北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

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企業倒産

まちの企業の盛衰と秋の空

近年、企業の管財事件を受任する機会はめっきり減ってしまいましたが、数年前は、論点や作業量が非常に多い事件を受任し、延々と様々な作業に追われ、何年もかけてようやく決着の目処が立つという案件を担当したことが何度かありました。

そのうちの一つで、県北方面の林業関係のA社さんの事件は、これまで取り扱った中でも1、2を争う面倒な管財事件で、配当財団の形成額が大きくないことなどから、報酬額はタイムチャージ換算で大幅な採算割れとなりました。

まあ、毎度ながら、勉強代だと溜息混じりに前向きに考えるようにしていますが。

A社さんは古くから県北のB町では著名企業として知られ、業界内では環境絡みで先進的な取り組みをしたことで県内などでも相応の知名度のある企業でした。

資金繰りなどで長期の苦難があり震災でも大きなダメージを受けたため、倒産のやむなきに至った事案でしたが、直近に一部の債権者との間で面倒なトラブルが生じていたほか、数年来の未処理の論点(しかも、申立書に記載されず後で判明したもの)が非常に多く、沢山の課題が丸ごと私(管財人)に山積みされる形となりました。

幸い、最大の課題であった企業施設(現地工場)の売却問題は、利害関係者である銀行なども含め多数の企業さんと様々な交渉を行った末、東京の会社さんに「従前の事業を承継しつつ設備投資をして発展させる」との方針で購入(落札)いただき、それに伴い元従業員の方々も再雇用を得ることができたと聞いています。

その後も、この事件では、原発ADRやら東京出張やら色々と作業に追われ、追加で現地確認の必要が生じて3年目の10月頃にもドライブがてらで行ってきましたが、その日は、晴れあり雨あり虹ありと、コロコロと天候が変わる秋の空でした。

A社は、先代のC氏が大きくした会社を息子のD氏が引き継ぎ、D氏が様々な悪戦苦闘をしたものの上手くいかなかったもので、終末期に色々と残念な話があり、その処理に私が追われました。

D氏の経営者としての未熟さが倒産の原因と考えるのか、先代のうちに破綻の芽が生じてD氏は割を食わされたと見るのか、一概に言えないと思いますが、私も「田舎の小規模な企業の社長の子」の一人として、A社の方々が辿ってきた様々な歴史や光景に想像を巡らさずにはいられませんでした。

そんなわけで、秋の空に物事の移ろいやすさとそれに翻弄される人々の姿を感じて一首。

ままならぬ人の世を知る秋の空 酸いも甘いも青の彼方に
ふるさとの誇る企業も常ならず 揺れる紅葉に風吠える森

この事件ではA社側がB町の中心部に所有する不動産を町が買い取ることとなり、役場の偉い立場の方が私と協議したいとのことで、来所されました。

これだけ苦労させられた事件ということもあり、いっそ、この事件を円滑に処理したことでどれだけ自分がB町に貢献したかをアピールし、将来の顧問契約を考えてくださいね、などと営業活動に勤しもうと思わないでもありませんでしたが、そんなときに限って前日が徹夜作業を余儀なくされて覇気がなく、淡々と相槌を打つ程度のやりとりに終わってしまいました。

田舎のしがない町弁が欲を出そうとしても、諸行無常の響きには勝てそうにありません。

企業倒産に関しては、年末に経営継続を断念される方が時折あり、昨年は急な要請で2日ほど徹夜作業を余儀なくされ数日で一気に破産申立を行ったこともありましたが、今年は現在のところ、そうしたご依頼はなく、静かな年末になるのかもしれません。

令和2年の取扱実績②債務整理・倒産、交通事故等(賠償)

前回に引き続き、令和2年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(3) 債務整理と再建支援

10年以上前(リーマンショック期)と比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減り、新型コロナウイルス禍の中でも、この傾向は大きく変わっていません。

