北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

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過失割合

平成30年~令和元年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成30年~令和元年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を、守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

現在も交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、大半の方が、ご自身等が加入する任意保険の弁護士費用特約により、本来であれば数十万円からそれ以上を要する弁護士(当職)への委任費用について、自ら費用の負担をせずに利用されています。

受任の内容も、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主たる争点となる事案、物損の金額(全損評価額・評価損など)が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額算定が中心となる事案、重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が必要となる事案など、幅広く取り扱っています。

事故直後など、加害者側の示談案提示前の時期から受任して後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、「神経障害に関する後遺障害(14級9号)」をはじめ、幾つかの後遺障害につき、認定を受けるための調査や医療機関への照会などを行いました。

また、自賠責で等級認定が認められなかったものの、訴訟で14級相当の後遺障害の認定が認められた事案なども経験しています。

万一のときに後悔しないためにも、自動車保険などでは必ず弁護士費用特約が付された任意保険にご加入ください(某大手損保が販売している、相談のみの特約に加入される方もおられるようですが、必ず委任費用を対象とした保険にご加入下さい)。

近年、弁護士費用特約は企業クレーム対応や家事事件などにも導入されており、従業員などを被保険者として勤務先・所属先で契約する例もありますので、活用をご検討ください。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

投資詐欺の被害に遭った者同士が責任の所在を巡って争った訴訟」(主犯格Aの知人Bが、知人CにもAを紹介し、CがAの勧誘で多額の投資をして被害に遭ったことから、CがBにも紹介者責任があるとして訴えた事案)で、B氏代理人として対応しています。

B氏は詐欺的商法に対する認識が甘く、以前から懇意にしていたAに誘われるがまま、自ら少額の投資(金銭預託)をし一定の配当を受けたことから、Aらが破綻し自身への配当も停止するまで詐欺的商法との認識を持つことなく、主観的には善意でCにも勧めてしまったという事案で、B氏に過失によるCの損害の賠償責任(紹介者責任)が認められるかが大きな争点となりました(Aの受任はしていませんが、当然ながらCの損害の全部又は大半にAの賠償請求が認められることが前提です)。

結局、尋問を含め双方の主張立証が激しく争われた末、B氏にはAらのような巨額の賠償責任が認められないことを前提とした勝訴的な和解で終了しています。

また、転職後に前の勤務先から「職場で負担した仕事で必要な資格試験の受験料などを支払え」と請求された方の依頼を受け、基本的な法律論をもとに、請求棄却(勝訴)の判決を得ています。

昨年は、Web上のやりとり(誹謗中傷的な投稿)を理由とする名誉毀損企業の従事者の方が企業情報を他社に漏らしたことを理由に賠償請求を受けたケースなど、個人が特定の不法行為を行ったことを理由とする賠償問題で相談・依頼を受けた件も複数ありました。

他にも「D社に務めるEが退職後に同業他社に就職したところ、Dから競業避止義務違反だと主張され、賠償要求などを受けたため、E氏代理人としてそれが不当だとして反論した案件」職場内での個人間の暴行事件を巡る賠償請など、様々な事件を手がけています。

また、震災無料相談制度(令和3年3月終了見込)や扶助相談制度などを通じ多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件をはじめ、生活上の様々なトラブルに関するご相談や簡易な交渉対応などに応じています。

 

ロータリー卓話~交通事故を巡る賠償実務の「きほんのき」~

昨年の話ですが、盛岡北RCの幹事さんから、「明日の卓話の担当者が急なキャンセルになった。すまないが、急遽、引き受けて欲しい」との要請があり、交通事故の賠償実務に関する基礎的な説明をしたことがあります。

RCの卓話は、例会場で20~30分弱の「ミニ講話」を行うものですが、私の場合、弁護士業務に関する話題を取り上げるのを通例としています。

過去に担当した卓話では、①相続、②中小企業の法務(同族間の経営権紛争)、③夫婦(不貞・離婚)に関する話題を取り上げたので、今回は、上記3つを含めた町弁の「主要な取扱業務」の一つである、交通事故(に伴う賠償等の問題)を取り上げることにした次第です。

