北奥法律事務所

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岩手県中小企業家同友会

中小企業家同友会と起業家精神

前回のブログで中小企業家同友会について触れた関係で、3年半前(平成24年2月)に旧HPの日記に掲載した文章(はじめて同友会について記載したもの)を微修正して再掲しました。

ただ、当時と今とでは同友会の雰囲気も大きく変わり、私よりも若い方が増えて飲み会なども多くなり、当時とは逆の意味で、私のようなタイプの人間にはハードルが高くなったような感もあるため、何とかしなければと焦っているのが正直なところです。

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平成23年11月から、仕事上のお付き合いのある方の勧めで、岩手県中小企業家同友会に加入しています。中小企業家同友会とは、中小・零細企業の経営者や管理職の方が参加し、地域経済の実情や企業経営の理念などを互いに学びつつ交流や相互支援を図る目的で全国組織された団体だそうで、詳しくは同会のサイトなどを見ていただければと思います。

私の場合、盛岡JCで幽霊会員同然の状態が続いているため、新たな団体に加入することには心苦しい面があり、入会に躊躇する面はありました。が、ここ数年、私の原点であり最もこだわりのある分野の1つである、地域の中小企業のお役に立てる仕事をもっと受任できる機会を持ちたいと思いながらも、十分にその機会を得ることができない状態が続きましたので、新しい学びと出会いの機会を求めて、JCの卒業を待たずに、思い切って参加することにしました。

同友会にはJC会員の親・先輩世代が多く、若輩者の私には敷居が高い面がありますが、経営者が集まって経営に関する講義を聴き、学習した内容に関し討議することが活動のメインとなっており、特別企画などに参加する方を別とすれば、大きな時間的拘束はないように見受けられます。

また、「何はともあれ宴会」という雰囲気はなく、様々な世代の会員の方が、熱心に講義を拝聴している非常に真面目な団体さんのようですので、その点でも、私の気質には合っているように感じています(居眠り王の私が言えるセリフではありませんが…)。

反面、JCのような「会員同士が頻繁に集まって互いに知恵と汗と時間を費やしイベントを創り上げる」という団体ではないようで、過去の積み重ね(会員の方とのお付き合い)のない私のような「よそ者」にはかえって敷居が高いようにも感じており、その点は今後の課題かと思います。

昨日は、「復興特別講座」と銘打って、中小企業経営等がご専門の大学教授の方が、中小企業を巡る震災前後の日本経済の概況やそれを踏まえた被災県の中小企業の経営のあり方などを熱弁を振るって講義されていました。

また、今日は、新会員向けのオリエンテーションがあり、熱心に活動しているベテラン会員さんが複数お越しになり、同友会の講義や活動などを通じて自社の経営理念や従業員とのコミュニケーションのあり方などを大きく改善させることができたという話を熱心に語っておられました。

さすがに、私の業務や当事務所の経営に上記の講義や体験談の内容を単純に当てはめるのは難しいでしょうが、激動期を迎えた弁護士業界にあって、社会から求められる業務・経営革新のヒントになるものはあったように思います。

諸般の制約から参加できる機会は限られてしまうかもしれませんが、零細事務所を経営し顧客(社会)と職員に責任を負っている田舎の町弁に必要な起業家精神を涵養する場として活かしていければと思っています。

中小企業家同友会の講義と企業経営という「地味な憲法学」の現場

数年前から岩手県中小企業家同友会に加入していますが、先日は11月例会があり、参加してきました。

今回は、広島県福山市で㈱クニヨシという鉄工所(船舶、道路、航空機などに用いる各種備品などの製造業)を経営する早間雄大氏の講演があり、厳しい状態にあったご実家の小さな鐵工所を短期間で大きく躍進させた企業家の方に相応しい大変エネルギーに溢れた講演で、大いに参考になりました。

同友会の例会は、1時間強の講演の後、休憩時間を挟んで、1時間弱の時間を使って、中小企業の経営のあり方などについて特定のテーマを与えられ、6人前後のグループでディスカッションして最後に各グループの代表が発表するというスタイルになっていますが、今回は早間氏から「自主、民主、連帯」というテーマで議論せよとの指示がありました。