ただ、本年3月まで社会福祉協議会の相談担当をしていたせいか、「総債務額は大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入のため自己破産をせざるを得ない方」からの受任は一定数ありました。他にも、「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンの返済中で、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」の依頼があり、また、「諸事情により法的手続を希望せず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。

近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。
 
昨年も、債務額などに照らして民事再生又は自己破産の手続をとるべき債務者の方が、インターネットで広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を前代理人に支払うだけで数ヶ月を空費した)というケースを経験しています。

昨年、過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず後日に様々な問題が生じますので、そうしたことも視野に入れて早期のご相談をご検討ください。
 
企業倒産(破産管財)に関しては、昨年は「企業の管財事件」の受任はなく、小規模な企業の代表者個人のみの破産申立事案の管財人を担当した程度でしたが、中には、企業の関係者に様々な問題があり、労働者健康福祉機構への未払賃金立替請求が正当な理由なく行われていると判断され、それに対する対応に苦慮するなどした案件もありました。

申立代理人としては、震災後、辛うじて経営を続けていた小売業の会社さんがウイルス禍により継続を断念し事後処理を依頼された案件があり、商品売却などの目処をつけた上で、会社及び代表者双方の申立を行っています(特殊な事情があり、最初は代表者のみの破産申立を行い、後日、裁判所の勧告により会社の破産申立も行いました)。

今後はウイルス禍の長期化により倒産増加が懸念されており、小規模飲食店の経営者の方から営業不振による事業閉鎖を前提とした相談を受けたことが複数あります。

また、昨年から「金融機関(銀行等)にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を継続保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」を活用して解決すべき事案の依頼を受けています。金融機関の内諾を得て昨年中に概ね順調に換価作業などを終え、現在、弁済計画を策定し、交渉の山場にさしかかっています。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましいケースが多くあります。あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき、知人などで必要とする方がおられれば、伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、免責不許可事由の調査を要したケースや山林の換価が問題となった案件などを担当しています。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

昨年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により、本来であれば数十万円からそれ以上を要する弁護士(当職)への委任費用について、自己負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係と評価)が主たる争点となる事案物損の金額が争われる事案むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額算定が中心となる事案重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が必要となる事案など、幅広く取り扱っています。

過失割合が争点となった物損事故では、1審(簡裁)で納得できない判決を受けたため、控訴したところ、2審(地裁)で、1審を取り消し当方の主張も踏まえた新たな過失割合の勧告を得て、了解可能な和解で終了できた案件もありました。

事故直後など、加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、「神経障害に関する後遺障害(14級9号)」をはじめ、幾つかの後遺障害につき、認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

ともあれ、自動車保険などでは、必ず弁護士費用特約が付された任意保険にご加入ください(相談のみの特約に加入される方もおられるようですが、必ず委任費用を対象とした保険にご加入下さい)。近年、弁護士費用特約(保険)は、企業クレーム対応や労働事件、家事事件(離婚等紛争)などにも導入されており、活用をご検討ください。

 

平成30年~令和元年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。ただ、本来の予定が大幅に遅れ、昨年=令和元年分は本年8月にようやく顧問先に送付しており、ブログでも載せようと思いつつ、余裕のない状態が続き、現在に至りました。

その上、さきほどブログを見返したところ、2年前=平成30年の業務実績の掲載を失念していたことに気づきました。

というわけで、今回は、平成30年・令和元年の実績概要をまとめてお知らせします。

当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

当事務所は、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部の紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などに関する様々な紛争の解決や法的処理のご依頼に対応しており、この5大分野が業務の柱となっています。

近時は①②の受任が多くなっていますが、企業の重大な紛争や大型の行政訴訟(現在は行政側での受任)など他の様々な事件の解決やご相談の対応にも注力しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する問題では、受注業務を巡る紛争や賃貸借に関する典型的な紛争などほか、2~3年前に社会問題化した「詐欺まがいの求人広告(無料出稿を装い簡易なFAXのみで契約させ、最初の無料期間経過後に当然に有料に移行したとして高額な請求を行うもの)の請求」に関する対応依頼などもありました。