一晩で準備する必要もあり、過去に多く扱ってきた論点、事項を取り上げることとしましたが、抽象的に話してもつまらないでしょうから、幾つかの論点を含む架空の事故を想定し、それをもとに解説しました。

ここでは、その際に用いた事例(設問)と、解説の項立てのみご紹介することにします。もし、盛岡市内・岩手県内の方で、「交通事故に関する賠償問題の基本について、30分~1時間程度でセミナー等をして欲しい」とのご要望がありましたら、ご遠慮なくお申し出いただければ幸いです。

ちなみに、この少し後に、某損保さんから代理店の方々に向けて、事故被害者の保護に関する対応の基礎や弁護士費用特約の意義についてミニセミナーをして欲しいとのご依頼をいただき、この事例(設問)をアレンジする形で対応させていただいたこともありました。

(事例)
盛岡市内の某ロータリークラブの会員であるX(50歳。会社勤務)は自車を運転してホテルニューウィング前の交差点から開運橋方面に向かって直進しており、開運橋西袂の交差点を通過し盛南大橋方面に向かうつもりであった。

ところが、第2(右)車線を直進して開運橋西袂の交差点を通過中に、反対方向から進行してきたY運転の高級外国車が突如、交差点内でX車めがけて右折してきたため、X車は交差点内でY車との衝突を余儀なくされた。

この事故で、Xは全身に強い打撲傷を負うなどして盛岡市内の病院に1ヶ月ほど入院し、退院後も7ヶ月ほどの通院を余儀なくされた(退院後の実通院日数120日)。また、頸椎捻挫、腰椎捻挫などによる痛みが完治せず、医師から後遺障害診断書の発行を受けており、後遺障害の認定申請を検討している(レントゲンなどでは異状は確認されていない)。

Xの怪我の治療費については、事故直後からYが加入する任意保険A社が対応して支払等を行っているが、事故から半年ほど経過した時点で担当者が「これ以上の通院の必要はないでしょう。今後は通院を続けても治療費を支払いませんよ。」などと言うようになり、やむなく通院継続を断念したなどの事情も生じ、XはAに不信感を抱いていた。

また、X車(平成18年式の国産大衆車)は大きく破損し修理代の見積は150万円にも達しており、やむなく事故直後に廃車を決断せざるを得なかった。

ところで、X自身は青信号の状態で交差点に進入したとの認識であるが、Yは「自分が右折を開始した時点で、すでに赤信号になっていた(ので、X側信号も赤のはずである)」と主張し、Xにも相応の過失があるとして、Yの損害を賠償するようXに要求するようになった。

Yは事故による怪我はなく、Y車(平成2年式)は左端周辺に破損ができた程度の被害に止まっているが、

この車両は高級車であり、被害部分の板金塗装だけでは、他の部分と色合いが違ってしまう。だから、破損部分の修理とは別に、100万円以上をかけて車体全部の塗装を行う必要がある」とか

この車は市場で手に入らないレアもので、愛好者には2000万円で売れるものだ。事故歴が付くと売値が安くなるので、その損害(評価損)として500万円を支払え」とか

これは自分が10年以上乗りこなしている愛車で、これまで一切の破損等がなかったのに、この事故で傷物になったことで精神的に強いショックを受けて眠れない日々を過ごした。相応の慰謝料を払って欲しい」と主張し、Xの勤務先等に押しかけんばかりの気勢を示している。

以上の状況下でXから相談、依頼を受けた弁護士としては、Xの損害の賠償を請求すると共にYからXに対する賠償請求に対処するため、どのようにXに説明し代理人として行動すべきか。

平成28年の取扱実績②交通事故等(賠償)、生活上の問題(消費者・契約)

前回に引き続き、平成28年の業務実績(従事ないし解決した紛争の概要)を守秘義務の範囲内で簡単にまとめました(全3回)。依頼先の弁護士を選定する際に参考にしていただければ幸いです。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も交通事故の被害者側での受任事件が多数あり、そのほとんどの方が、ご自身が加入する任意保険の弁護士費用特約により費用負担なく利用されています。

