北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

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経営者保証ガイドライン

さんさ踊りを楽しむ人々と、里から消えてゆく者の今昔

盛岡市は1日から4日まで「さんさ踊り」が絶賛開催中ですが、当家は、地域に背を向けて生きる残念家族のせいか?何年も前から単なる平日と化しています。

ただ、10年以上前、盛岡青年会議所の会員(さんさ担当委員会のヒラ委員)として、一日だけパレードに参加したことがあります。

といっても、踊りも太鼓もできませんので、JCの山車の曳き手の一人として加わっただけですが、それでも雰囲気に圧倒され、大変楽しかったことを覚えています。

JC入会直後には(修習生のときは参加したくてもできなかったので)

これで今日から俺も、さんさメンバーだ!

といきり立って専用のオレンジ色の浴衣セットを購入したのですが、その年の7月に重大事件の受任でかかりきりになったのをはじめ、練習に参加する余裕もチラ見で習得するセンスもなく、9年も在籍したのに上記のたった1回だけ、袖を通すに止まりました。

それでもゼロ回よりは遙かにマシで、おかげさまで、ささやかながら心残りせずに卒業できましたが。

この浴衣セット、恥ずかしながら、現在も当事務所のロッカーの片隅に埋もれています。

卒業するとき、もったいないので欲しい後輩がいれば、売却・・・もとい贈与したいと思ったのですが、そうした話ができる方もなく、残念ながら上記の有様が続いており、どうしたものやらというのが正直なところです。

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ところで、先日、市内中心部で長年に亘りデザイナーズブランド衣料の販売に従事されていた方(盛岡市民の多くが、あれか!と分かるファッションビルの経営者だった方)から、刀折れ矢尽きたとして後始末のご依頼を受け、先般、一苦労の末に法的手続を行いました。

経営者の方に倒産に至る経緯の概略を伺いましたが、震災やウイルス禍などもさることながら、某地銀の勧めで多額の借入をしてビルを建てた矢先にイオンの進出で大ダメージを受け、それが命取りになったとのことでした。

私は市内中心部の著名物販店の破産申立をお引き受けしたこともありますが、このような話は、震災前に倒産事件や破産管財人を多数お引き受けしていた頃によく聞いた話です。

さんさのパレードの中で、沢山の人員を擁し、ひときわ大きな存在感をもって参加している団体としてイオンチームがありますが、上記のような話に多く接してきた身としては、イオンに限らず地元の大企業の方や学生さん達が参加者の中心になっている(反面、地元の小規模事業者などの参加は多くない?)さんさの光景に、複雑な印象を受けてしまう面もあります。

上記の社長さんは「儲かっていたときは借りてくれと頼んできたのに経営が傾いた途端に貸し剥がしのような対応や罵声を延々浴びせてきた地元銀行の担当者に、非常に悔しい思いをさせられた」と仰っていましたが、その銀行さんもパレードの主力団体の一つとして参加・活躍されています。

三ツ石神社の鬼の姿は見えなくなったかもしれませんが、今も街の片隅には様々な悲しみや怨嗟の声がどこかに吸い込まれ、やがて、パレードを楽しむ皆さんに復讐するかのように、幽鬼を呼び寄せることもあるのかもしれません。

・・・などという不穏な話はさておき、皆さんは、今のうちに祭りにいらして楽しんでいただければと思います。

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私は、さんさ踊りの由来とされる「三ツ石神社の鬼の物語」とは、弥生人がこの地に進出した際、先住民たる縄文人(蝦夷の祖先たる山の民)と衝突した物語が原型なのでは?と想像しています。

そのように考えれば、現在のさんさを取り巻く光景も、ある意味、先住民が人里から排除され移住者に取って代わられていった残念な歴史の繰り返しが含まれているのかもしれません。

などとFBで書いたところ、地元の方から、時代が違う、三ツ石神社の手形はサイズが大きすぎるから、薬品を塗ったものか、昔々この地に辿り着いたロシア=北方大陸系住民じゃないかとのコメントを頂戴しました。

