北奥法律事務所

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弁政連岩手支部

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(最終回)

前回までに引き続き、先日の盛岡市議さん達との懇談会のため用意した(ものの出番なく葬られた)レジュメを載せます。

今回=資料3は、先般の市長選で当選された内舘茂市長の公約を市役所が実施しようとした場合、地域の弁護士がどのような形で役に立てるか、テーマを絞って考えたものとなっています。

標題のテーマ(地方で執務する弁護士が、地方における民主主義と人権保障の拡充の向上のため何を考え何をすべきか)に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

私にとっては残念な会合となりましたが、これまでお名前や写真等しか存じなかった何名かの市議さんに初めてお会いできたことは、有意な経験だったと思うことにします。

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資料3 内舘市長の公約等に関するノンポリ無党派弁護士からの一考察(雑駁なもの)

もともと、これが「当職が担当を配点されることになったきっかけ(元凶?)」ですが、資料1・2の作成で力尽きたこともあり(所詮「おまけ」扱いですし)、すいませんが、今回は簡易なレポートとさせていただきます。

ここでは、内舘市長の公約を網羅的に分析等することはしませんが、パンフレットなどからは次のようなものが掲げられていると理解しています。

Ⅰ 地域内の様々な経済的・社会的弱者支援

①高齢者等の交通支援(ミニバス・乗合タクシー)=(自動車に依存しない)外出支援
②戸別訪問ゴミ収集・在宅医療介護強化等=外出せずとも各種サービスを受ける制度
③Uターン就職者への返還不要奨学金、学校給食無償化・センター整備や保育料無償等
④いじめ対策、習熟度別の学習支援、不登校他ハンディキャップ児童等の教育環境整備
⑤教員の増員と就業環境改善
⑥市長対話・住民対話部門、除雪部門強化、各種DX、公共交通整備、自転車専用道路

Ⅱ 地元経済・事業者の活性化支援

①地元企業の売上向上支援、上場支援、起業支援、起業等移住若年世代の定住支援
②地域の魅力発信と各種文化・産物の魅力強化(いわゆるブランド化=高付加価値化)
③地域の歴史文化(街並み)・先人(原・新渡戸・啄木等)の発信強化(VR等)
④社会的弱者向けの街並み整備(点字・スロープ、トイレ整備ほか)
⑤各種ボランティア活動に対するポイント付与(市内商業施設での還元)
⑥公共施設での再生エネ事業、エネ地産、EVスタンド、農業支援等

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全般的な特徴は、社会的弱者支援が強調され、対人給付(奨学金や各種無償化=税対応、ポイント制など)が多く掲げられている(インフラ整備的なものは強調されてない)ことだと思われますが、ここでは政策自体の当否や財源問題などは取り上げず(その検討は、第一義的には議員さんのお仕事でしょう)、これらを実現しようとすれば、法制度上どのような課題が生じるか、実現のため弁護士がどのように役立てるかを検討対象とします。

ただ、網羅的な検討はできませんし、公約の大半が税金の使い道を述べているに過ぎず、市民生活や企業活動等への規制等を掲げた公約がほとんどみられないため、前者(法制度上の論点)は一旦置いて、後者(弁護士の使い道)を中心に検討します。

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例えば「いじめ対策」や教員支援などに関し、近時は、いわゆるスクールロイヤー(教育委員会や学校法人等の依頼により、学校で生じる諸問題について継続的に相談や事件対応に応じる弁護士)が提唱されています。

内舘市長も範としている?兵庫県明石市は、人口比に照らし「日本で最も弁護士が常勤職員となっている自治体」と言われ(平成30年は7名とのこと)、教育委員会に所属しスクールカウンセラーやソーシャルワーカーと共に市内公立校の各種問題に専業的に対処する弁護士職員もいる(いた?)そうです。

この点は、弁護士会の「こども委員会」や「法教育委員会」の所属弁護士の方々(今回も参加されています)に発言を求めれば、様々な意見や提言がなされるのでしょうが、明石市のように「弁護士の常勤職員を多数雇用する」形でなくとも、市内の多数の弁護士の参画を得て、生徒や教員、或いは保護者等の様々な相談に対応する仕組みを作ることは、さほど難しくないと思われます。

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問題は予算措置(カネ)で、法テラスと連携したり、国の補助金対象事業化をお願いできれば有り難いですが、高額な予算がなくとも一定の対応は直ちに可能と思われ、弁護士会などに制度設計を要請の上、議会等で導入を検討いただければ幸いです。

スクールロイヤーや学校を巡る法律問題に関心のある方は、学校教員でもある弁護士の方が執筆した、神内聡「学校弁護士」(角川新書)をぜひご覧下さい。

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その他、高齢者・障碍者支援であれば弁護士会に担当委員会がありますし、地元企業の支援の一環として弁護士への相談等補助も検討いただきたいです。

カネの支援が無理でも、相談や事件対応のため必要となる事務作業などを、行政や商工会議所などが補佐する仕組みがあってよいと思います。

少なくとも、ご本人が適切な準備や作業ができないため、相談等できずに終わっている事案や、相談等がなされても「その先の作業=解決」に繋がらずに終わってしまう事案は珍しくありません。

歴史的景観保全等のための街並み整備などは行政の規制や居住者等支援が必要な分野ですが、日弁連公害環境委員会ではそうしたテーマも取り扱っており、条例整備であれ、個別事案対応であれ、市の顧問弁護士事務所の方々と役割分担をしつつ何らかの第三者的な形でお役に立てることはあるかと思います。

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市議の方々は、市長の公約云々に関係なく、市内の様々な課題を掘り起こし(光を当て)解決を推進することが求められていることは申すまでもありませんし、「掘り起こし」をする上で、市内で活動する弁護士達に、現在はどのような事案の相談や依頼等が多いか、どのような問題が発生しているか(住民や地元企業がどのようなことで困っているか)を定期的に聴取して全体像を把握し、それに基づいて市のあるべき施策を提言していくことは、市議会に求められている役割の一つだと言うべきではないかと思います。

私に関して言えば、震災前に山ほど受任していた個人や企業の債務整理等が大幅に減少した反面、近年、増加傾向にある類型として、次のものがあると感じています。

①全く身寄りの無い方の相続(相続人不存在事案や、被相続人と全く交流のない遠方在住の多数の甥姪などが相続人となる事案など。隣人が世話したり高額な相続預金等を有する例もある)

②老齢の親が重大な障害を抱えた子と二人だけで暮らしていたが、様々な事情で同居等が困難となり財産管理等のため弁護士の支援が必要となる事案(重大な紛糾例を含む)

これらは、社会内の人間関係(家族・親族・地域その他)の希薄化で「ひとりぼっち」「二人ぼっち」家庭が非常に多くなった結果として生じているもので、盛岡に限らず全国的な現象だと思いますが、被相続人の死去で、遠方の甥姪等(往々にして大都会に在住)に預金が移転(盛岡から流出)することが多いほか、相続人不存在であれば、国庫帰属の形で、国が全て取得する(市役所や県には一円も入らない)形となります。現行の相続財産清算人(管理人)制度の運用にも、疑問を感じる点は色々とあります。

ただ、そうした事案では、「もしかしたら、ご本人(被相続人や被後見人等)は、そのような形で財産が流出するのではなく、地元の近しい関係にある方に引き継いだり、地元のため有効活用して欲しいと願っていたのではないか」と感じることは珍しくありません。

条例で「相続人不存在事案を国庫帰属ではなく地元自治体へ」と定めても無効になるでしょうが(地方自治法14条)、例えば、推定相続人(財産を相続する予定の方)がいない(身寄りのない)方や推定相続人と疎遠になっている方(市民)に向けて、積極的に遺言書の作成(自身の死去後の財産等のありかたの検討)や弁護士等への相談等を促す施策があって良いのではと思います。

その一貫として、多額の資産(相続財産)をお持ちの方には市役所などへの寄付を呼びかけても良いのかもしれませんし、それは後見人無報酬事案の補助原資にもなりうるでしょう。

