北奥法律事務所

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万物の尊厳

リアル警察署いきもの係と憲法

さきほど、仕事で盛岡西警察署に少しだけお邪魔したのですが、どのような事情か知りませんが、1階の階段の脇に、生後間もない?子猫がケージに入れられており、ここから今すぐ出してくれと言わんばかりに、ケージの上部に這い上がり、四肢を柵にがしっと掴んだ状態で、延々と鳴き続けている姿に遭遇しました。

西署は年季の入った陰気な建物なので、階段脇に晒された状態ということもあり、より悲哀ぶりが強調されてしまうのですが、当然のことながら私自身は立ち尽くすほかありませんでした。

留置係の方に少し尋ねたところ「午前中から来ているようだが、さすがに経緯は知らない」とのことで、何らかの事件の関係で保護されたのか、他の事情なのかは不明です。

誰に非がある事案かは知りませんが、本来の飼主であれ他の方であれ、適切な飼育の意思と能力のある個人や団体への保護の道筋が立てられるよう祈念するほかありません。

以前も、身柄拘束を受けた方が自宅で多頭崩壊を生じさせていたということで、勾留(国選弁護人の選任)直後に保健所や保護団体の方と色々と連絡調整をしたことがあり(幸い、保護=大捕物に従事することはありませんでしたが)、そうした事柄も踏まえ、私としては、愛玩動物の飼育は、許可制に近い形の登録制としたり、飼育放棄等の防止や早期保護(強制引取)などの制度を整備すべきではと考えます。

まあ、人間(幼児など)ですら、家庭の自己責任の名の下で?そうした制度が十分に構築されない有様でしょうから、動物についてはいつのことになるのやらかもしれませんが。

イオンなどで、その種のコーナーを見かける都度、かつて歴史マンガなどで垣間見た南北戦争以前の米国の光景を感じずにはいられない面はありますが、現状を奴隷制とまで表現するかはさておき、それこそ、国を二分する激しい闘争を経ないと、その種の慣行は改まらないのかもしれません。

愛玩動物に限らず、突き詰めた話としては、日本国憲法の最高原理(の一つ)が「人間」の尊厳に限っている(13条)こと自体が適切ではなく、いずれは「人類(個人)、生命、自然そして万物の尊厳」こそが、我国の根本理念として謳われるべきだと思っています。

せっかくの総選挙ということで、滝川クリステル氏や渋谷寛先生(弁護士)などを担いで?その種の公約を掲げる勢力が登場しても良いのではないでしょうか。

人が関わる生き物の尊厳ともう一つの憲法改正論

震災に伴う原発事故の際は、多くの動物が現地に置き去りにされ飢餓など残酷な態様で命を奪われたという報道が当時からありましたが、さきほども、そうした事情で飼っていた牛達を悲惨な目に遭わせてしまい辛い思いをしたという方のニュースが出ていました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170313-00000023-mai-soci

申すまでもなく非難されるべきは原発事故を防ぐことができなかった人(ひいては原発の電力に依存する大都市をはじめとする現代社会そのもの)ですので、自分だけが過酷な現場を一方的に押しつけられたというべきこの酪農家の方を非難するつもりは微塵もありません。

ただ、人間には生きるため必要やむを得ない殺生を超えて他の生物を苦しめる権利などはないのですから、同じような避難云々の事態が生じたときのため、こうした事態を防ぐための措置を今のうちから講じておくべきだと思います。

例えば、搬送や安楽死など社会通念上の適切な措置を講じることができない場合は、ライオンなどはともかく、家畜などを解き放っても違法でない(生命尊重の見地から推奨ないし義務づける)ことを明示する規定を作ってよいのではと思いますが、どうなんでしょう。

動物愛護法にそのような定めがあるのか条文をチラ見した限りでは分かりませんでしたが、そのような考え方は同法2条が定める動物愛護の基本原則が要請するところでしょうし、とりわけ、野生動物ならまだしも「家畜」と呼ばれる生き物は人間が自分達の都合のため動物の様々な自由を奪い便益を享受しているのですから、「人と共に生きる存在」としての尊厳を最後まで守るべき責任があることは明らかだと思います。

この種の記事を見ていると、数年前に大阪で起きた「親が育児放棄して室内に放置され凄惨な飢餓の末に死亡した気の毒な子供達の事件」を引き合いに出すまでもなく、いずれ多くの人間が同じ目に遭うのではと感じざるを得ません。

日本国憲法は人間の個人としての尊厳を最高原理としていますが(13条)、万物に神が宿るとの思想を持ち、自然に畏怖と感謝を持って生きてきたのが日本人のメンタリティだと思いますので、人間だけでなく万物の尊厳を守るという理念のもとで社会のあるべき姿を問い直し、再構築していただきたいと願っています。