Webでチラ見した限りでも、この点はきちんとした調査等がなされていないようでもあり、ぜひ本格的な識者による調査研究を期待したいものです。

令和2年の取扱実績②債務整理・倒産、交通事故等(賠償)

前回に引き続き、令和2年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(3) 債務整理と再建支援

10年以上前(リーマンショック期)と比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減り、新型コロナウイルス禍の中でも、この傾向は大きく変わっていません。

ただ、本年3月まで社会福祉協議会の相談担当をしていたせいか、「総債務額は大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入のため自己破産をせざるを得ない方」からの受任は一定数ありました。他にも、「複数の銀行などに300~400万円程度の借入があり、他にも住宅ローンの返済中で、住宅を維持しつつ債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」の依頼があり、また、「諸事情により法的手続を希望せず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。

近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。
 
昨年も、債務額などに照らして民事再生又は自己破産の手続をとるべき債務者の方が、インターネットで広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を前代理人に支払うだけで数ヶ月を空費した)というケースを経験しています。

昨年、過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず後日に様々な問題が生じますので、そうしたことも視野に入れて早期のご相談をご検討ください。
 
企業倒産(破産管財)に関しては、昨年は「企業の管財事件」の受任はなく、小規模な企業の代表者個人のみの破産申立事案の管財人を担当した程度でしたが、中には、企業の関係者に様々な問題があり、労働者健康福祉機構への未払賃金立替請求が正当な理由なく行われていると判断され、それに対する対応に苦慮するなどした案件もありました。

申立代理人としては、震災後、辛うじて経営を続けていた小売業の会社さんがウイルス禍により継続を断念し事後処理を依頼された案件があり、商品売却などの目処をつけた上で、会社及び代表者双方の申立を行っています(特殊な事情があり、最初は代表者のみの破産申立を行い、後日、裁判所の勧告により会社の破産申立も行いました)。

今後はウイルス禍の長期化により倒産増加が懸念されており、小規模飲食店の経営者の方から営業不振による事業閉鎖を前提とした相談を受けたことが複数あります。

また、昨年から「金融機関(銀行等)にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を継続保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」を活用して解決すべき事案の依頼を受けています。金融機関の内諾を得て昨年中に概ね順調に換価作業などを終え、現在、弁済計画を策定し、交渉の山場にさしかかっています。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましいケースが多くあります。あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき、知人などで必要とする方がおられれば、伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、免責不許可事由の調査を要したケースや山林の換価が問題となった案件などを担当しています。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

昨年も、交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により、本来であれば数十万円からそれ以上を要する弁護士(当職)への委任費用について、自己負担なく利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係と評価)が主たる争点となる事案物損の金額が争われる事案むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額算定が中心となる事案重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が必要となる事案など、幅広く取り扱っています。

過失割合が争点となった物損事故では、1審(簡裁)で納得できない判決を受けたため、控訴したところ、2審(地裁)で、1審を取り消し当方の主張も踏まえた新たな過失割合の勧告を得て、了解可能な和解で終了できた案件もありました。

事故直後など、加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、「神経障害に関する後遺障害(14級9号)」をはじめ、幾つかの後遺障害につき、認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

ともあれ、自動車保険などでは、必ず弁護士費用特約が付された任意保険にご加入ください(相談のみの特約に加入される方もおられるようですが、必ず委任費用を対象とした保険にご加入下さい)。近年、弁護士費用特約(保険)は、企業クレーム対応や労働事件、家事事件(離婚等紛争)などにも導入されており、活用をご検討ください。

 

平成30年~令和元年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。ただ、本来の予定が大幅に遅れ、昨年=令和元年分は本年8月にようやく顧問先に送付しており、ブログでも載せようと思いつつ、余裕のない状態が続き、現在に至りました。

