北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

〒020-0021 岩手県盛岡市中央通3-17-7 北星ビル3F

TEL.019-621-1771

労働問題

平成30年~令和元年の取扱実績①全体、中小企業法務、債務整理・倒産

当事務所では毎年1回、前年の業務実績の概要をブログで公表しています。ただ、本来の予定が大幅に遅れ、昨年=令和元年分は本年8月にようやく顧問先に送付しており、ブログでも載せようと思いつつ、余裕のない状態が続き、現在に至りました。

その上、さきほどブログを見返したところ、2年前=平成30年の業務実績の掲載を失念していたことに気づきました。

というわけで、今回は、平成30年・令和元年の実績概要をまとめてお知らせします。

当事務所WEBサイトの「取扱業務」に基づいて分類し、3回に分けて掲載します。依頼先の選定などの参考としていただければ幸いです。

(1) 全体的な傾向など

当事務所は、①交通事故などの各種事故(主に被害者側からの賠償請求)、②離婚や相続など家族・親族間の紛争や各種法律問題、③企業倒産や個人の債務整理、④企業の取引や内部の紛争、⑤個人の方に関する各種の民事上の法律問題などに関する様々な紛争の解決や法的処理のご依頼に対応しており、この5大分野が業務の柱となっています。

近時は①②の受任が多くなっていますが、企業の重大な紛争や大型の行政訴訟(現在は行政側での受任)など他の様々な事件の解決やご相談の対応にも注力しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

企業取引に関する問題では、受注業務を巡る紛争や賃貸借に関する典型的な紛争などほか、2~3年前に社会問題化した「詐欺まがいの求人広告(無料出稿を装い簡易なFAXのみで契約させ、最初の無料期間経過後に当然に有料に移行したとして高額な請求を行うもの)の請求」に関する対応依頼などもありました。

また、「建築瑕疵の是非などを巡って複雑な争いがある賠償請求訴訟を建設会社側で受任した事案」、「商業店舗の賃貸借に関し、貸主側の対応の不備に起因し借主が退去等を余儀なくされたため、借主代理人として貸主に賠償請求した事案」などを受任し、責任論(賠償責任があるか)・損害論(責任があるとして、どの程度の請求ができるか)を巡り激しく対立した訴訟などを担当しています。

これらは相応に主張立証を尽くし、裁判所から相当な和解勧告を受けて解決しています。

他にも、取引先への売掛金請求に関する事案(請求者側)や、以前に契約関係にあった相手方企業から不当な要求を受けたため、必要な反論を行い要求を退けた事案などを扱っています。

******

企業の内部紛争に関しては、「小規模な企業の経営者Bに頼まれ中途就職したAがBから企業承継(買取)を要請されて応じたものの、後日、Bに不正行為が発覚したとして、Bの法的責任を問う必要が生じた事件」をA氏側代理人として受任した案件があります(本年、1審で勝訴判決を得て、控訴審で勝訴的和解が成立しました)。

ある企業が有期契約社員の方が問題を起こしたため更新拒絶(雇止め)を行ったところ「辞めさせるのは違法だ」と主張され地位確認等(解雇無効)請求を受けた事案で、企業側代理人として2~3年ほど対応した案件があり、昨年、1審勝訴→2審も勝訴維持の心証を前提とした解決を得ています。

また、以前にA社を共同経営していた親族同士が数十年前にA社・B社に分離し互いに単独で企業を経営していたところ、近年になりB社がA社に重大な背信行為に及んだことが発覚したため訴訟を余儀なくされ(A社代理人として受任)、過去の様々な経緯から双方が激しく対立する事案なども担当しています。

********

当事務所では、一般的な顧問料による顧問契約だけでなく、9年前から月額3000円(税別)による顧問契約をお引き受けしており、ここ2~3年は、顧問先の方々から、様々なご相談や簡易なご依頼などを受ける機会が増えてきました。

今後も、多くの県内などの中小企業・団体などの方々にとって利用しやすい利用頻度に応じたリーズナブルな顧問契約のあり方を追求すると共に、早期のご相談と必要な対処を実現し、手遅れになる事態の回避ひいては弁護士とご本人が共闘して物事の機先を制する、能動的・戦略的なリーガルサービスの提供につとめてまいりたいと思います。