また、「建築瑕疵の是非などを巡って複雑な争いがある賠償請求訴訟を建設会社側で受任した事案」、「商業店舗の賃貸借に関し、貸主側の対応の不備に起因し借主が退去等を余儀なくされたため、借主代理人として貸主に賠償請求した事案」などを受任し、責任論(賠償責任があるか)・損害論(責任があるとして、どの程度の請求ができるか)を巡り激しく対立した訴訟などを担当しています。

これらは相応に主張立証を尽くし、裁判所から相当な和解勧告を受けて解決しています。

他にも、取引先への売掛金請求に関する事案(請求者側)や、以前に契約関係にあった相手方企業から不当な要求を受けたため、必要な反論を行い要求を退けた事案などを扱っています。

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企業の内部紛争に関しては、「小規模な企業の経営者Bに頼まれ中途就職したAがBから企業承継(買取)を要請されて応じたものの、後日、Bに不正行為が発覚したとして、Bの法的責任を問う必要が生じた事件」をA氏側代理人として受任した案件があります(本年、1審で勝訴判決を得て、控訴審で勝訴的和解が成立しました)。

ある企業が有期契約社員の方が問題を起こしたため更新拒絶(雇止め)を行ったところ「辞めさせるのは違法だ」と主張され地位確認等(解雇無効)請求を受けた事案で、企業側代理人として2~3年ほど対応した案件があり、昨年、1審勝訴→2審も勝訴維持の心証を前提とした解決を得ています。

また、以前にA社を共同経営していた親族同士が数十年前にA社・B社に分離し互いに単独で企業を経営していたところ、近年になりB社がA社に重大な背信行為に及んだことが発覚したため訴訟を余儀なくされ(A社代理人として受任)、過去の様々な経緯から双方が激しく対立する事案なども担当しています。

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当事務所では、一般的な顧問料による顧問契約だけでなく、9年前から月額3000円(税別)による顧問契約をお引き受けしており、ここ2~3年は、顧問先の方々から、様々なご相談や簡易なご依頼などを受ける機会が増えてきました。

今後も、多くの県内などの中小企業・団体などの方々にとって利用しやすい利用頻度に応じたリーズナブルな顧問契約のあり方を追求すると共に、早期のご相談と必要な対処を実現し、手遅れになる事態の回避ひいては弁護士とご本人が共闘して物事の機先を制する、能動的・戦略的なリーガルサービスの提供につとめてまいりたいと思います。

(3) 債務整理と再建支援

震災以前に比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減りましたが、現在は「債務総額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入と住宅ローンがあり、住宅を維持しつつ他の債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」からの依頼が多い傾向にあります。

また「法的手続をせず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。

近年は、債務額などからは民事再生や自己破産の手続をとるべき方が、Web上で大々的な広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、成果もないまま後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を無為に前代理人に支払ってしまっている)というケースに遭遇した(依頼を受けた)ことが何件もありました。

過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず、後日に様々な問題が生じます。

債務整理に限らず、弁護士への依頼にあたっては、そうした事柄(後悔を余儀なくされた方が現に何人もおられるという現実)も視野に入れて早期のご相談をご検討ください。

過払金請求は時代の変化に伴い依頼を受けることがほとんどなくなりましたが、債権譲渡など特殊な論点が絡んだ事案の依頼があり、貸金業者側代理人との激しい闘いの末、裁判所から相応の和解勧告を受けて解決したものがあります。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成28年に受任した相応の規模の建設関係の会社について、権利関係の処理がようやく完了し配当に向けた手続を行ったほか、小規模な事業者の方の管財事件で、動産の売却や原状回復の問題など様々な法的対応に負われました。

近年はごく小規模な企業の受任に止まっていますが、債権回収などを巡って特殊な交渉が必要になった案件実質的な経営者である元従業員に色々と問題があり、相応の対応が必要になった案件などを担当しています。