その上、さきほどブログを見返したところ、2年前=平成30年の業務実績の掲載を失念していたことに気づきました。

というわけで、今回は、平成30年・令和元年の実績概要をまとめてお知らせします。

当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

当事務所は、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部の紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などに関する様々な紛争の解決や法的処理のご依頼に対応しており、この5大分野が業務の柱となっています。

近時は①②の受任が多くなっていますが、企業の重大な紛争や大型の行政訴訟(現在は行政側での受任)など他の様々な事件の解決やご相談の対応にも注力しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する問題では、受注業務を巡る紛争や賃貸借に関する典型的な紛争などほか、2~3年前に社会問題化した「詐欺まがいの求人広告(無料出稿を装い簡易なFAXのみで契約させ、最初の無料期間経過後に当然に有料に移行したとして高額な請求を行うもの)の請求」に関する対応依頼などもありました。

また、「建築瑕疵の是非などを巡って複雑な争いがある賠償請求訴訟を建設会社側で受任した事案」、「商業店舗の賃貸借に関し、貸主側の対応の不備に起因し借主が退去等を余儀なくされたため、借主代理人として貸主に賠償請求した事案」などを受任し、責任論(賠償責任があるか)・損害論(責任があるとして、どの程度の請求ができるか)を巡り激しく対立した訴訟などを担当しています。

これらは相応に主張立証を尽くし、裁判所から相当な和解勧告を受けて解決しています。

他にも、取引先への売掛金請求に関する事案(請求者側)や、以前に契約関係にあった相手方企業から不当な要求を受けたため、必要な反論を行い要求を退けた事案などを扱っています。

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企業の内部紛争に関しては、「小規模な企業の経営者Bに頼まれ中途就職したAがBから企業承継(買取)を要請されて応じたものの、後日、Bに不正行為が発覚したとして、Bの法的責任を問う必要が生じた事件」をA氏側代理人として受任した案件があります(本年、1審で勝訴判決を得て、控訴審で勝訴的和解が成立しました)。

ある企業が有期契約社員の方が問題を起こしたため更新拒絶(雇止め)を行ったところ「辞めさせるのは違法だ」と主張され地位確認等(解雇無効)請求を受けた事案で、企業側代理人として2~3年ほど対応した案件があり、昨年、1審勝訴→2審も勝訴維持の心証を前提とした解決を得ています。

また、以前にA社を共同経営していた親族同士が数十年前にA社・B社に分離し互いに単独で企業を経営していたところ、近年になりB社がA社に重大な背信行為に及んだことが発覚したため訴訟を余儀なくされ(A社代理人として受任)、過去の様々な経緯から双方が激しく対立する事案なども担当しています。

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当事務所では、一般的な顧問料による顧問契約だけでなく、9年前から月額3000円(税別)による顧問契約をお引き受けしており、ここ2~3年は、顧問先の方々から、様々なご相談や簡易なご依頼などを受ける機会が増えてきました。

今後も、多くの県内などの中小企業・団体などの方々にとって利用しやすい利用頻度に応じたリーズナブルな顧問契約のあり方を追求すると共に、早期のご相談と必要な対処を実現し、手遅れになる事態の回避ひいては弁護士とご本人が共闘して物事の機先を制する、能動的・戦略的なリーガルサービスの提供につとめてまいりたいと思います。

(3) 債務整理と再建支援

震災以前に比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減りましたが、現在は「債務総額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入と住宅ローンがあり、住宅を維持しつつ他の債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」からの依頼が多い傾向にあります。

また「法的手続をせず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。

近年は、債務額などからは民事再生や自己破産の手続をとるべき方が、Web上で大々的な広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、成果もないまま後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を無為に前代理人に支払ってしまっている)というケースに遭遇した(依頼を受けた)ことが何件もありました。

