北奥法律事務所

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2018年

はれのひ事件の背後にあるものと弁護士業界の現在

「はれのひ」の騒動(被害)について、着物ビジネス業界の実情に照らし出現は不可避だったという趣旨の投稿を拝見しましたが、以下の点などは、弁護士業界もよく似ているように感じます。
http://diamond.jp/articles/-/155406

・(裁判が)ほとんど一生に一度のセレモニー

・何度も利用するわけではないので、一般の方には(弁護士の)質の良し悪しや価格の相場などがわからない。

・業界環境の激変と競争激化により、(倒産や廃業が相次ぐとまでは言えないが)業界内の所得格差が拡がっており、脱落者の中には、費用の過大請求や預かり金の横領など暗黒面に墜ちる者もいる。

・赤字仕事で窮する「昔気質の業者」がいる一方で、新規参入者(経験年数の浅い世代)の中には、派手な宣伝活動の裏側で、業界の一部に昔からある「ぼったくり気質」を引き継いだり、(低料金戦略をとっているわけでもないのに)良識ある業界人が目を背けたくなるような仕事の仕方(受任に関する悪質な選別や丸投げ、極端に練度の低い仕事ぶりなど)を平気でする者もいる。

とまあ、そんなところですが、弁護士を「普段づかい」するかどうかはさておき、法(の根底にある健全な良識や社会的責任)に対する理解と、それを踏まえて解決されるべき様々な問題がご自身や周囲に多く存在していること、そして、深刻な状況になる前に相談し、賢明な事前準備などをしておくべき必要などは、皆さんにも認識いただければと思っています。

「日常的に弁護士を利用する庶民文化」は過去も全くありませんでしたが、弁護士以外のツール(親族、近隣や会社その他の善良な有力者などを通じて帰属社会の内部で問題を解決する仕組み)なら相応にあったでしょうし、それが今や大きく崩れてしまい、弁護士をはじめ第三者(外部者)の支援を要する状態にあることも確かだと思います。

また、かつては、弁護士の助力を必要とする問題自体が生じない(内部の保護や抑圧を通じて生じにくくする)仕組みが社会内に色々とありましたが、今はタガが外れたというか、法意識の向上による真っ当な権利行使だけでなく、家庭や地域など様々なコミュニティが崩壊した結果として、法律家が関与しないと問題を処理できない(コミュニティ崩壊がなければ、自分達で問題を解決できたり問題自体が生じなかったはずなのに、それができなくなった)ケースや事柄が非常に増えていると感じます。

そうした点でも、弁護士業界の本質的な意味での「身近さ」と「アクセスや業務などに関する質の向上」が強く問われているでしょうし、当事務所も、そのことを踏まえて努力を重ねたいと思います。

加除式書籍の追録執筆は続くよどこまでも

平成18年に、新日本法規出版社から日弁連廃棄物部会(のメインの先生)に「廃棄物処理法の各条文に関する網羅的解説を掲載した加除式書籍を出版したい」とのお話があり、平成15年に加入した私も執筆陣に加えていただき、措置命令の条文などの解説を担当したことがあります。
http://www.sn-hoki.co.jp/shop/product/book/detail_0572_8_0.html?hb=1

加除式書籍は改訂が必要になれば追録を作成しなければならないのですが、廃棄物処理法の性質上、法改正などが頻繁にあり、私が担当した箇所も、2年に1回くらいの頻度で作業の指示がなされています。

で、昨年12月に平成29年改正の追録の要請があり、年末が提出期限だったのですが、今年の年末年始は本業等に加えて私事で厄介事が勃発したこともあり、正月明けになってようやく、一晩で仕上げて提出しました。

今回の追録は重要な新設条文がある一方、それに対する解説書の類は手元に何もありませんので、開き直って、ネットであれこれ調べて大胆な仮説?を交えつつ、無理矢理仕上げたというのが正直なところです。