もちろん、その前提として、そうした方の生活を様々な形で行政が支援することが伴われるべきでしょうが。

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ご承知のとおり、盛岡市民には市役所から「健康診断に行って下さい」というカードが毎年送られてきます。身体の病に限らず、社会生活上の様々な病の未然防止のため、様々な論点・事案(必要性)を具体的に紹介し、「弁護士などに相談して下さい」と市の広報などで呼びかけることは、あって良いと思います。

岩手弁護士会サイトの弁護士名簿をご覧のとおり、岩手の弁護士の過半数以上が盛岡で執務しており、盛岡市(市役所・市議会)は弁護士の活用について強いアドバンテージを持っていると言えます。皆さんにも、そのことを生かしていただければ幸いです。

長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。 

 

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(第2回)

前回に引き続き、先日の盛岡市議さん達との懇談会のため用意した(ものの、会場でボツ扱いになり闇に葬られた)レジュメ(資料1)です。

標題のテーマ(地方で執務する弁護士が、地方における民主主義と人権保障の拡充の向上のため、何を考え何をすべきか)に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

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資料1 日本弁護士政治連盟や弁政連岩手支部の「きほんのき」と実情・課題の考察

日本弁護士政治連盟は、日弁連の政策を立法等を通じ政治的に実現することを目的として昭和34年に設立され、昭和期はさしたる活動がみられなかったものの、平成期には、隣接他士業(司法書士・行政書士・税理士・弁理士など)の職域拡大に関するロビー活動に触発される形で全国の弁護士会ごとに支部設立が行われるようになり、岩手支部は平成23年(震災直前)に設立されています。

岩手支部は、発足以来、概ね年に1~2回の頻度で、県内選出の国会議員や岩手県議会議員の方々との懇談会を実施しており、基礎自治体(市町村議会など)との交流は前2者と比べて少ないものの、数年前には盛岡市議会議員の方々との懇談会を実施しています。

他方、首長(知事・市町村長)との懇談会等は、岩手では実施例がありません(他支部=他県等では実施例もあります)し、自治体行政部局との関係でも同様と思われます。

弁政連本部(日弁連会長OBなど重鎮の方々)は、定期的に主要各政党や政府(弁護士出身の政務三役、とりわけ法務省関係者など)との懇談会を行っているようです。

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冒頭のとおり、弁政連の趣旨・目的は「日弁連ないし弁護士業界が、社会正義や弁護士業務の適性確保などの見地から実現したい(すべき)政策(立法=法律・条例等の制定や行政による事業化・予算措置など)を政治部門を担う方々(議員や首長)にお伝えし実現を要請させていただく点にあります(他士業と違い?職域拡大への関心は低そうですが)。

そして、法律実務の専門家集団たる弁護士の団体である以上、単なる「陳情」に止まることなく、条例その他(政策実現のための各種文書)の起案であるとか、条例等の必要性を支える基礎事実(いわゆる立法事実)の収集・分析・報告等、政治部門(議員や首長、行政部局など)との折衝、さらには自分達の陳情だけでなく、政治部門の要請に基づく法律実務シンクタンクの受託者そしてロビー活動の従事者・補助者としての役割を果たすことが期待されていると言えます。

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が、いち末端窓際会員としての私が垣間見てきた限り、岩手支部は言うに及ばず弁政連本部や他県支部などが、その役割を現に果たしているのか判然とせず、実情としては各種議員さん達との単発的な(悪く言えば、その場限りの)懇談会等を続けているだけのように感じています。少なくとも、個別の陳情について、条例等であれ議会の決議等であれ、政策として実を結んだという話を聞いた記憶がありません。

また、岩手支部の過去の岩手県議さんとの懇談会では、関心をお持ちの議員さんが多いテーマ(震災対応、養育費など)を取り上げた際は、多くの質問等があって盛り上がったものの、その議論等が「その後に具体的な政策として生かされた」という話は存じません。

まして、多くの議員さん方に馴染みの薄いテーマ(ご自身の社会生活や議員活動で現に取り扱ったり接することが乏しい事柄。例えば、司法制度改革、刑事法制等)については、担当弁護士の資料に基づく説明を聴取等いただく以上のやりとりは無かったと思います。

所詮、相手(議員側)が強い関心を抱いているわけではない事柄の陳情(説明)ばかり繰り返しても、相手が関心のない(自分=話し手しか関心がない)話題で異性を口説こうとしているようなもので、上手くいくはずもありません。私が今回「内舘市長の政策を取り上げては」と話したのも、まずは聞き手が関心を持つテーマを懇談の対象とすべきでは(相手のニーズに適うサービスから始めるべきでは)と考えたからでした。

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また、弁政連のあるべき活動は、いわゆるロビー活動(ルール策定交渉)や「最近話題の法的論点」について政治家の方々と懇談等することに尽きるものではありません。

地方議会の主要な目的(活動原則)は、地方行政の運営者である首長及び自治体各部局に対し、適切な自治体運営がなされるよう監視や評価を行い働きかけることにありますが(盛岡市議会基本条例2条参照)、議会ないし各議員は、住民の代表者として選挙結果に基づく地域内の民意を適切に反映させる(民主主義)と共に、多数決の横暴・濫用にならぬよう、住民全員の権利擁護や福利(人権保障)も確保する(行政に確保させる)姿勢も強く求められている(それが憲法の地方自治制度に対する付託である)と言えます。

地方自治の本旨(憲法92条)は、団体自治(中央政府からの独立)と住民自治(民意反映)が強調されることが多いものの、根底には「多数決原理と人権保障の調整」という統治機構制度の全体に流れる基本思想を含んでいる=地方政治家はその担い手であることを銘じていただきたいと思います。

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そうであればこそ、地方政府の意思決定権者(首長及び地方議会議員)がご自身の職責を適切に果たすためには、人権保障の「もう一人の担い手」たる法律実務家(弁護士等)との協働(時には緊張関係)が不可欠なのであり、双方(地方政治家と地域内弁護士)は、様々な形で、「互いに関わる(刺激し合う)こと」が求められていると言えます。

米国では国会議員が議員立法などを行うため法律専門職たるスタッフを抱えることが珍しくないそうですが、それを直ちに模倣することは無理でも、例えば、市議会の委員会活動の充実化のため、弁護士会や個別弁護士に協力を求めること(そうしたものを通じて、日常的に業務上の関わりを持つこと)はあってよいはずです。

この機会を「単なる世間話と酒飲みの会」で終わらせないためにも、これを機に、皆さんの方から「よりよい市政のため、弁護士(会)にこうしたことをして(検討して)欲しい」と働きかけていただくことを、ぜひご検討下さい。

 

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(第1回)

本日、弁政連岩手支部と、盛岡市議会の最大会派「盛友会」の議員の方々との懇談会があり、名ばかりですが支部の理事をしていることもあり、参加しました。

それに先立つ支部の会議で「内舘市長の公約や市政の課題に関し弁護士の観点から議論すべきことを取り上げることはできないか」と述べたところ、支部長の先生から、貴方が準備しなさいとの指示を受けたので、自分なりに考えたことをレジュメにまとめて用意しました。

が、当初から予定されていた他のテーマ(成年後見人の報酬助成等)のほか、直前に別のテーマが追加され、それらで時間切れだとの理由で、当方のレジュメ等には一切触れられることもなく、あたかも最初から存在しないものとして、終了が宣告されてしまいました。

私は、支部運営をされている他の同業の方々とは活動のあり方について多少異なる考え方を持っているほか、私よりも若い方々とは人間関係も希薄で疎遠になるばかりの有様で、その点も、そうした取り扱いに繋がったのかもしれません(心底嫌われているのかもしれませんが・・)。

ともあれ、いじめ被害だなどと嘆いても致し方ありませんし、もともと様々な方に考えていただきたいテーマでもありましたので、市議の方々にお伝えするのに代えて、こちらで掲載することとしました。

地方の弁護士と地方議会議員が関わりを持つ意味、或いは地方自治における民主主義(国民主権)と人権保障の実現・調整などという抽象的なテーマに関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

まあ、私にとっては日暮れて道遠しというほかなく、己の無力を嘆くばかりですが・・

今回は、レジュメ本文を載せ、第2回から第4回までは今回の末尾に資料1~資料3として表示(記載)した文章を載せることとしました。

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弁護士政治連盟・岩手支部 R05.11盛岡市議(盛友会)懇談会 担当資料
~弁護士と市議会議員との交流のあり方に関する考察と実践について~

