなケースでは、不動産の売却して十分な売得金が得られれば、その代金から上記の各費用の大半ないし全部を回収することも不可能ではなく、保険会社の「持ち出し」を抑えることができることができるはずです(保険金支払により債権が保険会社に移転するタイプの保険を想定しています。なお、ご相談の件は無担保でしたし、そうした事案では無担保が珍しくありません。むしろ抵当事案の方が、競売により買受人が対処してくれる期待が持てるとすら言えます)。

よって、保険会社側にもさほどリスクの大きくない保険として早急に導入を検討いただいてもよいのではと思われます。少なくとも、相続財産管理人の申立や管理人として実務を担う弁護士の立場からすれば、当事者が一定の経費と若干の手間さえかけていただければ、概ね確実に解決できると感じるだけに、そうした問題が長期放置されることなく解決に向けて進めることができる仕組みを整備して欲しいと思います。

単独の保険として販売するのはハードルが高いでしょうが、火災保険などに附帯する特約として少額の保険料で販売すれば、相応の加入は得られると思います。そもそも、上記のようなケースでは保険会社の持ち出しも大した額になりませんので、弁護士費用特約のように少額の保険料で十分のはずです。保険の対象範囲を、空家問題だけでなく騒音など生活トラブルに関するものも含めれば、かなりの契約者が見込めるかもしれません。

さらに言えば、そうした保険商品が世に出るまでには相当の年月を要するでしょうから、少なくとも上記のような「相続放棄された土地の売却で概ね債権回収ができる事案」に対しては、行政が当事者に費用支援する(その代わり、支援した費用は債権譲渡等により行政が直接に売得金から回収できるようにする)という制度(行政の事業)が設けられてもよいのではと思います。

相当の債権回収ができる(いわば行政が立替をするに過ぎない)事案なら税負担もさほどのものではありませんし、それが「お試し」的に行われ、保険料を払ってでも利用したいという層が相当にあることが確認されれば、保険制度に引き継ぐ(行政は撤退する)こともできるはずです。

なお、上記の制度を構築するにあたっては、現在は「自腹扱い」とされるのが通例となっている相続財産管理人などの申立費用も事務管理などを理由に優先回収を認める扱いにしていただきたいと思っていますし、そのためには、行政・保険業界と司法当局(家裁や最高裁?)との協議などが必要になるのではと思っています。

ここ数年、配偶者や子のない高齢・熟年の方が、自宅不動産+α程度の資産だけを残して亡くなり、親族が相続放棄するため、その物件の管理や権利関係の処理などが問題となる例は多く生じており、私にとっても相続財産管理人の受任事件は、成年後見関係と並んで、ここ数年では最も受任件数が伸びている類型になっています。

特に、冒頭の事案のように、やむを得ない相続放棄などにより管理者不在となっている空家が増え、それが社会問題となっているという現状にあっては、それにより被害を被っている関係者の自主的な努力にのみ委ねるのではなく、負担の公正な分配を確保し、ひいては予防などに繋がるような仕組み作りが問われていると思います。

余談ながら、少し前に、法テラス気仙の相談件数が減少し存続が危ぶまれているという趣旨の投稿を書きましたが、運営者たる法テラスのお偉いさん方も、例えば、今回のように「実際の相談事例をもとに地域社会に注意喚起や問題提起をするような記事」を担当弁護士、司法書士らに作成させ、それを月1、2回の頻度で、自治体の公報や地元の新聞などに掲載させるなどの努力をすれば、かなり違ったんじゃないのかなぁと思います。

少なくとも、私がこんなところでボソボソ呟いていても、社会を変えることは微塵もできないでしょうから・・

この日の気仙の山々は紅葉のピークに入り、里の彩りは11月上旬ころまで続くと思われます。皆さんもぜひ、お出かけになって下さい。

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相続セミナーと夫婦岩

半年前の話で恐縮ですが、今年の春に明治安田生命さんから相続セミナーのご依頼を受け、岩手県内の5ヶ所(盛岡、北上、水沢、久慈、一関)で実施しました。1月にも同じ内容のセミナーを実施しており、前回の反省を踏まえて若干の修正をしてお伝えしました。