過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず、後日に様々な問題が生じます。

債務整理に限らず、弁護士への依頼にあたっては、そうした事柄(後悔を余儀なくされた方が現に何人もおられるという現実)も視野に入れて早期のご相談をご検討ください。

過払金請求は時代の変化に伴い依頼を受けることがほとんどなくなりましたが、債権譲渡など特殊な論点が絡んだ事案の依頼があり、貸金業者側代理人との激しい闘いの末、裁判所から相応の和解勧告を受けて解決したものがあります。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成28年に受任した相応の規模の建設関係の会社について、権利関係の処理がようやく完了し配当に向けた手続を行ったほか、小規模な事業者の方の管財事件で、動産の売却や原状回復の問題など様々な法的対応に負われました。

近年はごく小規模な企業の受任に止まっていますが、債権回収などを巡って特殊な交渉が必要になった案件実質的な経営者である元従業員に色々と問題があり、相応の対応が必要になった案件などを担当しています。

申立代理人としても、個人経営の飲食店の自己破産申立などを受任しているほか、本年になって「銀行等にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を将来も保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」により解決すべき事案のご相談を受け、現在も諸々の準備を行っている事案があります。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましい案件がありますが、あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき知人などで必要とする方がおられれば伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、山林の換価が問題となった事案や個人への貸付の調査が必要になったケースなど、幾つかの事案を担当しています。

 

企業倒産の実務と経営者保証ガイドライン(盛岡北RC卓話)

先日、盛岡北RCの卓話を担当したので、時勢も踏まえ、企業倒産の実務を取り上げることにしました。

金融機関以外にはほとんど負債のない事業者であれば、経営者保証ガイドラインにより破産よりも遙かに良好な解決を得やすいのですが、世間一般には知られていませんので、同GLに力点を置いた説明にしました。

卓話で用いた事例とレジュメの目次を掲載しますので、事業者の方などは参考にしていただければ幸いです。

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小問1 

岩手県内で物販業(一般向けの生活用品の販売等)を営むA社の代表取締役Bは、長年に亘りA社の営業不振が続き、日々の運転資金の支払も銀行借入や各種債務の延滞などをしなければ困難な状況に陥り、現状では営業の継続は不可能と考えた。A社は、銀行3社(岩銀、北銀、みずほ銀)に計1億円(岩5000万円、北3000万円、み2000万円)、取引先20社に未払買掛金計2000万円(最大500万円、最小10万円)、未払公租公課(税金、社保料など)4庁・計500万円の債務があり、賃金も2ヶ月分・従業員10名計400万円が未払となっている。

他方、現時点の資産は、手持ち現金が50万円、未収売掛金が10箇所計300万円、商品在庫などが多数(定価どおりに販売できれば1000万円以上だが、販売目処の立たない老朽在庫も多い)となっている。

Bは、銀行3社(1億)と取引先も4社ほど(800万円)、連帯保証している。

A及びBの債務問題を解決するため現実的に可能な法的手続は何か、法的手続の概要や、受任弁護士が特に検討・対応すべき課題などを説明しなさい。

小問2

岩手県内で飲食店を営むC社の代表取締役Dは、先般から社会で生じた問題により数ヶ月売上の急減が続き、手持ち資金に余裕があるうちに、経営継続を断念することとした。Cの債務は、金融機関2社に計5000万円(東銀3000万円、公庫2000万円。D保証付き)のほかは、20万円以下の小口の買掛が数件あるのみである。他方、Cの営業資産は限られたものしかないが、現在300万円の現預金がある。Dは預金300万円のほか、数年前から住宅ローン返済中の自宅があり、Dは近々転職し給与収入で住宅ローンの支払を続けたい希望である。

C及びDにとって最も賢明な「店じまい」を実現するための法的手段は何か。また、実現にあたって特に検討すべき点を説明しなさい。

【目次】

第1 様々な債務を抱えながら資金枯渇した企業の倒産処理
1 企業の債務整理・倒産処理に関する法的制度
2 個人の債務整理・倒産処理に関する法的制度(参考)
3 東日本大震災で被害を受けた企業等を対象とする特例的な救済手続
4 新型ウイルス禍に伴う支援制度の紹介例や弁護士会等の取組み等