文責 弁護士(弁政連岩手支部会員・理事) 小保内義和

はじめに(本稿の経緯及び趣旨について)

今回、盛友会(盛岡市議)の方々との懇談会を行うにあたり、どのようなテーマ(市議の皆さんへの陳情対象)を取り上げるべきか、支部理事会で協議がありました。

その際、会内で長年の課題になっている「成年後見人の無報酬事案に対する公的助成」(身寄りのない方への公的支援その他の必要性から後見申立がされ、弁護士等が後見人に選任されることになったが、被後見人が資産ゼロで僅かな年金又は生活保護費しか収入がなく、施設費や生活費等で完全に使い切ってしまうなど、後見人への報酬原資が全く無いため、後見人がタダ働きせざるを得ない=自営業者たる弁護士には本来は受任不能の事案について自治体に報酬相当額の助成を陳情したいという件)を取り上げるべきとの意見が出ました。そして、後見等に関する他の問題の説明等も含め、Y弁護士に担当いただくことになりました。

が、それ以外に、どのようなテーマを扱うべきか、さしたる意見が出ませんでしたので、当職から次のような意見を述べました。

「内舘市長の当選に伴い、新市長が従前と異なる新たな政策等を打ち出してくると見込まれるが、推進の立場であれ批判の立場であれ、掲げられた政策を実現する上で取り扱わなければならない(直面する)であろう法的課題を検討・協議することが、市議会議員と弁護士の懇談のテーマとして相応しいのではないか。

いずれの立場であれ、市長・市役所(行政側)が承認を求めてきた政策について、実現する上で直面するはずの課題を抽出し、賛同側であれば解決の道筋を立て市長・担当部局に提言したり、反対側であれば、解決困難な法的論点を確認・指摘し市長らに軌道修正を求めることが、市議会議員に求められる主要な役割の一つというべきである。

ゆえに、その前提(議員が職責を全うするための補佐)として、政策のうち法的な事柄について、課題の抽出や検討、提言(多数の住民にとって利害関心のある事柄についての法的シンクタンク機能)を担うこと(そして、それを議員側が活かすこと)が、弁政連=地元弁護士集団と地方議会議員との交流のあるべき姿ではなかろうか」

・・結論として、「だったら、お前がやれ」ということで、担当のお鉢が回ってきました(余計なことを言うんじゃなかった?)。

ただ、その後、テーマが追加(生活保護、再審)され、私の担当は「その他」=オマケ扱い(時間切れならカット)となったので、長講釈は不要であることが分かりました。

また、事前情報によれば、今回の懇談会は谷藤前市長の慰労会と重なり、議員の方々の多くが懇親会(宴会)の途中で退席なさるとのことで、他の方々の報告・懇談のあとは、むしろ、フリートーク的な場にした上で、議員の方々に弁護士(弁政連)に期待すること(自分達=市議会・市政のため汗をかいて欲しいと思っていること)などを自由に語っていただいた方が望ましい(ので、私が下らない話をベラベラ喋って時間を浪費しない方がよい)とも思われました。

また、私の知る限り、これまで「何のために我々(弁政連岩手支部)は地方議会議員の方々との交流の機会を求めているのか(地方政治家と地方の弁護士との関わりは何のためにあるのか、何を目指すべきなのか)」について、原点・本質に立ち返った協議等をしたことが無く、一度はそうしたことを整理してお伝えすべきではないかと思っていました。
 
そこで、私の担当時間(せいぜい10分程度?)は、これらに関する基本的な考えや、内舘市長の掲げた公約等について、私なり「弁護士の立場から見た感想」、或いは、この機会に議員の方々にお伝えした方が良いと考えたことなどをレポートにまとめて、手短に口頭でお伝えし、あとは、それを踏まえて、感想であれ、ご自身のお考えであれ、議員の方々に(とりわけ懇親会に不参加又は途中退席される予定の方を中心に)、自由にご発言いただくこととしました。

交流の実を結びますよう、積極的なご意見・ご発言をよろしくお願いいたします。

なお、申すまでもありませんが、今回のレポートは全て、私(小保内)個人の意見等を述べたもので、弁政連や岩手支部としての見解等では微塵もありません(内部で取り上げられることもないので、折角の機会を活用し、これまで思ってきたことを書いてみました、というのが実情ですので、関心のある方は、後ほどチラ見いただければ十分です)。

【添付資料】
1 日本弁護士政治連盟や弁政連岩手支部の「きほんのき」と実情・課題の考察
2 弁護士(ないし弁政連)と市町村議会議員の交流等のあり方に関する一考察
3 内舘市長の公約等に関するノンポリ無党派弁護士からの一考察(雑駁なもの)
4 当事務所ブログ集(今回に関わりのあるもの)
①上川あや氏(世田谷区議)の著作書評、②前回市長選の投票日直前に掲載した論考

(以下、次号)

 

現状では少額しか認容されない長期困難訴訟(セクハラその他)に関する抜本的改善策(弁護士費用保険、短期審判+費用負担命令など)について

プロスポーツ選手(ガールズ競輪)の養成指導者がセクハラ行為をしたとの理由で提訴された訴訟で、450万円の請求に対し、指導者による一定のモラハラ行為が認定され賠償が命じられたものの、認容額が11万円であったとの報道を拝見しました(無料公開された限度でのみ)。

記事の事案そのもの(認容額や認定事実の当否)については具体的なことを何も存じませんので意見を述べる考えはありません。

が、事案から離れた一般論として述べると、11万円の認容額のために膨大な苦労と精神的負担を余儀なくされる訴訟を起こしたいと思う人はいませんし、弁護士も通常は受任できません。

この事件の審理状況などは存じませんが、熾烈な主張立証の応酬と複数の尋問を含むフルコース訴訟なら、弁護士費用保険(日弁連LAC)のタイムチャージ換算で50万円でも大赤字、100万円でトントンになるかどうかというレベルだと思います(当事務所の経費換算では)。

そして、裁判所が現在決めているこの認容額。これらの事情は、この種の相談を受ける都度、すべて私が相談者に説明している事柄であり、そのせいか、私はこの種の相談は時折受けているものの、訴訟を受任したことは一度もありません。

この訴訟の原告代理人がどれだけの費用をいただいているかは存じませんが、ご本人等が富裕層で認容額に関係なくタイムチャージどおり支払ってくれるなどという有り難いお話でなければ、恐らく(私も法テラス系など少なからぬ事件で経験しているように)限られた費用で大赤字に耐えて尽力されたものと思われます(事務所経費の負担があまりない低コスト弁護士さんもいますので、一概に言えないことですが)。

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もちろん、コミュニケーションのトラブルは、往々にして「どっちもどっち(お互いさま)」の要素が絡んでいることが珍しくなく、認容額が少額となっているのも、裁判所がそうした認識に立っていることの表れで、そのこと自体は多少やむを得ない面があると思います。

ただ、「自分は強い辱めを受けた、このままでは終われない、相手に一矢報いたい」という気持ちを抱えて生きることを余儀なくされた人達にとっては、こうした形で「今の社会では諦めるしかないんですよ」と扱われてしまうと、社会に希望を失い、やがて様々な形で社会に復讐することもあるのかもしれません。

そうしたリスクを抱えて人々の不満を抑圧する現在の社会を続けるか、敢えて不満と向き合い決着の場を支援する社会に切り替えるか、我々の選択が求められていると言えます。

結論として、軽微又は本人の非が大きい無理筋事案はさておき、現在の社会通念に照らして看過すべきでない、法廷に持ち込むべき価値のある事案については、弁護士費用保険などを強化して、本人の負担を大幅に軽減する形で真っ当な価格で弁護士に依頼できる仕組みを作るべきだと思います。

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例えば、モラハラ問題に限らず、解雇などを含む業務上のトラブルに関する紛争を対象とする弁護士費用保険を作り、保険料は所得に応じて年間数百円+α程度を源泉徴収しつつ、企業や自治体などが補助を出したり特約で保険料を上乗せすれば、タイムチャージの限度額を超えた対応も得られる(自己負担がなくて済む)、といった制度があれば、依頼する弁護士の費用負担は劇的に解消されるでしょう。

