北奥法律事務所

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乳幼児の虐待殺人

乳幼児の虐待防止と育児家庭の一斉面談制度の提案

乳幼児の虐待殺人事件は昔から存在しているとは思いますが、最近は育児環境に不利な条件を抱えた方が増えているせいか、特に報道される機会が多くなっていると思いますし、とりわけ、下記に引用した事件のように、「若いシングルマザーが、ろくでなしの交際相手(内縁夫)に流される(人として呑み込まれてしまう)形で、男の主導のもとで虐待殺人が行われるケース」が増えているような感じがします。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161125-00000051-mai-soci

このような事件は、要するに「ろくでなし男」側が、自ら殺傷したり母親に子を殺すように仕向けているとしか思えませんが、少し前に読んだ、橘玲氏の「言ってはいけない」(新潮新書)で、未開部族や他の動物の習慣として、そうした話が取り上げられていました。

いわく、南米やオセアニアには、乳幼児のいる女性と結婚した男が女性に子を殺すよう要求する習慣のある未開部族があるとか、ハヌマンラングール(オナガザルの一種)のオスが子連れのメス集団(ハーレム)を乗っ取った際、真っ先に小猿達を殺戮する習慣があり、これは、授乳中のメスは交尾に応じず、小猿を殺すことでメスが再び発情期になり新たなオスの子を産めるようになるという、オスの繁殖戦略に基づく(そうした行動をとったサルが、結果として種を後世に残して繁殖した)というものだそうです。

実親による虐待事案も多くありますので、すべてをそれで説明するのは無理でしょうが、我が国でしばしば報道される「内縁夫などが絡むネグレクト殺」は、上記の話に似ているような印象を受けます。

乳幼児は自らがその命を守るための行動をとることはできないのですから、国家・社会が、刑法(殺人罪)などを設けてその防止の必要性を認めている以上、乳幼児の虐待殺の防止(安全確保に止めず、子自身の生活の質の向上を含め)のため、より実効性のある措置を講ずべき時期に来ているのではないかと強く感じます。

監視社会との批判もあるかもしれませんが、例えば、乳幼児期には行政等の第三者(委託された相当な企業・民間団体などを含む)が定期的に面談して安否などを確認するような制度(もちろん単なる監視・調査の制度ではなく、様々な相談などを通じて育児家庭を支援することを目的としたもの)を推進すべきではと思うのですが、そうした取り組みをしている自治体とか政治家などはいないのでしょうか?

国民・住民たる乳幼児の安全を守るのは国・自治体の責任だと法律等で明確に位置づけ、例えば、乳幼児を監護する者(親権者など)には、予め策定した要綱等に基づき行政が相当と認めた者(保健師、民生委員、相応のNPOなど?)と一定の頻度で安否確認などを目的とする面談を義務づける制度を設けるべきと思っています。

面談を通じて不穏な情報やその潜在的可能性のある事案では児相などに通報→早期に実情把握・調査や受け皿の確保などを行うとのイメージです(それを踏まえた児相や警察の実働強化などの整備は当然です)。

もちろん、ほとんどの家族にとっては相応の負担になりますから、頻度等は家族側の既存の監護体制等に応じて区分すればよいでしょうし、相応の財源が必要になりますが、それは「次世代を守るのは旧世代全体の役目」ということで、相続税の増税(基礎控除の縮小を含め)が一番ではと思っています(とりわけ、被相続人との関係が希薄なのに棚ぼた的に高額財産を取得する事案が近年では増えており、通常の相続よりも税率を大幅に上げてよいと思います)。

facebookでこうしたことを書いたところ、他の先生から地域保健師の制度があるとの指摘をいただきました。

保健師についてはほとんど存じておらず(そういえば盛岡市から健康指導を受けよと書かれてある通知を過去に受けたものの、多忙を言い訳に放置してしまったことはあります)、ネット検索したところ、こんな会社さんがあるのを見つけました。
http://www.hokenshi.com/job.html

各論は様々な方法・議論があるとは思いますが、「こどもファースト」の精神で制度の構築や運用を考えていただきたいものです。

(H30.6追記)
H30.6に発覚した目黒の虐待死事件(報道では妻の連れ子を再婚男性が虐待とありましたが、養親関係はあるのでしょうか)や岩手県北上市の実父育児放棄死事件を機に、この投稿を思い出して読み返すと共に、表現を微修正しましたが、当時と今とで実務に大きな伸展がないように思われます(引用したニュースも現在は閲覧不能とのことで、恐らく大阪や首都圏で生じた虐待殺事件ではと思いますが、要旨だけでも書いておくべきでした)。

実効性のある予防制度が構築されるまで、あと何人の子が虐待殺人の犠牲にならなければならないのかと、残念な思いを禁じ得ません。

なお、H29.12.13付で里親(里ジジ・里ババ)の強化(彼らの関与を通じた、ゆるやかな相互扶助と相互監視)について投稿しており、そちらも参照いただければ幸いです。