代表の先生方と出版社との協定で、最初に気持ち程度の報酬を頂戴したあとは、追録の原稿料は一切無しという日々を送らせていただいておりますが、そんなことにもめげずに、本年最初の一首。

新年の最初の徹夜はタダ仕事 今年の計も推して知るべし

と愚痴半分の戯言をFBにも投稿したところ、日弁連の医療観察法の解説書籍などを刊行されているO先生から「委員会活動で執筆したものは、印税=原稿料も含めて全て日弁連の収入になり、執筆者には(実費支給を別とすれば)一円も来ないので、最初の原稿料が入るだけ恵まれているよ」とのコメントをいただきました。

そのようにせざるを得ない合理的な事情(活動費や大勢の合宿など実費類が多いとか、出版元の経費リスクなど)があるのでしょうが、それだけ伺うと、日弁連から「中村修二教授もびっくりのブラック弁連」に改称した方がよいのではというか、いつか裁判する人が出てくるかもなどと、余計なことを考えてしまいます。

まあ、我々の書籍もそうですが、法律書籍の出版は自身の勉強を兼ねてという色合いが非常に強く、研鑽と発表の機会が与えられただけで感謝すべきというほかないという感じはあります。

追録の作業も直近の重要な改正を否応なくフォローできるというメリットは大きく、そうした意味では有り難いお話なのですが、困ったことに私自身が住民・業者・行政いずれの立場でも、未だに本格的な廃棄物紛争の訴訟等を受任したことがなく、せっかく勉強したことを仕事で活かす機会に恵まれていません(自宅建設用に購入した土地から廃棄物の不法埋設が発覚し関係者に責任追及した事案があり、その際は相応に役立ちましたが・・)。

まあ、東京から遠く離れた岩手で「何でも屋のしがない田舎の町弁」として仕事しているせいか、それとも岩手は廃棄物を巡る民事紛争などがほとんどない恵まれた土地柄だからなのか?、その辺は分かりませんが、まだ勉強が足りないから「そうした仕事」にも巡り会わない(選ばれない)のかもしれないと謙虚に受け止め、今後も廃棄物部会の活動を含めて精進していければと思います。

平成30年の年頭のご挨拶

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

昨年も交通事故や家庭、中小企業や個人の様々な法的問題の解決に関する業務が中心でしたが、2~3年かけて多くの関係者との間で複雑な利害調整と膨大な事務作業に追われた末にようやく解決・決着した印象深い事件も幾つかありました。

例えば、定年後に銀行から巨額の借入をして起業したものの収支が好転せず資金繰りが行き詰まる前に相談された方について、事業の停止による混乱を極力回避しつつ、銀行との長期の交渉により、無担保のままとなっていた自宅を処分せず存続させた上で、多額の債務免除を伴う解決を実現した事案(経営者保証ガイドラインによる債務整理)がありました。

また、震災復興に絡む巨額の補助金の不正利用が露見し全国を震撼させた「大雪りばぁねっと事件」の民事上の処理に関する主要事件に平成26年から携わり、3年かけて裁判上の和解により決着をつけたこともあります。

全ての事案で依頼主の希望する結果を勝ち得たとは言えないでしょうが、大半の事件では、主張立証を尽くした上で、裁判所の勧告をはじめ事案の性質に即した穏当な解決を了解いただいたのではないかと思います。

上記の自宅確保の例のように、交渉で望ましい成果を挙げることができた案件も相応にありますので、こうした経験を今後に生かすことができればと思います。

現在も、「高齢の方の財産管理や相続に絡んで家庭内に難しい問題があり信託による解決を模索せざるを得ない事案」をはじめ、幅広い検討と多様な関係者との折衝を要する事件のご依頼も多く、悪戦苦闘の日々を送らせていただいております。

開設から14年目を迎えた当事務所では今後も時代に適合する良質なリーガルサービスを提供すべく研鑽を重ねて参りますので、変わらぬご愛顧のほどお願い申し上げます。

皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。