被保険者を同居家族とすれば、学校でのトラブルなども対象にできるかもしれませんし、自治体の援助内容次第で、住民獲得競争などにも影響するのかもしれません。

ただ、モラハラ申告などは交通事故と比べて無理筋相談が頻発せざるを得ないので、保険適用の可否を判断する事前審査が必要であり、その点も含めて保険会社や弁護士業界との協議が必要になると思います。現実には、事前審査で却下される例が多数生じるでしょうから、そこが事実上の第1審になるのかもしれませんが。

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また、弁護士費用以前の問題として、「もともと少額しか認容されない訴訟に膨大な手間や高額な経費が必要となること自体が間違っている=早期・簡易の紛争解決を可能とする仕組みを整備すべきでは、という点があります。

この点は、冒頭で述べた「フルコース訴訟」という展開になる前に、例えば、現在の労働審判のように、早ければ第1回又は第2回期日で裁判官が暫定的な心証を示して和解勧告し、なるべくその内容で和解を成立させる(尋問用陳述書や尋問など膨大な作業を当事者に強いるのを避ける)ことができれば、日弁連LACの基準(タイムチャージ30時間)の範囲内で大半の訴訟を決着できるはずです。

あくまで和解勧告ですので、形式的には双方に拒否権を与えますが、裁判所は拒否した当事者に対し、その後の判決等までの審理のために拒否された側が要した弁護士費用の実額(タイムチャージ制を前提とすれば、膨大な額になります)の全部又は大半を負担させる制度を作れば、事実上、勧告拒否に対する極めて強力な抑止力になり、大半の事件が和解勧告で終了することになります。

この種の訴訟は、被害者(請求)側だけでなく加害者(被請求)側も相応の事情があれば(不当・過大請求とか過失と評価できるなど)、弁護士費用保険が利用できるようにすべきだと思いますが、双方とも現行LACの30時間制で運用すべきで、かつ、勧告を拒否した場合は原則として以後の保険利用を不可とすれば、加害者(被請求)側の不当拒否への抑止だけでなく、被害者(請求)側の過大請求への抑止力としても十分に機能するはずです。

もちろん、相手方(敗訴者)負担に慎重な対応をとるべき事案もあるかとは思いますが、大半の事案では適切な運用が図られ、少額事件で膨大な時間と労力を当事者が強いられる(受任弁護士も大赤字を余儀なくされる)ことが大幅に減ると思われます。

その上で、裁判所や行政などが認定基準や慰謝料その他のガイドラインなどを作成・公表すれば、現在の小規模交通事故の大半のように、短期・簡明な解決が大きく促進されると思います。

十数年前、弁護士費用の敗訴者負担制度に関する議論が盛り上がった際には、環境系訴訟など「大企業相手に困難な訴訟に挑む、勝てないが社会的に意義のある訴訟」に従事する方々の猛烈な反対で頓挫したと認識しています。

が、そのような特殊事案には適用しないとの前提で「普通の少額事案を早期・簡明に終わらせるため(勧告拒否へのペナルティ=受諾のインセンティブ)としての「勧告拒否者の弁護士費用負担制度」を考えて良いのではと思っています。

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なお、「そもそも11万円では被害者が報われない」との点については、日本の裁判所が言葉の暴力への対処に冷淡な態度を続けてきたことが根底にあり、非常に根深く難しい問題です。

何より、裁判官は物理的暴力はしませんが(だからこそ、物理的暴力=事故のケガ等には高い慰謝料を命じる)、真綿でジワジワと首を締めるような言葉の暴力は大好きですので(弁護士や検察官も)、言葉の暴力にカネを払えというのは裁判官(法律家)の自己否定につながりかねず、容易に解決できることではありません。

(皆、膨大な勉強を続けて激しい知的対決を要する高ストレスの厳しい世界で生きている方々ですので、知的怠惰を感じた相手に厳しい態度を示すのは職業病としてやむを得ない面はあります。法律家に限らず医師など高学歴系職業に共通の性癖でしょうが)

結局のところ、人間の尊厳とは何か、総論と各論の議論をそれぞれ深めた上で、最終的には法律や各種GLなどで慰謝料増額要素の基準を明確化して裁判所に働きかけていくほかないのかもしれませんし、それは政治=国民に求められる役割だとも言うべきでしょう。

本当は、弁政連岩手支部などでも、地元の県議さんや市議さん達などと、こうした議論(ひいては議会決議などに繋げる)ができればよいのですが、万年窓際会員の身には、雑談や宴会の段取りばかりの光景を黙って拝聴する程度のことしかできず、非力さを嘆くばかりです。

・・・あっ、これも「言葉の暴力」ですかね・・かくて人類は不毛なりき。

 

企業施設の重大事故における賠償不払リスクの実情と解決策(前編・託児所の塩中毒死事件)

平成27年に盛岡市内の認可外保育施設で起きた「飲料に混入させた塩分の過剰投与に起因するとみられる幼児の死亡事件」は、現在、盛岡地裁の法廷で民事・刑事の双方が審理されています。

刑事事件については、加害者本人(施設責任者)が過失を認めたことから、盛岡地検は略式請求したのですが、被害者の強い意向を踏まえて盛岡簡裁が正式裁判を決定したとの報道があり、全国ニュースで大きく取り上げられた電通の自死事件に類する面があります。

その上で、遺族は「過失ではない、故意だ」と強く主張し、刑事事件の結果を待たずに民事訴訟を起こしたとのことであり、先般、第1回口頭弁論期日の記事が県内で一斉に取り上げられていました。
https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/6/1/15487

この記事ですが、岩手日報の紙面では、Webでの表示内容に続けて「被告は弁護士に依頼してない=本人訴訟」と書いてありました。私に限らず、これを読んだ業界人は全員、「この人は無保険なんだ=被害者は回収不能の重大なリスクを負っているのでは」と嘆息したのではないかと思います。

ちなみに、加害者(施設側)が、託児施設内の事故を対象とする賠償責任保険に加入しているのであれば、交通事故一般と同じく、事故直後から損保会社が対応し、訴訟等になれば損保社の費用負担で指定弁護士(特約店のようなもの)が選任され、賠償額も当然ながら損保社から支払われます。

言い換えれば、本人訴訟と書いてある時点で無保険であることが確定したも同然で、しかも、弁護士に依頼していないこと自体、本人の無資力を強く推認させます。

ちなみに、幼児の死亡事故の性質上、賠償義務額は通例で億単位(最低でも5000万円以上)になるはずです。

その上、本件では被害者の方は東京の弁護士さん達に依頼されており、裁判が長期化すれば交通費(と日当)のため、地元の弁護士に依頼するよりさらに数十万円の負担を要することになるはずです。

どのようなご事情かは存じませんが、代表の先生は業界でも相応に著名な方なので、回収可能事案かつ賠償額に争いの余地が大きい事案なら相応の経費を負担してでも第一人者に頼みたい、というのはごく自然なことですが、加害者本人に支払能力がない場合は、さらにお気の毒な事態になりかねません。

私自身はこの事件に何の関わりもなく(当事者双方から相談等を受けたことはありません)、事件報道を最初に目にしたときは「託児施設なんだから施設賠償責任保険くらいは入っているだろう、死亡事故は大変気の毒だが、適正な賠償金の支払がなされるのなら、せめてもの救い」と思っていたのですが、その意味では大変残念な展開になっていると言えます。

もちろん、こうした話は本件に限った事柄ではなく昔から山ほど存在しており、私も残念なご相談を受けたことは山ほどあります。だからこそ、託児施設であれ自動車等であれ、高額な賠償責任を生じる可能性のある仕事等に携わる者には、任意保険の加入を義務化(免許要件)とすべきだというのが、私の昔からの持論です(被害者側の弁護士費用保険の整備も含め)。

私も「名ばかり理事」となっている弁政連岩手支部では、今年になって地元選出の国会議員さんと懇談しようということになり、先日は高橋比奈子議員との懇談会があり、6月には階猛議員との懇談会が予定されています。

私自身は、上記のような「実務で現に発生しているあまりにも不合理な問題とその解決策」を議員さんに陳情すべきではと思っているのですが、キャラの問題か過去のいきさつの問題(会内では「会務をサボるろくでなし」認定されているようです)か、残念ながら内部での意思決定権が与えられておらず自分の会費分の弁当食うだけの穀潰し傍聴人状態が続いています。

