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東京都知事選挙

アゴラ投稿の衝撃?と原文、そして都知事選に関する私の本音

先日の月曜に掲載したブログの文章が、著名な言論サイト「アゴラ」に投稿したところ、驚いたことに、その日のうちに載せていただきました。
http://agora-web.jp/archives/2020498.html

この文章は、日曜の深夜に突如、書かずにはいられない気分になり、朝まで事務所に籠もって書き上げたものですが、恥ずかしながら、できることなら都民を中心とする多くの方に見ていただきたいなどという危ない精神状態に陥り、こともあろうに?以前から知っていた(時折拝見することもあった)アゴラに、思い切って送信してみたという次第です。

もちろん、投稿(送信)したのも初めてですし、内容に多少の自信(多くの方が目を通すに値するのではないかとの思い)はあったものの、掲載される自信はなく、されたとしても画面の隅に一時的に出現するだけだろうと想像していたのですが、月~火にトップページの冒頭(注目記事欄)に載せていただいたり、全体のアクセスランキング(24時間)でも最大(現時点まで)で2位となり、1000個を超える「いいね」もいただき、投稿者本人が一番驚いています。

試しに、私の名前でグーグル検索してみたところ、面識のない方から「この記事は読んだ方がよい」などと暖かいコメントをいただいたものもあり、ただただ恐縮するばかりです。子供の頃、世間に向けて評論家のような仕事をしている方々にいささか憧れを抱いたことがありましたので、少しだけその真似事をさせていただき、良い冥土の土産になりました、これで思い残すことなく旅だっていけます、というのが正直なところです(笑)。

もちろん、厳しいコメントをいただくこともあるだろうと思っていたら、大物ブロガーの山本一郎氏から「普通は集団不法投棄は見つけ次第内偵かける、群馬も長野も千億単位で処理費かかるほど放置しないのに、金字塔なんて言うのは笑っちゃうよ」と酷評をいただいたのも発見しました。

このような批判は当然あり得べきところで、その点は「人里から遠く離れ、岩手の人間は誰も気にしない山奥にある上、岩手県庁の許可業者(処分業)ではなかった」という面と、「青森県内では過去にも問題を起こしたことがある「札付き」の業者で、調べようと思えばできたのではないか」という面と、どちらを重視するかという関連事実の積み上げと総合評価の問題に帰着しますので、発覚までの問題についてまで増田知事個人の責任を問えるのかということも含めて、軽々にどちらが正しいと言えるものではないのですが、それはさておき、著名ブロガーの山本氏がツィッター?でコメントしていただいたお陰で、私の投稿の存在を知ってご覧になった方もおられるでしょうから、投稿をご覧いただいたことも含め、山本氏にも大いに御礼申し上げたいと思います。

ちなみに、県境事件は岩手県の農政部が最初に発見し、岩手県警と協議し短期間の内偵で着手に至っており、青森県庁はそれ以前に地元で多少の通報を受けていたものの本格的に取り組んだ人がいなかった(ので、青森側の対応の当否はさておき、岩手側が「発見」した時点で、すでに数百億円規模の費用を要する惨状になっていた)との記憶です。
http://www.pref.iwate.jp/kankyou/fuhoutouki/18923/015687.html

以前に、山本氏が増田知事は非常に無能だと酷評されていた記事を拝見したことがあり、それだけに、増田知事にも良いところがあると書いた記事に否定的なコメントをせずにはいられなかったのかもしれません。

ところで、この投稿は、当初「都知事選は『東京をぶっ潰す男』と『日本をぶっ壊す女』の戦い(選択)になるべき~知られざる増田県政の金字塔から考える~」とのタイトルで、5000字を超える文章をダラダラ書いていたのですが、タイトルが24字以内で本文も3000字以内との制限がありましたので、一旦書き上げた後、あれこれ考えて削り、どうにか3000字強まで減らした上で送信しています。

結果として、文章が引き締まり質が遥かに良くなったように思われ、その点も含めアゴラには感謝しています。

投稿文を読んでいただいた方の多くが感じたことだと思いますが、この文章は、増田氏が岩手県知事時代、県境不法投棄事件の陣頭指揮に優れた点があったという点を指摘させていただいたに止まり、現在の都知事選において増田氏を支持することを目的として書いた文章では全くありません。

