北奥法律事務所

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相続人不存在

盛岡市議との懇談会と「弁政連のあるべき活動」に関する幻の意見書(最終回)

前回までに引き続き、先日の盛岡市議さん達との懇談会のため用意した(ものの出番なく葬られた)レジュメを載せます。

今回=資料3は、先般の市長選で当選された内舘茂市長の公約を市役所が実施しようとした場合、地域の弁護士がどのような形で役に立てるか、テーマを絞って考えたものとなっています。

標題のテーマ(地方で執務する弁護士が、地方における民主主義と人権保障の拡充の向上のため何を考え何をすべきか)に関心のある方は、ご覧いただければ幸いです。

私にとっては残念な会合となりましたが、これまでお名前や写真等しか存じなかった何名かの市議さんに初めてお会いできたことは、有意な経験だったと思うことにします。

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資料3 内舘市長の公約等に関するノンポリ無党派弁護士からの一考察(雑駁なもの)

もともと、これが「当職が担当を配点されることになったきっかけ(元凶?)」ですが、資料1・2の作成で力尽きたこともあり(所詮「おまけ」扱いですし)、すいませんが、今回は簡易なレポートとさせていただきます。

ここでは、内舘市長の公約を網羅的に分析等することはしませんが、パンフレットなどからは次のようなものが掲げられていると理解しています。

Ⅰ 地域内の様々な経済的・社会的弱者支援

①高齢者等の交通支援(ミニバス・乗合タクシー)=(自動車に依存しない)外出支援
②戸別訪問ゴミ収集・在宅医療介護強化等=外出せずとも各種サービスを受ける制度
③Uターン就職者への返還不要奨学金、学校給食無償化・センター整備や保育料無償等
④いじめ対策、習熟度別の学習支援、不登校他ハンディキャップ児童等の教育環境整備
⑤教員の増員と就業環境改善
⑥市長対話・住民対話部門、除雪部門強化、各種DX、公共交通整備、自転車専用道路

Ⅱ 地元経済・事業者の活性化支援

①地元企業の売上向上支援、上場支援、起業支援、起業等移住若年世代の定住支援
②地域の魅力発信と各種文化・産物の魅力強化(いわゆるブランド化=高付加価値化)
③地域の歴史文化(街並み)・先人(原・新渡戸・啄木等)の発信強化(VR等)
④社会的弱者向けの街並み整備(点字・スロープ、トイレ整備ほか)
⑤各種ボランティア活動に対するポイント付与(市内商業施設での還元)
⑥公共施設での再生エネ事業、エネ地産、EVスタンド、農業支援等

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全般的な特徴は、社会的弱者支援が強調され、対人給付(奨学金や各種無償化=税対応、ポイント制など)が多く掲げられている(インフラ整備的なものは強調されてない)ことだと思われますが、ここでは政策自体の当否や財源問題などは取り上げず(その検討は、第一義的には議員さんのお仕事でしょう)、これらを実現しようとすれば、法制度上どのような課題が生じるか、実現のため弁護士がどのように役立てるかを検討対象とします。

ただ、網羅的な検討はできませんし、公約の大半が税金の使い道を述べているに過ぎず、市民生活や企業活動等への規制等を掲げた公約がほとんどみられないため、前者(法制度上の論点)は一旦置いて、後者(弁護士の使い道)を中心に検討します。

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例えば「いじめ対策」や教員支援などに関し、近時は、いわゆるスクールロイヤー(教育委員会や学校法人等の依頼により、学校で生じる諸問題について継続的に相談や事件対応に応じる弁護士)が提唱されています。

内舘市長も範としている?兵庫県明石市は、人口比に照らし「日本で最も弁護士が常勤職員となっている自治体」と言われ(平成30年は7名とのこと)、教育委員会に所属しスクールカウンセラーやソーシャルワーカーと共に市内公立校の各種問題に専業的に対処する弁護士職員もいる(いた?)そうです。

この点は、弁護士会の「こども委員会」や「法教育委員会」の所属弁護士の方々(今回も参加されています)に発言を求めれば、様々な意見や提言がなされるのでしょうが、明石市のように「弁護士の常勤職員を多数雇用する」形でなくとも、市内の多数の弁護士の参画を得て、生徒や教員、或いは保護者等の様々な相談に対応する仕組みを作ることは、さほど難しくないと思われます。

