北奥法律事務所

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被災地支援

法テラス気仙と「くもじい」

先日2ヶ月ぶりに法テラス気仙の相談担当で大船渡市に行きました。今回は相談が2件しかなく、うち1件は無料相談には避けて通れない「ある種の心の病を抱えた、コミュニケーションに困難を伴う年配の方からの、不毛さを感じずにはいられない、実質的に事件性のない相談」でした。

ここであれこれ書きませんが、少し前に担当した岩手弁護士会の電話相談でもこの種の相談者に遭遇したほか、私以外の弁護士の方がその種の話に接したという話を聞くことも増えているせいか、そうした相談者の増加(社会の他の部門で対応できていないという点も含め)といった問題から司法資源や公金の運用のあり方まで、色々と考えずにはいられないものがありました。

大船渡の相談担当の際には、必ず、昼休みに末崎半島の手前で国道を降りて大船渡駅周辺などの激甚被災エリアを車窓から拝見して戻るというコースを辿っているのですが、昨年くらいから、漁業や加工関係の大小様々な建造物が建ち並ぶようになってきました。

建設中と思しき正体不明の巨大建造物も幾つか見られ、水産業界等に知見の乏しい山国育ちの身には、不思議な光景と感じるものも少なくありません。

漁業関係の会社事務所や加工場が立ち並んでいるエリアには、司法書士さんの事務所もありました。弁護士の場合、このような場所に事務所を作ることは到底考えられないこともあって、この先生はそれらの企業の人達から登記に限らず様々な書類作成業務を独占的に引き受け、それを原資に経営をしているのだろうか?と興味をそそられました。

ところで、当家ではテレビ東京系の「空から日本を見てみよう」という番組(日本の様々な地域を空撮を交えて取り上げる番組)を録画し視聴するのが習慣になっているのですが、私の知る限り、この番組で被災地を取り上げたことは、未だほとんどありません。少し前に、八戸~十和田を取り上げた際に、八戸の港が少しだけ出ていましたが、被災状況や復興等にはさほど焦点が当てられていなかったとの記憶です。

さすがに震災から間もない時期であれば、この種の番組で被災地(沿岸)を取り上げるのは不謹慎との批判を受けるのかもしれませんが、震災の風化が叫ばれる今こそ、このような番組で被災地を取り上げて、復興に向けて悪戦苦闘している被災地に新たに出現した「変なもの」に光を当てるなどして、ニュースや真面目なドキュメンタリーとは違った角度・視点から、全国の人々の関心を喚起していただければと思っています。

いっそ、県知事や地元市長さんなどがテレビ東京にトップセールスをなさってもよいのではと思うのですが、いかがでしょう。

 

岩手における「政弁交流」と復興法制に関する議論の様子

岩手弁護士会では、数年前から年1回ほど?の頻度で地元選出の国会議員さんや県議さんとの懇談会を行っています。都合の付かない方などを別とすれば、毎回、全政党・党派の方々がいらしています。

私自身は下っ端の一人として末席で協議を拝見するだけなのですが、一応は主催団体(弁政連岩手支部)の会員である上、今回は震災絡みの話題が豊富であることや、政官ならぬ「政と弁」のコミュニケーション自体には関心がありますので、なるべく参加することにしています。

で、先日、その会合があったのですが、時間の大半を震災問題、とりわけ高台移転などの土地収用・区画整理の問題に費やしていました。例えば、「相続人が膨大で事務作業が進まない事案が多い」などといった、問題点の報告がなされていました。

ただ、まだ実務の動きが進まないせいか、具体的な処方箋(大量相続人の事案で、例えば、不動産の遺産分割手続を省略し、行政主導による相続分の換価供託で済ませるような特別法など)について、あまり議論が煮詰まっている印象は受けませんでした。

まあ、私自身が、その種の議論と縁が薄く、話の中身を理解できていないだけなのかもしれませんが。

個人的に、強く印象を受けたのは、被災地で執務する方(弁護士)の報告として、現在の仕組みは、被災地の復興を担う主力となるべき、ある程度の収入、稼働力、資力のある40代前後の世代に対し冷たい仕組みになっているという話でした。

