北奥法律事務所

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交通事故

弁護士による暴利行為の被害に遭わないために

最近の判例雑誌に、「交通事故の賠償手続などを受任した弁護士が依頼者から受領した金額が、受任業務の内容等に比して高額に過ぎる(暴利行為として公序良俗違反である)と認められ、一部の返還請求が認められた例」が載っていました(東京地判H25.9.11判時2219-73。要旨は以下のとおり)。

Xらは、子Aが交通事故で死亡し、XらはY弁護士に加害者への賠償請求等を依頼し、①相談料として5万円、②刑事告訴として100万円、③損賠請求の着手金として100万円、④自賠責請求報酬として255万円、以上の合計460万円を支払った。

その後、Yが提訴に難色を示したため、XらはYを解任し、上記の支払が暴利行為だとしてYに返還を求め、併せて慰謝料を請求した。Yは、Aの死亡が自殺(ゆえ、加害者への賠償請求が奏功しない)との疑いがあることなどが提訴に難色を示したもので、事故態様に争いがあることなどから既払金が不当に高額とは言えないとして請求を争った。

以上に対し、1審は④の自賠責報酬につき、100万円を超える部分を暴利行為として残金155万円の返還を認め、他の部分については棄却した。Xらの控訴に対し、2審は、③についてもYが訴訟提起に至っていないことから、50万円を超える部分を暴利とし、上記④を含め205万円の返還を命じた。

この事件はさておき、近時、噂話の類として、「東京などには、プロ(弁護士)の目から見れば、さしたる労力を投入しなくとも一定の成果が確実視されるなど、ごく簡単な事案なのに、あたかも成果獲得が非常に困難であり、それを、当該弁護士に依頼すれば実現させてあげるなどと吹聴して高額な報酬を請求する弁護士がおり、特に、刑事事件や交通事故、債務整理などに、その傾向が顕著である。そして、最近では、そうした弁護士が、広告宣伝などを通じて岩手など地方にも触手を伸ばしている」などと幾つかの方面から聞くことがあります。

具体的な紛争事案や問題事案を聞いたわけではなく、最近の業界の競争激化に伴う流言飛語の類もあり得るかもしれませんが、ここ数年の弁護士の激増に伴い、弁護士と依頼者との紛争が増えていることは間違いないと思います。

紹介した事件では、Yの主張によれば、Aの死亡に自殺の疑いがかけられ、それに起因して?Xらは警察等の対応に強い不満を持ち、Yに賠償請求だけでなく刑事告訴の委任もしているという事情があり、単純に「プロ(弁護士)の目から見れば、さほど手間のかからない簡単な案件」というわけではなく、むしろ、Y弁護士と依頼者Xとの間の意思疎通や争点への考え方の相違などに紛争の芽があったようです。

判決を見る限り、有効とされた部分の金額も決して少額とは言えませんが、裁判所は、そうした以上も考慮し、上記の判断に止めたものと思われます。

ただ、「ぼったくり事案」であれ「方針等を巡るトラブル事案」であれ、結局は、依頼者と弁護士との間に適切な意思疎通や信頼関係の構築がなされていないことが、紛争の根底にあることは間違いありません。

常にそこまで必要かはともかく、とりわけ、一般的には難易度が高いと見られる訴訟等を依頼するケースや、高額な金銭の授受が行われる(或いは想定される)ケースなどでは、相談・依頼先の弁護士に対し、適切に事実関係を説明し資料を提供することを前提に、見通しに関する丁寧な説明を受ける(求める)ことはもちろん、見通しや信頼関係の構築、費用の相当性などに多少なりとも不安を感じる点があれば、複数の弁護士に相談するなどして、相性的なことも含め、「自分が真に頼みたいと思える適切な弁護士を選ぶ」という姿勢を大切にしていただきたいと思います。

少なくとも、司法改革による弁護士の激増により、多くの方にとって、弁護士の選択権が増えた(これは、数年前までは、とりわけ地方では、ほとんど考えられなかったと言っても過言ではありません)ことは確かであり、そうした「チャンス」を上手に活かしていただきたいと思います。

 

