北奥法律事務所

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タイムチャージ

弁護士業務における時間簿作成の必要性

私は、当サイトにも表示しているとおり、経済的利益による報酬算定に馴染まないタイプの事案では、タイムチャージに準ずる方法で当方の受任費用をご負担いただいています。

また、タイムチャージではない受任形態(着手金・報酬金制や広義の手数料制)でも、ほぼ全件、時間簿(業務従事簿)を作成しています。これは、私の時間報酬単価(1時間2万円)が、当事務所の経営上は採算ラインを形成していることから、事件ごとの採算性を確認して今後の業務の質の改善に繋げるためであったり、成果報酬の金額算定の資料とすることを目的としています。

ところで、弁護士報酬の金額算定を巡って争われた裁判は、過去に多数存在し(私自身は提訴等の経験はありませんが)、最高裁が一般的、抽象的な基準(弁護士会の旧報酬会規のパーセンテージに基づく経済的利益の額に応じた算定のほか事件の難易や争いの程度、労力の程度などの総合判断)を示しているため、裁判所は、これに沿って相当額を算定することになっています。

そのため、裁判になること自体は滅多にないにせよ、報酬の額を巡って議論になる場合には、従事時間の記録を取っておくことは、適正な算定をする上で、意義があることと言えます。

また、最近は、弁護士が、直接的な依頼者以外の方に報酬を請求する制度が導入されています。住民訴訟で住民が勝訴し相手方から自治体に被害回復がなされた場合の住民側代理人たる弁護士から自治体への報酬請求(地方自治法242条の2)と、株主代表訴訟で同様に株主側が勝訴等した場合(会社法852条)が典型ですが、今後は、いわゆる弁護士費用保険を巡っても、受任弁護士と請求先の保険会社との間の紛争が生じてくるのではと思われます。

住民訴訟の報酬請求に関しては、平成21年に重要な最高裁判決が出ており、前記のとおり経済的利益のほか受任弁護士の労力や時間の程度などを斟酌して定めることになっており、訴訟行為はもちろん、打合せ、調査、書面作成等に要した時間、補助者の労務費なども記録しておくことが望ましいとされています(判例地方自治390号9頁)。

逆に言えば、「極端に経済的利益が大きいものの、さほど争いもなくさほどの労力を要しない事案」などでは、依頼者側からも、受任者に対し、時間制での受任を求めたり、委任時に時間簿の作成を求め、経済的利益に基づく算定額が時間単価に換算してあまりにも高額になる場合などは値引き交渉の材料とするといったことも、今後は考えてよいのではないかと思います。

ただ、業界不況に喘ぐ現在のしがない田舎の町弁の側の立場で申せば、上記の時間単価を大幅に下回る不採算仕事の受注を余儀なくされることが珍しくなく、たまに利益率の大きい仕事にも従事させていただくことで、何とか事務所を維持しているという面もありますので、相応の成果が出ている事案では、ある程度の金額は大目に見ていただきたいものです。