保険金請求と免責(不正請求=故意行為)の抗弁

ここ数年の判例雑誌によく取り上げられる分野の一つに、保険金の不正請求紛争があります。

これは、保険金請求に対し、保険会社が、保険金の発生事由(保険事故)が契約者・被保険者側の故意により惹き起こされたものであるとして、免責を主張し、その当否が争われた事件であり、生命保険・火災保険(建築物等の保険)・車両保険などで問題となります。

最近では、「産廃処理業者の関係者Xが、所有車両の転倒を理由に保険会社Yに750万円弱を請求したが、経営者Aの指示で運転者Bが行った故意の横転だと認定し、保険金請求を棄却した例」などがあります(神戸地裁姫路支部平成25年5月29日判決判例タイムズ1396号102頁)。

私がデータベースにまとめているものだけを見ると、車両保険に関する紛争が一番多く、保険事故の類型も、盗難・破損・水没など多岐に亘っており、火災保険に関する紛争もこれに次ぐ多さになっています。

何年も前に、交通事故で亡くなった方について、生命保険金を請求できるか(自死か過失事故か)、できるとして誰ができるか(受取人たる権利を有するのは相続放棄をした法定相続人か、それとも相続財産管理人か)が争われた事件を担当したことがあります。

ただ、私自身に関しては、それ以外に、免責事由(故意に発生させた損害かどうか)が争点となった保険金請求のご相談を受けたことはありません。

これまで収録した裁判例を見ても、大都市(東京・横浜・大阪・福岡・広島)がほとんどで、北日本を舞台とする事件を見たことがないのですが、地域性が関係しているのか否かまでは分かりません。

この種の訴訟は、原則として保険会社に立証責任があり、裏を返せば、よほど立証に自信がある場合に限って支払拒否をして判決に至ることが多いと思われ、判例雑誌に掲載されるものも、ほとんどは契約者(原告)が敗訴した例となっています。

「故意か否か」は、直接的な証拠がないことが通常であり、沢山の間接事実を総合して判断することになるため、事実認定(立証)の勉強という意味でも参考になり、この種の紛争のご相談等があれば、いずれ判例集を読み返すなどしてみたいと思っています。