争点としては、過失割合(事故態様を巡る事実関係)が主な争点となる事案、物損の金額が争われる事案、むち打ち症(頚椎捻挫など)に基づく人身被害の賠償額の算定が中心となる事案が多く、過去には死亡事故や重度の後遺障害が生じて多様かつ多額の損害の算定が争われる事案など、幅広い類型を取り扱っています。

事故直後など加害者側の示談案提示前の時期から受任し後遺障害の認定申請なども含めた支援を行う例も増えており、実務では非常に多い「レントゲン等による所見が確認されない神経障害に関する後遺障害(14級9号)の成否」などについて、幾つかの例を通じ知見を深めることができた1年だったと思います。

また、本年は学校で生じた生徒間の事故に伴う賠償請求訴訟(後遺障害の評価が主な争点となったもの)、若年者間のスポーツ事故に関する賠償責任や関係者間の求償(加害者側と施設管理者の責任割合など)につき検討を要した事案など、加害者(損保)側の立場での検討を含め交通事故以外の人身被害に基づく賠償事件に従事する機会もありました。

他にも、福島第一原発の事故に基づく東京電力に対する賠償請求(県内企業が受けた被害の賠償を求めるもの)を手掛けており、特殊な事情から長期化したものの、先般、原子力紛争解決センター(ADRの手続)で相当な解決案が示されて無事に終了できました。

現在のところ弁護士費用特約は保険料も低廉でご自身が被害を受けたときに弁護士への依頼の円滑さを確保する点で絶大な力を発揮しますので、必ず、この特約が付された任意保険に加入いただくよう、お願いいたします。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

個人間の貸金に関する紛争(授受の当事者双方が死去して貸主相続人が借主相続人に返済を求めたものの、相続人は双方が貸金に関与しておらず、領収書などの直接証拠が乏しく立証に課題のあった事件)、不動産の登記(古い登記の抹消など)に関する訴訟、労働審判(労働者側)など、多くの事件を手がけています。

不動産の賃貸借の紛争では、契約終了に伴う貸主からの借主への目的物返還や賃料などの請求を貸主代理人として扱った案件が幾つかありますが、中には、「貸主の相続人が借主に明渡等を求めたところ、借主が、被相続人から目的物を(廉価で)譲り受けたと主張し、被相続人と借主との間で売買契約が締結されたかどうかが争点となった例」もありました。

「被相続人(ご両親など)と相手方との間で何らかの問題が潜在し、相続の際にそれが噴出して相続人が法的対応を余儀なくされ、被相続人の真意や生前の協議内容などを巡る事実の立証などが問題となる事案」は、昔から非常に多くあります。ご高齢のご両親などが多くの権利関係を有するのでしたら、ご親族内部に相続紛争などの問題がなくとも、対外的に問題が生じる可能性があることも踏まえて、ご両親から事情を確認していただくなど適切な対応・ご準備を考えていただければと思います。

また、多数の方々にご来所いただき、各種の消費者被害や近隣トラブル、労働事件など生活上の様々なトラブルに関するご相談に応じており、大半の方が震災無料相談制度を通じて費用負担なくご相談いただいています。

(以下、次号)

交通事故の裁判で被害者が加害者に謝罪の認識を尋ねるのは異議の対象になるのか?

交通事故に基づく損害賠償請求の裁判に関する当事者双方の尋問の際のことについて、狭義の法律論とは違ったところで、少し考えさせられたことがありましたので、そのことについて書きたいと思います。

その件は、交差点内の直進車(当方=原告)と右折車(先方=被告)の事故で、先方には人身被害がなく当方は神経症状を中心に大怪我を負ったため、当方が訴訟提起したという事案です。

この種の事故態様の過失割合は「2:8」が原則(基本割合)ですが、特殊な事情から当方は過失ゼロ(0:10)だと主張していました。

そして、私の主張立証の賜物かどうかはさておき、裁判官からも幸いに同様の和解勧告を受けていたのですが、先方(被告代理人ないし被告側損保)が基本割合でないとイヤだと拒否したため、判決のため尋問を行うこととなったものです。

