北奥法律事務所

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弁護士のCM

CMやネット広告で「任意整理」を宣伝する都会の弁護士等の仕事に接して感じた疑問について

震災の前後から、東京の弁護士や司法書士の事務所が、CMやらチラシやらで出張相談会と称して過払だ債務整理だと喧伝してきた光景には、「見飽きたよ」という方も多いだろうと思います。

過払に関しては、平成18年頃の法改正により我々「フツーの弁護士」には震災後間もなくご縁がほとんど無くなり、私も、2年ほど前に最後の大事件(若い弁護士さんの尻ぬぐいで、無用の大論点まで引き受けて僅かな報酬でメチャクチャな苦労を・・)、昨年は回収の難しい事件が一つあっただけで、恐らく、もう過払には基本的にご縁がないのだろうと思っています。

それなのに未だにCM等で派手に宣伝する人達がいることに「商売が成り立つのか?」と不思議に思っていたのですが、その理由(カラクリ?)が多少は分かってきたような気がします。

ここ最近、これらの事務所に「任意整理」(リスケジュール)を依頼した岩手県民の方が、依頼から半年前後で「息切れ」して自己破産又は民事個人再生に移行せざるを得なくなったところ、その事務所に「破産や再生はウチではやらない。地元の弁護士に頼んで」と言われ、HP経由で当事務所にアクセスしたという方が何人かおられました。

で、その方々が全員というわけではないものの「ありがちな話」として、東京の弁護士等の請求(報酬基準)により、任意整理の着手金を1件あたり5万円(税別。以下同じ)とし、毎月5~6万円ずつを弁護士の指定口座に送金した後、半年ほど(入金総額が30万円ほど)した時点で、本人が、従前どおりの返済は無理だと「息切れ」して、その弁護士等に相談しています。

すると、その弁護士等から上記の「破産や再生はウチではやらない」との説明があり、ご本人との間でそれまでの受領額を清算しているのですが、着手金(単価×業者数)の総額(また、その間に業者とリスケ合意の書面を交わしたことを理由とする解決報酬金(1社あたり2万円など)を含む場合もあります)を控除し、従前の送金額30万円前後の全部又は大半を弁護士等が受領した上で「あとはよろしく」と手を引く、というパターンが多いように感じるのです。

これは、悪く言えば、受任通知を送付し業者の督促を止めただけ(あと、引直計算や減額の交渉もない単なるリスケ合意書を交わした程度)で1件あたり5~7万円(30万円前後)の費用を取り、本人が支払困難となるや、面倒な作業は他の弁護士に頼めと言って放り投げる、という「ボロい商売」をしているように見えます。

言い換えれば、そのような「後で払えなくなっても知ったことか」との前提で、半年ほど通知1本で督促を止める程度だけの仕事をする代わりに、20~30万円程度を本人から得ることができれば(それだけを延々と全国で繰り返すなら)、「過払なき後」も十分な収益が得られるとして、今はそれが目当てで彼らは未だに宣伝をやってくるのではないか、との印象を拭えないのです。

そういえば、震災前後に「楽して儲かる大手相手の高額過払ばかり受任し、面倒な小規模業者への過払請求は受任拒否する(東京の)弁護士が一定数いる」との話を聞いたことがありますが、上記の話も、その延長線上なのかもしれません。

ちなみに、岩手では、平成17年頃(私が岩手に戻った直後)の消費者委員会の内部規制で、任意整理の費用は1件あたり2万3000円(うち3000円が引直計算の手数料)という低額規制が定められ、当事務所は当時から10年以上に亘り、この単価で受任してきました。

引直計算が消滅した現在は、1件あたり原則2万円となっていますが、引直のあり方を巡る激論などはなく、本人が履行可能な弁済計画の策定など作業の多くが練達の職員が対応できるため、さほど不満はありません。

言うまでもなく、2万円は1件ごとの総費用であり「和解成立時の成功報酬」なるものは請求していません。

儲かりはしないが、こんなものでしょ、という感覚ですし、依頼者側の支払能力(岩手の所得水準?)なども含め、それが任意整理(単なるリスケ)という仕事には相応しい単価だと思います。

だからこそ「通常の消費者金融に関するリスケだけの仕事で1件あたり総額7万円」などという、当方の3倍以上の単価設定は、私には全く理解できません(昔の東京弁護士会の基準は、3~4万円+減額報酬金だったような気もしますが、私は、東京時代から着手金のみで対応し減額報酬金は請求しませんでしたので、それを理由に他の弁護士でなく私に依頼してきた方もいました)。

当方は現在もこの単価設定で行っていますが、岩手でも、この単価で行っているのは、当時の消費者委員会の議論を知る人だけかもしれません。

多少の違いはありますが、これは、法テラス(低所得者向けの立替制度)の受任額と概ね同一(1件だけならこちらの方が割安)のものとなっており、私としては、岩手弁護士会(の役員の方など)が全国に働きかけ、この「岩手方式」を全国標準にしていただきたいのですが、残念ながら、そのような話を聞いたことはありません。

