県境不法投棄事件における県民負担と果たされぬ総括

日本最大規模の不法投棄事件と言われた、岩手青森県境不法投棄事件(平成11年発覚)について、ようやく現場の廃棄物の撤去作業が終了したという報道がなされていました。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20140326-OYT8T00737.htm

報道によれば、撤去等のため両県併せて708億程度の費用を要した一方、岩手県が回収できたのは8億程度に止まるとされています。

私の記憶では、撤去計画が承認された平成16年頃の時点で、青森県の見積が440億、岩手県の見積が220億程度(大雑把に言えば、青森:岩手が2:1)となっていましたので、岩手県については、最終的な費用は236億円程度になったと思われます。

そして、産廃特措法により、国が費用の6割を補助するはずなので、単純計算で県の負担額は94.4億円となり、上記の回収額を全額、県が補填できるのであれば、最終的な岩手県=県民の負担額は、86.4億円となります。

岩手県の現在の人口が130万弱だそうなので、単純計算で、子供も含む一人あたりの負担額が6646円強、4人家族なら2万6600円ほどの費用負担を、首都圏など全国各地から運ばれてきたゴミの撤去のため、県民が強いられたという計算になります。

もちろん、100億円弱もの巨額の資金があれば、震災復興であれ県北その他の振興や福祉であれ、地域のため相応に有効活用できたはずです。

県境事件は、今やすっかり風化し単なる公共事業のように思われているのかもしれませんが、上記の機会を県民から奪ったものだと県民には受け止めていただきたいと思います。

ところで、この事件の顕著な特徴は、主犯格の2つの産廃処理業者が青森と埼玉で営業する業者であり、被害拡大に関しては、青森県と埼玉県の監督不行届が大きかったのではないかと指摘されている(そのため、岩手県は当初から、被害県だとアピールしていた)点とされています。

結局、現行制度の限界として、この点(青森県と埼玉県の監督責任)を法的な手続により問う機会は得られぬまま、この事件は幕引きを迎えてしまったのですが、果たしてそれでよいのかという点は、皆さんにも考えていただきたいところです。

この点に関し、平成22年の日弁連人権大会では、「A県の許可を受けた業者がB県で不法投棄事件を引き起こした場合、事情に応じてA県もB県が要した撤去費用の一部を負担する制度を設けるべき」という趣旨の提言をしています。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2010/2010_3.html

残念ながら、このような制度は未だ実現していないことはもちろん、公の場で議論の俎上にすら載せられていないでしょうが、少なくとも、岩手県民は、そのような制度がないことによって、上記の負担を強いられているのだという現実は、認識していただきたいところです。

もちろん、岩手以上に高額な負担を余儀なくされた青森県はもちろん、古くから産廃問題に苦しんできた埼玉県にとっても、有り難くない話だとは思いますが、そうした制度の存在が、行政の担当者に緊張感を与え(言うまでもありませんが、そのような形で自治体=住民に生じた負担については、事実関係によっては自治体の担当者や首長などが住民訴訟の形で責任を問われる可能性があります)、結果として早期の監督権の行使=被害の防止に資するという見方はできるのではないかと思います。

撤去完了により事件の幕引きが見えてきたという現状を踏まえ、岩手・青森両県の住民の手で、改めて、事件の総括を考える機会があってもよいのではと感じています。