北奥法律事務所

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通訳

地方の外国人当番弁護士に関する通訳の実情とげんなり感

3ヶ月前の話です。

12月上旬は、例年、賞与の原資確保(そもそも支給できるか・・)に悩みつつ、外食もできず安価な配達弁当に依存する日々となっています。

誕生日 自分にパスポを贈れども
店には行けず ただ見てるだけ

おまけに、当番弁護士で逮捕直後の外国人の接見に行けとの配点を受けたのですが、通訳の手配の関係で散々な目に遭いました。

外国人事件の配点自体が10年以上ぶりだったので、あれこれ調べ直した上で弁護士会の通訳人名簿に従って電話したところ、不通とか無理の返事が続々続いたほか、別人の番号(名簿ミス)だとか何年も前に東京に転居したなどという返事まであって、結局、名簿の10人以上の対象語の通訳さんがまさかの全滅(唯一きちんとお話ができた方は、本人の取調で通訳を担当しているので無理と言われる始末・・)。

もはや、20年も前の東京時代の刑事当番の経験をさほど覚えているわけではありませんが、通訳さんの手配で苦労した経験はなかったので、色々な意味で、あんまりだと思わざるを得ませんでした。

やむを得ず裏技的な方法(非違行為ではない)で接見だけはこなしましたが、原則として当日の接見が求められる逮捕直後の当番出動は、通訳の手配が不可欠な外国人事件では、かなり無理筋である(のに、弁護士会は対策を打っていない?)という印象が否めません。

弁護士会で通訳手配をして貰うのは無理でも、せめて通訳さん手配に関する直近の役立ち情報を会内で共有・提供するとか、何人か電話して手配できなければ、本格的な接見は被疑者国選弁護人の選任を待って行うものとする(当番は通訳を手配できなくとも簡易な説明翻訳文書の差入等の接見方法でも良しとする)など、現場に無理を強いない制度設計をお願いしたいものです。

或いは、最近世間で出回っている?簡易翻訳の機械を接見室に持ち込めるようにできれば、それが一番良いのかもしれませんが・・

というわけで、「その日」のとっても有り難い配点に心から感謝する一句。

お祝いに この仕事くれた弁護士会

 

日本語しかできない田舎の町弁が従事する、外国人相談の現状と本音~その1~

今回は、外国人向け相談に関する小話(前編)です。

数年前から弁護士会の某委員会と県庁の協定により外国人向けの無料相談会が県内でも年数回行われており、応募したところ、昨年は3回の配点を受けました。

最初に担当された方は、「相談の中身は交通事故とか日本人向け相談と大差ないものばかりだった、日本語も全面OKの方ばかりだった(ので、日本人の相談と何も差がなかった)」と豪語?していました。

ですので、語学能力も外国人向けに特化した法制度等の知識理解もさほど必要ないのかと安心して応募したのですが、

よくもそんなインチキ話をしてくれやがって

と言いたくなるほど、ズブズブの本格的な外国人相談ばかりでした。

1回目は、東南アジア出身の女性が日本人DV夫から子連れで脱出(シェルター保護)したので、これから離婚手続などをしたいというものでした。

事前に相談概要のメールが来たので、日本語が全く話せない外国人が調停などを行うための手法(現実的に利用可能な制度の有無など)について、(これまで経験がないので)あれこれ調べました。

結局、法テラスによる通訳利用などにも様々な限界があり、現状では、知人や大使館などを通じて外国人向け支援団体を探すか、最低でも、英語が堪能な弁護士さんに依頼すべきでは(当方は良好な対応が困難)と回答せざるを得ませんでした。

この点は、現在の法律実務の不備が大きいのではと思われ、少なくとも、日本語を使用できない外国人の離婚調停等に対応する通訳支援(税金等を含めた基金制度)と迅速解決の仕組みが整備されるべきと感じます。

***

2回目は「A国籍(西欧系。米国ではありません)の県内在住外国人(配偶者は日本人)が遺言作成の相談をしたいというもので、県庁担当からのメールには、

「遺言書は、日本語で書かないとダメだ(英語ではダメだ)と書いてあるサイトがあり、本人が不安になっているので、その点は分かるか」

などと書いてありました。

日本国内に資産を有する外国人の遺言という問題は、日本法と本国法のどちらが優先するかなど、外国人に特化した様々な制度や議論が複雑に絡み合うテーマですが、私自身は「外国人が遺言を作成する事案」の相談を受けた経験がありません。

やむなく、長年、事務所内で出番のなかった文献群を色々と調べ、次の内容をメールで書いて返信しました。

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①外国人が外国語で自筆遺言証書を作成することは(民法の方式に適っているのであれば)可能・有効である

②但し、日本国籍ではない以上、本国=A国の法律の適用を受ける可能性がある。

一般論として、本国(A国)の財産は、本国法に従った遺言書の作成を要するが、日本国内の財産は、日本で作成した遺言書により処分できる(A国法が、日本法の適用を認める)ことが多いようである。

この点は、A国で渉外事務を扱う弁護士にも相談した方がよい(A国籍である以上、日本国内の資産の処分であっても、すべて日本の法律で大丈夫と思わない方がよい=同国弁護士にも相談すべき)

③日本国内の財産を遺言により確実に処分したいのなら、公証人役場で公正証書を作成すべきで、その場合は役場と相談の上、信頼できる通訳を交えるべき

なお、当職がWebで調べた限り、外国語で遺言ができないと書いたものは見ていない(上記と同趣旨のことを書いているものは確認した)。

以上の理由から、遺言の対象となる相続財産が日本国内のものであれば、通常の遺言事案とさほど変わらない説明ができるとは思われるが、本国等の財産であれば、当職が手も足も出ない=本国等の弁護士に相談し対処すべきで、その点を担当から確認していただきたい。

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すると、当日になって・・・(以下、次号)