北奥法律事務所

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財産分与

若い夫婦が実家から受けた資金援助と離婚後の行方

若いご夫婦が新居を取得する際、ご自身が借入可能なローンだけでは全額を賄うことが困難であるとして、ご両親などから資金提供を受けることがあります。

例えば、住宅ローンの主たる担い手である夫の収入が十分でない場合に、妻の実家が援助するというようなケースなら、世間にも幾らでもありそうです。

では、このご夫婦が後年になって離婚を余儀なくされた場合に、資金提供をしたご両親が、提供を受けた側に対し、「一生、添い遂げると誓ったからお金を援助してやったのに、その約束を破ったのだから、お金を返せ」と求めることはできるでしょうか。

実は、この点が争点になった離婚訴訟に以前、携わったのですが、その事案では、返せとは言えない(貸金ではなくて贈与と認定し、財産分与の中で考慮する)との判断が裁判所から示されています。

この件では、ご実家が提供した金額は非常に大きな額であったことや、自宅に関する財産分与の中で資金援助の額が十分に反映されない(実際に提供した金額の数分の1程度しか考慮されない)面があったことなどから、貸金と認定する余地も十分あるのではと思ったのですが、複数の裁判官から贈与の心証が示されており、そういうものだと受け止めるほかなかったようです。

ちなみに、文献によれば、「資金提供が贈与と貸金のどちらと認定されるか」という問題を裁判所が判断する際には、提供者と受領者の双方の社会的地位や職業、相互の関係、金額の多寡、授受の理由や経緯、返還請求等(返還を前提とした双方の行動)の有無などを総合的に判断するとされており、相手方を援助する(当該金員を贈与する)納得できる動機や目的がなければ、贈与と認定することはできないとされています(加藤新太郎編「民事事実認定と立証活動・第2巻」286~287頁)。

ただ、上記のように「住宅ローンのための実家からの資金提供」という問題に関しては、実際にその点が争われた裁判に従事した立場から言えば、よほどの事情がない限り、贈与と扱われる可能性が高いことは否定し難いのではと感じました。

そうした意味では、お子さんご夫婦の「万が一」に不安をお持ちの方であれば、そのような状況に直面された際には、一筆求めておくのが賢明なのかもしれません。

離婚に伴う退職金の分与と分割について

給与所得者の方の離婚事件では、退職金の財産分与が論点となることが珍しくありません。

この場合、退職が間近の方であれば、退職金の予定額を確認し、中間利息を控除した額の半分(原則)を配偶者に分与することになります。

これに対し、退職まで相当の年数のある方であれば、現時点で自己都合退職した場合の金額を算出し、その半分(原則)を分与すべきというのが一般的な取扱です。

退職まで非常に多くの年数があり、定年退職時に勤務先が確実に退職金を支給すると言えるか不確定要素が大きい場合(企業の存続などを含め)には、退職金の財産分与を認めるか争いがあります。退職金の財産分与の可否が争点となった事件を取り扱ったことがありますが、裁判所の相場観もまだ確立していないように思われます。

この点、年金については分割制度が法律で確立されましたが、かつては年金の財産分与についても、これと似たような争いがありました。

結論として、裁判所の判断で退職金の支払義務が認められたものの、一括払をする原資を持ち合わせていない方で、支払の実施をどのようにするか問題になりました。

このように、離婚時の一括払型だと、支払う側には債務額をどのようにして調達するかという問題が、受け取る方には自己都合退職など低い計算方法で支払額が定められてしまうという問題があるため、これが常に正しい方法とは言い難い面があるように思われます。

深く検討した上での提案ではありませんが、個人的には、退職金についても、年金と同様に、退職時に分割して離婚した配偶者に対象額(総額のうち婚姻期間に該当する額につき原則として半額相当)を直接に支払う制度を設けてもよいのではと考えます。

仮に、退職者に問題行動があって退職金の全部又は一部の支払が拒否される場合にも、配偶者に帰責事由がないのであれば、配偶者の按分額については、原則として全部ないしそれに準ずる額を支払うことにすれば、その後の不正行為で離婚配偶者も退職金の受け取りができなくなるという問題は回避できます。

ただ、勤務先にとって見れば、巨額横領など退職金の全部不支給をしなければならない事案で、過去にその従業員と離婚した配偶者に一定額を支給しなければならないというのは、不満が生じるかもしれません。

その点は、保険などで賄う(その上で、保険会社がその部分について従業員に求償する)という仕組みなどが考えられますが、従業員夫婦の関係次第で退職金に関する事務が影響を受けるというのは企業側にとって抵抗が残るでしょうから、その点は大きな障壁となるとは思います。

もちろん、当事者が、すぐに調達できたり、多少の減額を容認してでも直ちに受け取りたいと希望する場合には、現在のスタイルで問題ないのでしょうが、当事者がいずれかを選択できるような仕組みはあってよいのではと考えます。