第2 小問1 多額・多様な債務を負う一方、現預金が足りない企業の場合
1 A社の手続の選択と初動対応
2 破産手続(申立後)の一般的な流れ
3 Bの手続

第3 小問2 ほぼ金融機関の債務だけの小規模事業者が早期撤退する場合
1 C及びDの置かれた状況と方針選択
2 経営者保証GLスキームに基づく会社債務の整理(換価・弁済)
3 経営者保証GLスキームに基づく保証債務の整理

第4 結語
かつてのように「生命保険で支払う」などは絶対にしない・させない

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以上の内容について、ご自身(の所属団体など)で話を聞いてみたいという方がおられれば、ご遠慮なくお声がけください。

ウイルス禍における賃料問題と廃業支援としての経営者保証ガイドライン

新型ウイルス禍で休業等を余儀なくされる飲食店などが休業期間中も賃料の負担を余儀なくされ廃業等に追い込まれる(ので支援を要する)という問題は、4月下旬頃から都道府県や国レベルで様々な救済策が検討・実施され、今も流動的な状況にあると思われます。

私自身は3月頃には賃料問題は今回の件で特に立法的解決が求められる問題ではないかと思っていましたので、この報道(論点)の行方には強い関心があります。

この種の事件を手がけておらず、込み入った検討はしていませんが、一般論として、ウイルス禍による休業を理由に貸主に賃料を請求する法律上の権利が借主にあるか(現行法上認められるか)と言われれば、貸主から使用停止を求められるなどという特段の事情がない限り、非常に厳しいのではと現時点では思っています。

他の先生のブログで、物件価値の大幅下落を前提とした賃料減額請求が検討されていましたが、その先生も、その場合は鑑定が必要になるなど現実的ではないと仰っていたと記憶しています。

他方、借主が望まぬ休業で契約上予定していた使用収益(による賃料原資の獲得)ができず、塗炭の苦しみを強いられているのに、貸主のみが何のリスクもなく契約どおりの賃料を支払え、というのは社会的公正ないし公平の観点から、相当に違和感があります。

その先生のブログでは、貸主側からの相談で、借主より強硬な減額要請を受け、やむなく応じているとの話を幾つも受けているとの記載があり、実際には貸主も大変な目に遭っている事案も多いのでしょうが、現行法でルールがないため「良心次第・交渉(大声)次第」という歪な状態になり、トータルで不公正な光景も相応に生じているのではと危惧されます。

結論として、疫病などで休業が不可避の状況にある場合は、一定の算式を作成して相応の減免等の請求を簡易に認めると共に、貸主(ひいては、その先にある銀行等)にも、相応の受益的措置(建設費などのローン支払猶予と利息停止や債務減額、固資税などの減免その他)を講じるような法的措置を早急に講じていただければと考えています。

話は少し変わりますが、厳しい経済情勢に伴い全国的には廃業や倒産の報道も増えてきましたが、当方に関しては、現時点でそのようなご相談はまだ全く受けていません。

小規模企業の債務整理に関しては、最後の選択肢である破産と、現状では金額面で利用困難な民事再生のほか、事案次第では利用でき、自宅の維持確保など破産などよりも遙かにメリットの大きい解決になりやすい「経営者保証ガイドライン」という、第3の選択肢があります。

田舎の町弁にはあまり接点のない(ので、岩手でも経験のある弁護士は多くはないはずの)手法なのですが、私は2年ほど前に小規模な福祉施設の店じまいの事案で活用しており、先般も、ウイルス禍が原因ではありませんが、店じまいをせざるを得ないという小さな地元企業さんで、GLで解決できる事案を受任し、現在、各種対応に追われています(2年ぶりで、これが実質2件目なので、試行錯誤的を交えつつではありますが)。

経営者保証ガイドラインは世間ではほとんど知られていない制度で、私が受任した案件でも、ご本人に「本件は、個人再生が無理な事案で、破産も自宅を手放さざるを得ない、GLなら自宅を守ることができるはず」とお伝えすると、そんな制度があるのかと驚き、強い安堵を示しておられました。

