豪雨災害による個人の損害と裁判

ここ数年いわゆるゲリラ豪雨等による災害や大規模冠水などのニュースが珍しくありませんが、こうした災害で損害を被った方が誰かに賠償を求めて裁判を起こしたという話は、滅多にないのではないかと思います。

先日、判例雑誌で「豪雨による冠水で車両が走行不能(全損)になったため、所有者が自治体に対し、道路の設置管理に瑕疵があると主張し、車両の賠償を請求した事件」を見つけました。

この件では、降雨量が「記録的短時間大雨情報」に遥かに及ばないもので、自治体に予測可能なものであったことや自治体が通行止めの措置をするのが遅れたことなどを理由に道路管理の瑕疵が認められていますが、過失相殺が7割とされ、認容額は僅か11万円に止まりました(津地裁四日市支判H23.10.21判例地方自治371-74)。

車両の損害だけだと請求額も大きくはなりませんので、このような訴訟は勝っても費用倒れのリスクが高いのではないかと思いますが、自動車が絡む話なので、もしかすると、弁護士費用特約を利用して費用負担無しで裁判ができたのかもしれません。

ただ、準備等の手間を考えれば、11万円しか得られないとなると経済的には割に合わず、勝訴による被害感情の充足そのものを目的とする意識が強くなければ、精神的に挫けてしまいそうな気がします。

岩手では、8月に県央部で豪雨による大災害が生じていますが、この件では「記録的短時間大雨情報」が発令されているようなので、道路の管理などについて上記の「瑕疵」が認められるのは容易ではない(ハードルが高い)のかもしれません。

ただ、予想困難な災害でも、自治体など被害防止に関し一定の措置を講ずべき法的責任を負っている立場の者(大雑把な言い方ですが)が、あまりにも不適切な措置しか講じておらず、そのせいで被害が発生ないし拡大したというケースであれば、賠償請求が認められる余地は十分にあると思います(具体的な立証等は、至難を極めるかもしれませんが)。

私の知る限り、岩手では、震災に関しても、この種の裁判(自治体に天災への備えが十分ではなかったから過失等があると主張して賠償請求する趣旨の訴訟)は起きていないようです。

勝訴のハードルなどの問題もさることながら、多数の被害者が生じていることが、逆に足枷になる(他にも被害者がいるのに自分だけ請求することの抵抗感)ことも、あるのかもしれません。

そうした意味では、この種のケースでも、集団訴訟や代位訴訟的なものを考えるべきなのかもしれませんが、言うは易しなのでしょうね・・