北奥法律事務所

岩手・盛岡の弁護士 北奥法律事務所 債務整理、離婚、相続、交通事故、企業法務、各種法律相談など。

〒020-0021 岩手県盛岡市中央通3-17-7 北星ビル3F

TEL.019-621-1771

名誉毀損

ツイッターのなりすまし被害と救済手続に関する現在の難点と改善策

先日、ツイッターのなりすまし被害(AがBの名前などを勝手に用いて自分をBと称して他者の誹謗中傷をするなどの方法でBの名誉を毀損するもの)の救済方法について勉強する機会がありました。

結論として、現在の法制度では、地方の一般的な弁護士がこれを手掛ける上では、初動段階で重大な問題(壁)があり、現状では東京などの一部の弁護士の方に依頼するか、その「壁」を警察に対処していただくか、どちらかを要するのではないか(但し、その「壁」を乗り越えることができれば、それに引き続く問題は、私にも問題なく対処可能)と感じています。

具体的には「ツイッター社に対し、なりすまし投稿者のIPアドレスを開示させる」という問題です。

そもそも、ツイッターに限らず「2ちゃんねる」や他の匿名掲示板であれ、インターネット上に名誉毀損やプライバシー侵害等にあたる投稿がなされた場合、被害者が投稿者を突き止めて賠償請求等を希望する場合、①第1段階として、当該投稿が表示されているサイトの運営者に、その投稿に関するIPアドレス等(アクセスログ)の開示を求める、②IPアドレス等の表示をもとに、その投稿が送られてきたプロバイダ会社(投稿者のアクセスプロバイダ)を確認し(基本的に確認可能とされています)、そのプロバイダに対し、投稿者に関する契約者情報(契約者≒投稿者の氏名、住所等)の開示を求めるという2段階の手順を踏むことが必要となっています。

そして、②については、国内の企業(今ならソネット、ぷらら、ニフティなど)が行っているが通例でしょうから、訴訟手続(発信者情報開示請求)は決して困難なものではないのですが(多分)、①については海外の企業が開設者(運営窓口)になっているサイトがあり、この場合には、基本的にその国を巻き込んだ手続が必要になり、英語絡みの仕事をしていない大半の「普通の町弁」には、対処困難になっています。

例えば、ツイッターの場合、ネットや文献によれば、日本法人に対処能力がなく米国ツイッター社を相手に①の手続をする必要があるとされ、原則として、同社の本社がある米国の特定の州に提訴すべきところ、東京地裁でも提訴可能(逆に、日本で行うなら東京地裁でなければダメ)とされています(根拠は民事訴訟法3条の3第5号、同4条4項、5項、民事訴訟規則6条などのようです)。

この点は、中澤佑一弁護士の著作「インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル」71頁以下に詳細な説明があります。

さらに、裁判の基本ルールとして、相手方の登記事項証明書を取得する必要があり、米国に申請する必要があるため、その種の作業を行うノウハウ(語学力)のある方を通じないと入手は困難と思われます。この点については「ツイッター 登記事項証明」などと入力して検索して発見した、次のサイトが参考になるかもしれません。

また、開示を求める仮処分申立書も米国の住所等を表示しなければならないのでしょうから、そうした点や手続内で生じる様々な論点に英語(時には当該国の法律)で対処することも含め、残念ながら現状では「英語で仕事ができる弁護士」でないと(少なくとも後方支援がないと)対処が容易でない面が強いと思われます。

一般的にIPアドレスの保存期間が3ヶ月とされていることなども考えると、「IPアドレスの開示の仮処分」の申立を希望される方は、すでに実績を挙げている(と宣伝している)きちんとした東京の法律事務所か、上記の問題を十分にクリアできるだけの体制を備えた弁護士の方に依頼するほかないと言わざるを得ないように思われます。

ところで、こうした「名誉毀損投稿の受け皿サイトに外国企業が介在し権利行使の壁が大きくなるという問題」は、「2ちゃんねる」でも生じています。

私は、10年近く前に「2ちゃんねる」の誹謗中傷投稿について相談を受けたことがあるのですが、当時、「2ちゃんねる」の創設者たる西村氏が、事業をシンガポール国籍の企業に売却したとなどという話があったので、「2ちゃんねる」への投稿者のIPアドレスを開示させる手続(仮処分)も、同様の壁をクリアしなければならないので、地方の一般的な町弁では対処困難とお伝えし、実績を宣伝している東京の事務所をご紹介したことがあります。