それだけに失敗は許されないとの姿勢で臨んでいますが、現下の情勢により店じまいを避けることができなくなった企業の方が、GLによる解決が可能であるのに知識不足や出会いに恵まれないことなどにより、残念な選択に至ってしまうことがなければと、願っているところです。

平成30年の年頭のご挨拶

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

昨年も交通事故や家庭、中小企業や個人の様々な法的問題の解決に関する業務が中心でしたが、2~3年かけて多くの関係者との間で複雑な利害調整と膨大な事務作業に追われた末にようやく解決・決着した印象深い事件も幾つかありました。

例えば、定年後に銀行から巨額の借入をして起業したものの収支が好転せず資金繰りが行き詰まる前に相談された方について、事業の停止による混乱を極力回避しつつ、銀行との長期の交渉により、無担保のままとなっていた自宅を処分せず存続させた上で、多額の債務免除を伴う解決を実現した事案(経営者保証ガイドラインによる債務整理)がありました。

また、震災復興に絡む巨額の補助金の不正利用が露見し全国を震撼させた「大雪りばぁねっと事件」の民事上の処理に関する主要事件に平成26年から携わり、3年かけて裁判上の和解により決着をつけたこともあります。

全ての事案で依頼主の希望する結果を勝ち得たとは言えないでしょうが、大半の事件では、主張立証を尽くした上で、裁判所の勧告をはじめ事案の性質に即した穏当な解決を了解いただいたのではないかと思います。

上記の自宅確保の例のように、交渉で望ましい成果を挙げることができた案件も相応にありますので、こうした経験を今後に生かすことができればと思います。

現在も、「高齢の方の財産管理や相続に絡んで家庭内に難しい問題があり信託による解決を模索せざるを得ない事案」をはじめ、幅広い検討と多様な関係者との折衝を要する事件のご依頼も多く、悪戦苦闘の日々を送らせていただいております。

開設から14年目を迎えた当事務所では今後も時代に適合する良質なリーガルサービスを提供すべく研鑽を重ねて参りますので、変わらぬご愛顧のほどお願い申し上げます。

皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

平成28年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。例年、1月か2月頃に業務実績を顧問先にお送りして、その後にブログに掲載することとしていますが、諸事に追われブログへの掲載の方がかなり遅くなりました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

平成28年も、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などについて、様々な分野の紛争解決や法的処理のご依頼をいただきました。

全般的には、①②は件数も多く論点も様々で、③④⑤は件数こそ多くないものの作業量や問題となる点が多い大型案件の解決に力を注いだ1年になりました。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

①旧所有者による廃棄物の不法投棄に伴う撤去費用を請求した事件

A氏が建物の建築目的で岩手県内の某土地を不動産業者Bから購入しC社に建築工事を発注したものの、着工後まもなく土地の地下にコンクリートガラや廃材などの廃棄物が埋設されているのが発覚したのでC社が調査したところ、10年以上前に同土地でD社がコンクリート製の建物を建築して営業しており建物解体の際に不法投棄された疑いが濃厚だとして、D社の責任を求めたいという相談を、C社(A氏から相談を受けて被害解決の窓口役を担当)から受けたという事件があります。

直接の被害者はA氏ですが、瑕疵担保責任などの事情からA氏に土地を売却したB社にも被害が生じ、最終的にC社にも様々な損失が生じるおそれがあった事案で、実質的にはB・C社vsD社側の様相を呈しました。

様々な検討の結果、D社側に賠償責任を問うべき案件として請求したところ、D社は「残置物は自分達の建物の解体物ではなく埋設もしていない」などと全面的に争ってきたため、D社側を相手に賠償請求しました。