申立代理人としても、個人経営の飲食店の自己破産申立などを受任しているほか、本年になって「銀行等にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を将来も保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」により解決すべき事案のご相談を受け、現在も諸々の準備を行っている事案があります。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましい案件がありますが、あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき知人などで必要とする方がおられれば伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、山林の換価が問題となった事案や個人への貸付の調査が必要になったケースなど、幾つかの事案を担当しています。

 

企業倒産の実務と経営者保証ガイドライン(盛岡北RC卓話)

先日、盛岡北RCの卓話を担当したので、時勢も踏まえ、企業倒産の実務を取り上げることにしました。

金融機関以外にはほとんど負債のない事業者であれば、経営者保証ガイドラインにより破産よりも遙かに良好な解決を得やすいのですが、世間一般には知られていませんので、同GLに力点を置いた説明にしました。

卓話で用いた事例とレジュメの目次を掲載しますので、事業者の方などは参考にしていただければ幸いです。

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小問1 

岩手県内で物販業(一般向けの生活用品の販売等)を営むA社の代表取締役Bは、長年に亘りA社の営業不振が続き、日々の運転資金の支払も銀行借入や各種債務の延滞などをしなければ困難な状況に陥り、現状では営業の継続は不可能と考えた。A社は、銀行3社(岩銀、北銀、みずほ銀)に計1億円(岩5000万円、北3000万円、み2000万円)、取引先20社に未払買掛金計2000万円(最大500万円、最小10万円)、未払公租公課(税金、社保料など)4庁・計500万円の債務があり、賃金も2ヶ月分・従業員10名計400万円が未払となっている。

他方、現時点の資産は、手持ち現金が50万円、未収売掛金が10箇所計300万円、商品在庫などが多数(定価どおりに販売できれば1000万円以上だが、販売目処の立たない老朽在庫も多い)となっている。

Bは、銀行3社(1億)と取引先も4社ほど(800万円)、連帯保証している。

A及びBの債務問題を解決するため現実的に可能な法的手続は何か、法的手続の概要や、受任弁護士が特に検討・対応すべき課題などを説明しなさい。

小問2

岩手県内で飲食店を営むC社の代表取締役Dは、先般から社会で生じた問題により数ヶ月売上の急減が続き、手持ち資金に余裕があるうちに、経営継続を断念することとした。Cの債務は、金融機関2社に計5000万円(東銀3000万円、公庫2000万円。D保証付き)のほかは、20万円以下の小口の買掛が数件あるのみである。他方、Cの営業資産は限られたものしかないが、現在300万円の現預金がある。Dは預金300万円のほか、数年前から住宅ローン返済中の自宅があり、Dは近々転職し給与収入で住宅ローンの支払を続けたい希望である。

C及びDにとって最も賢明な「店じまい」を実現するための法的手段は何か。また、実現にあたって特に検討すべき点を説明しなさい。

【目次】

第1 様々な債務を抱えながら資金枯渇した企業の倒産処理
1 企業の債務整理・倒産処理に関する法的制度
2 個人の債務整理・倒産処理に関する法的制度(参考)
3 東日本大震災で被害を受けた企業等を対象とする特例的な救済手続
4 新型ウイルス禍に伴う支援制度の紹介例や弁護士会等の取組み等

第2 小問1 多額・多様な債務を負う一方、現預金が足りない企業の場合
1 A社の手続の選択と初動対応
2 破産手続(申立後)の一般的な流れ
3 Bの手続

第3 小問2 ほぼ金融機関の債務だけの小規模事業者が早期撤退する場合
1 C及びDの置かれた状況と方針選択
2 経営者保証GLスキームに基づく会社債務の整理(換価・弁済)
3 経営者保証GLスキームに基づく保証債務の整理

第4 結語
かつてのように「生命保険で支払う」などは絶対にしない・させない

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以上の内容について、ご自身(の所属団体など)で話を聞いてみたいという方がおられれば、ご遠慮なくお声がけください。

平成29年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、2月前後に業務実績を顧問先に送付し、時間を置いてブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