むしろ、「県境事件のご経験を生かして現在も東京的なるものと闘って欲しいのに、そのような印象を受けない」と批判じみたことを述べている下りもあり、見ようによっては、過去の栄光を引き合いに、東京的なるものと闘う姿勢を見せていない現在の増田氏を批判し、対照的に、旧来的な政治勢力との対決姿勢を鮮明に打ち出し、対決の場を演出している小池氏への支持を暗に示したものと読めなくもありません。

今回の投稿を私が「せずにはいられないと思った」一番の理由は、都知事選にあたり、増田県政を批判するネット記事等を多数拝見しているうちに、「確かに増田県政は在任当時も県民から批判される点は多々あったと思うが、少なくとも県境事件に関しては、二戸人には恩義があるはずだ(何より、豊島事件のような展開になれば、私は弁護団の一員として岩手・青森両県庁と対決し、苦心惨憺の目に遭っていたはずで、そうならなかっただけでも恩義がある)そのことを、このタイミングで誰も言わなくてよいのか(それは忘恩の輩ではないのか)」という思いが沸き上がってきたという点にありました。

その上で、その延長線で、増田氏は本当に都知事になりたいなら「東京と闘う男」を標榜すべきだと感じると共に、また、それでこそ、「日本(の政治文化全体)と闘う女」としての小池氏のキャラもますます引き立つ(政治のあり方に関する議論や運動が研ぎ澄まされる)のではと感じ、そうした観点から深夜に一気に書き上げたという次第です。

ですので、現時点の私にとっては、曲がりなりにも「日本と闘う女」としてのカラーを打ち出している小池氏の方が、「東京と闘う男」としての姿勢をあまり見せていない(ように感じる)現在の増田氏よりも「支持率一歩リード」という状態にあります。

その上で、「日本的なるものとの対決(小池氏)」も「東京的なるものとの対決(増田氏)」も、どちらも現在の東京ないし日本が取り組むべき課題であって、双方は対立的・選択的なものではなく、優先順位はありうるにせよ、双方とも適切な指導者のもとで推進されるべきだと思います。

そんなわけで、欲を言えば、現在の感覚としては、次の展開を期待しています。

1 小池氏は、知事当選後、増田氏を自民都連からスカウトして副知事とし、旧「みんなの党」を核とする諸勢力(一部、自民・民進などからの分裂組を含め)を糾合して、橋下市長よろしく地方議会制度などの改革を推進する新勢力を作る。

2 ほどなく、地方自治制度に関する様々な改革案を提示し、これに反対する自民党などの従来勢力との対決シーン(劇場)を演出しつつ、幾つかの妥協を勝ち取る。その中には、石原・猪瀬・舛添知事の退場時に盛んに言われた「知事が辞めるたびに巨額の選挙費用を要する愚」の改善策として、例えば、議会の3分の2(又は過半数?)以上の不信任がない限り、知事の辞任時に副知事に承継させることも可とする法案を可決させる。

3 小池知事は、それを手土産に、次の総選挙の際に知事を辞任し、選挙費用を使わずに増田都知事が誕生する→増田新知事は、小池知事がやり残した東京と地方との関係の再構築(東京的なるものの「悪い面」との対決)を推進。

4 他方、小池氏は国政復帰で一大勢力を構築→同じく復帰した橋下市長と連携して行政府・立法府の本格改革に従事?

まあ、こんなことを言い出したら、山本氏でなくとも、妄想もたいがいにせえよ、と失笑を買うだけですよね・・

でも、政治は悪口を語る場ではなく、夢を語る場であって欲しいと思っています。

余談ながら、小池氏といえば、「クールビス」を推進した環境相としてのイメージが強いですが、同氏は特措法が制定された当時の環境大臣(鈴木俊一氏。岩手2区)の後任で、私は、平成16年当時、不法投棄問題の意見書づくりに勤しんでいた関係で、日弁連(公害環境委員会)が環境大臣(環境省の幹部職員)と毎年行っている懇談会に末席ながら参加させていただき、小池大臣を拝見したことがあります。

その際、途中から入室した小池大臣のオーラが凄まじく、同氏の入場後に場の空気がガラッと変わり、日弁連会長さんがとても小物に見えるくらい、誰がこの場で一番偉いのかをまざまざと見せつけられたように思いました。

