北奥法律事務所

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下田

三島由紀夫が呼ぶ夏~南伊豆編その2~

南伊豆旅行編(2年前の夏)の2回目です。

前回あえて省きましたが、1日目の昼は、下田市内のどこで食べるか全く決めておらず、すでに1時半くらいになっていたこともあって、「コインパークに駐めて適当に決めれば良い」との家族の提案に従い、何も考えずに空いていた市街地の駐車場からペリーロードに向かって適当に歩き出しました。

すると、目の前の建物の2階にイタリア料理風のお店があり、「下田湾のペスカトーレ」などと地元料理風のメニューが書かれていたので、そそくさと、そのお店に入って注文し、まずまず美味しくいただきました。

私は食べるスピードが人より早いので、一人食べ終わったあと、家族が食べ終わるまでにお店の内装などを見回していたところ、カウンター近くに半裸の水着姿でショートヘアーで筋骨隆々とした姿を「これでもか」と見せようとする男性の写真が大きく写った書籍が展示されているのに気づきました。

この業界に身を置いていると、「半裸でショートヘアーで筋骨隆々の姿を自らアピールする男性」といえば、かの有名な岡口基一裁判官しか思い当たりませんので、

なぜ岡口さんがこんなところに?っていうか、写真集なんて出していたのか?

と驚いて手にとったところ、その男性は岡口裁判官ではなく、三島由紀夫でした。

私は、小説を読む習慣がほとんどなく、学生時代は少しは(罪と罰とか人間失格などの超著名本を少々)読みましたが、その程度で関心(執着)が終わってしまい、それ以外は、小説といえば、せいぜい司馬遼太郎(と新田次郎の孤高の人、井上靖の氷壁=登山系)くらいで、あとは全て新書本(論説文)しか読む習慣がなく、現在に至っています。

三島作品も業界人らしく?「宴のあと」は昔々読んだことがあり、率直に面白かったとの記憶はありますが、それ以外は読んでいません。本棚には、浪人時代に古本屋(多摩地区といえば伊藤書店)で購入した「仮面の告白」と「金閣寺」が今もありますが、他の多くの本と同様に眠ったままです。

もちろん、あまりにも有名な「三島事件」は知識としては知っていますし、日本文学史はもちろん思想史上も巨大な存在なのだろうという程度の認識はありましたが、私の出生前の出来事であり、その不可解さ(分かりにくさ)などもあって、敢えて関心を持たないようにしていたように思います。

ともあれ、そのように三島由紀夫について、さほどの事前知識も関心も持つことがなかった私ですが、下田まで来て三島由紀夫か、と不思議なものを感じて、その本を黙々と読んでいました。

その本(三島由紀夫の来た夏)は、三島由紀夫が晩年期の数年間、夏になると必ず家族と共に下田のホテルに長期滞留し伊豆の太陽と穏やかな暮らしを満喫して東京に戻っていく、という姿を描いたもので、三島がその味に感激してマドレーヌを買いにたびたび訪れていた洋菓子店の娘であり、当時は中学~高校生であった著者が、ささやかな三島との思い出を交えつつ、自身が「あの夏」と「自身では到底咀嚼できない三島の最期」を噛みしめながら、後年に米国に渡るなどして様々な事柄を経験し、それらを糧とし逞しく生きていく姿を描いて締めくくるものとなっています。

三島由紀夫の話もさることながら、著者の「おんな一代記」としても十分に読み応えのある本でした。
https://www.fusosha.co.jp/Books/detail/9784594063061

そして、私が取り憑かれたように?黙々と頁をめくっていると、お店の主人と思われる熟年女性が話しかけてきて、「それ、私が書いたものなんですよ」と仰ったので、非常に驚きました。

このお店(ポルトカーロというイタリア料理店)の1階には洋菓子店があり、著作で登場する「三島由紀夫が激賞したマドレーヌのお店(日新堂菓子店)」がそのお店で、著者である「女学生」は、今も、この建物で菓子店とレストランを営んでいる方だったのです。
http://www.at-s.com/gourmet/article/yoshoku/italian/126644.html
http://nisshindoshop.weebly.com/

そんなわけで、何か引き寄せられるようなものを強く感じ、ぜひということで、この本とマドレーヌを購入しましたが(お店でも人数分をいただきました)、このマドレーヌ、お世辞抜きで本当に非常に美味しいです。

そして、このご縁に惹かれるようにして宿で本を読み進めていくと、不思議なことに気づきました。今(旅行時)の私はちょうど三島由紀夫が旅立った年と同い年なのです。

冒頭に書いたとおり、今回、下田に来たのは、黒船絡みの観光と南伊豆の海を見るのが目的で、三島由紀夫という知識も想定も全くありませんでした。

それが、この年に、こうした形で巡り会うこと自体、何らかの「呼ばれた感」を抱かずにはいられないものがありました。そのせいか、この本を読むことに決めた瞬間、自分はこれまで、三島由紀夫という存在自体に、どことなく避けてきた面があるのでは、今こそその存在を見直すべきではと感じるようにもなりました。