また、もう一つ大事な点として、当方では、最初から任意整理(リスケ)に無理があると感じる方は、可能な限り破産又は再生を選ぶよう説得するので、現在は任意整理の受任は滅多にありません(これに対し、彼らはそうした検討や説得などを伴わず、リスケ希望があれば上記の受任費用を前提にその受任を機械的に行う面が強いように見受けられます)。

ただ、諸般の事情からリスケを希望される方はいて、その方が、やむなく破産・再生に移行したときは、それまでの業務量も考慮の上で、移行後の受任費用を減額する(リスケ費用を後者の内金扱いとする)のが基本となります。

これに対し「うちは破産・再生はやらないから他に頼んで」となれば、当然ながら、費用の二重負担は避けられません(そもそも、そうであれば、最初から説得したり費用や業務のあり方なども検討すべきでしょう)。

その上、上記の経緯で当事務所にアクセスする方々の多くが、支払能力が限られ、法テラス対象者又はそれに準じる方なので、なおのこと「最初から破産・再生相当だと分かりきった方に、解決費用の名目で半年ほど毎月数万円を自分達に支払わせた後、自分達の費用の支払が済んだら放り出しているだけでは(それって、体のいい収奪なのでは)」とも見えてしまう彼らの仕事の仕方には、到底得心できないと感じてしまうのです。

もちろん、私のやり方は(費用相場が岩手と東京で違うという話を一応別とすれば)、珍しいことでも殊更に褒めるような話でもなく、自分が引き受けた依頼者は、合理的な費用や手法を前提に最後の解決までなるべく面倒を見る、という弁護士としてあまりにも当たり前のことを述べているに過ぎませんし、個人向けの破産・再生が原則として「債務整理の基本のきのき」であることも言うまでありません。

よって、破産・再生はウチでは受けないから他の弁護士に頼め、という彼らのやり方が私には理解できません(ただ、彼らが放り投げた結果として、当方が「おこぼれ的受任」を得た面は否定できず、彼らを悪く言える立場ではないのかもしれませんが)。

残念ながら、現在の弁護士業界の内規や法制度にはこのような「都会の弁護士さんの仕事のやり方」に(明確に)NGを出すことができる定めはありません。

このような「実質的な中途辞任ケース」では、和解報酬金は返還するとか、着手金総額も一定の上限を設けるなどという対応が必要なのでは、と感じています。

もちろん、私自身が、高額なリスケ費用を請求し「本人(依頼者)から取れるだけ取った後は放り出す」などという路線に宗旨替えすることは耐えられませんので、今後も「こんなことがまかり通ってよいのだろうか」と感じつつ、淡々と後始末を続けていくだけ、ということになるのかもしれませんが、こうした話にも光が当てられることがあればと実務の片隅で願っています。

もちろん、個別事案ごとに様々な事情があり、方針選択などについては相応の事情がある場合もありますので、彼らが殊更に依頼者の犠牲のもと私利を図っているなどと、当然に思っているわけではありません(思いたくもありません)。

が、「そうであれば、費用であれ方針であれ、その事情を配慮したやり方というものがあるだろう」と感じることが多く、全体として「それって費用の取り方がおかしくないか」と感じざるを得ない(ものの、現行規制では私的自治の原則に阻まれ、是正=返金等を求めるのも現実的でない)というケースを目にすることが複数あり、思わず投稿せずにはいられなくなった、というのが正直なところです。

それだけに、全国的な実態の把握や議論の深まりを期待したいものです。

私が拝見した例がすべてだと申すつもりはなく、業務・金額とも特段の問題がない(或いは、私よりも遙かに良い)というケースも十分ありうるでしょうから、CMやチラシなどをすべて否定するつもりはないのですが、こと、現在の弁護士業界に関しては、依頼前であれ後であれ、セカンドオピニオン等を考慮する必要があるのかもしれません。

少なくとも、感覚的に疑念を感じる点があれば、そうすべきですし、それに至らなくとも、ご自身の感覚自体が鈍磨しているケースもありうるでしょうから、ご自身の信頼に値する知人への相談なども含め、健全・常識的な感覚を大事にしていただければと思います。

日弁連CM問題と、今こそアピールすべき弁護士像を考える

私はTVで視たことがありませんが、日弁連が全国的に放映しているCMがあるのだそうで、業界内では何かと話題になっています。http://www.youtube.com/watch?v=8bVRpp18zAg

ネットで流布されている噂話?では、このCMに5000万円もの会費が使われているのだそうで、私に限らず、若い世代を中心に、いよいよ厳冬期に突入し始めた弁護士業界では、「金(会費)返せ」と怨嗟の声が巻き起こっているようです。

それはさておき、私は弁護士の本質は傭兵だと思っていますので、このような「フレンドリー路線」で弁護士という商品を売りだそうという考え方には、どうしてもついていけないものを感じてしまいます。