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問題は予算措置(カネ)で、法テラスと連携したり、国の補助金対象事業化をお願いできれば有り難いですが、高額な予算がなくとも一定の対応は直ちに可能と思われ、弁護士会などに制度設計を要請の上、議会等で導入を検討いただければ幸いです。

スクールロイヤーや学校を巡る法律問題に関心のある方は、学校教員でもある弁護士の方が執筆した、神内聡「学校弁護士」(角川新書)をぜひご覧下さい。

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その他、高齢者・障碍者支援であれば弁護士会に担当委員会がありますし、地元企業の支援の一環として弁護士への相談等補助も検討いただきたいです。

カネの支援が無理でも、相談や事件対応のため必要となる事務作業などを、行政や商工会議所などが補佐する仕組みがあってよいと思います。

少なくとも、ご本人が適切な準備や作業ができないため、相談等できずに終わっている事案や、相談等がなされても「その先の作業=解決」に繋がらずに終わってしまう事案は珍しくありません。

歴史的景観保全等のための街並み整備などは行政の規制や居住者等支援が必要な分野ですが、日弁連公害環境委員会ではそうしたテーマも取り扱っており、条例整備であれ、個別事案対応であれ、市の顧問弁護士事務所の方々と役割分担をしつつ何らかの第三者的な形でお役に立てることはあるかと思います。

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市議の方々は、市長の公約云々に関係なく、市内の様々な課題を掘り起こし(光を当て)解決を推進することが求められていることは申すまでもありませんし、「掘り起こし」をする上で、市内で活動する弁護士達に、現在はどのような事案の相談や依頼等が多いか、どのような問題が発生しているか(住民や地元企業がどのようなことで困っているか)を定期的に聴取して全体像を把握し、それに基づいて市のあるべき施策を提言していくことは、市議会に求められている役割の一つだと言うべきではないかと思います。

私に関して言えば、震災前に山ほど受任していた個人や企業の債務整理等が大幅に減少した反面、近年、増加傾向にある類型として、次のものがあると感じています。

①全く身寄りの無い方の相続(相続人不存在事案や、被相続人と全く交流のない遠方在住の多数の甥姪などが相続人となる事案など。隣人が世話したり高額な相続預金等を有する例もある)

②老齢の親が重大な障害を抱えた子と二人だけで暮らしていたが、様々な事情で同居等が困難となり財産管理等のため弁護士の支援が必要となる事案(重大な紛糾例を含む)

これらは、社会内の人間関係(家族・親族・地域その他)の希薄化で「ひとりぼっち」「二人ぼっち」家庭が非常に多くなった結果として生じているもので、盛岡に限らず全国的な現象だと思いますが、被相続人の死去で、遠方の甥姪等(往々にして大都会に在住)に預金が移転(盛岡から流出)することが多いほか、相続人不存在であれば、国庫帰属の形で、国が全て取得する(市役所や県には一円も入らない)形となります。現行の相続財産清算人(管理人)制度の運用にも、疑問を感じる点は色々とあります。

ただ、そうした事案では、「もしかしたら、ご本人(被相続人や被後見人等)は、そのような形で財産が流出するのではなく、地元の近しい関係にある方に引き継いだり、地元のため有効活用して欲しいと願っていたのではないか」と感じることは珍しくありません。

条例で「相続人不存在事案を国庫帰属ではなく地元自治体へ」と定めても無効になるでしょうが(地方自治法14条)、例えば、推定相続人(財産を相続する予定の方)がいない(身寄りのない)方や推定相続人と疎遠になっている方(市民)に向けて、積極的に遺言書の作成(自身の死去後の財産等のありかたの検討)や弁護士等への相談等を促す施策があって良いのではと思います。

その一貫として、多額の資産(相続財産)をお持ちの方には市役所などへの寄付を呼びかけても良いのかもしれませんし、それは後見人無報酬事案の補助原資にもなりうるでしょう。

もちろん、その前提として、そうした方の生活を様々な形で行政が支援することが伴われるべきでしょうが。

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ご承知のとおり、盛岡市民には市役所から「健康診断に行って下さい」というカードが毎年送られてきます。身体の病に限らず、社会生活上の様々な病の未然防止のため、様々な論点・事案(必要性)を具体的に紹介し、「弁護士などに相談して下さい」と市の広報などで呼びかけることは、あって良いと思います。