(3) 債務整理と再建支援

震災以前に比べて、自己破産、個人再生、任意整理とも受任件数は大幅に減りましたが、現在は「債務総額がさほど大きな額ではない(100~200万円未満)ものの、僅かな収入しかない又は無収入ゆえ自己破産をせざるを得ない方」「複数の銀行などに300~400万円程度の借入と住宅ローンがあり、住宅を維持しつつ他の債務を圧縮するため、個人民事再生の手続を利用する方」からの依頼が多い傾向にあります。

また「法的手続をせず、リスケジュールのため任意整理を希望する方」の依頼もあります。近年は10年以上前に借りた債務を滞納していた方が「債権譲渡を受けた」と称する企業から最近になって請求を受け、消滅時効などにより解決を求める事案も幾つかあります。

近年は、債務額などからは民事再生や自己破産の手続をとるべき方が、Web上で大々的な広告を展開する東京の弁護士などに安易に任意整理(リスケ)を依頼し数ヶ月ほど委任費用を支払ったものの、結局、支払継続が困難となり、成果もないまま後日に当事務所に相談し法的手続を依頼する(ので、当初から当職に依頼していれば負担せずに済んだ多額の委任費用を無為に前代理人に支払ってしまっている)というケースに遭遇した(依頼を受けた)ことが何件もありました。

過払金の巨額横領が発覚した「東京ミネルヴァ法律事務所」問題のように、解決のための方法選択(依頼先の選定を含め)を誤ってしまうと、費用の無駄に限らず、後日に様々な問題が生じます。

債務整理に限らず、弁護士への依頼にあたっては、そうした事柄(後悔を余儀なくされた方が現に何人もおられるという現実)も視野に入れて早期のご相談をご検討ください。

過払金請求は時代の変化に伴い依頼を受けることがほとんどなくなりましたが、債権譲渡など特殊な論点が絡んだ事案の依頼があり、貸金業者側代理人との激しい闘いの末、裁判所から相応の和解勧告を受けて解決したものがあります。

企業倒産(破産管財)に関しては、平成28年に受任した相応の規模の建設関係の会社について、権利関係の処理がようやく完了し配当に向けた手続を行ったほか、小規模な事業者の方の管財事件で、動産の売却や原状回復の問題など様々な法的対応に負われました。

近年はごく小規模な企業の受任に止まっていますが、債権回収などを巡って特殊な交渉が必要になった案件実質的な経営者である元従業員に色々と問題があり、相応の対応が必要になった案件などを担当しています。

申立代理人としても、個人経営の飲食店の自己破産申立などを受任しているほか、本年になって「銀行等にのみ高額な債務を負っている企業及び代表者に関し、適切な方法で相応の弁済を行うことと引き替えに自己破産を回避し、破産のルール(99万円)を上回る資産を将来も保持するための制度(経営者保証ガイドライン)」により解決すべき事案のご相談を受け、現在も諸々の準備を行っている事案があります。

新型コロナウイルス禍のため残念ながら経営継続が困難となった方の中には、この制度を利用して債務問題の解決を図っていただくのが望ましい案件がありますが、あまり知られていない制度ですので、ご留意いただき知人などで必要とする方がおられれば伝えていただければ幸いです。

個人の方の破産管財でも、山林の換価が問題となった事案や個人への貸付の調査が必要になったケースなど、幾つかの事案を担当しています。

 

トラック運転手の労働時間と事故時の責任

保冷荷物を配送するトラック運転手Xらが雇用主(貨物運送業者)Yに未払割増賃金などを請求した件で、Xらの待機時間が労働基準法上の労働時間に該当するとして、Xらの請求を認めた例(横浜地裁相模原支判H26.4.24判時2233-141)を若干勉強しました。