内部では「日弁連(のお偉いさん)が取り組んでいる問題を(議員の関心の有無にかかわらず?)宣伝すべき」というのがコンセプトとなっているようで、お偉いさん(や議員さん、世論など)の関心が及ばない限り、今後も残念な構造は放置され、気の毒な事態が繰り返されることになるのかもしれません。

もちろん本件の詳細は存じませんので、何らかの形で適正な賠償責任が果たされることを強く願っています。

私も、かつて県内で発生した保育事故の賠償請求のご依頼を受けたことがあり、本件のような甚大過ぎる被害ではなく、加害者が大企業で支払能力もあったため、適正の範囲内での賠償がなされたとの記憶ですが、ご両親の沈痛な面持ちは今も覚えています。

(H30.9追記)

14日に塩中毒事件で「検察は罰金求刑したが、裁判所は執行猶予付き禁固刑とした」との報道がなされていました。
https://www.nhk.or.jp/lnews/morioka/20180914/6040002031.html

私は、上記のとおり「民事訴訟で本人が弁護士に依頼せず自ら対応しているので、無保険(回収困難)事案ではないか」と考えたのですが、もしそうであれば、これだけ重い結果が生じている事案で、どうして検察庁が罰金求刑にしたのか、不思議に思います。

保険対応で適正賠償額が支払確実な事案であれば、加害者に相応に汲むべき事情があることを前提に、略式請求(罰金)とするのは理解できますし、これに対し、「被害者に過失のない死亡事故を起こして無保険で賠償できないなら正式裁判+実刑」というのが交通事故の通例のはずです。

「検察が略式請求としたが、裁判所が正式裁判とした事案」といえば、電通の過労死事件が思い浮かびますが、その事件の展開がどうであるにせよ、電通に民事訴訟(安全配慮義務違反に基づく賠償請求訴訟)における賠償資力が無いはずはなく、だからこそ、略式請求がなされたという展開は「昔ながら」という意味では了解できる面があります。

それだけに、この事案では「無保険事案らしき光景が見え隠れするのに、検察が罰金求刑に止まっている」ことに、非常に違和感を抱くのですが(被告人に罪責を問いにくい相応の事情があったのでしょうか)、この点について内情などをご存知の方がおられれば、こっそり教えていただければ有り難いです。

もちろん、実は責任保険が対応する事案だった、というのであれば、それに越したことはないのですが、そうであれば、どうして保険会社が介入せずに本人が訴訟対応しているのか、全く不可解です。

「義・支援金が家庭を壊す光景」と養育費不払問題の完全解決策としての「給与分割」提唱の辞

先日、弁政連岩手支部の企画で、年に1回ほど行っている岩手の県議会議員さん方と地元弁護士らとの懇談会に参加してきました。

今年は、例年どおり、震災絡み(被災者・被災地が直面する各種の法律問題)がメインテーマとなったほか、法テラス特例法の延長問題、成年後見制度への行政支援の強化(市町村申立やいわゆる市民後見人の育成など)、離婚等に伴い女性・子供が直面している法律問題の紹介(を通じた議会への支援要請)といったことが取り上げられました。

2年ほど前から釜石の「日弁連ひまわり事務所」に赴任している加藤先生から、被災地の弁護士に多く寄せられている相談・依頼の例に関する紹介があったのですが、その中で、「義援金・支援金の受領に関し、直接の受給者=世帯主が受領金を独占するなどして家族内で不和・紛争が生じている」との紹介がありました。

この問題は、私が震災直後の時期(2年ほど)に最も多く相談を受けた類型で、「いっそ不当利得返還請求訴訟をしたらどうですか(弁護士への依頼が費用対効果的に問題があるなら、本人訴訟用の書面作成くらいならやりますよ)」と説明していたこともあっただけに(残念ながら、結局ご依頼は一度もありませんでしたが)、懐かしく感じて、私も珍しく挙手して補足発言をさせていただきました。

改めて感じたのは、この問題は、誤解を恐れずに言えば「以前から不和の種があった不穏な家庭に役所が不公平な態様でお金を渡すことで、油を蒔いて点火させ、その家庭を役所がぶっ壊した」と言っても過言ではないのではということであり、だからこそ、行政は受給者に広くアンケート調査をして「貰って有り難かった人・家庭」もいれば、「そんなカネが配られたことで、かえって悲惨な事態になった人・家庭」もいるのではないかという現実を、きちんと把握、総括し、そうした「現金給付政策」の当否ないしあり方について検討すべき責任があるのではないかと考えます。

ご承知のとおり、現在の給付制度のあり方(世帯主給付)に対しては、世帯主ではなく個人単位にすべき(世帯主給付にしたいなら全員の同意書を要請し、それが得られなければ個人給付にするとか、世帯主を窓口にするにせよ給付の利益は各人が有する旨を制度で明示するなど)といったことを、日弁連など?が提言しています。

そうしたことの当否を明らかにする意味でも、今こそ(すでに時を失した感はありますが)、被災地住民を対象とする大規模調査が行われるべきではないかと声を大にして述べたいです。

ちなみに、今年の2月の弁政連懇談会について触れたブログでも、この件について取り上げていますので、関心のある方はぜひご覧ください。

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ところで、県議さんとの懇談の際、S先生から養育費の不払問題について詳細な報告がなされていたのですが、それを聞いているうちに、いっそ給与についても、年金分割のように「義務者を介さない受給者への直接給付制度(給与分割制度)」を作るべきでは?と思いました。

すなわち、義務者の勤務先が、「養育費の権利者(親権者又は子の名義)」の口座に直接に支払う制度を作れば、給与の全額を受領した義務者による不払という問題は根本的に解決されることになります。

こんな簡単で抜本的なことを誰も言い出さなかったのだろうかと不思議に思ってネット検索してみても、その種の提言を見つけることはできず、FBで少し聞いてみたところ、給与分割ではないものの、日弁連が「国による養育費の立替(と不払者への国からの求償)」の制度を提言していたとの紹介を受けました(私も過去に読んだ記憶があり、すっかり忘れていました)。

ただ、日弁連意見書の理念に反対する考えはないのですが、「立替制度」だと財源をはじめ導入に必要な作業・工程が多そうですので、給与分割方式の方が手っ取り早く導入できそうな気がします。

さらに言えば、国の立替方式は、実質的には国が育児費用を給付する性質を帯びることから、「子を育てるのは誰か」という家族観ひいては憲法観の問題に関わりそうで、その点でも、議論百出=導入できたとしても時間がかかるのではと感じます(議論そのものは盛んになるべきだと思ってますが)。

私が考える「養育費等の支払のための給与分割制度」は次のようなものです。

①まず、子のいる夫婦の協議離婚については、親権者の指定をするのと同様に、原則として養育費の合意が必要とし(紛糾すれば調停・訴訟により解決)、合意した額を、家庭裁判所の認証(これがないと不相当な額になるため。なお、認証作業は裁判所から指定された弁護士が行う等できるものとすれば業界的にはグッド)のもと、離婚届に記載する(調停離婚等ならその届出時に調書等を添えて養育費の額も役所に申告する)

②その届出を受けた役所が、マイナンバー制度を通じて?義務者の勤務先に通知→勤務先は、義務者の給与から養育費相当額を天引して権利者の指定口座に直接に送金する(但し、分割は義務ではなく、権利者の同意があれば直接送金や供託等の処理も可能とする)、

婚姻費用についても、同意又は審判に基づき定めた額を対象とする給与分割を実施できるものとする(役所に届出→マイナンバー等(社会保険等)を通じて?勤務先への通知)。

これにより養育費等の不払問題は根底から解決するでしょうから、日弁連(子ども関連委員会?)がこれを提唱しないのは怠慢の極みでは?と思わないでもありません。

マイナンバー制度の導入に伴って、離婚等に伴う給与や退職金の分割制度もやろうと思えば確実にできるのではないかと思っているのですが、マイナンバーそのものに否定的?な日弁連に旗振りを期待するのは無理なのかもしれません。