3月末は裁判所の都合により法廷が全く入らない時期になるのでお引き受けできたのですが、毎日のように自動車や新幹線で県内各地の長距離移動を余儀なくされ、講義の時間も含めて肉体的にはしんどい面はありました。幸い、受講者の方々からは概ね好評をいただいたようで、その点はホッとしています。

久慈のセミナーでは営業所のご希望で午前と午後の2回に分けて実施したのですが、昼休みに小袖海岸の「つりがね洞」に行ってみたいと思い、現地に向かったところ、小袖海岸の入口が通行止めになっており、山側に迂回路があるとの表示がありました。

そのため、片道5分程度で済むのならまだ時間はあると思って迂回路に向かうと、10分以上も山道をウロウロする羽目になり、最後に海女センターに到着したのですが、滞在できる時間が全く残っておらず、やむなく海岸の立派な夫婦岩と「じぇじぇじぇの碑」の写真だけを撮影して後にしました。

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そんなわけで、また時間のあるときに改めて来たいと思いますが、折角なので、この仕事を通じてお会いする様々なご夫婦や私自身のことも含めて色々と考えつつ一句。

たどり着くまでが じぇじぇじぇの 夫婦岩

先日も、離婚・不倫・親権など男女間紛争をテーマとするミニ講義の依頼をお引き受けし、11月13日(土)に実施予定となっていますが、今後も、相続の問題に限らず、様々な法律問題、裁判実務等についてセミナーなどのご要望がありましたら適宜お問い合せいただければ幸いです(私がどうしても口下手で早口なので、レジュメ依存の傾向があることはご容赦いただければと思いますが)。

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相続財産管理業務における原状回復債権~これも「空き家問題」の未整備論点か?~

ここ数年、クレサラ問題と急速にご縁が無くなるのと反比例して、煩瑣な事務処理を必要とする厄介な相続財産管理業務に関するご依頼(弁護士会を経由して行われる裁判所からの選任)が多くなっています。

相続財産管理人の業務については、民法に幾つかの定めがありますが、同じような「財産の清算(と債権者への配当など)を目的とする手続」である破産手続と比べると、あまりにも不十分な面が多く、私自身は、破産法の諸規定を参照(類推)しながら業務を進め、悩んだものについては、適宜、自分の見解を整理して裁判所に照会することにしています。

ただ、破産法では、税金や労働債権・原状回復債権などをはじめ、様々な債権の優劣関係に関する規定が整備され、議論も相応になされているのに対し、相続財産管理業務では、そうした論点に触れた文献を全くと言ってよいほど見つけることができておらず、代表的な文献でもこの点は全くと言ってよいほど触れていません。

他方、いわゆる「空き家問題」に象徴されるように、居住者が相続人を欠く(放棄を含め)状態で死亡し、相続財産管理人を通じて権利関係の処理をしなければならない事案は、現在の我が国では潜在的なものを含め、膨大な数になっている(なりつつある)はずで、実務で頻出する論点を適正に処理するための法制度ないし法解釈が未整備の状態が続くのは、現場に様々な混乱、弊害を生じさせる危険を強く内包しています。

それだけに、相続財産管理業務で生じやすい諸債権の優劣関係などに関して、早急に実務のスタンダードを明示する相応の文献や論文が世に出るべきではと思いつつ(私が勉強不足で知らないだけでしょうか?)、それと共に、民法の当該分野(限定承認などを含む清算的な相続財産処理に関する全般)の大改正が必要ではないかと感じています。

ご参考までに、先般、裁判所に照会するため作成した文書の一部を抜粋しますので(他にも後から判明した継続的給付契約の料金などの論点を含んでいます)、そうした問題意識を共有していただける方のご参考になれば幸いです。

*****************

被相続人は、生前、A氏から貸室αを賃借しており、貸主の提出資料によれば、残置品の廃棄等として●万円、蛍光管等の交換費用に●万円、クリーニング費●万円、室内の各種補修工事費●万円の計●万円を、原状回復費用として余儀なくされたとのことである。