ただ、この種の訴訟で支払が命じられる金額は必ずしも多くはありませんし、回収の問題もありますので、上記の手続を賄うに足りるだけの賠償金を得ることができるかは、慎重な判断が必要と思われますし、そのせいか、この種の問題(2ちゃんねるなどを含め)で訴訟等の手続がなされることは滅多にないように感じます。

それだけに、「違法投稿者の発信者情報の開示」については、名誉毀損等の刑事事件であるとの前提で、被害者の地元警察など(できれば弁護士一般も)が管理先企業に照会し即日に開示するような実務慣行ないし仕組みを直ちに作っていただければと強く思います。

少なくとも、いわゆるオレオレ詐欺やヤミ金融などで用いられた銀行口座の凍結については、被害者が警察等を通じて口座開設先の金融機関に申告すれば直ちに凍結される仕組みが出来上がっていましたので(私は利用する機会がありませんでしたが、10年ほど前から弁護士も所定書式を提出すれば凍結される仕組みになったはずです)、関係機関がその気になれば、法改正などを要せずとも十分に可能と思われます。

そもそも、一般人を対象とするなりすまし投稿のようなものは、以前に社会を震撼させた遠隔操作事件のような特異な例を別とすれば、被害者の身近な関係にある人(学校なら同級生など在学生・学校関係者、会社なら同僚、社会人なら「ママ友」のような知人など)が行うことが多いと言ってよいはずで、それだけに、事件の本質は近隣関係者による理不尽な加害行為であり、地元の警察など司法機関が解決のため活用されるべきですし、その前提で、当たり前の仕事を行う際に支障(壁)になる実務上の問題があれば、それを除去する工夫が必要だと思います。

そうした意味で、「IPアドレスの開示のため外国企業を訴えなければならず、一般的な実務家では対処困難な壁がある」というのは明らかに不適切な状態になっているというべきで、至急の改善を要すると思います。

被害者の立場からすれば、上記のように、警察等に被害申告をすれば直ちにIPアドレスを開示する制度が一番望ましいですが、それが困難ということであれば、例えば、社会内で一定以上のユーザーが生じているなど違法投稿が問題となる(なりうる)サイトについては、消費者庁の指定制度を作るなどして指定されたサイトを運営する外国企業は違法投稿の被害申告があればIPアドレスを即日に特定の行政部門に開示するものとし(これに応じなければ営業停止=サイト閉鎖などの処分の対象とする)、被害者は開示情報を保管する行政庁に被害状況などを証明して開示申立をし、行政がその適正を迅速に確認して開示の当否を判断するというような「被害者がIPアドレスの開示に関し企業を相手に訴訟手続等をしなくともよい(他の機関で代替可能とする)仕組み」を作るべきだと思います。

せっかく弁護士が激増しているので、日弁連をはじめ、そうした立法運動を盛んに行っていただける方がおられればと思われ、なおのこと残念に感じてしまいます。

名誉毀損のネット投稿に関する責任追及など

インターネット上で名誉毀損となる投稿がなされた場合、一般的には、サイトの運営者に対し投稿者のIPアドレス等の開示を求め、その開示を受けた後、IPアドレス等から把握できる「投稿者が契約しているプロバイダ(経由プロバイダ)」に対し、投稿者の住所氏名等の開示を求めるという方法を取るべきものとされています。

これは、いわゆるプロバイダ責任制限法に基づく手続なのですが、実際には、サイトの運営者が任意にIPアドレス等の開示請求に応じないことも多く、その場合には、裁判所に対し、その運営者を相手方として、IPアドレス等の開示を求める申立を行い、その命令をもとに強制的に開示させる以外には、手段がないと思われます。

ただ、その場合には、サイトの運営主体をどのように把握するか、その住所等(申立書の送達先)をどのように調査するか、管轄等はどうなるか、仮処分命令がなされたとして、運営者が現実に従うのか(従わないとして、強制的に開示させるには、どのような方法を講じることができるのか)といったハードルがあり、この制度も、決して万能ではありません。