ただ、この制度が実現すれば、高金利引下げと同様にまた一つ弁護士の仕事分野(養育費債権回収)が無くなるわけで、町弁の皆さんますます貧困~♪(ラップ調に)と思わないでもありません。

なお、こうした制度に反対する方(養育費の支払確保の必要を前提としつつ給与分割という方法自体に反対する方)がどのような反論をするかと想定した場合、その根拠として、①給与天引制度が作られると、離婚や別居の事実を無関係の第三者(職場関係者)に知られることになる(情報漏れ等を含むプライバシー問題)と、②天引制度を通じて特定人(養育費等の義務者)の諸情報(勤務先から離婚等の事実・養育費等の額まで)を国が一元的に把握・管理することへの不安(ソフトな情報管理・監視社会への恐怖)の2点が挙げられるのではないかと思っています。

①については、天引ありきでなく、権利者が同意すれば(或いは義務者の申立に正当な理由があるとして裁判所の許可を得ることができれば)天引をせずに自主支払とすることができる(のでプライバシーOK)とした上で、不払等の不誠実事由があれば権利者はいつでも天引の導入を役所に要請できる(申立も簡易な手続でOK)とすれば、きちんと履行する真面目な義務者に不利益を課さずに済む(不誠実な義務者に即時の措置を打てる)ので、それで対処可能と考えます。

これに対し、②については、まさに価値判断の問題で、そうした管理社会的な流れを危惧する(ので住基ネットやマイナンバー等に反対する)方の心情も理解できるだけに、悩ましいところだと思います。

ただ、なんと言っても、「自分では権利主張(確保手段を講じること)が困難な子供の権利・利益を守ること」こそが大鉄則であることは明らかでしょうから、それを前提に、ドラスティックな制度の弊害の緩和なども考えながら、世論の喚起や理解を得る努力を図っていくべきなのでは(少なくとも、当然に支払われるべきものに執行の諸負担を負わせるのは絶対に間違っている)というのが、とりあえずの結論です。

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ところで、今回のブログで取り上げた二つのテーマ(義・支援金の内部紛争と養育費等)は、一見すると無関係のように見えますが、家庭の内部紛争という点では同じです(前者は行政から支給されるもの、後者は家庭内の扶養義務者が支払うべきものという違いはありますが)。

日弁連などは、ともすれば公権力に対し社会的弱者に救済のための公金を拠出せよということばかり強調しがちですが、財政難云々で税金から巨額の拠出を求めることのハードルの高さ(時に不適切さ)が強調される昨今では、それ以上に、「税金に頼らずとも「民」の内部で解決できる仕組み」や民間=家庭の内部の意識等の質を高める仕組み、ひいては法やその担い手(弁護士)がそのことに、どのように関わっていくか(役立つか)という視点を中心に、制度のあり方を考えていただくことも必要ではないかと感じています。

そもそも、「国にあれしてくれ、これしてくれ」とばかり主張するに過ぎないのなら、およそ国民主権の精神に反する(国に何かをしてくれと求めるよりも、自分が国・社会・周囲の人々のため何ができるか、すべきかを考え実践するのが主権者のあるべき姿ではないのか)と思いますし。

余談ながら、今回の弁政連の「県議さん達との懇親会(宴会)」も前回と同様、当家は家族の都合が第一ということで、私は帰宅せざるを得ませんでした。

まあ、当方の営業実績は昨年の今頃と同じく試練の真っ只中ですので、金持ちでもないのに交際費を拠出しなくて済んだと思わないでもありませんが、「私の祖父は県議だったんですよ~」と親近感をアピールして県議さん達を相手にヘコヘコと営業活動に勤しむ・・などという野望?はいつになることやらです。

まあ、上記の発言は、「でも、そのせいで実家の商売は潰れかけたので、政治は御法度というのが家訓なんですけどね」というオチがありますので、県議さん達に話しても嫌な顔をされるだけでしょうけど・・

弁政連岩手支部と県内の議員さん方との懇談会

2月20日に弁護士政治連盟(弁政連)岩手支部と県内の議員さん方との懇談会があり、参加してきました。

弁政連とは、事実上、弁護士会が作った政治運動?的な組織であり、同種のものは弁護士に限らず各士業で作られているものですが、他士業が自分達の職域拡大のため熱心に活動しているのに比べ、弁政連はそうした活動に積極的ではなく地元の議員さんとたまに懇談をする程度の活動に止まっている例が多いようで、岩手もその典型という感じではあります。

今回は、まず、総会の時間を利用し弁政連の会員でもある階猛議員から現在の国政に関する報告と題して階議員が取り組んでいる幾つかの事柄(憲法改正や財政、特定秘密法など)について、同議員の見解表明を含む問題意識に関する説明がありました。

続いて、各党の国会議員や県議会議員の方々が15名ほど出席された形で懇談会が始まり、震災問題が最重要テーマとして取り上げられ、陸前高田で活動する在間文康弁護士が、再建支援金(住宅)、援護資金貸付、各種給付金、災害公営住宅、災害関連死、被災ローン、造成地の瑕疵など、様々な話題についてご自身が取り扱った相談・受任事件などに基づく詳細な報告を行い、それに対し議員の方々が質問や意見を述べるというやりとりがあり、これで予定時間の大半を使った形になりました。

私自身は、在間先生が赴任される以前は陸前高田に当時あった相談センターなどに月1回以上のペースで赴いていたのですが、当時は他の被災地も含め、最も相談を受けていたものが「義援金等の受領者(世帯の代表者)が家族に配布せず独り占めしている」という内部紛争的なものでした。

そのため、当時から、立法?問題として世帯主に給付する形式はやめるべきで、内部的にも分配ルール等を定めるべき(不当な独り占めは不当利得返還請求等もできるものと明言されるべき)と感じていましたが、どういうわけか当時も今もこの話を問題にする方が誰もおらず、その点は今も不思議に感じています。

ただ、懇談の中で議員さん側から「賃貸アパートの貸主として生計を立てている人は、借主が支援金を受給するのに、自分は何も貰えず建築ローンのみが残って立ちゆかなくなった」という発言がありましたが、これは私も震災直後に宮古市などに赴いた際に何度か聞いた記憶があり、懐かしく感じました。

その際は、「多くの人が問題意識を共有しているので、何らかの制度が定まるまで待ってみては」とお伝えしていたのですが、結局、私的整理ガイドライン(いわゆる被災ローン減免制度)による銀行債務の一部免除以外にはさしたる制度ができていないように思われ、その点は残念に感じています。

他に、法曹養成制度(主に修習生の困窮)について弁護士側から議員さんに改善への後押しを求める陳情的な説明がなされていましたが、そこで時間切れとなり、私が準備段階の会合で取り上げて欲しいとお願いしていた「包括外部監査人など、政治部門(行政・議会)への地域の弁護士の関与の機会の拡大」というテーマには触れていただけませんでした。

以前にも書きましたが、私は「大雪りばぁねっと事件」に関する一連の民事訴訟に関わっている唯一の「岩手の弁護士」で、要のポジションにある方の代理人をしていることもあって、事後処理絡みを中心に様々な「残念な事情」を把握しています。

それだけに、できれば、守秘義務の範囲内でそうした話も交えつつ未然防止に関する制度改善や地域の弁護士の活用などの必要性を説明することができればと思っていただけに、残念に思いました。

そもそも、私が弁政連に加入したのは、狭義の政治運動(反政府闘争の類や業界権益絡みなど)に関わりたいからではなく、町弁業界が新人弁護士激増の受け皿となる「活動領域の拡大」(ペイに長期戦が必要なものを含む広義の「仕事」の増大)ひいては、それを通じた「地域社会への法の支配(法の正義を中心とする日本国憲法の理念を生かした社会形成)の浸透」について地道な努力をする必要に迫られており、地元の政治関係者への支援要請はそれに対する真っ当な方策ですので、そうした営みに汗をかきたいという理由からでした。

ですので、震災絡みであれ他の事項であれ、地域の様々な社会課題を取り上げ、かつ、「望ましい解決のあり方」を提言するというだけでなく、その解決の過程に「地域の弁護士を、このような形で活用してほしい」との提言、陳情を含むのでなければ、弁政連がそれを行う意義は乏しく、私が関わる必要もないと感じています。