そうした経験も含め、増田氏・小池氏とも、都政や国政に新たな光を提示できるお立場にあり、都民は、議論を整理し先鋭化させることで、どちらの選択をするにせよ、社会の新たな道を切り開くことができるのではないかとの認識を一人でも多くの方に共有いただければとの思いで、僭越ながら、深夜にあれこれ考えて、送信させていただいた次第です。

以下、アゴラ投稿の「ダイエット」前の原文を、僭越ながら掲載させていただきます。

************

鳥越氏のスキャンダル話を含め、巷の話題を席巻している東京都知事選ですが、我々岩手県民にとっては、増田氏は、ある意味「昔の主君」ですので、都民や他府県民とは違った感慨というか、視点で眺める面があります。

この点について、最初に、岩手の環境問題に関心を持つ弁護士の立場から、世間でほとんど取り上げられることがない「増田県政」の知られざる功績たる「県境不法投棄事件」について述べつつ、それを踏まえて、増田氏は、「東京をぶっ潰す!」という公約こそ表明すべきだということを、述べたいと思います。

また、それに続けて、増田氏の依って立つべき正義が、上記のようなものというべきであるからこそ、対抗馬たる小池氏には、東京からさらに視野を広げて、「日本(の政治文化)をぶっ壊す!」という公約をこそ掲げていただきたい、その二つの路線対立こそが、今回の東京都知事選における「あるべき争点」なのではないかということも少し書きたいと思います。

長文になり恐縮ですが、東京都知事選挙に関心のある方はもちろん、願わくば、都民(選挙権者)の方々に広く読んでいただければと思っています。

***

まず、「増田県政」についてですが、報道などでは「増田知事が在任中にハコモノばかり作って岩手県の借金(県債残高)を二倍にした」とか「巨大ハコモノを作らせたのは、増田知事を担いだ小沢一郎氏らの勢力(と、それを支持する建設業界)だ」とか「『がんばらない宣言』に象徴される費用対効果が不明なキャンペーンで、東京のコンサルタントに無駄に多額の金を払った」などの批判的報道を拝見することが少なくありません。

私自身は、増田県政(全3期)の初期(平成10年頃)と末期(平成16年末~19年)しか岩手におらず(前者は司法修習生として、後者は岩手への移転開業によるものです)、上記の批判に対し、さほど気の利いたコメントができる立場にはありません。

ただ、県債問題については、平成19年の増田知事の退任時に盛岡青年会議所(JC)などの主催で行われた「県知事マニフェスト検証大会」の際、増田知事から「当時が地方への財源支援の制度の転換期になっており、この時期(増田氏の在任時)だから、県立大やアイーナ(複合施設)の建設のため高額な補助を国から得ることができた(千載一遇のチャンスであり、現在なら諦めざるを得なかった)。これで県のインフラはほぼ整ったのだから、次の県政ではその有効活用に力を入れていただきたい」と仰っていたことはよく覚えています。

実際、県立大などのことは分かりませんが、アイーナについては私も様々な形で利用する機会があり、空間デザインの善し悪しなどは議論があるようですが、現に活用されていることも視野に入れて論じなければフェアではないのではという程度の認識はあります。

これに対し、増田県政の功績として、ご本人を含めほとんど誰も語ろうとしませんが、「金字塔」と言って良いほどの価値があるもので、私自身よく知り、多少とも関わっているテーマが一つあります。

それは、「岩手・青森県境不法投棄事件(以下、県境不法投棄事件といいます)で、率先して全量撤去と排出者側(首都圏など)への責任追及の姿勢を示し、特例法の制定に向けた世論を誘導して、曲がりなりにも県民の費用負担を大きく減らす形で地域の環境を回復させたこと」です。

県境不法投棄事件とは、青森県田子町の山中(岩手県二戸市との県境)に産業廃棄物の処理施設を設置していた業者が、両県境の谷間や山林などに、有害性の高いものを多く含んだ膨大な量の廃棄物を不法投棄し、いわば「谷を産廃で埋め尽くし、さらに山を穴だらけにして産廃で埋め尽くす」という暴挙を、推定で10年前後の期間に亘り行っていたという事件で、平成11年に発覚し刑事摘発され、翌12年頃から本格的に被害回復に向けた両県の取り組みが始まっています。

この事件では、主犯格たる青森の業者と、首都圏を中心とする全国各地から産廃を集めて現地に送り込んだ埼玉県の業者が摘発されたものの、発覚の時点でほとんど倒産の状態にあり、両県併せて最終的に1000億円近くに及んだ原状回復費用を負担できる状態にはありませんでした。

