北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

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債権回収

令和2年の取扱実績①全体、中小企業法務

当事務所では年1回、前年の業務実績の概要を顧問先に送付した上で後日にブログで公表しています。顧問先には5月に送付しましたが、諸々の理由でブログへの掲載が遅れ、いつの間にか年末になってしまいました、

が、このまま越年するのもいかがなものかということで、今更ながら、昨年=令和2年の実績概要をお知らせします。本年=令和3年の実績概要は、来年の中頃?までお待ち下さい。

当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

当事務所は、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などに関する様々な紛争の解決や法的処理のご依頼に対応しており、昨年も、この5大分野が業務の柱となっています。

ここ数年は①と②の受任が多くなっていますが、他にも企業の深刻な内部紛争や個人間の各種の民事訴訟など、様々な事件の解決やご相談の対応にも注力しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する問題では、企業間の賃貸借に関する紛争や競業企業との対人トラブルに関して対処した事案のほか、従前から取引等のある企業間で不当とみられる金銭等の要求があり、要求を受けた側の依頼で、支払拒否や既払金返還請求などの対処を行っている案件があります。

これは、α社のA社長がβ社のB社長に勧めた商取引に関連し、豪腕経営者のBが、Aの勧めに応じる代わりにAに過当な要求を行い、立場の弱いAが念書に応じてしまったところ、後年にBから膨大な金額の請求を受けたため当職に支援を求めてきたものです。BがAに差し入れた念書は、内容の不当さもさることながら、法律上も多額の金銭請求が認められるべきではない(道義的念書に過ぎない)と感じられる案件です。

そこで、A側の依頼により、B側に対し支払拒否や正当な理由のない既払金の返還を求める訴訟を提起しましたが、Bも総力を挙げて対抗しており、厳しい対立の中、現在も予断を許さない状況で審理が続いています。
 
企業の内部紛争に関しては、「小規模な企業の経営者Bに頼まれ中途就職したAがBから企業承継(買取)を要請されて応じたものの、後日、Bに不正行為が発覚したとして、Bの法的責任を問う必要が生じた事件」を3年ほど手がけており、1審で概ね全面勝訴し、2審でもその判断が維持された勝訴的和解が成立しました。

この事案は、債権回収に様々なハードルがあったのですが、工夫や調査を重ねたところ、運良く「隠し財産」を発見し、無事に強制執行で判決に基づく全額を回収することができました。

また、特定の事業を営む自営業者の団体A(権利能力なき社団)が高齢従業員Bに対し様々な事情から定年時の再雇用拒否を行ったところ、Bが、Aの前代表者(団体の総会で退任した方)が退任前にBに定年後の雇用継続を約束したなどと主張し、地位確認等請求の訴訟を起こしてきた事案を受任しています。

この件は、Aが零細自営業者の集まりで労働法等のルールに通暁していないことや団体の事情からA側にも一定の不手際がみられたものの、様々な事情を立証し定年後再雇用の合意がなく、労働契約法19条の類推適用なども認められるべきでないと主張したところ、Bが自らの主張を撤回し、当方の主張どおりの勝訴的和解により終了できました。
 
また、以前に共同経営していた親族同士が数十年前に分離して互いに単独で企業を経営していたところ、近年になって重大な問題が発覚し、複雑な法的論点が生じて訴訟を余儀なくされ、過去の様々な経緯から、双方が激しく対立する事案を担当し、本年、第1審で無事に勝訴判決を受けました(先般、控訴審で当方の勝訴的和解がなされています)。

また、企業内部の事柄(法的事務処理)として「会社の大半の株式を保有する株主が、ごく僅かな比率の株主から強制的に株式を取得するための手続(会社法179条に基づく株式等売渡請求)」を受任し、本年、無事に手続を完了した案件があります。

 

平成26年の業務実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から、毎年1回、前年度の業務実績の概要をブログで公表しています。昨年(平成26年)の業務実績は、顧問先には1月頃にお送りしたのですが、多忙等を言い訳に、ブログに掲載するのが遅れてしまいました。

長文ということもあり、今回は、3回に分けて掲載します。分類については、当事務所HPの「取扱業務」に基づいています。

(1) 全体的な傾向など

平成26年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の商取引や内部事務に関する紛争の3点が、受任業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

反面、本年も債務整理・倒産等の業務は、全国的な傾向と同様、数年前と比べて大幅に減少しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

食品製造委託取引を受注した企業Xが、発注者だと認識するY1社に代金請求したところ、Y1が「発注者はY1ではなく(XにY1社を紹介後、事業停止となった)Y2社だ」と主張してきたため、Y1が発注者(債務者)だと主張して支払を求めた事件で、無事に当方の主張が認められ、Y1から支払を受けたという例がありました。

複数の企業が発注側に介在する場合には、「誰が代金債務を負担するか(誰が発注者か)を巡る争い(支払責任をなすりつけ合う紛争)」は頻繁に生じますので、そのような取引に関与される際は、責任の所在を明らかにさせるよう、強くご留意いただきたいところです。

