北奥法律事務所

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管財事件

企業の再建と倒産の狭間に揺れる「いのち」達と弁護士

前回に引き続き、旧ブログで中小企業家同友会の行事に参加した際の感想等を述べたものについて、あと1回、再掲することにしました。

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平成24年11月8日に、企業再建で有名な村松謙一弁護士の講演会が岩手県中小企業家同友会の主催で行われ、参加してきました。

田舎の町弁をしていると、企業の破産については申立代理人であれ破産管財人であれ、大小様々な案件を取り扱っていますが、企業の民事再生については様々なハードルのためか申し立てられる件数が少なく、私の場合、何年も前に申立代理人と監督委員を各1度だけ経験できたのみで、なかなかご縁がない状態が続いています。

まして、法的手段(民事再生)に依らざる企業再生、なかんずく金融機関等への救済融資などを求める交渉は、田舎の弁護士には滅多にご相談を受ける機会がなく、必然的にノウハウを培う機会にも恵まれません。

そこで、そうした論点に関する実務上の工夫などを少しでも伺うことができればと淡い期待を抱いて参加したのですが、NHKで既に2回くらい見ていた「プロフェッショナル」の番組が講演中にノーカット?で放映された上、番組で取り上げられていた企業の方に関するエピソードや倒産・再建実務を巡る理念的なお話が中心で、残念ながら、そうしたノウハウ的なことは取り上げられなかったように思われます。

まあ、弁護士向けの講義ではなく中小企業の経営者の方々向けの講演でしたので、どうしても理念的、総論的な話が中心となるのは致し方ないことなのかもしれませんが。

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それはさておき、村松先生が、企業倒産を巡る現場では、経営者が自死に身を委ねてしまう場面が非常に多いことを、ご自身の経験をもとに具体的に語られ、それだけは絶対にいけないのだと強調されていたことが、講演では最も印象に残りました。

私も、事件当事者のご家族にそうしたご不幸があったというお話を伺ったことが何度かありましたので、そのことを思い返してみましたが、私の場合、これまで実際にお話を伺ったのが3回で、いずれも従業員10~20名前後の小規模な企業の倒産が関わっている事件でした。

1件は、破産管財人を務めた県内の企業で、資金繰りに苦しむ状況の中で、高齢の社長の後継者で実務を担当していた息子さん(常務)が自死し、生命保険金の大半を運転資金に用いたものの、すぐに行き詰まり破産申立に至った事件。

1件は、同様に破産管財人を務めた県内の企業で、同様の状況下で熟年の社長さんが自死し、同じような経過で破産申立に至った事件。

1件は、申立代理人を務めた県内の企業で、数年前に創業者である社長(お父さん)が自死し、その際の生命保険金などで資金繰りを凌いできたものの、万策尽きて破産申立に至った事件。

私は平成12年から弁護士をしていますが、過労自殺など自死が関わる他の類型のご依頼を受けた経験がないこともあり、携わった事件に関連して当事者の方に自死があったというのは、この3件だけではないかと記憶しています。

その経験だけで一般化することはできませんが、企業経営に携わっている方々が、自死という問題に晒されるストレスやリスクを少なからず背負っていることは、もっと知られてよいことではないかと思います。

また、自死ではありませんが、「創業者(父)が亡くなった後、経営を引き継いだ兄が、資金繰りに困って、精神障害者(成年被後見人)である弟の預金(数千万円)を横領して運転資金に宛てたため摘発された事件」を扱ったこともあります。その事件では、横領したお金で取引先や従業員への支払を完済したそうですが、兄はあまりにも大きい代償(1審実刑判決)を払うことになりました。

敢えて尋ねませんでしたが、倒産を余儀なくされた場合でも、少なくとも労働者の賃金については8割相当の立替払制度がありますので、もし、その制度の利用で最低限の納得が関係者から得られるのであれば、倒産処理の途を選んでいただくべきではなかったかと悔やまれます。

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企業の経営者は、様々な責任感に押し潰されそうになる思いを余儀なくされることが多々あると思いますが、ご家族などを悲しませる行動にだけは及ぶことのないよう、孤独の淵に沈むことなく賢明に対処していただきたいと思わずにはいられません。

経営者にとって企業はご自身の子供のようなものだというお気持ちは、私も零細企業の経営者の端くれとして多少とも存じているつもりですが、そうであればこそ、「お子さん」が自らの力で生き続けることができないほど症状が悪化した場合には、終末期医療や葬儀を担当する弁護士という存在を適切にご活用いただき、最後を看取っていただくべきと考えます。

少なくとも、ご自身を投げ打ち「お子さん」の命を救おうとしても、残念ながら無理心中にしかならない可能性が高いという現実は、ご理解いただく必要はあると思います。

もちろん、投薬や手術で治療が可能な場合には、そうした面でも、弁護士を活用いただくと共に、再建関連法制の様々な使い勝手の悪い部分の改善にご協力いただければと思っています。

余談ながら、先日、士業向けに「中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関認定制度」が導入され、私は、(当時は)岩手県で認定を受けた恐らく唯一の弁護士ということになっています(といっても、興味を抱いて申請を出したのが私だけだったという程度の話で、特別の選抜をされたなどという類の話ではありません)。

どれだけ意味があるかよく分かりませんが、そうしたものも活かした形でお役に立てればと思います。

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ところで、上記の3つの自死事件は、いずれも死亡後に会社に生命保険金が支払われているようです。

10年以上前に、会社が従業員を被保険者として生命保険を契約し従業員が不慮の死を遂げた際に高額な保険金を受領することが社会問題視されたことがあったと記憶していますが、会社役員について同様の事態が生じた場合の当否については、議論があるのか存じません。

思いつきレベルで恐縮ですが、役員を被保険者、会社を受取人とする生命保険は上記のような弊害が大きいので、原則的には禁止すべきではないかとも思われます。

少なくとも、自死の場合でも保険金を受領できる契約にあっては、ご家族のみを受取人とするなど、弊害防止のための措置が講じられるべきではないかと思いますが、現在の保険実務はどのようになっているのか、ご存知の方はご教示いただければ幸いです。