平成29年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。

ここ数年は①と②の受任が多くなっていますが、③も自己破産や個人再生の受任が増加傾向にあります。企業の取引や内部紛争などに関するご依頼は件数こそ多くないものの、昨年も、大規模な事案を含む様々な事件の解決やご相談の対応に注力しました。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する紛争の例としては、商業店舗の土地建物の賃貸借に関し問題が生じ、借主が貸主に賠償請求している事案を担当しています。

少し具体的に述べると、商業店舗を営むX社がY社から建物を賃借し店舗経営していたところ駐車場用地の一部がY社ではなく第三者(以前に当該建物を所有していた企業の関係者A)の所有になっており、そのことをYが把握しないまま、Aが当該土地を隣地所有者Bに売却し、BがXに当該土地(駐車場用地)の明渡を請求をしたため、Xはこれに応じざるを得なくなりました。

そのため、Xは、駐車区画の大幅減少を強いられ集客に必要な駐車場用地が確保できず契約目的(店舗経営)が達成できないとして、賃貸借契約を解除し他所に店舗を移転し、移転経費や移転期間中の逸失利益についてYに契約違反を理由に賠償請求をしました。

当方(X)に対しYは「移転の必要はなかった」などと主張し全面的に請求を争っており、現在も裁判が続いています。

他にも、建築瑕疵の是非などを巡り複雑な争いがある建築紛争を建設会社側で受任した事案もあります。

企業の内部紛争に関しては「NPO法人αがA町から大規模な震災復興事業を受託した際、α自身が高額資産の所有者になることができないという行政のルールに起因して、事業の受皿企業としてβ社を設立し、αがAから送金された受託費をリース料名目でβに送金し、βの名義で資産購入とαへの貸与などを行っていたところ、αが破産し、管財人Xが『その資産の所有者はβではなくαだ』と主張し、βに対し資産の引渡しなどを求めた(が、β代表者γ氏には直ちにこれに応じることができない事情があり一定の交渉が必要となった)」という事件(協力関係にあった企業間の財産の帰属を巡る紛争)につき、β社から依頼を受けて対処する案件を担当しました。

これは補助金の巨額不正使用などで世間を震撼させた「大雪りばぁねっと」事件を巡る民事紛争であり、様々な偶然(ややこしい事情)から民事裁判の開始後間もなくγ氏(大雪の代表者ではありません)より依頼を受け、管財人の適正な業務に協力しつつ、γ氏として法律上正当な権利ないし利益の確保(利害調整)を目指すことになりました。

そして、膨大な関連事務を経て主戦場となった事件では1審で勝訴したものの2審で裁判所の勧告に従い和解で終了、という展開を辿りました。

大雪事件では民事・刑事で様々な弁護士が事件に関与していましたが、管財人や大雪の代理人をはじめ、民事事件を担当していたのはほとんどが東京の弁護士の方で、民事事件に関与していた岩手の弁護士は実質的に私だけでしたので、依頼者の正当な利益を図りつつ地元の弁護士として事件の適正解決に貢献するとの気持ちで取り組んでいました。受任から完了まで約2年半を要し、学ぶところの多い事件でもありました。

企業の内部紛争に関しては、他にも、未払賃金などの労使紛争、企業の役員の不正行為が発覚し責任追及をした事件などで代理人として対応しています。企業取引に関しては、中小企業庁の「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者に対する売掛金請求や発注者の不当対応への対処についてご相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は「総債務額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンがあるため、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」、「銀行に数十万円の借入があり、リスケジュールのため任意整理を希望する方」からのご依頼が増えています。

また、10年以上前に借り入れた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け消滅時効などにより解決を求める事案も増えています。

過払金訴訟は時代の変化に伴い依頼を受けることがほぼなくなりましたが、債権譲渡を含む特殊な対応が必要となる事案の依頼があり、業者側も多数の論点について全面対決の姿勢を示しているため、適正解決のため懸命に取り組んでいます。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成27年に管財人を拝命した製材等を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復などの事務処理や法的手続が必要となり、平成28年に受任した建設関係の会社についても、多数の不動産の任意売却や不動産利用を巡り錯綜していた権利関係の整理、労働債権の対応など、様々な法的対応に負われました。