岩手弁護士会サイトの弁護士名簿をご覧のとおり、岩手の弁護士の過半数以上が盛岡で執務しており、盛岡市(市役所・市議会)は弁護士の活用について強いアドバンテージを持っていると言えます。皆さんにも、そのことを生かしていただければ幸いです。

長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。 

 

平成26年の業務実績③家庭(離婚・親子・後見)、相続、行政、刑事ほか

前回に引き続き、平成26年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を簡単ながらまとめました。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

相続分野では、死亡危急者遺言」(危篤時に第三者(証人)が作成し、後日に裁判所の確認を受ける制度)が作成され、被相続人の友人に多額の財産が遺贈されたという事案で、ご遺族から、遺言者の意思に反するとのご相談を受け、昨年から遺言無効等を求めていた訴訟について、当方の主張を認める旨の和解勧告があり、勝訴的和解が成立して終了したという例があります。

この件では遺言者(被相続人)の方に認知症がなく、遺言無効の主張が認められない可能性も否定できない事案でした(依頼者の方によれば、以前に他の弁護士に相談して勝訴は困難と断られたのだそうです)。

当職も、立証に課題があるとは感じつつ、事案固有の様々な事情から、遺言無効が認められるべきだと考えて、依頼主と共に膨大な作業時間を投入して様々な主張立証を展開したところ、全面勝訴に匹敵すると言ってよい、満足いく成果が得ることができました。

昨年は、相続放棄やご家族(妻子・両親・兄弟姉妹等)の死去等により相続人が不存在となった方について、利害関係者のご依頼で相続財産管理人の申立を行ったり、私自身が管理人に就任して権利関係の処理を行うという事案が幾つかありました。

以前に「無縁社会」などと呼ばれ、現在もその状態が解消されていない中、法的手続を通じて相続財産の処理をせざるを得ないケースは増えていくと思われますが、なるべく生前に相続や財産管理のあるべき姿について、遺言などを通じ適切に意思を表明していただくのが、紛争やトラブル発生の防止のため望ましい面がありますので、ご留意いただければと思います。

また、遺言に関し、自筆遺言証書の文言などに問題があり、あるべき対処(遺言の解釈など)についてご相談を受けたことが複数あり、中には、相続人間で訴訟を行っている例もあります。

お一人で遺言を作成するのは、内容が明確(財産全部を特定の相続人一人に相続させるようなもの)であればまだしも、解釈による紛争のリスクが否定できませんので、公正証書遺言に依っていただくか、どうしても自筆を希望される場合には、文言の当否についてご相談いただくなどの対処をご検討いただきたいと考えます。

離婚やこれに関連する紛争(離婚時までの婚姻費用面会交流離婚後の養育費のほか、破綻の原因となった不貞行為を巡る賠償問題など)についても、法テラスの無料相談制度(震災当時、岩手県などに在住の方は、資力などに関係なく一律ご利用できるもの)などを通じて多数のご相談を受けており、訴訟や家裁の調停等を受任した例も少なくありません。

昨年は、夫婦間の子の引渡を巡る紛争(母が子を連れて別居した直後に、父が子を連れ戻した挙げ句、母との接触を拒否したため、母が父に対し、子の引渡と引渡までの面会交流を求めたもの)を受任しており、逆の立場で受任した事件もあります。

子を巡る紛争は、面会交流を含めて、近時は著しく増加しており、裁判所は、子の福祉のための環境のあり方を重視しますので、お子さんのことを深く考えて柔軟な対応が求められることも多いと感じています。

成年後見に関しても、裁判所の委託で後見人に選任されている例が複数あります。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする紛争では、長年に亘って区画整理の問題を抱えていた事業者の方から、区画整理の一環として自治体が行った行政処分に対する取消請求訴訟や執行停止申立を行った例があります。

刑事弁護については、幾つかの国選事件のほか、若干の私選弁護(相当期間内で終了しタイムチャージ形式で清算するもの)が幾つかありました。詳細は伏せますが、ある団体について業務上横領罪で起訴された方が嫌疑を否認し、有罪の当否が激しく争われた事件を担当した例もあります。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として、弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています。大船渡の法テラス気仙に月1回の頻度で通っているほか、原発事故に起因する賠償問題なども扱いますので、必要に応じお問い合わせ下さい。