北奥法律事務所

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在日外国人向け法律相談・渉外関連事件

日本語しかできない田舎の町弁が従事する、外国人相談の現状と本音~その2~

標題のテーマに関する前回投稿の続き(後編)です。

県庁(アイーナ)の外国人向け無料法律相談会で、A国籍の県内在住外国人の遺産相続という準拠法が大きく関わる案件について、事前に幾つかの文献を調べてまとめた内容を担当者にメールしていたところ・・

なんと、当日になって、本人がドタキャンしてきたとの連絡を県庁担当から受けました。

この企画は、会場で本人から相談を受けなければ日当が出ませんので、事前の準備は完全タダ働きとして水泡に帰すほかありません。

ご担当にはメールを本人に転送しても構わないと書いたので、或いは、本人がメールで目的を達し取り止めてきたのでは・・・(事前に返信しなきゃよかった?)、と思わないでもありません。

そういえば、今日も、(日本人相手ですが)そういう話ありましたし・・

そうであれば、実質的に相談を実施したものとして県庁は相談料を支払っていただきたいものですが、そうはならない(お役人さん達は給料を貰うが、チンケな出入り業者はタダ働きを強いられる)のは、この種の話(お役所絡みの仕事は、親切にすればするほど徒となる)のお約束なのでしょう。

が、ともあれ、弁護士にとっては「あるある」の類と言わざるを得ないでしょうから

この腹いせに、排外主義に転向しよう

とか

誰だ、外国人相談なんて日本人向けと大差ないなどと言った奴は

などとケチなことを言うことなく、せめて、相談者A国人氏が、私のメール?も活かして、何らかの形で日本に肯定的な影響を及ぼしてくれるよう願いました。

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3回目は、10年以上前に来日し日本人男性と結婚した熟年アジア系女性が夫の死去に伴い相続紛争が生じたというご相談でしたが、この方も、10年以上日本に居住しているのに、全くと言ってよいほど日本語が話せず、通訳等の対応ができる友人等もおられないようでした。

アイーナ相談は県庁側で手配した通訳さんが対処するので、一定の意思疎通はできましたが、通訳さん自身が当該国のご出身の方?らしく、相続を巡る日本の様々な制度や実務もあまりご存知ないようでした。

そのため、それらを通訳さんに説明するだけでも難儀で、まして、ご本人の相談の核心となる論点への対処をあれこれ説明しても、砂漠に水をまくような印象は否めませんでした。

結局、様々な困難な論点があるように見受けられたものの、当方にはその紛争への対応は無理である=同国人同士の繋がりを通じて、当該言語への対応が可能な東京の弁護士さんなどを照会してもらうほかないのでは、と回答せざるを得ませんでした。

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近年このような「働けど働けど」仕事ばかりが続く感が否めず、憑き物があるのかと泣き言の一つも言いたくなりますが、ともあれ、開運を願って橋を往復し続けたいと思います。

今般、岩手弁護士会にも、在外実務経験があったり英語が堪能だと聞く先生方を中心に、外国人の権利救済を目的とする委員会が発足したのだそうで、今後はそちらの方々が専門能力を活かして?相談会を担当されるものと思われます。

というわけで、私の屍を無駄にすることなく、今後、確実に予想される外国人の大量入国(大移民?)などに伴って生じる法律問題の解決に尽力いただければと思います。

 

日本語しかできない田舎の町弁が従事する、外国人相談の現状と本音~その1~

今回は、外国人向け相談に関する小話(前編)です。

数年前から弁護士会の某委員会と県庁の協定により外国人向けの無料相談会が県内でも年数回行われており、応募したところ、昨年は3回の配点を受けました。

最初に担当された方は、「相談の中身は交通事故とか日本人向け相談と大差ないものばかりだった、日本語も全面OKの方ばかりだった(ので、日本人の相談と何も差がなかった)」と豪語?していました。

ですので、語学能力も外国人向けに特化した法制度等の知識理解もさほど必要ないのかと安心して応募したのですが、

よくもそんなインチキ話をしてくれやがって

と言いたくなるほど、ズブズブの本格的な外国人相談ばかりでした。

1回目は、東南アジア出身の女性が日本人DV夫から子連れで脱出(シェルター保護)したので、これから離婚手続などをしたいというものでした。

事前に相談概要のメールが来たので、日本語が全く話せない外国人が調停などを行うための手法(現実的に利用可能な制度の有無など)について、(これまで経験がないので)あれこれ調べました。

結局、法テラスによる通訳利用などにも様々な限界があり、現状では、知人や大使館などを通じて外国人向け支援団体を探すか、最低でも、英語が堪能な弁護士さんに依頼すべきでは(当方は良好な対応が困難)と回答せざるを得ませんでした。

この点は、現在の法律実務の不備が大きいのではと思われ、少なくとも、日本語を使用できない外国人の離婚調停等に対応する通訳支援(税金等を含めた基金制度)と迅速解決の仕組みが整備されるべきと感じます。

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2回目は「A国籍(西欧系。米国ではありません)の県内在住外国人(配偶者は日本人)が遺言作成の相談をしたいというもので、県庁担当からのメールには、

「遺言書は、日本語で書かないとダメだ(英語ではダメだ)と書いてあるサイトがあり、本人が不安になっているので、その点は分かるか」

などと書いてありました。

日本国内に資産を有する外国人の遺言という問題は、日本法と本国法のどちらが優先するかなど、外国人に特化した様々な制度や議論が複雑に絡み合うテーマですが、私自身は「外国人が遺言を作成する事案」の相談を受けた経験がありません。

やむなく、長年、事務所内で出番のなかった文献群を色々と調べ、次の内容をメールで書いて返信しました。

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①外国人が外国語で自筆遺言証書を作成することは(民法の方式に適っているのであれば)可能・有効である

②但し、日本国籍ではない以上、本国=A国の法律の適用を受ける可能性がある。

一般論として、本国(A国)の財産は、本国法に従った遺言書の作成を要するが、日本国内の財産は、日本で作成した遺言書により処分できる(A国法が、日本法の適用を認める)ことが多いようである。

この点は、A国で渉外事務を扱う弁護士にも相談した方がよい(A国籍である以上、日本国内の資産の処分であっても、すべて日本の法律で大丈夫と思わない方がよい=同国弁護士にも相談すべき)

③日本国内の財産を遺言により確実に処分したいのなら、公証人役場で公正証書を作成すべきで、その場合は役場と相談の上、信頼できる通訳を交えるべき

なお、当職がWebで調べた限り、外国語で遺言ができないと書いたものは見ていない(上記と同趣旨のことを書いているものは確認した)。

以上の理由から、遺言の対象となる相続財産が日本国内のものであれば、通常の遺言事案とさほど変わらない説明ができるとは思われるが、本国等の財産であれば、当職が手も足も出ない=本国等の弁護士に相談し対処すべきで、その点を担当から確認していただきたい。

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すると、当日になって・・・(以下、次号)