車両運転に従事する労働者の待機時間の労働時間該当性については、タクシー運転手の待機時間について労働時間性を肯定した例が少し前に掲載されており(福岡地判H25.9.19判時2215-132)、運転者が自由に過ごすことができ労務に服するか否かを自ら判断できるような場合でなければ、使用者の指揮命令下での待機と評価され労働時間との認定を受けるのが通例と思われます。

ところで、私は、「トラック運転手の残業代請求」は携わったことがありませんが(本格的な訴訟としてはIT従事者の方の残業代請求訴訟を行ったことがある程度です)、トラック運転手の方が自損事故を起こし会社所有の車両を大破させたため、勤務先から賠償請求を受けた事件で、運転手の方から依頼を受けたことがあります。

依頼主(運転手)の説明によれば、その件では長時間労働が常態化しており(何年も前なのでよく覚えていませんが、一定の裏付けもあったとの記憶です)、疲労や寝不足などが事故の原因と見られたので、基本的には会社に責任がある事故で、依頼主に一定の責任があったとしても、(私の介入前に)支払済みの金額以上の責任はないと主張しました。

当方依頼主が適法な残業代の支払を受けていたのか、確認したか否かも含め記憶がありませんが、その件では、勤務先も、それ以上の措置(当方依頼主への賠償請求訴訟など)を講じてこなかったので、そのまま終了となりました。

仮に、相手方が訴訟に及んだ場合には、当方依頼主が適法な残業代の支払いを受けていなかったのであれば、反訴として既払金の返還+残業代を請求していたのではないかと思われますが(その件でも待機時間があったはずで、争点になりえたでしょう)、依頼主も自分から提訴することは希望しなかったので、その件では様々な論点が決着しないまま、事実上のゼロ和解となっています。

ともあれ、トラック運転手の超過労働を巡っては、残業代請求のほか、事故絡みも問題も生じやすいことは確かでしょうから、運送等の業務に従事する方は、労使問わず、法令遵守の視点を大切にしていただきたいものです。

ハラスメントに関する法対策と5W1Hとバランス感覚

先日、労働上のハラスメントに関する法的問題を対象とする東北弁連主催の講習会があり、勉強のため参加してきました。

私は労働紛争を多く受任するタイプ(いわゆる労働事件専門)の弁護士ではありませんが、パワハラ絡みのトラブルを理由とする賠償等の問題について、労働者、使用者それぞれの立場で相談や労働審判の依頼などを受けたことがあるなど、多少は手掛けています。基礎的な勉強はしているつもりですが、ハラスメント問題に限らず、労働事件は今後も多く手がけていきたい類型であり、知見を深めることができればと考え参加した次第です。

講習会は、ハラスメント問題では東北の第一人者とされる仙台の先生の講義がメインとなっており、ここで詳細は述べませんが、例えば、セクハラ事案は、密室で行為や言動がなされるため、行為の事実の存否が争われることが多いのに対し、パワハラ事案は、ほとんどの行為や言動は衆人環視の職場内で行われ、他の従業員等の放置を含めた様々な事実の総合的評価が問題となるので、個々の周辺的事実の存否はあまり争われない(評価ないしそれを基礎付ける決定的な事実などが争われやすい)などという説明がありました。

また、その上で、パワハラを理由とする賠償訴訟で、裁判所が、事実の総合評価という手法に安易に頼らずに、個々の事実に関し賠償請求を基礎付ける違法有責な行為があったかを細かく審理した例があるとの説明もありました。

そのことを聞いて、パワハラ問題は、岩手に戻ったばかりの10年近く前に2回ほど手がけた先物取引被害の賠償問題に、似た面があるのかもしれないと思いました。

先物取引被害は、要するに、先物取引という特殊な取引に対する高度な知見又は独自の勘がなければおよそ手がけることができない、ハイリスク・ハイリターンな取引を手がけるのに相応しくない方(その種の経験のない定年後の高齢者など)が、先物会社の従業員の勧誘に安易に応じて多額の証拠金を預けることから始まり、最初は多少の利益が出たりするのですが、程なく、支払済みの証拠金では補填できない額の損失(いわゆる「追い証」状態)が生じ、損を取り返そうとして、担当者が進めるがまま延々かつ頻繁に取引を繰り返し、半年~1年ほどで巨額の損失が生じて終了となるというパターンを取ることが多いとされています(私が関わった事案は、必ずこのパターンでした)。