後遺障害の認定申請時での弁護士への相談の必要性

今年は、交通事故の被害者の方から賠償請求を受任する例が多く、後遺障害が生じ、後遺症に基づく高額な慰謝料・逸失利益を請求している事案も幾つかあります。

後遺障害については、交通事故の場合、自賠責保険による認定制度があり、加害者が任意保険に加入していれば、その保険会社を通じて必要書類を提出し、自賠責調査事務所の審査・認定を受ける方式(事前認定)が一般的です。もちろん、加害者が任意保険に未加入なら、被害者請求という形で、加害者の自賠責保険に請求し、審査・認定を受けることになります。

いずれにせよ、認定された後遺障害の内容、等級に異存がなければ、その認定をもとに、自賠責保険金の支払を受けたり、これで賄われない損害額について、加害者に賠償請求し、争いがあれば裁判所の判断を仰ぐことになります。

これに対し、認定内容に不服がある場合には、医師に相談するなどした上で、自賠責保険の手続の中で異議申立をし、自賠責の判断の修正を求めたり、それが適わない場合には、裁判所に自賠責の判断とは異なる等級等の判断を求めていくことになります。

職業など個別的な事情によっては、自賠責の等級認定を上回る後遺障害の等級評価を裁判所から得られる場合もあり、1、2年前に取り扱った事件で、そのような評価を得て、高額な賠償を勝ち取ったことがあります。

ところで、ご相談を受けた案件の中には、複数の後遺障害が生じている方で、一部の後遺障害に関する自賠責保険に対する認定申請が抜けているという例がありました。

主たる後遺障害については相応の調査、認定が行われており、自賠責保険上の等級認定には影響しない下位等級の後遺障害の認定が落ちているという例がほとんどですが、それでも、裁判上、後遺症慰謝料や逸失利益の判断に影響がないわけではなく、やむなく、異議申立をして認定を求める作業をしています。

そのような意味では、後遺障害の認定が関係する方にとっては、加害者側の損保から示談案の提示を受けて初めて相談されるのではなく、事前認定の資料を提出する段階で、ご相談された方が賢明かもしれません。

例えば、どのような後遺障害があるか、ご認識を簡単に書面にメモ書きしていただき、すでに準備している後遺障害診断書などもご用意の上、それらと後遺障害等級表や認定基準などを照らし合わせ、個々の障害について予測される等級を確認し、申請の漏れがないか、より適切な資料を提出すべきでないかなどを検討するような作業をしてもよいのではと思います。

すべての事案で、そこまでの作業が必要ではないとは思いますが、弁護士費用保険などで相談料などは賄えるはずですので、本格的な準備の要否などを確認する趣旨の簡易な相談だけでも、早めに受けていただければと思っています。

交通事故などの慰謝料に関する基本知識

交通事故実務に携わっている者なら、皆、知っていることですが、被害者が、加害者の加入する損保会社から提示される慰謝料の金額は、裁判所が認定する金額よりも、相当に下回っているのが通例です。

そのため、昔から、死亡や重度後遺障害の案件では、弁護士に頼んだ方が、慰謝料だけでも損保の提示額よりも、遥かに高額な賠償金が得られると言われてきました。

裏を返せば、業界内では、「慰謝料を裁判基準に引き上げることだけしかできないような弁護士にはなるな」と言われたりもしたものです。

このことは、業界外の方には今もあまり知られていないようで、少なくとも、私がお会いした被害者の方々に、裁判基準のこと(損保基準との違い)を知っていますかと尋ねても、ほとんどの方が、初めて聞いた話だと返答しています。

もちろん、物損のみの事案であれば、慰謝料は原則として認められませんし、怪我の程度が軽微な事案では、損保基準と裁判基準に大きな違いがなく、弁護士費用保険に加入していなければ、費用倒れのリスクに照らし、弁護士への依頼を断念せざるを得ないこともあると思います。

損保会社でも、裁判基準への対応はまちまちで、割とスムーズに応諾する会社もあれば、自社基準に一切妥協せず、裁判をするほかない会社もあり、事案によって同じ会社でも結果が分かれたりします。