そうした意味では、今回の懇談会が、上記の包括外部監査人のような「地元弁護士の仕事を増やすための陳情」よりも、修習生の窮状云々の説明という「業界への予算を増やしてほしいとか、弁護士の数を減らすべきという主張に親和性のある陳情」を優先させたことは、その文脈に照らしても残念な感じがしてしまいます。

また、この種の会合には常のことではありますが、様々な方が多様な論点や問題意識につき意見を仰るものの、百家争鳴して話は全く進まずという感は否めず、その点も残念に感じました。

根本的には、上述のような「弁政連(岩手支部)とは何をする組織なのか」という定義付けの問題があるのですが、多くの団体や支持者などと関わりを持たなければならないという意味で、時間が限られているであろう議員さん方との懇談の機会を持つにあたっては、個別実務に関する問題意識を説明するだけでなく、その改善を具体的に実現するための法律や条例などの案(改正を含む)や現行規定の具体的な運用案のような形(それを議員さんがそのまま議会等に持って行き、立法活動や議会からの行政への要望という形で伝達できる)で提言し、実現過程の協議まで繋げるような工夫が必要ではと思いました。

もちろん、問題意識そのものが浸透していない論点では意識喚起の説明だけで精一杯にならざるを得ないでしょうが、震災絡みの論点の多くは問題意識そのものは異論なしという話も多いでしょうから、なるべく各論(改善案)の話を進めていただければと感じています。

ところで、弁政連(岩手支部)は「不偏不党」という政治運動と真っ向から矛盾するような?スローガンを掲げていることもあり、開催にあたっては県内の国会議員と県会議員の全員の方々に参加依頼をしており、出席予定者に関しては、概ね各党の方々が参加を表明されていたのですが、どういうわけか、自民党系の県議さん(予定者3名)が当日は全員欠席となり、高橋ひなこ議員は参加されていたもののすぐに所用?で退席されてしまったので、結果として、階議員をはじめとする民主系と主濱議員をはじめとする小沢氏ないし達増知事系、旧地域政党いわて系列(いわて県民クラブ。平野議員は欠席でした)、あとは共産党と公明党と無所属の県議さんのみという出席者構成になっていました。

私は弁政連の立ち上げのときから参加しており(力のない窓際会員ですが)、私の記憶でも、議員さんとの懇談会は例年とも民主系列など(国政野党)の方は割と多く参加されるのに対し、自民系列の方の参加はいつも少ないという印象が強く、弁政連側のポリシー(特定政党に偏する支持はしていない)という点に照らしても、残念に感じています。

階議員の本来の職業が弁護士(しかも岩手会所属)であることや、その関係で弁政連側も階議員(や系列の民主県議の方)と懇意にされている方が割と多いように見える(逆に、自民系の国会議員さんや県議さんと親しくしている方は私の知る限りではあまりおられない?)ことも、そうした背景にあるのかもしれません。

ただ、旧地域政党いわて系の方々も例年よく参加されているように感じますので(平野議員も今回はたまたま急用とのことでした)、その点はよく分かりません(単純に、自民系の県議さん達は地元の弁護士は相手にしていないということなのでしょうか?)。

40年も前の話で恐縮ですが、私の祖父は自民系列の県議(二戸選挙区)として1期を務めており、残念ながら2期目で落選して引退になったのですが、どこまで本当かよく分からないものの、福岡工業高校を誘致したのは祖父だとか政治に手を出したせいで家業が倒産寸前まで追い込まれたとか、子供の頃は、そうしたことで色々な話を聞いたことがあります(なので父は政治に関わることを強く嫌っていました)。

それだけに、私自身が選挙と関わることはないでしょうけど(人気投票には適性なさすぎですし)、地域のニュートラル(やや保守系のノンポリ無党派層)な法律実務家として、与野党を問わず地域の課題抽出や立法過程などに汗をかいて欲しいと求められれば、お役に立ちたいとの思いを募らせつつ、そうした機会に恵まれないまま鬱屈した日々を過ごしているというのが正直なところです。

今回の懇談会も引き続き議員さん方との懇親会があり、上記の観点から地元の県議さんで私を必要として下さる方にお会いすることができればと思っていたのですが、妻が外せない飲み会があるということで、残念ながら弁護士側では私だけが不参加となり、この種の話がある際の通例として夕食は近所のスーパーで家族の割引弁当を買いに行くというトホホな夜になりました。

兼業主夫の宿命なのか高校進学時の呪いなのか分かりませんが、弁護士会であれJCであれ議員さん方であれ、もっと盛岡や岩手の方々と距離を縮める機会があればと思いながら、どういうわけか私には引力よりも引き離そうとする力のほうが強く働いてくるような感じがあり、そういう星の下に生まれたのだろうかと時に悲哀を感じながらも、まずは自分にできることを地道に模索し続けたいと思います。

ともあれ、弁政連関係者の一人として、ご参加いただいた議員の皆様に御礼申し上げます。

弁政連岩手支部と階猛議員との懇談

弁護士会では、「弁護士会ないし弁護士が広く共有している政策課題について政治部門(議員、行政等)に働きかけ(ロビー活動)を行うこと」を目的とした「弁護士政治連盟」という団体を数年前に設立しており、私も弁政連岩手支部の会員兼名ばかり理事となっています。なお、弁護士に限らず、税理士や行政書士など文系士業のほとんど(全部?)が「政治連盟」を作って、自己の職域拡大などについて盛んにロビー活動をなさっているのだそうです。

弁政連岩手支部では、これまで1年に1回程度の頻度で地元選出の国会議員や県議の方と懇談会を持ってきたのですが、先般、弁護士資格を有する国会議員の方と懇談しようとの話になり、岩手1区選出の階議員と懇談することになりました(岩手4区の藤原議員にも要請したそうですが、都合がつかなかったと聞きました)。

冒頭、階議員から、ちょうど報道で取り上げられたばかりのNHK会長との議論をはじめ最近の活動や問題意識などが説明された後、弁政連側から幾つかのテーマを挙げてフリートークで懇談するという形になりました。

弁政連側では、法テラス岩手のスタッフ弁護士や他士業絡みの話題を出したものの、準備不足のせいか?さほど盛り上がらず、階議員の活動や政治認識、最近の提出法案、法曹養成制度などを中心に、ざっくばらんなフリートークが中心でした。

階議員は、NHK会長との議論が報道された後、事務所に同議員を誹謗中傷するFAXが山のように届いた話などを例に挙げて、安倍政権下の日本が、自由な言論を抑圧し「国の方針に背くな」と反対意見を萎縮させ封殺しようとする動きが強まっているので、自分はそうした風潮と断固闘っていきたいという決意表明を強く述べておられました。

私自身は、ノンポリ無党派の人間ということもあり、階議員のそうした決意に特に異論もないところではあるのですが、他方で、過去に、某企業の代理人として労働組合に関する紛争の代理人をお引き受けしたことがあり、その際、支援労組を名乗る全国の多数の団体から、その企業に対し時には不穏当な文言を交えて批判する趣旨の大量のFAXが送りつけられたのを目にしたこともあるせいか、「言論弾圧だ」と声高に主張する人達の属する社会の方が、案外、自由に物を言える雰囲気の乏しい、偏狭で権威的・抑圧的・排外的なものであることが珍しくないと感じるところがあります。私のようにどこに行っても窓際会員になってしまう輩に言わせれば、そうしたことも、国会議員さんには押さえておいていただければと感じました。

ともあれ、批判するのが野党の仕事、という見方もあるのでしょうが、私自身は、抽象論よりも相手方が無視ないし放置している深刻な現実を示すような多くの具体的な事実の発掘、指摘をもって、批判的言辞に代えていただければ(抽象的な勇ましい言辞だけだと、最初から同じ結論を支持している方の感情的気分を高揚させる面はあるでしょうが、それに同調しているわけではない者にとっては、そうしたものに冷めた印象を感じていることを表明するのを萎縮させる効果しか生まないのでは)というところはあります。

他方で、現在、立法に向けた議論がなされている様々な法案について党派的立場に関係なく問題として検討すべき課題があることに関し幾つかの指摘があり、そうしたお話は、実務能力に秀でた階議員の面目躍如という印象は強く受けました。