また、経営者が交替した法人で新経営陣が旧経営者に不正行為があると主張して訴えた事件で、旧経営者の依頼で役員欄に押印(名義貸し)した法人とは無関係の方が巻き添え的に提訴され、ご依頼を受けた事件があり、事実経過や相手方の主張の問題点を詳細に主張したところ、相手方(原告)が当方に責任がないことを認めて和解で終了したという事件もありました。

当方の主張が認められたとはいえ、名義貸しは多くのリスクを伴いますので、名義貸しの要請を受けた場合には、極力、拒否いただき、一定の形が不可避といことであれば、後難を避けるための適切な措置を講ずるなど(弁護士に相談いただくべきでしょう)、ご留意願います。

その他、特殊な工事の代金請求に関する紛争(当方は受注者側。相手方が、当方の責任で工事が頓挫したと主張し支払拒否しているため、責任の所在が争われているもの)、採用後ほどなく退職した元従業員の方が申し立てた労働審判(企業側代理人として担当)、協同組合の内部で問題を起こした組合員の処分の当否を巡る訴訟(組合側代理人として担当)などを手掛けています。

中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき、小規模な下請業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっていますが、企業倒産に関しては、かつて多数を占めた建設業界に代わって、福祉やITなど広義のサービス業に携わる企業の方からご依頼がありました。

個人の債務整理については、昨年同様、「完済後の過払金請求」のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くはないものの、生活保護ないしそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からのご依頼が増加傾向にあります。

破産管財人を担当した方で、多数の農地等を有するものの市場性が乏しく売却に困難を来したり(様々な手法をとることで、一定の農地を売却できたこともあります)、保険契約などで名義貸し(実際の保険料を親族が支払っている事案)が関係する例(原則として名義人の財産として換価対象となりますので、ご家族の名義でご自身が保険料を支払って契約をなさっている方はご留意下さい)などがありました。

管財手続が終了した後の会社の権利関係の処理(放棄された不動産の売買など)に従事することも何度かありました。

(以下、次号)

破綻懸念先からの売掛金の回収に関する諸問題(設問)

地方都市で、地元の企業(特に、規模の大きい企業)にさしたる人脈もなく仕事をしていると、企業法務的なご相談、とりわけ財産法の分野に関する様々な知識、理解を横断的に問われるようなご質問を受けることは滅多にありません。

東京時代は、勤務弁護士(担当者)として、顧問先企業から様々なご相談を受けていたので、久方ぶりにその種のご相談をお受けすると、懐かしさはもちろん、事務所の埋もれた本や昔に培った勉強の成果が有効活用できるということで、喜々として調べたりすることがあります。

最近は、企業倒産件数の減少もあって、債務者サイドでの受任はもちろん、債権者サイドからご相談を受けることも滅多になくなっていますが、先日、その種のご相談を受けました。

企業取引に関するご相談は、私法上の論点が色々と入り組んだものであることが多く、司法試験の模試などに活用できそうなものも少なくありません。

そんなわけで、以前にお受けしたご相談について、念のための塩漬け期間も経過しましたので、事案を抽象化・修正した上で掲載してみることにしました(そんなに込み入った論点ではないので、口述試験レベルでしょうか)。

回答例を表示していませんが、破綻リスクのある取引先企業からの債権回収に関心のある方からご要望があれば、何らかの形でお伝えすることができればと思ったりもします。顧問先限定と言いたいところですが、敷居の高そうなことが言える恵まれた身分でもありませんし。

こうした投稿をご覧になった方で、「中小企業向けの債権回収等のセミナー」のご依頼でもいただければなぁと思わないでもありませんが、期待するだけ無駄なのでしょうね・・

《設問》

X社はY社と継続的な取引をしており、XはYに約1000万円の未収売掛金(受託業務の報酬請求権)を有している。いずれも期限到来済みで請求原因等に特段の争点はないが、Yには倒産のリスクがある。

Xは、YからY所有の商品を預かっており(700万円程度の換価価値がある模様)、中には、Xの受託業務とは関係ない理由で預かっているものもある。Xは、現時点ではYとの関係は良好で、取引を継続している等の理由から、強硬手段を取ることでYとの取引が断絶するのは、なるべく避けたい。

以上を前提に、以下の点について法律上の問題点を検討しつつ論じなさい。

①近日中にYが倒産した場合、Xは預かり品を売却して債権回収することができるか。

②仮に、現時点でXがYから任意に当該預かり品の代物弁済を受けた場合に、後日に当該代位弁済の効力を争われるケースとして、どのような事態が想定されるか、及びその際のXの反論とその当否を検討しなさい(売掛金と預り品の対価的均衡は確保していることを前提とする)。

③仮に、Xが強硬路線(強制的な手段)に切り替えた場合に、Xが取りうる手段と留意点等について説明しなさい。