北奥法律事務所

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協力医

医療事故に関するご相談と「専門家セカンドオピニオン保険」の必要

医療過誤がらみの事件には残念ながらご縁が薄く、未だに訴訟として受任したことがないのですが、年に1、2回ほどの頻度でその種のご相談を受けることがあります。

先日、「初診対応したクリニックの転医義務違反の成否」が問題となる例についてご相談があったのですが、その件については、少し前に判例雑誌で勉強した事案によく似ていたので、それをもとに問題の所在など基本的な事柄をお伝えしました。

ただ、医療事故に関する賠償請求の当否は、「ガーゼ取り忘れ」のような素人目にも過失(医療水準違反)が明らかな事案を別とすれば、医師の対応が「医療水準に反すること」の立証が最大の難関になり、専門的知見をもとに水準違反を立証(証言)する協力医を得られるかという厄介な問題に直面します。

そして、私には日常的に医療過誤を取り扱っている方々のような人脈等がないので、「まずは、最寄りのお医者さんに当該問題(対象となった医師の対応など)が現在の業界(医療)の水準に悖ると言えるか聞いて下さい。もし、悖るというお話があれば、意見書その他の協力が得られるか尋ねて下さい」といった対応をするものの、残念ながら、そこで終わってしまうのが通例になっています。

そうした意味では、医療問題について、「ここに聞けば(調べれば)セカンドオピニオンを求める医師の先生がすぐに分かる」的なサイト等(さしずめ、「医療過誤ドットコム」とでもいうべきもの)があれば有り難いとも思うのですが、いずれにせよ、現状では高コストになることが多いと思われます。

この種の事案では、ご本人サイドのエネルギーの濃淡もまちまちで、この種の訴訟等にありがちな高額なコストを負担できない(その話が出ると一気に萎える)方も多いので、保険などを活用した無償・低コストで医療機関から簡易なセカンドオピニオンを得られるような仕組みがあれば、どちらの方針に進むにせよ望ましいのではと感じています。

もし、そのような保険(協力医保険)と弁護士費用保険がセットになって、保険制度を通じて協力医から簡易迅速に「当該医師の対応は医療水準違反だ」との意見書等が得られた場合に賠償請求等を自己負担なく(或いは低廉な負担で)行うことができるようになれば、医療事故などを巡る賠償問題に関する当事者の負担は大きく改善されることは間違いないはずです。

また、水準違反とは言えないという意見が得られて、そのことを患者側が受け入れる場合も含めて、そうした営みを通じて医療側の予防や説明等の仕組み、慣行も前進されるのであれば、社会的な役割も果たすことになると思います。

医療過誤は「専門」が強調される分野の筆頭格と言われますが、医療水準の議論で医師の協力が十分に得られるなど、医療絡みの高度専門的な議論について弁護士が自ら本格対処しなくとも済むのであれば、弁護士が医療自体に詳しくなくとも問題なく対応できることが多いはずですので、そうした仕組みが整備されてくれればというのが正直なところです。