で、先に原告本人の尋問を行い、休憩を挟んで被告本人の尋問を行ったのですが、主尋問や尋問までの休憩時間などの際、被告から原告に対しお詫びの言葉(挨拶)をするやりとりが全くなかった(休憩中も被告は自身の代理人と談笑し続けていた)ので、それでいいのだろうか、何か被害者の気持ちが置き去りにされていないだろうかという気持ちが涌き上がり、最後に、「改めて原告に詫びる考えはないのですか」と質問しました。

原告から「被告と会ったのは事故の10日後の双方立会の実況見分の場のみで、その後に接触はない(謝罪等は受けていない)」と聞いたこと、被告自身の主尋問の様子でも殊更に原告に敵意を持っているわけではなく自身の不注意のみを淡々と述べているに止まっていた(そのため過失相殺の主張も加害者本人でなく損保側の方針に過ぎないと感じられた)ことも、そうした質問をすべきではと感じた理由の一つでした。

すると、被告代理人が、間髪入れずに「意見を求める質問だからダメだ」と猛然と異議を述べてきました(尋問のルールを知らない方は民事訴訟規則115条を参照)。

私が「現在の謝罪姿勢の有無も慰謝料の斟酌事由にはなるでしょう」と実務家としては今イチな反論を述べると「そんなことはない」などと強烈に抵抗し、こちらも納得いかないので代理人同士はギャーギャー言い合う非常に険悪な雰囲気になったのですが、裁判官が「言いたくなければ言わなくてもいい」と答えたところ、ごく一般的な(悪く言えば通り一遍の)お詫びの言葉があり、私もそれ以上の質問はせず、そこで終了となりました。

結局、結審後に当方が退席する際も被告が当方を呼び止めて挨拶するということはなく、1年半以上を経て再会した加害者が被害者に対しお詫びの言葉を向けるというやりとりは、その一言だけとなりました。

被告代理人が猛然と異議を述べてきた理由は、被告側が過失相殺を主張しているため、「本人が詫びる=当方の無過失を認めたことになる」というイメージがあったのかもしれません(それとも、単純に異議が好きだとか、私個人に含むところがあったのか等、他の理由の有無は分かりません)。

ただ、被告がその場で原告に対し通り一遍のお詫びの言葉を述べたからといって、そのことで過失の有無や程度が定まるわけではなく、争点との関係では、自分で言うのもなんですが、慰謝料額も含めて判決の結果には影響しない、ほとんど意味の無い質問だと思います(だからこそ、相手方代理人はこの種の尋問は放置するのが通例でしょう)。

それでも質問せずにはいられないと思ったのは、1年半以上を経て久しぶりに会った加害者が、長期の入通院などの相応に深刻な損害を与えた被害者に対し、一言のお詫びもする場のないまま法廷(参集の機会)が終わって良いのか、それは、裁判云々以前に人として間違っているのではないか?という気持ちが昂ぶったからでした。

もちろん、私も殊更に被告を糾弾したかったわけではなく、たとえ通り一遍のものでもお詫びの言葉があれば、それだけで被害者としては救われた気持ちになるのではないか(そうした質問を被告や原告の代理人が行って謝罪の場を設けるのは、地味ながらも一種の修復的司法の営みというべきではないのか)という考えに基づくものです。

とりわけ、少なくとも刑事法廷であれば、(通常は被害者が在廷していませんが)加害者=被告人が被害者への謝罪を述べるでしょうから、なおのこと被害者が在廷する場で加害者が一切のお詫びを述べないというのは異様としか思えません(私が加害者代理人なら主尋問の最後に謝罪の認識を簡潔に求める質問をすると思います)。

だからこそ、「謝る気持ちはないのですか(その気持ちがあれば、簡単でも構わないので一言述べて欲しい)」という質問に被告代理人が最初から強硬に拒否的態度を示してきたことに、私としては、加害者代理人が加害者本人に謝るなと言いたいのか?それって人として間違っていないか?と、思わざるを得ませんでした。