具体的には、その類型にあたる人は、住宅等の被災でローンが残存しても、ある程度の高収入があるので私的整理GLで救済(減免)が拒否されてしまうとか、その世代は一刻も早く自宅を再建したいのに、前提というべき高台移転等が整わないので、建てたくとも建てられず、さらに生活再建支援法に基づく加算支援金の期限も迫っているなどの点が挙げられていました。

そして、要するに、現在の被災地に適用される法や実務スキームが、勤労の意欲と能力のある復興の主力担い手層に冷たい形になっており、これでは、この層が次々に内陸に移住せざるを得ないのではという指摘がなされていました。

また、ある議員さんから土地の境界問題の迅速解決の必要性が強く述べられていましたが、その点について、現在の状況や処方箋などを述べる方がいなかったことが、少し気になりました。

私は筆界特定制度が導入された10年近く前、少しだけ筆界調査委員をやらせていただいたことがあり、その際、筆界特定制度の有用性(境界確定訴訟と比べた使い勝手の良さ)を感じる一方、法務局の方々が多くの手間をかけて非常に厳密な調査をしており、これを大量にこなすことは無理だろうと感じたことがありました。

思いつきレベルですが、筆界特定に関する特区制度のようなものを設けて、法務局や筆界調査委員の主導で、通常よりも簡易迅速な方法で筆界を定めて、不服がある者は自己の費用負担で通常型の処理を申し立てることができるといった制度を設けてもよいのではと感じました。

これと上記の未分割不動産の簡易買取制度をセットにすれば、境界及び相続未確定の不動産の区画整理などは、ある程度、迅速に行えるのではないかと思いますが、どうでしょうか。

この点は被災地における実務の実情を踏まえた判断になるでしょうから、詳しく調査、レポートする学者さん?などが登場いただければと思ったりもします。

ともあれ、このような政弁交流に限らず、ここ1、2年は、岩手弁護士会と県庁の方が協議することも頻繁に行われているそうで、これも震災前にはほとんど見られなかったことです。

私自身は、今や事務所の運転資金を稼ぐことに汲々とする身のため、そうした営みに参加する余力が乏しく、残念に思っているところですが、具体的に実働の出番が必要となれば、いつでも取り組めるようアンテナだけは張っておきたいと思っています。

被災地等に対する広報を通じた弁護士の関わり方について

先日、法テラス気仙の相談担当で大船渡に行きましたが、予約ゼロで当日飛び込みの簡単なご相談が1件あっただけで、ほぼ一日、内職等に潰して終わりました。

法テラス気仙には約1年前から月1回の頻度で通っており、毎回4名前後の方が来所していたので、このような経験は初めてでした。

ただ、法テラスは国?の資金で強力な宣伝活動を行っているので、ゼロ件となるのは滅多にないのですが、弁護士会や県(沿岸の出先機関)が主催の被災者向け相談事業などでは、宣伝力の格差のせいか、ゼロ件になることが以前から珍しくありませんでした。

集客できないなら規模縮小すればよいのにと思わないでもないのですが、仕事を減らせと安易に口にするわけにもいかず、集客等につなげる工夫をもっとできないのだろうかといつも思ってしまいます。

例えば、全戸配布される各自治体の広報やタウン誌、或いは地域内の業界団体等の広報などに簡単な連載コーナーを設けていただくことはできないでしょうか。

そして、被災関係に限らず、地域で取り上げるべき法的トピックについて、弁護士が執筆して説明したり、読者のアンケート等で要望があったテーマも積極的に取り上げつつ、記事の末尾で地元の窓口も紹介すれば、多少は集客力も向上するのでは?と思うのですが。

私は、岩手弁護士会の原発被害賠償に関する支援活動に関与しているのですが、この件も同様に集客力(相談等のアクセス)のなさに喘いできたので、可能なら岩手日報などで他の震災関連も含めた連載などの企画を採用していただければと思ったりもします。

他県の取り組みなどはまったく存じませんので、そうしたものが行われている例などご存知の方がおられれば、ご紹介いただければ幸いです。