そのような光景は、消費者金融への過払金請求に、近いものがあるようにも感じます。

そもそも、慰謝料に関する「損保基準と裁判基準」という、ダブルスタンダード自体が、グレーゾーン金利(約定の高金利)と利息制限法に基づく引直計算との関係に似ている面があります。

ところで、近時、過払金請求などの債務整理を派手に集客して、急拡大した若い弁護士さん達の事務所が、現在は交通事故の集客に力を入れている光景をよく目にします。

彼らが、どれだけ交通事故事件にノウハウを持っているかは存じませんが、交通事故も債務整理も、当事者や事件に丁寧に向き合えば、細々とした多くの作業、論点がありますので、それらを無視し裁判基準での慰謝料の増額だけで終わらせるような、雑な仕事ぶりにだけはならないで欲しいものです。

まあ、その点は自戒を込めてというべきでしょうが・・

私の場合、東京時代は主に加害者側で、岩手に移転後は、被害者8:加害者2ほどの比率で、多くの案件に携わり、様々な論点や交通事故特有の事務処理などに関する経験を積んできました。

現在も、最新の議論に遅れをとらないよう、判例雑誌のフォローなどは欠かさないようにしているつもりです。

今後も、選ばれる弁護士となるよう研鑽を深めて参りたいと思いますが、利用者の方々も、事案の内容等に応じた適切な弁護士の選択等ができるよう、賢い消費者としての目線を持っていただければと思います。

 

岩手県における交通事故の多発地帯

他の弁護士の方のブログで知ったのですが、日本損害保険協会では、都道府県別に交通事故多発交差点マップというものを作成しているそうです。

これによれば、岩手県の場合、1位と3位が奥州市(水沢区と江刺区)、2位が一関市、4位と5位が盛岡市にある交差点となっています。 http://www.sonpo.or.jp/protection/kousaten/kousatenmap24/03/index.html

実際、これまで県内の様々な交通事故のご相談等を受けてきた身の感覚で申せば、盛岡圏に負けず劣らず、県南(特に旧伊達藩域)で生じた事故を担当させていただく機会が多かったような気もします。

反面、盛岡以北で起きた事故のご相談等を受けた記憶は、これらに比べてかなり少ないとの記憶です。

車社会がより進んでいることによるのか、他の因子も影響しているのか、単なる巡り合わせか、その点はよく分かりません。

ともあれ、弁護士費用保険をご利用いただければ、県南の方に関する事故でも、費用負担のほとんどない形で、当事務所に事件対応をご依頼いただくことが可能になっています。

当職は、被害者側・加害者側双方で多数の交通事故事件を取り扱った経験・実績がありますので、県央部の方々に限らず、他の地域の方々も、ぜひご利用いただければと思っています。

暴力団排除条項と交通事故の被害者保護

交通事故の任意保険について、暴力団排除条項により、契約者が暴力団関係者と判明した場合には直ちに契約を解除する旨を約款に盛り込むとのニュースが出ていました。
http://www.asahi.com/articles/SEB201311180062.html

そのこと自体を批判するつもりは微塵もありませんが、契約解除後に事故を起こしたり、そもそも契約できないと思って任意保険そのものに加入しない車両が増え、結果として被害者への適切な賠償が実現できない事態になるようでは、本末転倒というほかありません。

私自身は自動車については対人原則無制限の保険加入を車両運転の条件として義務化すべきだと昔から思っています。

このようなニュースを見ると、なおのこと、義務化とワンセットでなければ、最も守られるべき事故被害者が、一番、酷い目に遭うことになるのではと危惧されます。

すぐに例が思いつかないものの、この種の問題(被害賠償の担保を確保しないまま排除だけを先行することの不合理)は、他にも暴力団関係者の行為により被害が生じるケースで、ありうる事態なのかもしれません(仮に、不法投棄に保険制度があれば、同様の問題が生じるでしょう)。

念のため「任意保険 義務化」で検索したところ、内閣府サイトでこんな記事が出ているのを見つけましたが、毎度ながら?木で鼻をくくったようなお役人さん的なご回答になっています。

ま、世論誘導したいとの意欲もないのだとは思いますが・・。
http://www8.cao.go.jp/monitor/answer/h14/ans1409-001.html