そして、私の知る限り、この点が顕著な壁となって生じるのが、インターネット掲示板「2ちゃんねる」ではないかと思います。

5年以上前のことですが、2ちゃんねる上に名誉毀損の投稿をされたという方から、投稿者を特定して責任を問いたいという趣旨のご相談を受けたことがあります。それまで、この種の問題を扱ったことはありませんでしたが、当時、2ちゃんねるの投稿被害が社会的にも多いに問題となっており、盛岡に、その問題を専門的に扱う方がいるという話も聞いたことがありませんでしたので、お役に立てればとの思いで調査等をお引き受けして色々と調べるなどしたのですが、結局、上記の壁(ちょうど、2ちゃんねるの運営が創業者の西村氏からシンガポール国籍の会社に譲渡されたなどという報道が飛び交っている時期で、その点でも幾つかのハードルがありました)にぶち当たり、当方では対応困難として、お断りせざるをえませんでした。

その後、平成25年に2ちゃんねるなど各種の掲示板での名誉毀損の投稿に対する削除及び発信者情報開示請求の手続について詳細に記載した書籍が出版されており(中澤佑一「インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル」)、同書には、平成25年当時における2ちゃんねるへの発信者情報の取得のための仮処分の申立等の方法(シンガポール国籍の会社を相手方とする申立の方法や必要書類の取得方法など。なお、法務局に納付を要する供託金は30万円とされています)及び仮処分命令に基づく2ちゃんねるのサイトへの発信者情報の開示請求の手続などについて、詳細に説明がなされています。

ただ、さきほど、2ちゃんねるのサイトを確認したところ、現在、同サイトの管理会社として、上記会社とは別の会社(ネット情報では、フィリピン国籍と表示しているものもあります)が表示されており、現在も、2ちゃんねる絡みの投稿問題で発信者情報の開示請求を行う場合には、当事者の特定や所在などで厄介な論点が存するため、上記の問題を取り扱って成果をあげた、限られた弁護士でないと対応が困難ではないかと思われます。

私に関しては、その後に2ちゃんねるの投稿問題に関しご相談を受ける機会はなく、社会的にも、2ちゃんねるに関しては、当時に比べれば沈静化した面はあるのではないかと思っていますが、違法行為(名誉毀損投稿)の温床になっている社会的存在(2ちゃんねる)が、当事者の特定や所在などという、法的責任を問うための事実調査のレベルで大きな困難を伴い、結果として権利保護(被害者から投稿者=加害者への責任追及)が困難になるというのは望ましくないことは明白で、上記の壁をクリアできるような、何らかの立法的解決を要するのではないかと思います。

例えば、名誉毀損投稿が頻発しているようなサイトについては、消費者庁が指定して、サイトの運営者は被害者から削除や発信者情報開示の請求がなされた場合には直ちにこれに応じることができるシステムを構築しなければならない(その認証等を受けなければ、サイトの閉鎖命令に応じなければならない)とするような特例法を考えてもよいのではないかと思っています。

弁護士の作成書面と礼節

弁護士が訴訟等で作成する書面は、争点を巡る当事者間の対立の度合いなどに応じて、時に、相手方への厳しい批判を伴うことがあります。ただ、度を過ぎると、名誉毀損などの問題を生じることもあり、賠償請求に関する裁判例も幾つか存在します。

現在、弁護士15年目にして、はじめて「弁護士を被告とする訴訟」をやっています。といっても、名誉毀損絡みではありませんし、原告が私でないことはもちろん、被告も岩手の先生ではなく、また、特異な経過を辿った事件で、典型的な「弁護過誤」などとは異なるタイプの事件です。

ただ、被告たる弁護士の方の行動については、立場論だけではない、弁護士の仕事のあるべき姿という意味で、首を傾げざるを得ない面があり、対応に苦慮しています。

先日、被告側からある申立があり、すでに退けられているのですが、その中でも、「(私が、遠方にある被告の事務所に来ないから)無責任だ、軽率だ、怠慢だ、迷惑だ、不正義だ」などと不満の言葉ばかりを並べ立てた主張がありました(それを前提に、裁判所に特定の措置を講じて欲しいとの申立になっています)。

しかし、その事案の内容に照らしてもおよそ無理のある主張で、ただでさえ問題の多い事案なのにと、ため息ばかり積み重ねざるを得ませんでした。

もちろん、私も罵詈雑言を重ねたのでは同レベルに堕ちてしまいますので、相手方の主張の前提(当方に特殊な義務があるなどという主張)自体が根本的に誤っていると反論するに止めています。