また、金融機関に巨額の債務がある一方で他にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受け、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で定める額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現するため、不動産の任意売却などを含め、2年ほど交渉を続けた事案で、昨年に特定調停により自宅マンション(無担保)を処分せず残存させるなど当方の希望に沿う解決を実現することができました。

個人の方の破産管財についても、破産手続以前に親族への無償譲渡行為があり否認権を訴訟で行使し配当を実現した例や個人事業主の方など、幾つかの事案を担当しています。

平成28年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、1月か2月頃に業務実績を顧問先にお送りして、その後にブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

平成28年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。

全般的には、①②は件数も多く論点も様々で、③④⑤は件数こそ多くないものの作業量や問題となる点が多い大型案件の解決に力を注いだ1年になりました。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

①旧所有者による廃棄物の不法投棄に伴う撤去費用を請求した事件

A氏が建物の建築目的で岩手県内の某土地を不動産業者Bから購入しC社に建築工事を発注したものの、着工後まもなく土地の地下にコンクリートガラや廃材などの廃棄物が埋設されているのが発覚したのでC社が調査したところ、10年以上前に同土地でD社がコンクリート製の建物を建築して営業しており建物解体の際に不法投棄された疑いが濃厚だとして、D社の責任を求めたいという相談を、C社(A氏から相談を受けて被害解決の窓口役を担当)から受けたという事件があります。

直接の被害者はA氏ですが、瑕疵担保責任などの事情からA氏に土地を売却したB社にも被害が生じ、最終的にC社にも様々な損失が生じるおそれがあった事案で、実質的にはB・C社vsD社側の様相を呈しました。

様々な検討の結果、D社側に賠償責任を問うべき案件として請求したところ、D社は「残置物は自分達の建物の解体物ではなく埋設もしていない」などと全面的に争ってきたため、D社側を相手に賠償請求しました。

D社側が全面対決の姿勢を示し「埋設された物はどこから来たのか、どうしてその土地の地下にあるのか、個別の埋設物とD社建物との結びつきはどうか」などの様々な問題について広範な主張立証を余儀なくされたほか、撤去費用の相当性なども争点になり、2年以上を経てようやく裁判所から和解勧告が出て、完全な満足ではないものの埋設物がD社建物から生じたものであるとの前提でD社側が相当の費用(解決金)を支払うという当方の主張を十分に酌んだ内容の勧告をいただき、協議がまとまりました。

膨大な労力を投入せざるを得ず、消耗の大きい事件でもありましたが、不法投棄問題に関しては日弁連の活動を通じ廃棄物処理法のルールを多少は存じており、その知見を活かすこともできたので、その点は何よりでした。

②業務委託契約で途中で問題が発覚し頓挫した後、報酬や損害の負担が争われた例

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として対応し、当方の請求を認める判決をいただき無事に回収して終了したものがあります。

受注した事業に関する行政手続上の不備(Aが事業のため用意した設備に関するもの)で事業が途中で頓挫したため、Bは「契約時のAの説明に問題があった」と主張して支払義務を争い、Aに賠償請求しましたが、契約の締結から事業の破綻までにいたる事実経過を丹念に説明し、双方の尋問結果も踏まえ、Aの対応に特段の問題はなかったとして、Bの主張が退けられました。

ただ、A側も事業の準備のため多額の経費を投じたものの経費を賄うだけの売上を得られたわけではなく、両社痛み分けに終わった面もないわけではありません(A側にも見通しの甘さなどの反省点はあったと思います)。

この件のように受発注の対象となった事業の継続性に何らかのリスクが内在する場合は、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じることが非常に多くあります。

事前にリスクを予め検討して明確化すると共に、そのリスクが現実化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかを予め契約書などで明示しておくことで、裁判等による紛争の長期化、高負担化を避けることができます。