そもそも、建物賃貸借の終了時における汚損などの補修義務については、いわゆる通常損耗は借主に補修義務がなく、それを超えた特別損耗のみ補修義務があるとされているところ、上記の各費用が特別損耗と言えるのか、必ずしも判然としない。但し、●●の事情から、本件では概ね特別損耗に属するものと認定してよいのではないかと考える。

その上で、次の論点として、それらの原状回復義務が優先債権となるのか一般債権として扱われるべきかという問題がある。

この点、民法には相続財産管理業務における優先債権に関する具体的な規定がなく、文献上も担保権付の債権について担保権が及ぶ範囲で優先権を有するとしか述べられていないが(片岡ほか「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務(第2版)」367、369頁)、これは制度上の不備というべきで、相続財産管理人の業務が債権者との関係では破産手続(清算・配当の手続)に類似する面が強いことから、債権の優先関係に関しては、性質上望ましくないものを除き、破産法の財団債権等に関する規定を類推すべきと考える。

その上で、破産法においては、債務者の賃借物件に対する原状回復債務は、破産開始前に契約が終了していた場合は一般破産債権となり(但し、残置物があれば、収去義務は財団債権となる)、開始後も契約が存続しており管財人が契約解除を行う場合などでは、原状回復費用は財団債権になるとされている(破産法148条1項4号、7号等。「新・裁判実務大系№28」214頁)。

但し、原状回復義務が財団債権となることについては、債権者全体の共同の利益たる費用という性質を認めることが困難だとして、債務者の用法違反行為(原状回復義務の原因となる行為)が破産開始前に生じていた場合には、貸主は契約終了(破産開始)を待たずして借主に対し賠償(修補)請求が可能であることを理由に、一般破産債権として扱うべきとの有力な見解が付記されている(上記文献216頁)。

以上を前提に本件について検討すると、少なくとも、残置品の廃棄費用については、これが放置されていれば、相続財産(管理人)の費用負担で行う義務があることとの均衡から、優先債権として取り扱うのが相当である。

他方、他の費目は、相続の開始時点で契約が終了しておらず、その後に申立人などを通じて事務管理的に契約の終了と明渡がなされており、破産法の類推にあたり破産手続開始時=相続開始時と捉えるのであれば、手続開始後に契約が終了しそれに伴い原状回復義務が発生しているとの理由で全て優先債権(財団債権類推)と扱われることになる。

他方、上記の「発生原因が手続(破産)開始前に生じていれば、その原因に基づき発生した債務は財団債権にならない」という見解に従った場合、これらの原因となった事象は被相続人の生前に生じたと見るべきであろうから(但し、クリーニング費については一概には言えないかもしれない)、基本的に一般債権の扱いになるはずである。

この点は、債権者間の利害が対立する問題という性格上、管理人において結論を出すことが相当とは思われず、貴庁において相当な判断を行っていただくよう求める次第である。

余談ながら、破産法上の原状回復の問題もさることながら、相続財産管理の制度において債権の優劣等に関する規定が整備されていないという問題は、早急な改善を要するのではないかと思われる。実際、本書面で述べたような論点を担当管理人が理解せず、性質上、優先債権として取り扱われるべきものを漫然と一般債権として取り扱ったり、その逆、或いは債権の調査等すら行われない事案は、非常に多く潜在しているのではないかとも危惧される。

実務の末端を担う一人として、ぜひ裁判所からも法務省などを通じて問題提起していただきたいと切望する次第である。

「相続(争族)対策セミナー」のご案内と、幻の「オボマロ」漫談シナリオ

本年1月に、明治安田生命さんのご依頼で相続対策に関するセミナーを県内3ヶ所で実施したのですが、3月にも同様のセミナーを行って欲しいとのお話があり、また、担当させていただくことになりました。