係属中の事件であり、特殊な事情が多いこともありますので、これ以上、具体的なことを記載するのは差し控えますが、どのような事情があるにせよ、弁護士の作成する書面は礼節を弁えないと、一部に真っ当な主張が含まれていたとしても、主張全体が信用されないことになりやすいのではないかと思います。他山の石ということで、気を付けていきたいものです。

聴覚障害の偽装やその公表などが問題となった例

先日から、「聴覚障害を乗り越えた奇跡の作曲家」として脚光を浴びた人物に関し、自分が作曲したのではないことに加え、聴覚障害すらも偽装ではないかというニュースが盛んに取り上げられています。

私自身は、この方は今回のニュースで初めて知ったのですが、時代劇と歴史マンガで育った身には、どうしても「かわちのかみ」と言いたくなると思ってネットで検索したところ、同じことを考える人が沢山いるのだと知って、安心したところです。

私の上の世代の方なら、キセル乗車をする人のことを「薩摩守」と呼ぶ俗語があるのをご存知だと思いますが、今回の件で、ゴーストライターに代作をさせて自分が名声を得ようとしたり、障害を装ったりする(本件では争いがあるようですが)人のことを、世間が「河内守(かわちのかみ)」と称する日も来るのかもしれません(「やがては忘れて貰う権利」の観点からは好ましくありませんが)。

ところで、私は「判例地方自治」という判例雑誌を購読しているのですが、ちょうど最新号で、聴覚障害を偽装した人に関して問題となった裁判例が取り上げられていました。

具体的には、北海道滝上町の町長らが「元町議Xが、聴覚障害を偽装(虚偽診断書)して障害年金を詐取した可能性がある」と公表したため、Xが町に対し、個人情報漏洩や名誉毀損等を理由に賠償請求したものの、公表事実の公益性や真実性等を理由に請求が棄却された例」です(旭川地判H24.6.12)。

ゴーストライター云々はともかく、障害を詐称し年金を詐取したという話は、数年に1回程度は全国ニュース(巨額詐欺の逮捕事件)に出てくると思われ、それなりに暗数が多い話ではないかと思われます。

私自身は、幼少時から左耳の聴力がほぼ皆無で、右耳だけで会話をしており、日常生活にさほどの支障はないものの、宴会などで左側に座った方との会話や会議等で左方向の方の発言を聞き取る際には、それなりに苦労したりご面倒をお掛けしたりしています。

弁護士としても、障害を負った方のために何らかの支援ができればと思いつつ、さしたることもできない状態が続いていますが、それはさておき、障害を偽装して利益を得るなどという人が現れると、障害を負っている人が一番迷惑をしますので、「河内守」氏がそのような事案なのであれば、再発防止のための工夫を考えていただきたいと思っています。

ところで、引用した裁判例は、町議会議員が町長等から名誉毀損等をされたとして賠償を求める訴訟ですが、東京のイソ弁時代にこれと同じような事件に接したことがあります。

具体的には、関東のある自治体で「A議員が町役場で問題行動を起こした」と役場(町長)側が公表したため、A氏が町を相手に訴訟を起こしたという事件で、私の勤務先事務所がA氏の代理人を務めており、私は兄弁の付き人程度の関与に止まりましたが、背景に談合疑惑や党派対立などもあって、なかなか噛みごたえのある事件でした。

よくよく考えると、私が名誉毀損に基づく賠償請求訴訟に従事したのはあのときだけで、岩手の報道や盛岡地裁の開廷表などを見ても、岩手で名誉毀損訴訟が行われているという話もほとんど聞いたことがありません(ちょっとした相談なら受けたことがありますが、有責事案でも裁判所は滅多に高額賠償を認めないため、費用対効果の壁が大きいという面があります)。

最近は減りましたが、4、5年前には名誉毀損関係の裁判例は、判例雑誌に非常に多く載っており、医療過誤や建築、知財などと並んで、多く掲載されている類型でした。

これまでは、マスメディア等が集中する東京に限定される傾向があったでしょうが、ネット時代等の影響で、facebookなどを含め、地方在住の方が名誉毀損等に関する紛争当事者になりやすくなったでしょうから、出番に備えて一定の研鑽は忘れないようにしておきたいと思っています。