そのため、とりわけ主要な巨額負担が当初から予測された青森県庁は、廃棄物を撤去するか否か明言せず、遮水壁を作って現地に放置(封じ込め)をするのではないかとの疑念が強く寄せられ、地元民(田子町側)との間で、かなりの軋轢が生じていました。

これに対し、岩手県側では、増田知事が非常に早い段階で「有害性が強い物が多数含まれており、全量撤去以外の選択肢はなし」との強い姿勢を表明し、それと共に、岩手県独自で処理業者の財産に裁判所を通じて仮差押を行い、2億円以上の確保に成功するという快挙を成し遂げています。

県境事件の現場は、岩手側にとっては人里から遠く離れた山奥で、一般県民はおろか二戸市民にとってすら関心が低い事件だった上、その時点で撤去費用について国の補助などが得られるのか(全額を県民が負担しなければならないのか)不透明だったにもかかわらず、「首都圏など全国のゴミが、違法に持ち込まれて捨てられた」という事件の性質が、岩手が背負う「時の中央政権に虐げられた蝦夷などの歴史」と重なり、上記の快挙も相俟って、増田知事の判断は、県民の強い支持を受けることになりました。

そして、青森県もこの動きに影響を受け、重い腰を上げるような形で全量撤去を表明し、さらに、時の環境相を鈴木俊一氏(岩手2区=事件の地元からの選出)が務めていたことも味方したのか、平成15年には国が全量撤去の費用の6割程度を補助する「産廃特措法」が制定され、これにより約10年かけて両県の撤去作業が行われるという展開になりました。

この法律は、悪質な大規模不法投棄が判明した県境不法投棄事件と香川県豊島の不法投棄事件の2つを主に救済するために制定されたのですが、仮に、増田知事や青森県知事が廃棄物やこれに伴う汚染土壌を放置する選択肢をとった場合、地元住民は、豊島の住民が中坊公平弁護士らの支援のもと香川県を相手に公害調停などを行った事件のように、長く苦しい闘いを両県との間で強いられる展開になったことは間違いありません。

そのような苦難を地域住民に強いることなく、率先して全量撤去を打ち出し、豊島事件と連動する形で国の廃棄物行政の不備を説き、特措法による国費の多額の補助に繋げたことは、「岩手の歴史」と相俟って、増田県政の金字塔と呼んで遜色ないと思っています。

実際、両県は、原状回復作業に並行して、産廃業者に処理委託した全国の事業者(中には世間に名だたる有名な大企業も多くあります)の幾つかに対し、廃棄物処理法上の違反があったとして、自社が排出した廃棄物の撤去費用を支払わせることに成功しており、両県は、そうした形で「首都圏(の排出者側)」との闘いを地道に続けてきたのです。

***

ただ、増田知事にとって、一つ、心残りがありました。

それは、事件の中心人物たる埼玉の中間処理業者を指導すべき立場にあった埼玉県の廃棄物行政の責任を問うことができなかったこと、そして、東京都をはじめとする全国各地の排出事業者に対し適正な処理委託をするよう指導する立場にあった「排出者側の自治体(東京都など)」に、「純然たる被害県」としての岩手県が強いられた80億円程度と見られる「県民の費用負担」について、何らかの形で肩代わり(支援)を求めることができなかったことなのです。

要するに、「首都圏をはじめとする排出側の行政の責任を問うこと」が、県境事件、ひいては増田知事の大きな宿題として残りました。

私は平成15年から16年頃にかけて、日弁連・公害対策環境保全委員会(廃棄物部会)の委員として岩手県庁に接触していた関係で県職員の方からお話を伺う機会が何度もあり、知事がそうした思いを共有し、一定の模索をしていたことは間違いありません。

だからこそ、そのときの増田知事を知る岩手県民は、増田候補に対し、「時に、首都圏の都合(エゴ)の犠牲を強いられた、地方(田舎)の悲しみ、苦しさを東京の人達に伝えることを忘れないでいただきたい、さすがに、都知事として『県境事件の撤去に要した岩手の負担を東京都から返還する』とか、『青島知事に倣って、突如、東京オリンピックを中止し、浮いた国の財源をILC(岩手・宮城県境に予定されている国際リニアコライダー)の建設費に使わせる』などと公約して欲しいとは申しませんが、せめて、地方を知る者、地方から東京に出てきた者の代表として、地方と東京がよりよい関係を築くため、東京のあり方を大きく変えていく(そのことで、日本全体をよりよいものとしていく)姿勢や手法(政策)を強く打ち出していただきたい」と願っていることは確かなのです。