そんなわけで、帰宅後も(肝心?の三島自身の著作が後回しになるのは相変わらずですが)wikiなどで三島関係の記事を読みまくり、自分なりに、この「事件(邂逅)」を咀嚼したいと思いました。

その続きは次回に少し書きますが、ともあれ、この出来事が、今回の南伊豆旅行の最大の収穫となりました。

余談ながら、改めて三島由紀夫と岡口裁判官(そして、三島事件と岡口裁判官事件)を比べると、このお二人(二つの事件)には、共通点が多いような気もします。この点は、可能であれば別の機会に。

 

******

というわけで、残りは、当時FBで書いたものを反復するだけの投稿になりますが、2日目は宿の近くの砂浜で読んだばかりの三島由紀夫の裸身を真似て、いい気になって浜辺で寝転んで過ごしました。

弓ヶ浜の焼けつく砂に寝転びて 
見上げる雲と空の深さよ

太陽が眩しいからと 
市ヶ谷で自決したのか あの才人は

打ち寄せる波に向かいて倒されて 
なすすべもなく身の丈を知る

 

その後、車で南下し石廊崎に向かいました。石廊崎は、大学時代に購入した伊豆のガイドブックで見つけて以来、いつか必ず行きたいと思っていた場所で、ようやく来ることができたと、その点は大満足でした。

石廊崎では最初に岬巡りの観光船に乗船した後(高波を理由に西側のメインコースが欠航とのことで、東側のサブコースとなりました)、ビジターセンターに移動しました。
http://izu-kamori.jp/izu-cruise/route/irouzaki.html

西側のコースは蓑掛岩という名勝(奇岩)を往復するものでしたが、海上に鋭い岩が屹立する蓑掛岩の姿は、浄土ヶ浜(剣山周辺)によく似ているように思いました。

また、石廊崎ビジターセンターの雰囲気も、浄土ヶ浜に最近できたビジターセンターに似ています。ただ、こちらの方が名物を提供する良好な飲食施設等も設置されているので、浄土ヶ浜よりも有り難みがあるように思いました(伊豆ゆえの集客力の違い、という点に尽きるかもしれませんが・・)。

また、石廊崎の石室神社を沖から眺めると、司馬遼太郎の「菜の花の沖」で、外洋に漕ぎ出したばかりの高田屋嘉兵衛が岬の神様を洋上から遙拝する光景が思い起こされます。

石廊崎の先端では、どのようなご事情かは存じませんが、白い衣装を纏った女性が一心不乱に祈りを捧げている姿を拝見しました。

ともあれ、いつかは来たいと思った大学時代から約25年、我ながら、よくぞここまで、このような人生を歩むことができたものだとしみじみ感じて一句。

幾年月たたかう人に慰労崎

 

そして、夕方に最終目的地・西伊豆きっての名勝(奇勝)・千貫門に到着し、無事に全行程を終えました。

旅をして千貫文また消えゆけど 
家族と過ごす日々はプライスレス

おまけ。

弓ヶ浜の焼けつく砂に寝転びて
いたいよ いたいよ 全身いたいよ~

 

「ひらくこと」の聖地・下田の先にある道~南伊豆編その1~

2年も前の夏の話ですが、妻の実家に帰省した後、義父の自動車をお借りして、静岡県の南伊豆エリアに旅行したことがあります。

昔から、ペリー来訪の地である下田には一度は行くべきと思っていたというのが主たる理由でしたが、多忙にかまけてさほど準備もせず、1日目に黒船関係をあれこれ見て水族館に行き、翌日は同行者が強硬に希望する海水浴を行って帰宅、という大雑把な計画で赴くこととしました。

まずは修善寺から天城峠を越えて河津に到着し、ほどなく、次々と現れる南伊豆の美しい海岸を横目にしながら下田の中心部に到着し、とりあえず湾内巡りをする黒船の遊覧船に乗りました。
http://izu-kamori.jp/izu-cruise/route/shimoda.html

湾内から下田市街の眺望に浴しつつ気の利いた一句でも、と思いましたが、オガール紫波の立役者のOさんが、FB上で軽口を投稿されている光景しか思い浮かばず、

人も世も、開く秘訣はシモだよね

といった程度のことしか思いつきません。

 

ともあれ、遊覧船の後、幕府とペリーの交渉の場となった了仙寺と、併設されている黒船ミュージアムを訪れました。
http://www.mobskurofune.com/