D社側が全面対決の姿勢を示し「埋設された物はどこから来たのか、どうしてその土地の地下にあるのか、個別の埋設物とD社建物との結びつきはどうか」などの様々な問題について広範な主張立証を余儀なくされたほか、撤去費用の相当性なども争点になり、2年以上を経てようやく裁判所から和解勧告が出て、完全な満足ではないものの埋設物がD社建物から生じたものであるとの前提でD社側が相当の費用(解決金)を支払うという当方の主張を十分に酌んだ内容の勧告をいただき、協議がまとまりました。

膨大な労力を投入せざるを得ず、消耗の大きい事件でもありましたが、不法投棄問題に関しては日弁連の活動を通じ廃棄物処理法のルールを多少は存じており、その知見を活かすこともできたので、その点は何よりでした。

②業務委託契約で途中で問題が発覚し頓挫した後、報酬や損害の負担が争われた例

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として対応し、当方の請求を認める判決をいただき無事に回収して終了したものがあります。

受注した事業に関する行政手続上の不備(Aが事業のため用意した設備に関するもの)で事業が途中で頓挫したため、Bは「契約時のAの説明に問題があった」と主張して支払義務を争い、Aに賠償請求しましたが、契約の締結から事業の破綻までにいたる事実経過を丹念に説明し、双方の尋問結果も踏まえ、Aの対応に特段の問題はなかったとして、Bの主張が退けられました。

ただ、A側も事業の準備のため多額の経費を投じたものの経費を賄うだけの売上を得られたわけではなく、両社痛み分けに終わった面もないわけではありません(A側にも見通しの甘さなどの反省点はあったと思います)。

この件のように受発注の対象となった事業の継続性に何らかのリスクが内在する場合は、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じることが非常に多くあります。

事前にリスクを予め検討して明確化すると共に、そのリスクが現実化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかを予め契約書などで明示しておくことで、裁判等による紛争の長期化、高負担化を避けることができます。

契約前にそれらのリスクや不安を具体的に弁護士に説明いただければ、それに見合った文言などを整備し紛争に備えると共に、問題が生じる可能性や生じた場合の帰結を互いに意識しておくことで、リスク発生を防ぐよう互いに努力する契機とすることもできますので、事業者の方々におかれては、「ご自身が従事する事業に内在するリスクの確認と対処(弁護士への相談を含め)のあり方」を強く留意いたきたいところです。

③その他の紛争としては、「Bビルに入居していたA社が短期間でCビルに転居した際に、Bビルの入居時に差し入れた敷金の返還(破損部分の修繕を除いた残金)を求めたところ、AB間の契約書に壁紙やカーペットなども全面的に取り替える趣旨の特約(通常損耗負担特約)が含まれていたため、Bがそれらの交換費用等を理由に敷金全部の返還を拒否し、Aが納得できないとして返還請求した訴訟」をA代理人として対応しています。

事業者間の紛争であるため消費者契約法が適用されないものの、敷金に関し過去に積み上げられた議論や最高裁判決の趣旨などを踏まえ、本件では通常損耗を借主に負担させる合意は成立していないと主張し、それを前提とした勝訴的な和解勧告をいただき解決しています。

他に、中小企業庁が行う「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の不当対応についてご相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は数年前に比べて僅かなものとなっていますが、近時は、「総債務額が極端に大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方(生活保護の方を含め)」からの依頼が増えており、社会で広く言われている格差や貧困の問題を実感させるものとなっています。

企業倒産(破産申立)に関しては、約10年前に民事再生の手続の依頼を受けていた会社さんが様々な事情から法律上の問題が顕在化し、それらの整理・解決のため本年になって自己破産の申立を余儀なくされたという事案があります。

企業に関する破産管財業務では、平成27年に管財人に就任した製造業を営む会社に関し、訴訟や原発ADR、原状回復作業などの事務処理や法的手続が必要となり、本年に受任した建設関係の会社についても多数の不動産の任意売却や賃借関係の処理、労働債権の対応など様々な法的対応に負われました。

また、金融機関に巨額の債務がある一方で、それ以外にほとんど負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)から廃業支援の依頼を受けて、金融機関に一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い個人資産を手元に残した状態で破産せずに債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)による解決を実現すべく、現在も交渉している案件があります。