今回は3月25日の盛岡会場を皮切りに、北上・水沢(奥州)・久慈・一関の計5ヶ所で実施するとのことで、3月の最終週は、ひたすらセミナーという感じになりそうです。

関心のある方は、ご来場いただいただり、ニーズがあると思われるご親族・知人の方などににお声掛けいただければ幸いです。日時や会場などは添付の文書をご確認いただき、明治安田生命のご担当の方にご連絡下さるようお願いいたします。
明治安田生命 H28.2-3月セミナー日程

1月の際は、2回目の会場で相続に関する基本的な用語とルールの説明を中心に行ったところ前回よりも評判がよかったので、今回もこの方法で行おうと思っています。

ただ、なるべくなら様々な事柄を横断的に取り上げたいとの気持ちもあり、今回もレジュメ全体では30頁という大作(しかも各種文例つき)で、これをもとに一般向けの本の一冊でも出版できそうなくらいのものになっています。ですので、このレジュメを貰ってご覧になるだけでも意味があるのではと思っています。

ところで、1月のセミナーを告知した際は「綾小路きみまろに扮して漫談調にできればいいのに」と書いたのですが、結局、最初に軽妙なトークを試みても全く笑いが取れなかったこともあって、3回のうち1度もこの話を持ち出すことができず、毎回、内心トホホと思いながら解説をしていました。

たぶん、今回も漫談云々は無理でしょうが、せめてブログの中だけでもこんな感じで話ができればと、CM風に書いてみました。が、やっぱり「帰れ!」と言われてしまいそうです(きみまろ氏の真似事ですので毒舌漫談調になっていますが、他意はありませんのでご容赦下さい)。

あれから40年 おもちゃ売り場で泣き喚いた子を引っ張るあの手は
病院から早く自宅に連れ帰ってくれと 指を広げ腕を伸ばしてねだってる

あれから40年 おもちゃを取り合った小さな子供たちは
貴方の身柄を確保して遺言や財産もらおうと 親の右手左手 引っ張ってる

痛いと言ったら先に手を離した弟は 
昔おばあちゃんと一緒に見てましたね TBSの大岡越前

あれから40年 東京で暮らす子供達からの電話は
オレオレ詐欺にオレの金を取られてないかと そればかり

いやいや 「オレの金」じゃない! 
今はまだとか 3年待てとか そういう問題じゃないし!

そんなわけで ご自分の大事な資産を誰にどう遺すか
愛する家族に明るい未来を授けていくか 泥沼の抗争をくれてやるか

岩手の犬神佐兵衛さんも そうでない方も 
最後の花を咲かせるために ここが智恵の絞りどころ

そんな貴方に 相続セミナー おでってくんなせ かだってなは~ん

【テーマないし項立て】

第1 相続に関する「基本のき」と幾つかの「専門用語」     2頁
第2 相続に直面する前に考えておくべきこと~状況の整理など~ 5頁
第3 どのような場合に「争族」になりやすいのか                   7頁
第4  「争族」対策と、節税・納税策(生命保険)との関係       10頁
第5  典型例での個々の財産の一般的な取扱い~遺言のない事案~   13頁
第6 生前の準備~遺言を中心に~                                   19頁
第7 その他、相続の際に問題になりやすい幾つかの事柄と対処     25頁
第8 弁護士の上手な活用法と無料相談、留意点、参考文献など      26頁

地方の町弁の身内が亡くなるとき~香典を巡る雑感~

先日、県内の某先生の親御さんが亡くなられたとの知らせが弁護士会からありました。その先生からは2年前の私の父の死去時に香典をいただいていたこともあり、ささやかながら香典をお届けしました。

ただ、私の場合、香典はすべて喪主である兄に渡したので「いただいたものをお返しする」という関係はあまり成り立っていません。さすがに兄に「私の関係で頂戴した香典は返せ」などと文句を言うわけにもいかず、ケチで貧乏な身の上には多少のトホホ感もないわけではありません。

反面、気楽な次男だからこんなことを言えるのだということも、私の実家のような「古い家」では、また真実なのでしょうが・・。

ちなみに、地方ではお身内が亡くなると岩手日報などに死亡広告を載せる方が多いと思いますが、岩手弁護士会の場合、会員(弁護士)についてそうしたものが載ると、問答無用(本人に確認なし)で、全会員にFAXが流れるようです(なお、ご本人が亡くなられた場合は、東北では6県の弁護士全員にFAX送信しています)。