で、私のグループでは、数人ないし十数人の従業員さん(同友会では、必ず「社員」と呼びます)を擁する企業や事業所の経営者や管理職の方がいらしており、例えば、「自主とは、自分をはじめ各人が、業務の従事者として必要十分な仕事を進んでできるよう身を立てること」、「民主とは、社員全員が、真っ当な従事者として行動できるような会社づくりをして、それを前提に社員一丸となって企業のよりよいステージを目指すべきこと」、「連帯とは、それらの積み重ねを通じて、社会全体に価値を提供し増進すること」といったことなどが、各人の業務や社内外の人間関係に関する経験談などを交えて、それぞれの言葉で語られていました。

法律実務家としては、そうしたお話を伺っていると、憲法学のことを考えずにはいられない面があります。

どういうことかといいますと、司法試験で憲法の勉強をはじめた際に、個々の制度や論点を学ぶにあたって、「自由主義(各人の人権と人格の尊重)」と「民主主義(多数派の合理的判断)」との対立と調和という視点を意識するようにという話を最初に教わったのですが、「自主と民主」という話は、それと通じる話ではないか、また、「連帯」は、憲法学的に言えば現代の福祉国家現象(広義の公共の福祉の増進のための国家や社会の役割の増大)に通じるのではないかと感じました。

憲法学は、「普通の町弁」にとって司法試験合格後はほとんど接する機会のない学問で、私の理解も十分なものではないでしょうが、今回の講義や討議は、「一人一人の多様かつ尊厳ある自由と、多数決などを通じた国家や集団による統一的な意思決定システムとの対立と超克を通じて、社会の健全な発展と人々の幸福(広義の公共の福祉)を目指すべき」という日本国憲法の基本理念を、中小企業の運営のあり方(苦楽の現場)を通じて学ぶといった面もあるのではと感じました。

以前、JC(青年会議所)が掲げているJCIクリード(綱領)について、日本国憲法との類似性を詳細に記載したことがありますが、私の場合、時の政権への反対運動のような憲法論やその逆(戦前回帰云々など)の運動といった類の「派手な憲法学」よりも、個々の現場での地道な日本国憲法の実践を感じる営みを発見、発掘し、私自身がその現場にどのように役立つことができるかを考える「地味な憲法学」の方が、性に合っているような気がします。

ところで、同友会の例会は「成功している社長さんによる創業から現在までの谷あり山ありの経験談を、社員さんとの関係づくりを中心に伺う」のが典型となっていますが、数十人~百人規模の企業の運営と、弁護士一人・職員僅かの法律事務所の運営や弁護士の業務を重ねるのは難しく、どのようなことを例会で学んだり討議で話したりするのが良いのか、今も試行錯誤というのが正直なところです(また、恥ずかしながら、私に関しては「本業の営業」には滅多に結びついていません)。

ただ、この仕事をしていると、中小企業の経営者や管理職の方から、実際に生じた事件、問題について様々なご相談を受けることはありますが、紛争とは離れた普段の中小企業の実情や経営者等の意識を学んだり肌で知るという機会は滅多になく、こうした場に身を置くことで、今後のご相談などにも深みのある対応ができる面はあるのでは、さらには、「顕在化していないニーズ」などを先んじて見極めて提案できるといったこともあるかもしれないと信じて、なるべく参加していきたいと思っています。

早間氏の講演でも、「営業しなくても仕事がやってくる企業や指示待ちではない社員の育成」、「企業の強み(専門性)を生かしながら幅広い業界のニーズに応える努力」といったことが強調されていました。

田舎の町弁業界は、数年前までは営業しなくとも仕事がやってくる典型的な寡占商売(極端な供給不足)の世界でしたが、それが様変わりした今こそ、多くの競争相手がいても本当に「営業しなくとも仕事がやってくる弁護士」になるため、考え、実践しなければならない課題があまりにも多くあるというべきで、今回の講義も、その糧にしていかなければと思っています。