そうした「知る人ぞ知る期待」を背負っている増田氏に打ち出していただきたい言葉が、小泉首相に倣って言えば、「(地方の立場から)東京(のエゴ)をぶっ潰す!」であることは、申すまでもありません。

この一言を増田候補が絶叫していただければ、最初は全国の多くの地方住民が賛同(熱狂?)し、ほどなく、その真意を知った東京都民も、これまでの東京のあり方を問い直し再構築してくれる指導者として、増田氏を支持するに至るということも、十分に期待できるのではないでしょうか。

それだけに、ある意味、「ぶっ潰す」対象の一つと感じられないこともない、自民党都連などの勢力が増田氏を担いでいるという構図や、増田氏が上記のようなお気持ちを今も感じておられるのかあまり伝わってこない選挙報道を眺めていると、岩手県民としては残念というか、寂しいものを感じ、誰か(ご自身を含め)、「増田氏を解き放って欲しい」と言わざるを得ない面はあります。

***

ここまで増田氏のことを述べてきましたが、以上との対比で、小池氏に求められるものは何だろうかということも考えてみました。

以下は、多くの方が同種のことを述べていることで、ありふれた話かもしれませんが、増田氏が「東京的なるものとの対決」をこそ掲げていただくべき責任(歴史)を背負っているのだとすれば、小池氏は、現在の都議会(自民党都連)との対決に象徴されるように、政界を渡り歩き、小沢氏や小泉首相に象徴されるように、「それまでの政治の中心勢力と対決する道を選んだ大物に付き従い、何らかの形で旧勢力と闘ってきた人(だから東京都連のような人達に嫌われるのだろう)」と言えるのだと思います(防衛相時代の大物次官との対決も、思い起こされるエピソードの1つでしょう)。

だからこそ、小池氏を支持する方々の多くが、今回の都知事選を「何となく政治を壟断している(自分達の影響力の確保を優先させて社会に閉塞感を与えている)のではと感じる旧勢力との闘いの集大成、或いは、今度はご自身が主役となって闘う出発点」になって欲しいと願っているのではと思います。

であれば、「現在の都議会(自民党都連)の主要メンバーとの対決」という対人的な話に矮小化させず、日本の都道府県議会制度(の運用)そのものについて、都民ひいては国民が納得できるような「問題の本質」を指摘し、変革(制度改変)を呼びかけるような姿勢を示していただきたいと思います(それは、兵庫県議会の事件に象徴されるように、国民全体が期待していることと言えるでしょう)。

もちろん、制度論は簡単に言えるものではないでしょうが、そうした姿勢をご本人が示して天下の賢を求め、それが支持を集めるのであれば、自ずから百家争鳴する展開は期待できるはずです。

今の国民は、どうして橋下市長や「維新の会」が一定の成功を納めたのかを知っています。それは、(自民党改憲案と異なり)国民の人権に文句を付けるのでなく、行政機構(ひいては住民に不信感を抱かれていた行政の実情など)の変革を旗印にして、それに取り組んだこと(いわば、弱い者いじめでなく強い者に挑んだこと)が庶民の喝采を浴びたからだと思います(もちろん、公務員労組との対決に明け暮れたことは、労組が弱者か強者かはさておき、「やり過ぎ」を裁判所から認定されたことを含め、その立場の方々からは徹底的に敵視されることにはなりましたが・・)。

小池氏が、橋下市長のように行政(役所)や立法(都議会)の改変に取り組んで一定の成果ないし支持を集め、やがて国の行政・立法の変革(国の官庁や国会などに関係する改憲論を含め)も促すような取り組みするのであれば、すでに「小池与党」化している音喜多都議らの旧みんなの党の勢力に限らず、裾野の広い政治勢力を構築し、やがては、小池氏が全盛期の小沢氏や小泉首相の後継者のような地位を獲得していくことも不可能ではないのではと思います。

少なくとも、今回の参院選で自民党を大勝させた民意は、「憲法改正(立法や行政に関する規定の見直し)に向けた議論は期待しているが、自民の現在の改憲案(人権規定の改変)は支持しない(ので、「自民党をぶっ壊す」小泉首相の再来を期待している)」というものであることは、多くの国民が感じているところではないかと思います。