もちろん、そうした事柄で糾弾ありきの執拗な質問になった場合は異議の対象になることは当然だと思いますが、私の質問がそのようなものでなかったことは前述のとおりです。

被告代理人としては、ご自身の立場・職責を全うしたということになるのかもしれませんが、東京の修業時代に加害者代理人(某共済の顧問事務所)として多くの事案に携わっていた際、尊敬する先輩に「被害者救済と適正な損害算定のあるべき姿を踏まえて、よりよい負け方をするのが加害者代理人の仕事の仕方だ」と教えられて育った身としては、本件のような「当事者同士は敵対的・感情的な姿勢は示しておらず損保の立場などからこじれたタイプの事件」で被告代理人から上記のような対応があったことに、いささか残念な思いを禁じ得ませんでした。

ともあれ、華々しい法廷技術は優れた弁護士さんに及ばないかもしれませんが、今後も、代理人としての職責をわきまえつつ、そうした地味なところで当事者や事件のあるべき解決の姿について気遣いのできる実務家でありたいと思っています。

ちなみに、その裁判(1審)では尋問後も被告側が和解案を拒否して判決となり、和解案と同じく当方の過失をゼロとし認容額も和解勧告より若干の上乗せになっていました。

田舎の町弁のリンカーン物語

弁護士時代のリンカーンの有名な逸話で、「敵対証人が、その日は月夜の晩で犯人の顔がよく見えたと主張したのに対し、その日は実際は曇りで月が見えなかったと述べて、その証言は信用できないと弾劾した」という物語は、多くの方がご存知だと思います。

この種の「気象ネタによる絵に描いたような弾劾」は、滅多にあるものではありませんが、先日、それに類する経験をする機会に恵まれました。

ある交通事故の事件で、過失割合(の評価の前提となる事故態様)に関し、当事者間に大きな争いがあり、当方が当日の路面状況などを主張したところ、相手方から、それとは全く異なる事実の主張がありました。

少し具体的に述べると、相手方は「前日からの悪天候で路面に積雪が多く、凍結もあり、雪のせいで道幅が非常に狭かった」と主張してきました。

これに対し、当方(依頼主)は「前夜を含め当日に降雪はなく、路面に積雪はなく、かなり前の雪に基づく除雪の山で道路脇に積雪があるものの、道幅を狭めるほどではなかった」と主張していました。

その事故では、実況見分調書が作成されておらず当日の現場写真もないなど、事故当日の路面状況を正しく記載した記録がありませんでした。

そのため、どうしようかと考えあぐねていたのですが、気象庁のHPを調べたところ、自治体ごとの気象情報が詳細に乗っており、それを見る限りでは、当方依頼主の言い分に即した気象経過であることが判明しました。

そこで、それらの資料をDLして提出したところ、裁判官から、路面状況については当方の主張どおりとする旨の心証が示されました。

過失割合については、事故態様を巡る他の論点や全体の評価などから、必ずしも当方の勝利というわけではなかったものの、言い分を尽くした上で相応の和解案が示されたため、依頼主もやむなしということで、和解成立で終了しました。

新人時代、弁護士会で配布された模擬裁判の資料にも、この種の「気象ネタによる反対尋問」のシナリオが付されていましたが、そのシナリオでは、当日の気象状態については弁護士法23条照会で気象庁に確認したという設定になっていました。それに比べると、インターネットでこの種の情報が無償・容易に入手できるようになったという点で、時代の流れを感じさせるものがあります。

ともあれ、気象ネタに限らず、事実関係を巡って当事者双方の主張事実が相反した場合には、各人の主張を基礎付ける証拠の有無や内容を丹念に検討、調査する作業が必要であることは間違いありません。

鮮やかに弾劾できることは滅多にありませんが、確たる根拠のない相手方の主張に一定の疑問符を付す程度なら、知恵と努力次第で一定の成果を挙げることは珍しくありませんので、今後も研鑽に努めていきたいと思います。