他に、個人の方の破産管財人を受任した事案で、破産手続前に親族への無償譲渡行為があり、否認権を行使すると共に、債権者への配当原資の確保のため様々な工夫を行ったケースなどがあります。

(以下、次号)

平成27年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では、数年前から毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。1月には昨年(平成27年)の業務実績を顧問先にお送りしていますが、遅まきながらブログでも掲載することにしました。

今回も当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し3回に分けて掲載します。

(1) 全体的な傾向など

平成27年も、①交通事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争、③企業・団体の事業や内部事務に関する紛争の3分野が業務の中心を占めました。特に、家族・親族間の紛争や権利関係の処理に関する業務が増加傾向にあります。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

A社がB社から受注した業務の委託料などを請求する訴訟をA社代理人として受任しています。受注した事業に関する行政手続上の不備で事業が頓挫しており、AB双方とも「契約時の相手方の説明に問題があった」と主張して賠償請求したという事件で、現在も訴訟が続いています。

このように、受発注の対象となった事業に何らかのリスクが内在する場合には、そのリスクが顕在化した場合の負担を誰がどのような形で負うのかという点を予め契約書などで明示しておかないと、リスクの発現時に責任の所在を巡り泥沼的な紛争が生じる可能性が高くなりますので、リスクを予め確認し責任の所在を明確化すること(弁護士の活用も含め)にご留意下さい。

内部紛争の例としては、ある協同組合の内部で問題を起こした組合員に対し組合が除名処分をしたところ、組合員が処分の無効を求めた訴訟について、組合側代理人として担当し当方(組合)の主張が全面的に認められて勝訴・確定したという例があります。

また、ある財産がA法人とB法人のどちらに属するかなどを中心に様々な法律上の争点が生じて複数の訴訟が係属している事件、転職した従業員が元の勤務先の顧客情報を転職後の営業活動に使用したとして賠償請求された事件などを手掛けています。

昨年も、中小企業庁が行っている「下請かけこみ寺」事業に基づき小規模な受注業者の方から発注者の支払拒否や取引中止への対応などの相談を受けることもありました。

(3) 債務整理と再建支援

倒産件数が激減している社会情勢に伴い、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は僅かなものとなっており、「高利業者との取引に基づく過払金請求」も法改正等の影響でほとんど無くなりました。

企業倒産に関しては、数年前は倒産分野の多数を占めた建設業界に代わって、IT関連のサービスを展開する企業高齢者向けの弁当配達事業を行う企業の方から破産申立のご依頼があったほか、「燃料等に用いる木製ペレット等の製造・販売を営む会社」の破産管財人に選任され、企業施設の譲渡や債権回収など様々な論点・事務の対応に従事しています。

近年、「金融機関以外には負債がない事業者(金融債務の連帯保証をしている方)向けに、一定の弁済を行うとの前提で、破産手続で認められた額(99万円)よりも多い額を手元に残した状態で破産せず債務免除を受けることができる手続(経営者保証ガイドライン)」が導入されており、これによる解決が可能か模索するご相談を受けたこともあります。

個人の債務整理については、昨年同様に過払金請求のご相談が若干あったほか、かつての「多数の高利業者から数百万円の借入がある多重債務事案」に代わり、債務額・件数は多くなく生活保護やそれに準じる低所得の方や、住宅ローンの支払が諸事情で頓挫し破産等を余儀なくされた方からの自己破産のご依頼が幾つか見られます。中堅所得者の方からの個人再生のご依頼(住宅ローンを維持して他の負債を減縮することを含む)も幾つか見られます。

破産管財人を担当した方では、親族の保証人となった関係で破産を余儀なくされ、所有不動産の処理(売却。関係者の支援を含む)などの問題が生じたケースや、小規模な個人商店を営んでいた方が親御さんの代から長年続いていた高額な負債や事業不振などの問題を解決するに至らず倒産のやむなきに至ったという事案などを担当しています。

(以下、次号)