弁政連側(=盛岡の有力な弁護士さん方)は、盛岡市に法テラス岩手のスタッフ弁護士が配置されることに強い反発を持っているのだそうで、懇談の際、某先生が、「何年も前の日弁連と法テラスの議論で、地元弁護士会の同意がなければ法テラス事務所は設置しないと約束したはずなのに、それを反故にされたので納得いかない」と憤慨していたのですが、階議員から、それは、いつ行われた、どのような会合で、誰と誰との間で合意されたもので、その証拠(議事録など)はあるのか、と質問されると何も説明できず、「そうした事実を調べて提示するのが貴方がたの仕事でしょう。自らが汗をかいて努力しなければ、議員に縋ろうとしても、物事を守ったり変えたりすることはできないのではありませんか」と議員に窘められる一幕がありました。

私自身は、その問題(法テラス岩手のスタッフ問題)にはさほど関心はなく、物事の判断の決め手となるべき事実と証拠を調査するプロというべき弁護士が、そうした用意をすることなく自分達の利害に関する事項について陳情し、(一応、同業とはいえ)国会議員さんに窘められるのも、残念なことだと思いながら傍観していたというのが、恥ずかしい現実です(本業では、そうした主張立証をきちんとなさっている方々ですから、医者の不養生といったことなのかもしれませんが)。

弁政連に限らず、弁護士会の様々な会合ないし活動自体が、プロ意識の乏しいサロン的体質だなぁと感じる面が多々あり、スタッフ弁護士であれ何であれ、弁護士や弁護士会自体が、もっと激しい試練に晒されるのでなければ、そうした体質自体を変えていくことができないものとして世間に扱われるのではという悲観的?な印象を抱いています。ただ、私自身さしたることもできないまま時間ばかり空費しているという感は否めませんが。

スタッフ弁護士問題については、先日、法テラスから、多額の交通費を要する岩手県内の某支部(裁判所)に出張する際の交通費が一切、我々(契約弁護士)には支給されないとの説明を受けて気が滅入ったことがあり、そういうことであれば、遠方の支部への多数回の出張を要する少額事件などの不採算仕事を、(給料取りなので自己負担がない=交通費も法テラス事務所から支給される)スタッフ弁護士にやっていただく方向で(要するに、盛岡にいるけど専ら盛岡以外の管轄裁判所の仕事をするものとして)、やっていただくのも一つの考えではと思わないこともありませんでした。

ただ、そういう類の要望については、スタッフ弁護士よりも、交通費等の立替制を導入するとか、裁判所の遠隔地審理システムの拡充(双方とも電話会議OKとして出張不要とするなど)に求めるべきことで、そうしたことも含め、実務的な議論を詰めて相応の場に働きかけをしていただければと改めて感じました。

なお、「スタッフ弁護士問題」は、究極的にはいわゆる弁護士自治(法テラス=行政機関による弁護士業界の統制云々)が絡む話なので、折角、議員さんと懇談するのであれば、弁政連側にはそうした大きな話も含めて論点・議論を詰めたり資料を整理してお渡しするなどの工夫があってもよいのではと思いました。

階議員からは、「議員には秘書などのスタッフはいるが、選挙対策の従事で精一杯で、重要法案が目白押しになっているのに、真に政策(法案の当否や立法論など)を考えてくれるシンクタンクのようなスタッフを持つことが出来ないのが残念である」という趣旨のお話がありました。恐らく、そのような営みを何らかの形で弁護士会に期待してのご発言ではないかと感じましたし、弁護士会(弁政連)側も、階議員に限らず、地元選出の議員さんの要望に応じて、法律論が絡む政策課題について論点整理や事実調査、法的検討などを行ったレポートを提出するというような営みを考えてよいのではと思ったりもしました。

ただ、現実問題として代金は無理筋でしょうし、さりとて無償では質の担保に不安があるでしょうから、日暮れて道遠しの感は否めずといったところでしょうか(タダの代わりに、弁政連の政策課題に対し相応の協力を約束いただくといったパターンなら、それなりに実効性があるかもしれませんが)。

ともあれ、弁護士出身である階議員に限らず、国会議員さんとの「ざっくばらんな会合」自体が貴重なものと言うべきでしょうから、発言力のない万年窓際族の私にはさしたることはできそうにありませんが、今後も参加だけは続けたいと思っています。

なお、(特に外に出して困るような話を書いたわけではないでしょうし、そもそもそのような話自体もなかったとの認識ですが)議事録等もない非公開の場のざっくばらんな懇談について、私なりに感じたことを書いたものですので、その点は予めご理解のほど、お願いします。

岩手における「政弁交流」と復興法制に関する議論の様子

岩手弁護士会では、数年前から年1回ほど?の頻度で地元選出の国会議員さんや県議さんとの懇談会を行っています。都合の付かない方などを別とすれば、毎回、全政党・党派の方々がいらしています。

私自身は下っ端の一人として末席で協議を拝見するだけなのですが、一応は主催団体(弁政連岩手支部)の会員である上、今回は震災絡みの話題が豊富であることや、政官ならぬ「政と弁」のコミュニケーション自体には関心がありますので、なるべく参加することにしています。

で、先日、その会合があったのですが、時間の大半を震災問題、とりわけ高台移転などの土地収用・区画整理の問題に費やしていました。例えば、「相続人が膨大で事務作業が進まない事案が多い」などといった、問題点の報告がなされていました。

ただ、まだ実務の動きが進まないせいか、具体的な処方箋(大量相続人の事案で、例えば、不動産の遺産分割手続を省略し、行政主導による相続分の換価供託で済ませるような特別法など)について、あまり議論が煮詰まっている印象は受けませんでした。

まあ、私自身が、その種の議論と縁が薄く、話の中身を理解できていないだけなのかもしれませんが。

個人的に、強く印象を受けたのは、被災地で執務する方(弁護士)の報告として、現在の仕組みは、被災地の復興を担う主力となるべき、ある程度の収入、稼働力、資力のある40代前後の世代に対し冷たい仕組みになっているという話でした。

具体的には、その類型にあたる人は、住宅等の被災でローンが残存しても、ある程度の高収入があるので私的整理GLで救済(減免)が拒否されてしまうとか、その世代は一刻も早く自宅を再建したいのに、前提というべき高台移転等が整わないので、建てたくとも建てられず、さらに生活再建支援法に基づく加算支援金の期限も迫っているなどの点が挙げられていました。

そして、要するに、現在の被災地に適用される法や実務スキームが、勤労の意欲と能力のある復興の主力担い手層に冷たい形になっており、これでは、この層が次々に内陸に移住せざるを得ないのではという指摘がなされていました。

また、ある議員さんから土地の境界問題の迅速解決の必要性が強く述べられていましたが、その点について、現在の状況や処方箋などを述べる方がいなかったことが、少し気になりました。

私は筆界特定制度が導入された10年近く前、少しだけ筆界調査委員をやらせていただいたことがあり、その際、筆界特定制度の有用性(境界確定訴訟と比べた使い勝手の良さ)を感じる一方、法務局の方々が多くの手間をかけて非常に厳密な調査をしており、これを大量にこなすことは無理だろうと感じたことがありました。

思いつきレベルですが、筆界特定に関する特区制度のようなものを設けて、法務局や筆界調査委員の主導で、通常よりも簡易迅速な方法で筆界を定めて、不服がある者は自己の費用負担で通常型の処理を申し立てることができるといった制度を設けてもよいのではと感じました。

これと上記の未分割不動産の簡易買取制度をセットにすれば、境界及び相続未確定の不動産の区画整理などは、ある程度、迅速に行えるのではないかと思いますが、どうでしょうか。

この点は被災地における実務の実情を踏まえた判断になるでしょうから、詳しく調査、レポートする学者さん?などが登場いただければと思ったりもします。

ともあれ、このような政弁交流に限らず、ここ1、2年は、岩手弁護士会と県庁の方が協議することも頻繁に行われているそうで、これも震災前にはほとんど見られなかったことです。

私自身は、今や事務所の運転資金を稼ぐことに汲々とする身のため、そうした営みに参加する余力が乏しく、残念に思っているところですが、具体的に実働の出番が必要となれば、いつでも取り組めるようアンテナだけは張っておきたいと思っています。