少なくとも、私の父が亡くなったときは、兄の判断で私の名前も新聞の死亡広告に載せたため、私が知らぬ間に流れた弁護士会の通知を通じて、多くの同業の皆様から香典をいただいたのですが、上記の事情(喪主でなく香典をいただく立場ではない)から、私の名前は見なかったことにしていただきたかった(せめて、FAXの前にご一報いただきたかった)というのが正直なところではあります。

もちろん、弁護士会にロクに顔を出さない窓際会員の私にも多くの方々から香典をいただいたこと自体は、大変ありがたく、他の関係でいただいた皆様も含め、今も恐縮しているところではあるのですが・・

個人的には、直にお世話になったリアルな人間関係のある方が亡くなられた場合には、葬儀に出席するなどしなければとは思うのですが、お身内の方の葬儀等については、喪主の方との仕事上など特別な関わりがない限り、互いに気遣いをしなくともよいのでは(そうした文化は、昔はともかく現代では廃れていってよいのでは)と思っています。

さらに言えば、葬儀に多額の費用を投じたり香典などというお金のやりとりをすること自体が、文化として止めてもよいのでは(そんなことに金を使っても、今をときめく?葬儀業者の皆さんが喜ぶだけで、主役というべき遺族関係者にとっては面倒が増えるだけなのでは)というのが、曲がりなりにも葬儀というものを経験した「すれっからしの合理主義者」の率直な本音ではあります。

さらに余計なこと?を言えば、ご収入の多くないご年配の方で、冠婚葬祭の負担が多くて家計がおかしくなったという債務整理絡みのご相談を受けた記憶もあるように思います。

仕事柄、相続に関する紛争についてご相談を受けることは日常的にありますが、時には、葬儀費用を巡る紛争であるとか、葬儀の際に遺族などに口論が生じて紛糾したというお話を伺うこともあります。

そうした場合には香典は喪主に帰属すると判断するのが裁判所の通例であるとか、葬儀費用に赤字が出れば喪主が自己負担せず相続財産から負担する方向で協議することが多いので、そうしたことも斟酌して協議するのが望ましいなどとお伝えすることにしていますが、そもそも、高額な金のやりとりがなければ、そうした問題も起きないのにと感じることも少なくありません。

私自身は長寿には関心はないものの、可能なら意識だけが幽体離脱するようなものも含めて人類の最期まで見届けたいという願望だけはあり、結論として、リアルな関係のある方がすべて亡くなられるまでしぶとく生きて、その代わり、死亡時は往時の私を知る人が誰もいないので、葬儀等は一切せず後始末を担当するどなたかが荼毘に付して終わり、というのが一番望ましいのではと思っています。

相続からはじめる「家族の物語」と遠野ICの残念な動線

先日は、以前のブログで告知した「相続対策セミナー」の1回目(大船渡会場)でした。事前に明治安田生命さんに問い合わせても参加予定人数を教えていただけなかったので、全然集まらなかったらどうしようとビクビクしていたのですが、数十名もの方にご参加いただき、大変ありがとうございました。

以前に記載した「きみまろネタ」を繰り出すかギリギリまで悩んだのですが、冒頭に少し軽口めいたことを述べても全く笑いが起きる気配がなく、やはり自分には笑いを取るセンスは無いのだろうと諦めました。

予想どおり後半はかなり端折ってしまい、冒頭で「早口で話さないように頑張ります」と述べていたのに全く達成できませんでしたが、レジュメで取り上げた項目そのものは、概ねすべてお伝えすることができました。

相続は、ご家庭の事情で対象となる論点が全く異なることから、敢えて各論よりも総論(相続で問題となる場面の整理や考え方の要諦)を強調し、それぞれのご家族・一族が、どのような物語を紡いできたのか、それは、特定の人(長男など)に承継されていくべきものか、むしろ解体・清算されるべきものか、そうしたコンセプトは全員に共有されているのか、といったことを考えていただきたいとお伝えしました。