私自身は、弁護士の典型ないし理想像は、権力者はもちろん大衆にも媚を売ることなく叩き上げのスキルと専門家の根性で黙々と自分のやるべきことを孤独かつ無愛想にこなしていく「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」のようなものだと思っています。

なので、仮に、私がCM制作に携わる立場なら、今回の日弁連CMとは真逆の作品を作ろうとすると思います。例えば、こんな感じです。

①最初に、人々が無惨に殺される戦争や昔の酷い暴力などのシーン。

②場面が変わり、スーツ姿の弁護士が「異議あり!」などと宣言し、厳しい論調で相手方を問いつめ、誤りを認めさせる(堺雅人氏を起用?)。

③そして、「私達の社会は武器を捨てた。しかし、理不尽な仕打ちが社会からなくなったわけではない。それと闘うために、法と弁護士があります」などといった趣旨の言葉をナレーション。

④場面が変わって、現代の、理不尽な目に遭わされている弱者を大きくクローズアップするシーンを出す(例えば、夫に蹴飛ばされる妻(或いは上司と部下)とか?逆の方が今どきかもしれませんが)

⑤最後に、「理不尽に負けるな!私達は、貴方と正義のために闘います」との文字を表示してCM終わり。

ニコニコするだけなら、他士業でも、それ以外の人でも、誰にでもできます。しかし、依頼者の権利と法の正義のためにどこまでも闘うことは、我々にしかできません。

弁護士は敷居が高い、と言う人はこれまで沢山いました。このようなCMが出てくる背景にも、そうした主張があるのかもしれません。

しかし、「弁護士が敷居が高い」との主張は、正しい事実を描いたものとは言えません。

多くの日本人にとって本当に敷居が高かったのは、弁護士という職業ではなく、まして個々の弁護士そのもの(例えばこの男、小保内義和)でもありません(目つきの悪いベテラン方が沢山いるとの話はさておき)。

敷居が高かったのは、闘うことそのものだと思います。

これまでは、自分の権利、自分の正義を守るため、闘うことには躊躇する人、或いは、そこまで追い詰められていない(と感じる)人の方が圧倒的に多かったと思います。だから、傭兵である弁護士と関わることに、得体の知れぬ異形の文化と接するような違和感を持っていたのであり、それと「保険のないオーダーメイド傭兵」ゆえの費用の高さなども相俟って、「敷居が高い」と形容していたに過ぎません。

今、その前提自体が、様々な面(闘うための法制度の整備、コスト、闘争を余儀なくされる場面の増加、そして人々の気質等)で、着実に変わりつつあると思います。

だからこそ、人々が、他者と利害が衝突したとき、自身の正しさを世に問うことを諦め衝突現場から退くことを是とするのではなく、自己の正しさを主張し闘うことを鼓舞すること、そして、弁護士の数が大量に増えた今こそ、それを適切に補佐する専門職として、これまで以上にその役割が果たせるのだと喧伝することが「日弁連の広告」に求められているものではないかと思うのですが、いかがでしょう。

ちなみに、この点は、日弁連評論家で有名な小林正啓先生のブログを参考にしています。 http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-76f3.html

このような、ある意味、「和の国」に相応しくない存在として弁護士を考えていく観点からは、キャッチコピーだって、あんな「ニコニコしまくり」みたいな雰囲気とは、真逆のものを用いるべきだと思います。

例えば、こんなものはどうでしょう。

“貴方に嫌われたっていい。貴方の役に立ったのであれば。”
“社会に嫌われたっていい。明日の社会を守ったのであれば。”

それこそ、弁護士が依頼者に色々と面倒な準備作業を要求するものの、それが奏功して裁判官が良い心証を示すような「妙薬は口に苦しバージョンのCM」もいいのではと思います。

さらに言ってしまえば、「ニコニコのアピールをしようとする弁護士(ガッキー氏?)が最初に出てきて、それを『そんなのはダメだ』と押しのけて、闘うことをアピールする弁護士(堺雅人氏?)が出てくるようなCM」というのも、話題性という点では面白いかもしれません。

とまあ、いつも誰かに嫌われている?僻み根性たっぷりの私としては、ニコニコだらけのCMを見ていると、このようなことしか考えつかないのでした。

ま、ここに書いている程度のことは、日弁連のお偉いさん方や優秀な広告代理店の方なら重々承知のはずで、それでも深慮遠謀があって、今回のようなCMを作っているのだろうと解釈しています。例えば、社会が、揺り戻しの時代に向かっているからこそ、弁護士という、ある意味では西洋的近代化を象徴する側面のある存在が社会から排撃されないよう、慎重な対応をとっているという見方もあるのかもしれません。

ですので、このCMの反響も含め、この種の「フレンドリー路線」がどのような帰結をもたらすか、片隅で見守っていこうと思っています。