黒船ミュージアムで流れていた映像によれば、ペリー艦隊は、この了仙寺にて必死に対幕交渉を行いつつ、独自に日本語用語集を作っていたそうです。

しかし、その映像で表示された「艦隊が作成した?日本語の用語集」には、次の漢字が並んでいたのを私は見逃しませんでした。

「男根、女根、肛門」

やっぱり、人も世も開く秘訣はシモなのかもしれませんが、私には不得意な分野ですので、どうにも困ったものです。

ともあれ、了仙寺には日蓮の銅像も建立されていましたが、日蓮宗の寺院が対米交渉の場になったこと自体は、元寇の光景も重なって、不思議なものを感じてしまいます。

その後、市街地に駐車して市内の飲食店で昼食をとることにしました。この件に関しては、この年になって?下田で三島由紀夫を発見するという予想外の驚きがあり、次回に詳細を述べることとします。

昼食をいただき、ペリーロードを散策して風情のある景色を堪能した後、1日目の最後の目的地である下田海中水族館に向かいました。

ペリーロードは、上陸したペリー艦隊一行の隊列が交渉場所たる了仙寺まで行進した小川沿いの道のりの通称ですが、両岸には当時からの古い建物群が建ち並んで飲食店などとして活用されており、ミニ京都とでも言うべき良好な雰囲気で、京都と違って人が押し寄せることもなく、川岸に密集するカニの群れを静かに眺めることができました。

続々とカニ行進す ペリーロード

 

下田の黒船来航といえば、吉田松陰も欠かすべからざるネタではありますが、今回は時間不足のせいか事前調査の不足のためか、松陰関係の名所旧跡はすべて素通りになってしまったので、次に赴く機会があれば、ぜひ立ち寄りたいものです。

下田海中水族館では、ひととおりの展示を拝見し、最後に定番?のアシカやイルカ等のショーを拝見しましたが、細部は覚えていないものの、登場する生き物たちへの愛情を非常に強調すると共に、海洋プラスチック問題など、人類が海に危険を及ぼしており、そうしたものへの対策が必要だ、といったメッセージも掲げていたように記憶しており、その点は、単なるショーではないというか、好ましいものと強く思いました。
https://shimoda-aquarium.com/

 

ちょうどこの日(8月上旬)、小泉進次郎議員(現・環境相)と滝川クリステル氏の結婚発表のニュースが電撃的に流れてきましたが、滝川氏といえば、著名キャスターであると共に動物愛護運動家としても知られていますので、ちょうど水族館にいたせいか?このニュースを聞いた際、このお二人がタッグを組めば、動物愛護に関して何か大きなことを実現することもありうるかもしれない、と思いました。

端的に言えば、私は3年ほど前から「日本国憲法の根本原理である13条(人間の個人としての尊厳)を改正(追加)し、人間だけでなく人にあらざる存在の尊厳(万物の尊厳)も書き込むべきだ」と思うようになり、そのことをブログでも時々書いていますが、動物愛護運動家であるクリステル氏にとって、この憲法改正案は、悪い話ではありません。

また、憲法改正を党是とする自民党に身を置き、(最近は失速気味と言われていますが)よほどの躓きがない限り、いずれ首相に上り詰めると思われている進次郎にとって「劇的な復活後は安定政権を維持し延々と選挙に勝ち続けて憲法改正の発議が可能な議席数を獲得した」安倍首相すらできなかった憲法改正を実現することは、政治家として最大級の目標になりうるはずです。

そして、仮に、現在の日本国が憲法改正を行うことができるなら、国民の支持は言うに及ばず世界の情勢からも現時点では無理のある9条改正ではなく、他の事柄が選ばれるでしょうし、国民のごく一部しか利害関心を持つことができない些末と位置づけられる類の事柄ではなく、「はじめての歴史的改正」にふさわしい、これまでの国家・国民の関係や位置づけなど、社会全体に変化を及ぼしかねない大きなテーマに関わる壮大な事柄が、目玉として選ばれる(それだけのものでなければ、国民の熱狂・支持は得られない)はずです。

それこそ、国民が「総グレタさん化」するような事態にでもなれば(そのようにならざるを得ない危機的状況が生じれば)、万物の尊厳を憲法改正の事項に掲げることは、国民ひいては世界から熱狂的歓迎をもって受け入れられる可能性がありそうに思います。

それは決して望ましいことではないかもしれませんが、悲観的に予測される近未来の日本そして世界の姿かもしれません。

ともあれ、伊豆の海をこよなく愛し、人と生き物が互いに信頼し合う社会の必要を説く下田海中水族館のメッセージを聞きながら、この日に突如、国民の眼前に出現したビッグカップルは、そのような社会ひいては万物の尊厳を定める憲法改正の実現をこそ目指していただけたらと、思わずにはいられませんでした。

ともあれ、1日目の最初の目的地となった間歇泉(峰温泉大噴湯公園)にて毎度の一句。
http://kankou.town.kawazu.shizuoka.jp/attraction/141/

逆噴射家族は今日も大奮闘

ちなみに、その日の宿は、下田の南(南伊豆町)にある「ちょんまげの宿」と呼ばれる古民家に宿泊しましたが、宿のご主人(ちょんまげの方)に岩手から来たことを伝えたところ、岩手出身の方が宿の運営に関わっているとのことでした。
http://www.e-sankai.jp/