北奥法律事務所

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北秋田市

北東北の秘境・小又峡は一度ならず二度までも

先日、突如思い立って秋田県北秋田市(旧森吉町)の太平湖(小又峡)に行きました。太平湖は、昭和27年に森吉ダムの建設に伴い生じた規模の大きいダム湖ですが、「日本で一番ツキノワグマが多い山(マタギとナメ滝の聖地)」とも言われる森吉山麓の、人里離れた非常に奥深いところにあります。

で、遊覧船でしかアクセスできない場所から片道1時間~2時間ほどナメ滝(滑滝)が連続して姿を現すエリア(小又峡)があり、滝大好き人間の私にとっては昔から行きたい場所の一つでした。

ナメ滝とは、豪雪で磨かれた滑り台状の一枚岩を轟々たる水が流れていくタイプの滝で(ちなみに、華厳の滝のように真っ直ぐに水が落ちるのが「直瀑」)、私の知る限り、日本では秋田・上越・奥秩父のエリアに割と多く存在していると思います(奥秩父の代表的観光名所・西沢渓谷の隣にある東沢というナメ滝・ナメ床が密集する渓谷が、私のトレッキング趣味の原点の一つになっています)。

ただ、それだけに、小又峡は決して「素人ないしお気楽な観光客に優しい場所」ではなく、滝を見に行きたいのであれば、基本的には正午までの船便に乗船する必要がありますし、遊歩道とはいえ靴なども相応のものを履いて来た方が望ましいと言えます。

太平湖には6年ほど前にも一度、来たことがあるのですが、その際は田沢湖と阿仁スキー場のゴンドラを経由したため最終便しか乗船できず、小又峡に近づけずに遊覧船に乗船しただけで終わってしまいました。

そのため、今度こそは小又峡の名瀑群を見に行きたいということで、北回り(鹿角八幡平ICから西南方向に向かうルート)で向かいました。ただ、諸事情により出発が遅れ、12時半の便に辛うじてアクセスできました。

で、出航から20分ほどで南側の波止場に到着しました。人里・道路などが一切見えないことはもちろん、周囲にはかつての材木運搬用の線路跡もあり、秘境ムードたっぷりです。

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そして、木々を鏡のように写す湖面を横目にしつう、いよいよ小又峡に向かって歩き出すと、ほどなく轟音と共に最初のナメ滝が現れます。

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さあ、いよいよ憧れの小又峡に到着!ここから滝巡りだ!と思っていると・・

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長靴が無いと渡れぬ小又峡 銭はあれども貸す婆もなく

前日の増水で、小又峡の入口の沢に設けられた「入口」と言うべき渡渉用の石が全て沢の流れに埋もれ、長靴がないと渡れない状態になってました・・

私一人だけなら、靴を脱いでスボンもたくし上げ、裸足で渡ろうとしたかもしれませんが、さすがに家族と一緒なので自粛・断念し、ここで引き返しました。遺憾ながら、小又峡の滞在時間は実質5分、次の便までは40分以上も波止場でダラダラと過ごし、やむなく次の便で撤退しました。

レストハウスで乗船のチケットを買う際も係員の方に言われていたので覚悟はしていたのですが、まさかこんな入口すぐの場所とまでは想像もできず、ショックです(まあ、それでも乗船したでしょうけど)。

どうせなら、こういうときこそレストハウスには「長靴を一人ウン千円で貸すよ」などと結構な商売をしていただければ(今の私なら蜘蛛の糸を掴むかのように借ります)と思わないでもありませんでした。

帰りの便では、不安定な天候のせいか、湖畔に虹も姿を現しており、せめてもの慰めになりました。

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この湖は三菱マテリアル(当時の商号・太平鉱業)が付近にある鉱山への電力供給などの目的でダムを建設した関係で、太平湖と名付けられたとのことですが、人造湖ですので、ダムの建設時に幾つかの人里が湖底に消えたことは間違いないかと思います。

山深い場所ですのでマタギなどで生計を営む小さな村々ばかりだったとは思いますが、それでも、湖面を眺めていると、当時の人々の営みがどのようなものであったか、色々と考えずにはいられない面もあります。

例えば、湖面の下に眠る鎮守の社ではマタギの人々が山の恵みを肴に村祭りをしたり、美しい村娘と若いマタギが村人に隠れて逢瀬を重ねるなどということもあったのでしょう。

或いは、そんな二人がダム建設で生じた村の混乱の中で思いを遂げることができず、湖を訪れる人の心に今なお語りかけているなどという秘話が、湖底の深くに眠っているのかもしれません。

太平にまどろむ人の見る夢は 村のやしろで交わす約束

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太平湖・小又峡は、私の感覚では、登山者でない普通の人が行ける場所としては、北東北では「最強」の紅葉の名所の一つだと思っています。お時間のある方は、10月末までの晴天の日に、ぜひ訪ねていただければと思います。

私自身は、小又峡の再々挑戦もさることながら、いつの日かこの近くにある桃洞の滝や安の滝にも訪れることができればと願っています。

余談ながら、「北秋田市」はこんな無個性なネーミングでなく、南アルプス市に対抗して「マタギ市」と名乗れば良かったのではと、訪れるたびに思います。