アンケートによれば、ご高齢の参加者から基本用語の説明など基礎的な話をじっくり聞きたいとの要望が強かったとのことで、次回はそうした声に配慮した構成で考えていますが、技術的なこと以上に本セミナーが「家族・一族の物語」を改めて考えるきっかけになればと思っています。

そんなわけで、19日の水沢や28日の盛岡も奮ってご参加いただければ幸いです。

ところで、往路はいつもの法テラス気仙と同様、宮守IC→小友町から峠道を下るルートで行きましたが、帰路はせっかく開通したばかりの遠野IC・宮守IC間を通ってみたいということで、住田町の国道の分岐路から滝観洞・仙人峠道路方面に進み、遠野バイパスから遠野ICに入りました。

遠野の街は1年ぶりくらいで、道路工事中に通過したときから違和感を感じていたのですが、遠野ICの出入口(国道との連絡路)は、遠野の道の駅(風の丘)の近くにあるものの市街地寄りにあり、市街地方面からの車両からすれば、「市街地→遠野IC入口→風の丘」という順序になっています。IC・風の丘間も隣接しているわけでなく、少し離れた位置になっています。

そのため、「高速に入る前に道の駅に寄って買い物等をしたい」という人は、IC入口を通過し、しばらく走行して風の丘に行き、再びICに戻ってこなければならないので、煩わしいという感覚が避けて通れません。

かくいう私も朝食なし昼飯抜き(車内サンドのみ)でセミナーをした後でもあり、風の丘で小腹を満たしてICに乗り込むつもりだったのですが、土壇場で行く気が失せ、空腹のまま高速で一気に盛岡に帰りました。

もとより、遠野市民(遠野IC利用者)の大半はICの西側(風の丘・宮守方面)ではなく東側(市街地)に居住しているので、今後、ICの利用時に風の丘に寄る人は非常に少なくなってしまうのでは(結果、これまで県内では道の駅の最優等生とも謳われた風の丘の営業成績にも大きく響いてしまうのでは?)との印象を強く抱かざるを得ませんでした。

もし、遠野ICの入口となる連絡道路(猿ヶ石川に架かる橋)を、風の丘の敷地脇に作ってさえいれば、このような展開にはならないのでは(それこそ、東名高速の富士川楽座SAのように、事実上、SAと道の駅の双方を兼ねる施設として大いに発展したのではないか)と強く感じました。
http://www.fujikawarakuza.co.jp/

地図によれば風の丘の対岸には人家や工場があるようですので、そうした点が原因なのかもしれませんが、遠野ICや連絡道路の位置選定について関係者でどのような議論が交わされたのかご存知の方がおられれば、ぜひご教示いただければと思っています。

今日(17日)も法テラス気仙の日曜相談の担当日となり大船渡に来ましたが、昼は「ラーメンパスポート」を利用したいと思って、市内にあるパチンコ店の建物内にあるラーメン店に行きました。

日曜なのに、パチンコ店の広い駐車場はほぼ満車状態といってよいほど埋まっており、食堂でも、いかにもという感じの寂しそうな眼差しの中高年男性を多く見かけました。

すでに5年近くを過ぎ、被災直後に陰口?のように言われた「義援金で云々」ということもないのでしょうが(建設・土木などの従事者で復興特需による給与を原資にという人ならいそうな気もしますが)、「日曜最大の繁盛店がパチンコ店」というのは、被災地に限らず高齢化等が進む過疎地一般にあてはまることなのかもしれません。

今日は末崎半島の方まで運転してきましたが、そうした光景も視野に入れると、「地域最大級の集合住宅」という様相を呈する災害公営住宅であれ防潮堤の巨壁群であれ、各種の大型の土木・建築工事が進んでいる沿岸一帯の風景についても、人々の精神的なつながりが薄れたり損なわれたりしている姿に光があてられないまま、ハコモノやカネばかりが投入されているような感じがしないこともなく、複雑な心境を禁じ得ない面はあります。