契約前にそれらのリスクや不安を具体的に弁護士に説明いただければ、それに見合った文言などを整備し紛争に備えると共に、問題が生じる可能性や生じた場合の帰結を互いに意識しておくことで、リスク発生を防ぐよう互いに努力する契機とすることもできますので、事業者の方々におかれては、「ご自身が従事する事業に内在するリスクの確認と対処(弁護士への相談を含め)のあり方」を強く留意いたきたいところです。

③その他の紛争としては、「Bビルに入居していたA社が短期間でCビルに転居した際に、Bビルの入居時に差し入れた敷金の返還(破損部分の修繕を除いた残金)を求めたところ、AB間の契約書に壁紙やカーペットなども全面的に取り替える趣旨の特約(通常損耗負担特約)が含まれていたため、Bがそれらの交換費用等を理由に敷金全部の返還を拒否し、Aが納得できないとして返還請求した訴訟」をA代理人として対応しています。

事業者間の紛争であるため消費者契約法が適用されないものの、敷金に関し過去に積み上げられた議論や最高裁判決の趣旨などを踏まえ、本件では通常損耗を借主に負担させる合意は成立していないと主張し、それを前提とした勝訴的な和解勧告をいただき解決しています。

他に、中小企業庁が行う「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の不当対応についてご相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は、「総債務額が極端に大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方(生活保護の方を含め)」からの依頼が増えており、社会で広く言われている格差や貧困の問題を実感させるものとなっています。

企業倒産(破産申立)に関しては、約10年前に民事再生の手続の依頼を受けていた会社さんが様々な事情から法律上の問題が顕在化し、それらの整理・解決のため本年になって自己破産の申立を余儀なくされたという事案があります。

企業に関する破産管財業務では、平成27年に管財人に就任した製造業を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復作業などの事務処理や法的手続が必要となり、本年に受任した建設関係の会社についても多数の不動産の任意売却や賃借関係の処理、労働債権の対応など様々な法的対応に負われました。

また、金融機関に巨額の債務がある一方で、それ以外にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受けて、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せずに債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現すべく、現在も交渉している案件があります。

他に、個人の方の破産管財人を受任した事案で、破産手続前に親族への無償譲渡行為があり、否認権を行使すると共に、債権者への配当原資の確保のため様々な工夫を行ったケースなどがあります。

(以下、次号)

平成27年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。1月には昨年(平成27年)の業務実績を顧問先にお送りしていますが、遅まきながらブログでも掲載することにしました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し3回に分けて掲載します。

(1) 全体的な傾向など

平成27年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の事業や内部事務に関する紛争の3分野が業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として受任しています。受注した事業に関する行政手続上の不備で事業が頓挫しており、AB双方とも「契約時の相手方の説明に問題があった」と主張して賠償請求したという事件で、現在も訴訟が続いています。

このように、受発注の対象となった事業に何らかのリスクが内在する場合には、そのリスクが顕在化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかという点を予め契約書などで明示しておかないと、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じる可能性が高くなりますので、リスクを予め確認し責任の所在を明確化すること(弁護士の活用も含め)にご留意下さい。

内部紛争の例としては、ある協同組合の内部で問題を起こした組合員に対し組合が除名処分をしたところ、組合員が処分の無効を求めた訴訟について、組合側代理人として担当し当方(組合)の主張が全面的に認められて勝訴・確定したという例があります。

また、ある財産がA法人とB法人のどちらに属するかなどを中心に様々な法律上の争点が生じて複数の訴訟が係属している事件、転職した従業員が元の勤務先の顧客情報を転職後の営業活動に使用したとして賠償請求された事件などを手掛けています。

昨年も、中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっており、「高利業者との取引に基づく過払金請求」も法改正等の影響でほとんど無くなりました。

企業倒産に関しては、数年前は倒産分野の多数を占めた建設業界に代わって、IT関連のサービスを展開する企業高齢者向けの弁当配達事業を行う企業の方から破産申立のご依頼があったほか、「燃料等に用いる木製ペレット等の製造・販売を営む会社」の破産管財人に選任され、企業施設の譲渡や債権回収など様々な論点・事務の対応に従事しています。