それに応える政治勢力は未だほとんど育っておらず、小池氏を支持する方々は、「自民党内の嫌われ者」たる小池氏の勝利がその一里塚になることを密かに期待しているのではないかと思います。

だからこそ、その心意気を示す意味で、小池氏には、「東京から日本(の閉塞的な政治文化)をぶっ壊す!」と叫んでいただければと感じています。

ともあれ、「増田氏か小池氏かという選択」は、地方との関係性を重視した東京の変革を志向するか、国家との関係性(自民党をはじめとする国側への影響)を重視した東京の変革を志向するか、どちらかの選択という見方ができるのではと思われ、残り僅かな期間ではありますが、そうした観点から、さらに議論が深まればと願っています。

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原文は、以上になります。

アゴラは、私にとっては雲の上の方々が名を連ねておられる場ですので、非才の身がしゃしゃり出るのは畏れ多いというのが正直なところですが、県境事件のように、全国の方にその意義や問題意識を知っていただきたい事件に関わったときなどは、僭越ながら、また投稿をさせていただくこともあるかもしれません(いや、小心者ですので、たぶん二度とないでしょう・・)。

そんなわけで、硬軟さまざまなご批評も含め、暖かい目で見ていただければ幸いです。

知られざる増田県政の金字塔と都知事選の本当の争点

巷の話題を席巻している東京都知事選ですが、私たち岩手県民は、都民や他府県民の方とは違った感慨や視点で眺める面があります。

増田県政については、県の借金を二倍にしたなどと批判する報道はよく目にしますが、知事の功績として大きく評価されるべきものがあることは、ほとんど知られていません。

それは、「岩手と青森の県境で生じた巨大不法投棄事件(以下、県境不法投棄事件と言います)で、率先して全量撤去と関係者への責任追及の姿勢を示し、特例法の制定に繋げて曲がりなりにも県民の費用負担を大きく減らす形で地域の環境を回復させたこと」です。

県境不法投棄事件とは、青森県田子町の山中(岩手県二戸市との県境)に産業廃棄物の施設を設置していた業者が、県境の谷間や山林に膨大な量の廃棄物を不法投棄した事件です。

この事件では、主犯格たる青森の業者と首都圏を中心に全国各地から産廃を集めて現地に送り込んだ埼玉の業者が摘発されたものの、発覚時点でほぼ倒産状態にあり、両県併せて最終的に1000億円近くに及ぶ原状回復費用を負担するのは不可能でした。

そのため、巨額負担が当初から予測された青森県は、廃棄物を撤去するか否か明言せず、遮水壁を作って放置(封じ込め)をするのではないかとの疑念が強く寄せられ、地元住民・田子町との間で大きな軋轢が生じていました。

これに対し、岩手県側では、増田知事が非常に早い段階で「有害性が強い物が多数含まれており、必ず全量撤去する」との強い姿勢を表明し、それと共に岩手県独自で処理業者の財産に仮差押を行い2億円以上の確保に成功する快挙を成し遂げています。

県境事件の岩手側は人里から遠く離れていた上、撤去費用に関し国の補助などが得られるのかも不透明でしたが、「首都圏など全国のゴミが違法に持ち込まれて捨てられた」という事件の性質が、岩手が背負う中央政権に虐げられた蝦夷などの歴史と重なり、知事の判断は、県民の強い支持を受けることになりました。

そして、青森県もこの動きに影響を受け、重い腰を上げるような形で全量撤去を表明し、国が費用の約6割を補助する産廃特措法が制定され、約10年かけて両県の撤去作業が行われました。

この法律は、悪質な大規模不法投棄が判明した県境不法投棄事件と香川県豊島の不法投棄事件の2つを主に救済するため制定されたのですが、仮に、増田知事や青森県知事が現地封じ込めの選択肢をとった場合、地元住民は、豊島住民が中坊公平弁護士らの支援のもと香川県を相手に公害調停などを行った事件のように、長く苦しい闘いを強いられる展開になったことは間違いありません。

そのような苦難を地域住民に強いることなく率先して全量撤去を打ち出し、撤去費用に国の多額の補助を確保したことは、増田県政の金字塔と呼んで遜色ないと思います。

実際、両県は、原状回復作業に並行して、産廃業者に委託した全国の事業者の幾つかに、廃棄物処理法上の違反があったとして自社が排出した廃棄物の撤去費用を支払わせるなど、首都圏の排出者側との闘いを地道に続けました。

