北奥法律事務所

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廃棄物処理法

ご近所の「ゴミ屋敷」に困り果てる方のための法的手段

かなり前の話ですが、朝のワイドショーで「愛知県豊橋市の市街地で、所有地上にゴミを放置している人がいて隣接企業や周辺住民が迷惑しているのに行政が何も対処してくれず、役所担当者は『ゴミ屋敷条例がないから無理だ』と回答するのみとなっている」という事例の紹介がなされていました。

事案の詳細は存じませんが、自己の所有地であっても、社会通念に照らし著しく不適切なゴミの放置をして周囲に迷惑をかけているのであれば、不法投棄ないしそれに準ずる行為(措置命令等の対象となる行為)に当たることは間違いありません(数十年前に産廃について散々に議論されたことですが、一般廃棄物にも当然にあてはまるべきものです)。

よって、行政は投棄者(放置者)に対し、屋敷条例云々がなくともゴミの撤去を命令することができ(廃掃法19条の4。措置命令)、投棄者がこれを行う資力がない場合であっても、自ら撤去(代執行)し、投棄者に費用の支払を求めることも可能です(同19条の7)。

土地所有者が投棄しているのであれば、当該土地を競売して回収することもできないわけではありません(銀行等の担保権があれば難しいでしょうが)。

一般的には、この件であれば、隣接企業や周辺住民は、放置者に対し、自身の権利侵害を理由に撤去等を求めることが可能でしょうし、豊橋市に対し、行政事件訴訟法に基づき措置命令の義務付け訴訟(と仮の義務付け申立)や代執行を余儀なくされた場合の放置者(所有者?)に対する費用求償の義務付け訴訟を起こすことができるはずです。

そして、これらは決して難解な法律論ではなく、一定以上の知見のある弁護士ならスラスラと言えるはずのことですので(現に、グーグル検索すると、弁護士の方が作成した文章が散見されます)、それを紹介ないし検討するところまで踏み込んだ放送内容にしていただければと思わずにいられませんでした。

もちろん、こうした問題に自治体(市町村)の腰が重いことは間違いないのでしょうから、自治体を現実に動かすという点からは、条例が設けられた方が望ましいことは間違いなく、法改正なども含め、未制定の自治体の住民の方は、関心をもって働きかけを行っていただければと思います(というか、盛岡市もゴミ屋敷条例は未制定でしょうから、私自身が、そうした努力をすべきなのでしょうが・・)

ともあれ、昨年から日弁連公害対策環境保全委員会・廃棄物部会長(名ばかり部会長なので、実態は雑用係)を拝命していますが(任期は来年5月まで)、本業では廃棄物処理法の知見を生かす機会に全く恵まれず、どうしたものやらです。