近年、「金融機関以外には負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)向けに、一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い額を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)」が導入されており、これによる解決が可能か模索するご相談を受けたこともあります。

個人の債務整理については、昨年同様に過払金請求のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くなく生活保護やそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からの自己破産のご依頼が幾つか見られます。中堅所得者の方からの個人再生のご依頼(住宅ローンを維持して他の負債を減縮することを含む)も幾つか見られます。

破産管財人を担当した方では、親族の保証人となった関係で破産を余儀なくされ、所有不動産の処理(売却。関係者の支援を含む)などの問題が生じたケースや、小規模な個人商店を営んでいた方が親御さんの代から長年続いていた高額な負債や事業不振などの問題を解決するに至らず倒産のやむなきに至ったという事案などを担当しています。

(以下、次号)

平成26年の業務実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から、毎年1回、前年度の業務実績の概要をブログで公表しています。昨年(平成26年)の業務実績は、顧問先には1月頃にお送りしたのですが、多忙等を言い訳に、ブログに掲載するのが遅れてしまいました。

長文ということもあり、今回は、3回に分けて掲載します。分類については、当事務所HPの「取扱業務」に基づいています。

(1) 全体的な傾向など

平成26年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の商取引や内部事務に関する紛争の3点が、受任業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

反面、本年も債務整理・倒産等の業務は、全国的な傾向と同様、数年前と比べて大幅に減少しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

食品製造委託取引を受注した企業Xが、発注者だと認識するY1社に代金請求したところ、Y1が「発注者はY1ではなく(XにY1社を紹介後、事業停止となった)Y2社だ」と主張してきたため、Y1が発注者(債務者)だと主張して支払を求めた事件で、無事に当方の主張が認められ、Y1から支払を受けたという例がありました。

複数の企業が発注側に介在する場合には、「誰が代金債務を負担するか(誰が発注者か)を巡る争い(支払責任をなすりつけ合う紛争)」は頻繁に生じますので、そのような取引に関与される際は、責任の所在を明らかにさせるよう、強くご留意いただきたいところです。

また、経営者が交替した法人で新経営陣が旧経営者に不正行為があると主張して訴えた事件で、旧経営者の依頼で役員欄に押印(名義貸し)した法人とは無関係の方が巻き添え的に提訴され、ご依頼を受けた事件があり、事実経過や相手方の主張の問題点を詳細に主張したところ、相手方(原告)が当方に責任がないことを認めて和解で終了したという事件もありました。

当方の主張が認められたとはいえ、名義貸しは多くのリスクを伴いますので、名義貸しの要請を受けた場合には、極力、拒否いただき、一定の形が不可避といことであれば、後難を避けるための適切な措置を講ずるなど(弁護士に相談いただくべきでしょう)、ご留意願います。

その他、特殊な工事の代金請求に関する紛争(当方は受注者側。相手方が、当方の責任で工事が頓挫したと主張し支払拒否しているため、責任の所在が争われているもの)、採用後ほどなく退職した元従業員の方が申し立てた労働審判(企業側代理人として担当)、協同組合の内部で問題を起こした組合員の処分の当否を巡る訴訟(組合側代理人として担当)などを手掛けています。

中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき、小規模な下請業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっていますが、企業倒産に関しては、かつて多数を占めた建設業界に代わって、福祉やITなど広義のサービス業に携わる企業の方からご依頼がありました。

個人の債務整理については、昨年同様、「完済後の過払金請求」のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くはないものの、生活保護ないしそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からのご依頼が増加傾向にあります。

破産管財人を担当した方で、多数の農地等を有するものの市場性が乏しく売却に困難を来したり(様々な手法をとることで、一定の農地を売却できたこともあります)、保険契約などで名義貸し(実際の保険料を親族が支払っている事案)が関係する例(原則として名義人の財産として換価対象となりますので、ご家族の名義でご自身が保険料を支払って契約をなさっている方はご留意下さい)などがありました。

管財手続が終了した後の会社の権利関係の処理(放棄された不動産の売買など)に従事することも何度かありました。

(以下、次号)