ただ、増田知事にとって一つ心残りがありました。それは、主犯格たる埼玉の処理業者を指導すべき立場にあった埼玉県の廃棄物行政の責任を問うことができなかったこと、そして、首都圏をはじめ全国各地の排出事業者に対し適正な処理委託をするよう指導する立場にあった排出者側の自治体(東京都など)に、純然たる被害県としての岩手県が強いられた80億円程度の自己負担に対し何らかの形で肩代わり(支援)を求めることができなかったことなのです

要するに、首都圏をはじめとする排出側の行政の責任を問うことが、県境事件ひいては増田知事の大きな宿題として残りました。

私は平成16年前後に日弁連の委員会活動を通じて岩手県職員の方からお話を伺う機会があり、増田知事も解決のため一定の模索をしていたことは間違いありません。

だからこそ、そのときの増田知事を知る岩手県民は、都知事選にあたり「時に、首都圏のエゴの犠牲を強いられた、地方の悲しみ、苦しさを東京の人達に伝えることを忘れないでいただきたい、地方を知る者として、地方と東京がよりよい関係を築くため、東京のあり方を大きく変え、日本全体を改善する姿勢や手法(政策)を強く打ち出していただきたい」と願っていることは確かなのです。

そうした期待を背負っている増田氏に打ち出していただきたい言葉が、小泉首相に倣えば、「(地方の立場から)東京(のエゴ)をぶっ潰す」であることは、申すまでもありません。

この一言を増田候補が絶叫していただければ、全国の多くの地方住民が賛同し、ほどなく、その真意を知った東京都民も、これまでの東京のあり方を問い直し再構築してくれる指導者として増田氏を支持するに至るということも、十分に期待できるのではないでしょうか。

それだけに、ある意味、「ぶっ潰す」対象の一つと感じられないこともない、自民党都連などの勢力が増田氏を担いでいるという構図や、増田氏が上記の思いを今も感じておられるのかあまり伝わってこない選挙報道を眺めていると、岩手県民としては残念というか、寂しいものを感じ、どなたか(ご自身を含め)、増田氏を解き放っていただきたいと感じる面はあります。

また、このように考えれば、都民が小池氏に求めるものも、より鮮明になると思います。

増田氏が「東京的なるものとの対決」を掲げる責任(歴史)を背負っているのだとすれば、小池氏は、現在の都議会(自民党都連)との対決に象徴されるように、政界を渡り歩き、小沢氏や小泉首相など既存の政治の中心勢力と対決する道を選んだ大物に従い、何らかの形で旧勢力と闘ってきた人と言えます。

小池氏を支持する方々は、政治を壟断している(自分達の影響力の確保を優先させて社会に閉塞感を与えている)と感じる旧勢力と同氏が闘うのを期待しているでしょうし、そうであればこそ、小池氏には「大物都議や自民党都連との対決」という対人的な話に矮小化させず、日本の都道府県議会制度そのものについて「問題の本質」を指摘し、変革を呼びかけることが求められており、それは、兵庫県議会の事件に象徴されるように国民全体が期待していることと言えるでしょう。

橋下市長や維新の会が一定の成功を納めたのは、行政機構(ひいては住民に不信感を抱かれていた行政の実情など)の変革を旗印にして、それに取り組んだことが庶民の喝采を浴びたからだと思います。

小池氏が都庁や都議会の改変に取り組んで成果を挙げ、官庁や国会の変革も促す動きも見せるなら、裾野の広い政治勢力を構築し、小池氏が全盛期の小沢氏や小泉首相の後継者のような地位を獲得していくことも、不可能ではありません。

先日の参院選で自民党を大勝させた民意は、「憲法改正(立法や行政の見直し)に向けた議論は期待するが、自民の改憲案(人権規定の改変)は支持しない」ものであることは、多くの国民が感じているところだと思います。

だからこそ、その民意に応える形で、小池氏には「東京から日本(の閉塞的な政治文化)をぶっ壊す」と叫んでいただければと感じています。

増田氏か小池氏かという選択は、地方との関係性を重視した東京の変革か、国家との関係性(自民党など国側への影響)を重視した東京の変革か、どちらを志向するかという見方ができ、そうした観点から議論が深まればと願っています。