このような経過のため、個々の行為(勧誘、契約時の説明、証拠金の授受、個別の先物取引(買建、売建や決済)の勧奨、追い証発生時の説明など)については、それ自体のみをもって裁判所が不法行為性を認定させるのが容易でなく、勧誘から取引終了時までの様々な事実経過を詳細に説明し、被害者の取引適性のなさや取引内容の異常性(過度に取引を繰り返し、顧客の損失が増大する一方で、先物会社の手数料収入ばかりが増えていることなど)を説明し、総合的に見て顧客の犠牲のもとで先物会社の利益を図っている不法行為であると評価すべきだと主張するのが通例で、そのような判断をする例も多くあります。

ただ、私が手がけた訴訟では、主張等を尽くした後で行われた和解協議の中で、裁判官から、「個々の建玉の取引について、その取引自体の不法行為性を主張立証できなければ、賠償責任ないし賠償額の判断が厳しくなるかもしれない」と言われたことがあり、文献や多数の裁判例の考え方と違うじゃないかと驚き、対処に悩んだことがあります。

幸い?その件では事案に照らし相場の範囲と言える和解金の提示(回答)が先物会社側からなされたので、ご本人が了解し和解で終了となりましたが、裁判官が求める観点から主張を構成するためには、どのように取引を分析したり個々の取引の経過等を調査すべきか、参考となる裁判例等がほとんど見つからなかった上、依頼主が高齢者であるなど細かい事実の確認が困難と思われる方であったため、悩んだことをよく覚えています。

ともあれ、不法行為責任をどのような法的構成で認めうるかという問題は措くとしても、先物のようなハイリスク取引のトラブルであれパワハラであれ、長期間の様々な行為(人間関係等)に起因する問題、出来事の総合的な違法評価を理由とする賠償請求をするには、違法の評価に結びつく要素にあたる事情について、事実関係(いわば、5W1H)を詳細に主張立証しなければなりませんので、その種の問題を弁護士に相談なさる際には、ぜひ、時系列表を作成するなどして、事実関係の適切な整理と把握を通じ、第三者(弁護士)への適切な伝達ができるよう、賢明な準備をお願いしたいところです。

ところで、セクハラは話になりませんが、パワハラ紛争については、「労働者の適切な権利行使を妨害する言動」の類は話にならないものの、労働者が、その企業が想定している基本的な業務を適切に遂行することができない状態が続く場合に、指導・叱責が昂じて過激な言動に及ぶという例も見られるところで、このようなケース(相性的なものも含め)では、人材のミスマッチという面が否めず、使用者(上司)側を一方的に悪者にすることもできない例も見られるのだと思います(中には、労働者=部下の側に不誠実な行動が見られる例もあるでしょう)。

そのような例では、組合せの不幸(端的に言えば、離婚のように、離れた方がよい)の問題があり、相応の規模の職場であれば、配転等により解決すべきでしょうが、小規模な職場であれば、なるべく小康状態(引き延ばし?)を図りつつも、いずれはどちらかの離職等を視野に入れた解決を考えざるを得ないと思われます。

そうした意味では、(殊更に経済界が推進する解雇規制緩和に賛同するものではありませんが)健全な意味で、ミスマッチを克服し難い職場があれば、自分に合う企業を求めて短期間で適切な転職ができるよう、失業率が低く人材流動性(意識面を含む)の高い社会の構築(個人の起業促進なども含め)も求められているのではないかと思います。

余談ながら、レジュメで「ハラスメント判例一覧」が添付されていましたが、私が判例雑誌をもとに作成している判例データベースに入力したセクハラ等に関する裁判例(セクハラ被害に関する企業の調査内容(被害者の申告)の信用性を認め、加害従業員からの解雇無効請求を棄却し、さらに不当訴訟を理由とする企業から加害従業員への賠償請求も認容した例など)が挙げられていなかったので、その点は少し残念というか、「これも追加して下さい」と余計なことを言いたくなる衝動にかられました。